2018年11月10日にeペナントレースが開幕し、2019年1月12日には“e日本シリーズ”が行われるeBASEBALL パワプロ・プロリーグ。KONAMIとNPBにより共催されたこの史上初のイベントを、1990年代に千葉ロッテマリーンズのエースとして活躍した黒木知宏氏はどう見たのか。eBASEBALL パワプロ・プロリーグの解説としても弁舌さわやかに、ときに熱く語った黒木氏に、e日本シリーズの展望やパワプロ・プロリーグへの想いを聞いた。

元千葉ロッテのエース“ジョニー”黒木が語る、1998年千葉ロッテ18連敗を踏まえた『パワプロ』e日本シリーズ_01
e日本シリーズ進出のボードを手渡す黒木氏(いちば右)。いちばん左は日ハム、横浜などで活躍した江尻慎太郎氏。

黒木知宏氏(くろき ともひろ)

1973年生まれ。1994年ドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団。1990年代に千葉ロッテのエースとして大車輪の活躍を見せる。1998年には大型連敗中に連敗ストップを託され、2点リードの9回2死に同点ホームランを浴び“悲劇のエース”とも呼ばれる。その年13勝で最多勝、最高勝率を獲得。

勝敗を分けるのは、精神力

――黒木さんは、2018年11月10日の開幕戦から解説をされていました。eBASEBALL パワプロ・プロリーグについて全体的な感想をお願いします。

黒木まず、この大会に向けて選手たちが、しっかりと準備しているということを感じました。野球というものをちゃんとわかったうえで選手をうまく起用して、その選手たちを動かしていく能力の高さというものを、今回すごく感じました。

――黒木さんご自身は『パワプロ』やテレビゲームは遊ばれますか。

黒木僕はどちらかというと後輩たちがやっているのを見るのが好きですね。たまにやらせてもらうと、まったく動かすことができない、フライを捕りに行ってもどこに落ちてくるかわからないとかそういう状況だったんです(笑)。とにかくみんなうまいんですよね。後輩たちのプレイを見ても、ミートカーソルをしっかり合わせて、ミートしていくうまさを当時は感じたのですが、今回このesportsのプロリーグを見て、とんでもなく高いレベルでやっているのは改めて感じました。

――テレビゲームのプロリーグを、しっかりとした報酬制でやるというお話を聞いたときには、最初はどのように思われましたか。

黒木じつは『パワプロ』の前に、格闘ゲームで一度こういうイベントに出させてもらったことがあったんですね、そこからesportsというのを認識していたというのがありましたし、プロとして戦っている選手を特集した番組とかも見たことがあり、esoprtsというモノ自体は知っていました。そして彼らが『パワプロ』でどれぐらいの能力を発揮してくれるのか、どれぐらいの本気度でやっているのかというのを見られるという楽しみがあったんですね、それをずっと開幕から見ていたときに、これは彼らもちゃんとプロとして練習している、ちょっと取材をすると4時間ずっとバッティングをやっている、2時間半も3時間もピッチング練習をしているというのを聞いたときに、これはれっきとしたスポーツだという風に認識しなければならないと思いましたね。

――まさに、“マインドスポーツ”なんて言葉がありますけど、非常に選手のメンタル、精神状態がプレーに直に出ているシーンも何度かありました。

黒木今回に関して言いますと、絶対的に勝たないといけなかった選手が勝てなかったのがありましたよね、その選手たちが背負ってきた大きなものであったりとか、“勝って当たり前”みたいなものに対して、プレーをしたときに力んでカーソルが合わなかったりとかというところに、一発勝負である怖さ、真剣勝負というのを感じることはありましたよね、

――選手に向けてアドバイスではないですが、緊張とか、気負いから逃れる方法などはあったりしますか。

黒木そういうものを克服するためには何が必要かというと、場数、経験、そして準備というものが大事だと思います。今回パワプロ・プロリーグという初の試みでしたが、これが2回、5回、10回と続いていくと、当然下から突き上げてくるのもあるでしょうし、経験を積んだ人間がもっともっと緊迫した状況の中でも、高いパフォーマンスを出せるようになってくると思うので、まずは数をこなしていくのが大事かなと思います。

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ジョニー黒木が語る“プロ”の姿、そしてあの連敗について

――“パワプロチャンピオンシップ2017”で優勝したマエピー選手が残念ながら1勝もすることができず全敗してしまいました。その試合直後、黒木さんはマエピー選手に「彼もプロなので、逆にここからどうするか」と発言されていました。そのあたりの思いを詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。

黒木今回、esportsでマエピーさんはつらい思いをしました、僕はNPBの中で、つらい思いをした人間なんです。18連敗を経験して……。でも、大連敗をしたとか、失敗を繰り返すことによって悔しくて「絶対になんとかしなければいけない」という思いが出てくるんです。なので、プロである以上勝ち負けは、白黒はハッキリつけられるものだから、今回は負けたという悔しさを自分の中に持って、今度はそれを克服するためにはどうしていったらいいかということを考えてほしいと。きっとマエピーさんはやってくれると思うので、彼のこれからの成長を期待するという思いでそういうコメントになったのですね。

――いまお話にあった、日本記録にもなった18連敗、苦しい話ですが、ああいったときって心理的にはどういった状況でプレーされてたんですか。

黒木なんといいますか、ゾーンには入っていたんですよね、マエピーさんはもしかしたらゾーンに入っていたりしたかもしれない。でも勝負というものはやっぱり相手がいるので、勝負は思い通りにならないこともある。強いから勝つんじゃなくて、勝ったものが強いと位置づけられるわけですよね、そういうことをマエピーさん感じたと思います。僕もそういうことを感じたので。

――理不尽に感じるほどの悔しさの中から立ち上がらなければならない。

黒木ええ。「悔しい思いをしたくないからもう一回練習しよう」と、それをやらなければプロとして落ちていくと思いますから。マエピーさんが今後、esportsの中で日本を背負って立つような選手になってくれると思うので、がんばってもらいたいなという思いはありますよね。

――先ほど、緊張から逃れるには場数を踏むというお話がありましたが、相手がリードし、こちらがビハインドで戦わなければならない、あるいはチームが連敗中であるときに、逆境の中で前向きに戦うためにはどうしたらいいのでしょうか。

黒木単純に言うと準備なんですよ。自分が「これだけのことをやってきたという」準備、自信があれば、いろんなことに対して想定内になり、差し込まれることはないですよね。イレギュラーが起きたときに対応できるかどうかというのが、絶対的に準備なので、その全選手、全チームメイトがちゃんとシミュレーションして、準備をして、この状況だったらこういう選手を起用していくというものを練習の中でしっかりやっていけば、多少なりとも克服できるのかなとは思います。

1998年日本シリーズと同じ、20年ぶりの対決。その軍配は?

――いよいよ行われるe日本シリーズは、ベイスターズとライオンズという1998年の日本シリーズ以来の組み合わせになりましたが、試合の展望や、これまで見てきたなかで、この選手のこのプレーを注目したいというポイントはありますか。

黒木僕はベイスターズを多く中継させてもらいましたが、3人のチームワークが非常にいいんですよね。とくにナイスピッチング率が高いので、そこはひとつ見どころかなと。それにAO選手のバッティングのうまさであったりとか、ピッチングのよさというのをとくにこの大会で感じることがありましたので、それをちゃんと日本シリーズで出せるのか。それが出てなかったら、おそらく自分たちの戦いができていないということになるので、いままでの横綱相撲的な戦いかたじゃない形になるので、僕はAOさんのプレーがひとつポイントになるのかなと思いますね。

――西武の打線も強力です。代表決定戦でも浅村のホームランから火がつきましたし、どこからでもホームランが出るような打線ですね。

黒木ただ、ディフェンスや、攻撃面でも小技の重要度を見逃すことはできません。代表決定戦でもじゃむ~さんが5イニング目に内野ゴロで点を取ってとても有利に働いたじゃないですか。点数を取られないがために、ランナーを溜めて勝負を避けるという判断をすることはあるのですが、やはり勝負すべきところで勝負をしないと、逆に大量失点になってしまうこともあります。ですので、逃げるのではなく攻めていくような、守備も攻める、攻撃も攻める、とにかく攻めることができるチームが僕は日本一になると思います

元千葉ロッテのエース“ジョニー”黒木が語る、1998年千葉ロッテ18連敗を踏まえた『パワプロ』e日本シリーズ_02
2019年1月12日のe日本シリーズに進出を決めた横浜DeNAベイスターズのメンバー。果たして初代王者はどちらの手に渡るのか!?

 『パワプロ』史上、NPB史上初の試みである“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”、その最終決戦である“SMBC e日本シリーズ”は埼玉西武ライオンズ対横浜DeNAベイスターズの組み合わせで、2019年1月12日に開催される。ぜひチェックしてみてほしい!(公式サイトはこちら