発売中の『バトルプリンセス マデリーン』。愛娘のためにゲームを作ったクリストファー・オブリッチ氏に話を聞いてみた。

 プレイステーション4、Nintendo Switch用ソフト『バトルプリンセス マデリーン』が2018年12月20日に3gooより発売された。ご存じのとおり同作は、娘さんの「ゲームに出たい!」という願いを叶えるために制作された、全国のお父さん感涙必至の(記者含む)アクション・アドベンチャー。2015年に、娘さんの5歳の誕生日プレゼントとして、お父さん(クリストファー・オブリッチ氏)は、ゲーム開発に着手。その後、2017年3月にKickstarterで開発資金の調達をしたところ、わずか3日間で目標金額に達するほどの人々の注目を集めた(まあ、応援したくなりますよね!)。

 そんな『バトルプリンセス マデリーン』がついにリリースされるということで、ファミ通ドットコムではお父さんのクリストファー・オブリッチ氏にインタビューを敢行(メールで)。同作がどのように開発されたのかといった経緯に、ちょっとだけ迫ってみた。

クリストファー・オブリッチ

『バトルプリンセス マデリーン』のクリエイター。マデリーンのパパさん。

――まずは、クリストファーさんの開発歴をお教えください。いままでどのようなゲームを開発してきたのでしょうか?

クリストファー私自身のゲーム業界歴は、さほど長くはありません。もともとグラフィックデザイナーとしてカナダの出版社に勤務していまして、男性向けの一般誌『MAXIM』や『ナショナル・ポスト』という日刊紙のデザインに携わっていました。ゲーム制作については、最初は趣味で始めたものです。制作したゲームがメディアに取り上げられる機会がありまして、オンラインゲームの制作を請け負うところからこの業界での活動がスタートしました。それがいまから6年前のことです。

ファミ通ドットコムでも何度となく掲載しているおなじみのお写真ですが改めて……。クリストファー・オブリッチ氏(右)と愛娘マデリーンちゃん(左)。仲睦まじさが伝わるいい写真ですね。

――娘さんの「『魔界村』に出たい」という夢を実現するために本作を開発するに至ったというのはあまりにも有名な話ですが、いま少し細かいディテールをお教えいただけないでしょうか?

クリストファー娘は私がゲームをしているのをいつも喜んで見ているんです。私自身、レトロゲームが大好きなので、ありとあらゆるゲームを遊びます。もちろんその中には日本のゲームもあって『魔界村』シリーズは娘のお気に入りのひとつ。とりわけ『大魔界村』のシールダーは“グリーンヘッド”とあだ名をつけてしまうほど大好きで、ご存じのとおり「私もグリーンヘッドと戦いたい」と言い出したんです。私自身が本作の制作を思い立ったのは、その後の会話がきっかけです。娘の放った「でも、女の子だから騎士にはなれないんだよね」というひと言がとても気になってしまって。というのも、当時の娘はまだ4歳でしたが、学校(保育園のような施設)で自分よりも大柄な男の子からいじめを受けてしまい、ちょっと辛そうにしていた時期だったんです。彼女のゲームに出たい願望と現状が重なって、「(女の子だって)戦ってもいいじゃないか」と言ってあげたくなったのかもしれません。とはいえ、最初はマディ(マデリーンちゃんの愛称です)が墓場のゾンビと戦う冗談半分のアーケードゲームをイメージしていましたが、マディがステージやモンスターについてアイデアを出してくれ、1ステージしかなかったゲームは3ステージになり、ボスも登場するようになって、止められなくなったというのが正直なところなんですが(笑)。

ゲーム中のマデリーン。現実のマデリーンちゃんを彷彿とさせる。リリースにあるとおり、まさに「いまどきの亜麻色の髪のプリンセス」だ。

――実際にゲームを開発するにあたって、心がけたポイントをお教えください。

クリストファー娘の思いをしっかりとゲームに反映するために、意図をしっかりと汲み取ることでしょうか。彼女は基本的に、絵でリクエストを伝えます。それはキャラクターのデザインにとどまらず、敵のキャラクターや各アイテムのちょっとした動きについてもはっきりとした希望があるので、「お前が言いたいのはこういうことかい?」なんて、私自身も絵を描きながら娘の意思を確認しながら進めました。娘から、ゲームの作り手としては思い浮かばないようなアイデアをポーンと出された時に、どうすれば実装できるかを思案する大変さもありましたが、すべてが楽しい工程でした。

――ストーリーでとくにこだわったポイントをお教えください。

クリストファー全体的にはグリム童話のような展開にしたいと考えていました。グリム童話にちょっぴりゴスの要素が入りつつも、勧善懲悪というか、モラルに満ちた物語にしたいと。そして、初志貫徹ではありませんが、娘を偉大なプリンセスにしなければいけませんでしたから(笑)。私自身、昔から語り継がれるおとぎ話や、ティム・バートンの紡ぐ世界観が好きなので、ドラマチックな要素を取り入れることにもこだわりました。ステキな物語の背景には悲劇アリ、ですから。幽霊犬のフリッツィーをお供に従えたのも、ホラー好きの影響があるかもしれません。

ストーリーモードでは、若き見習い騎士のマデリーンと幽霊となった愛犬のフリッツイーが、邪悪な魔物の手から王国と家族を救うために旅に出ることに。

――『魔界村』にインスパイアを受けたとのことで、とくに『バトルプリンセスマデリーン』で、とくに意識して『魔界村』をモチーフにしている点などありましたらお教えください。

クリストファー本作はじつにさまざまなゲームから影響を受けています。インスパイアが感じられるのは、おもにアートスタイルやアーケードモードでしょうか。リスペクトしながら、オリジナルの要素を積極的に取り入れる形で作り上げたので、娘の発案があまりにも『大魔界村』のテイストに寄りすぎたときは、心を鬼にして別のデザインをお願いしたりもしました。ちなみにストーリーモードはまた別のゲームからの影響が色濃いですね。

――娘さんがキャラクターデザインの原案などで開発に参加しているとのことですが、具体的にどのような点を参考にしたのですか? そのほか、娘さんの意見を参考にした部分などありましたら、お教えください。

クリストファー娘の意見は全編にわたって反映されています。キャラクターデザイン以外で挙げるならば、キャラクターの動きですね。ただキャラクターが跳ねるという動きでも、独特のリズムや間合いを具体的にリクエストしてくるので、僕たちもそれをおもしろがって実装したりしています。ボスキャラに大きな猫がいるんですが、娘はただ攻撃をするのではなく、餌をまいてネコの気を紛らわせてから攻撃したいと言ってきたときには、大人だ子どもだというのを忘れて純粋に感動してしまいました(笑)。

――主人公のマデリーンは、そのまま娘さんをモチーフにしているのですか? それともアレンジしている点などありますか?

クリストファー先ほどのお話とかぶってしまうかもしれませんが、愛する人のために、自分のために、戦うことを恐れないでほしいというメッセージが本作の背景にありますので、娘そのものというよりも、親が娘に寄せる期待というか願いのようなものがアレンジで加わっていますね。娘自身は「このゲームは自分が家族を助けるゲームなんだ」というところまでは理解しているようです。

――愛犬のフリッツイーを登場させることにした理由を教えてください。もしかして、フリッツイーも実際の娘さんの愛犬ですか?

クリストファーフリッツィーのモデルは、私の母が飼っていたシュナウザー犬で、名前もそのままフリッツィーです。私たち一家はいまの土地に移ってきてから数年間、新居購入の費用を貯めるために私の両親と同居していました。フリッツィーは娘にとって初めてのペットで、いっしょに育った友だちでもあるんです。フリッツィーが老犬となり、先がもう長くないとわかったとき、マディはひどく落ち込んでいました。その後フリッツィーは17歳でこの世を去りましたが、私はフリッツィーを物語に登場させて、娘がいつでもフリッツィーといられるようにしようと考えたんです。フリッツィーとの出会いと別れを経験して、娘も命の大切さを学ぶことができたんじゃないかなと思います。

愛犬フリッツィー。なぜ幽霊という設定にしたのかは、聞くのを忘れました!

――本作、とても難易度が高いのですが、「お子さんでも無理なく楽しめるように」とのことで、難易度はやさしめなのかと勝手に思っていました。あえて難易度を高めにした理由をお教えください。また、どんな人に楽しんでほしいですか?(お子さんをお持ちのお父さんとか?)

クリストファー難易度についてはとにかく調整に調整を重ねて、いま私たちが思うベストの状態にしています。じっくりとプレイする“ストーリーモード”は、RPGの楽しさを味わっていただきたいので難易度は軽めに。逆に“アーケードモード”は、とことんプレイに集中してもらいたい、チャレンジしてもらいたい、ときに悪戦苦闘してもらいたいとの思いからやや難易度を上げています。また、武器によっても扱いやすさの差があると思いますが、あからさまに使いづらいという武器がないように配慮しています。あまり破壊力を持つ武器は、開発途中でボツにしたりもしています。ちなみに、剣はそれほど使いづらくありませんし、ムチもあります。これらは強化すれば射程距離が伸び、ちょっと離れている敵を攻撃することも可能になります。どんな人に楽しんでもらいたいという具体的なイメージはないんですけど、昔ながらのレトロゲームを遊んだことがある方はちょっぴりの懐かしさと挫折とを味わっていただけるのではないでしょうか(笑)。

難易度は高めにしているという“アーケードモード”。

――娘さんは本作をプレイされてどのような感想をおっしゃっていますか?

クリストファーゲーム完成後にプレイしたときは、あまり進めることができなかったんですよね。私が遊んでいると、あいかわらず楽しそうに見ていますけれど。また近いうちに挑戦してくれるんじゃないかと思います。感想については、もちろん大満足のようですよ。

――最後に! 本作を楽しみにしている日本のゲームファンにメッセージをお願いします!

クリストファー日本での発売が決まってから、『バトルプリンセス マデリーン』本編のみならず、私たち親子にも関心を示してくれた方がいると聞いて、ビックリすると同時に、喜ばしいことだと思いました。私たちは純粋にゲームを愛し、ゲーム作りを楽しんでいますので、本作を遊んでくださる方々が、少しでも楽しいと思ったり、幸せだと思ったりしてくれる瞬間があればうれしく思います。

 クリストファー氏からの返答を見ると、『バトルプリンセス マデリーン』の開発は、まさに娘さんとの共同作業だったことがうかがえる。娘さんの無茶ぶり(?)に、いかに応えるかで頭を悩ませるのも、お父さんとしては楽しかったんだろうなあ……ということが想像されて微笑ましい。開発の日々は、お父さんとしては幸せな時間だったんだろうなあ。という意味では、奇跡のような開発経緯をもつ1作だ。