同人ゲーム制作サークル“CAVYHOUSE”が手掛けた3Dアニメーションノベルゲーム『マヨナカ・ガラン』。2018年12月21日のアップデートでPS VR、SteamVRにも対応した本作のプレイレビューをお届けする。

 2018年10月より、プレイステーション4、Nintendo Switch、Steam向けに配信されている3Dアニメーションノベルゲーム『マヨナカ・ガラン』。本日2018年12月21日よりPSVR、SteamVRへの対応も開始された本作に関するプレイレビューをお届けする。

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 2016年に体験版が配布され、インディーイベント“Bitsummit4th”などでのVRデモが話題となった同作だが、一風変わった“植物栽培”ゲーム『わすれなオルガン』(2015年配信)などを手がけた同人ゲーム制作サークル“CAVYHOUSE”の最新作となる。同人サークルが手掛けるノベルゲームと聞くと、一般的な商業タイトルと比べると低予算、その分ビジュアルや演出も簡素なもの……というイメージを持っている方は少なくないと思う。しかし『マヨナカ・ガラン』に関して言えば上記は該当しない。唯一無二のセンスが光るビジュアル。3Dで構築された作品世界とキャラクターを活かした魅惑的な演出。どちらも本作ならではの大きな強みだ。

 そして本作はこの世界観に少しでも引っ掛かりを覚えた方ならばきっと夢中になれる優れた物語でもある。このゲームの魅力をほんの一部でもあなたにお伝えできればうれしく思う。

不思議な世界観に惹かれる3Dアニメーションノベル

 かつて迫害された隠れキリシタンたちが作った“大臼村”。プレイヤーはここの案内役を務める村人として、村の外から招かれた牧師“橘はもるる”と行動を共にすることになる。ちなみにはもるるはCAVYHOUSEが手掛けるほかのタイトルにも登場するキャラクターだ。

 本作をプレイしてまず心を奪われるのは、やはり他に類を見ないグラフィック表現だろう。村人たちのモデルには背景画像の一部が透過しているような処理が施されている。最初は面食らうかもしれないが、一見華やかではあるものの少々不気味な大臼村の奇妙な空気感を生み出すのに一役買っているうえ、プレイを続けていると、この透過画像の“色合い”がある設定の伏線になっていると気づく。

 橘はもるるが大臼村に招かれたのは、村おこしを成功させ、閉鎖的な村の状況を変えるため。そのために村人に話を聞いたり、資料を読んだりして、大臼村の歴史や伝統を調べることが本作の“ひとまずの”目的となる。

 ゲームの基本的な流れは、村の全景マップから向かう場所を選択することで、その場所にいる村人との会話が始まり、これをくり返すことでストーリーが進展していくというもの。自由にあらゆる場所に行けるわけではなく、ストーリーの進行に合わせてつぎに向かうべき場所が表示される形式だ。

 村人たちとの会話ではそのシチュエーションに合わせて各キャラクターがフルボイス&フル3Dアニメーションで感情豊かに動き回る。各キャラクターの声は嶋村侑、加藤将之、阿部敦、菅沼千紗といった実力のある声優陣が担当しており、その演技は真に迫ったものだ。

 村人たちとの会話を重ねていくと、大臼村には“飢饉を救った聖女”の伝承と、“鶴女房”という民話が存在し、これらによって本来のキリスト教とはまったくかけ離れた独自の信仰体型が根ざしていることがわかってくる。

 そしてこの信仰が大臼村にもたらしたのは、“死者が生者と変わらぬ姿でともに生活し続けている”という世にも奇妙な状況だ。

 死者は、信仰のある者にしか見えないという。信仰心を持つ村人どうしで生活をするぶんには不都合はないし、牧師であるはもるるにも死者はしっかり見えている。しかし、ほかの外来者や信仰のない者の瞳に彼らは映らない。こんな状況で、村の外から多くの人を呼び込む村おこしなど実現できるのだろうか……?

 つぎつぎに明かされる真実と、刻一刻と変化していく大臼村の状況。ストーリーの分岐はなく、4~5時間でエンディングまで到達できるボリュームだが、中だるみなどは一切なく、エンディングまで夢中になれる作品だ。

 最初のうちは好意的な人ばかりでとても良い場所に思える大臼村だが、徐々に死者たちの思考は生者とは明らかに違っていることがわかり、薄気味悪さを覚えるようになる。また、死んでも変わらぬ生活を営めることがわかっている大臼村の生者もまた、我々とは少々異なる価値観を持っている。

 独特のグラフィック表現は、この薄気味悪くも神秘的な世界観を一層引き立てる。筆者がプレイしたのはVR対応前なのだが、VRを通じてこの世界により深く没入できたとき、どんな感覚を味わうことになるのか非常に楽しみだ。

 民俗学的なアプローチから村の歴史を紐解いていく楽しさもありつつ、人智を超えた存在の持つ力に翻弄される後半の展開は、ややホラーテイストでもある。想像の余地を残したラストも興味深く、上記のような特徴にビビッと来た方には間違いなくおすすめと言えよう。

 この手の物語がお好きな方には、寝る前に少しずつ読み進めるようなプレイスタイルをおすすめしたい。とくにNintendo Switch版ならば、気軽にベッドに寝転がりながらプレイできる。オカルトホラーな短編小説を読むような感覚で楽しんでみてほしい。前述の通り、アップデートで対応したVRで本作を楽しみたいという方は、プレイステーション4版かSteam版を選ぼう。こちらでは、奇妙な村に招かれたはもるるの不安や焦燥に一層強く感情移入できるはずだ。