『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の世界をサウンドで構築。ハッキングやボイスチェンジャーの制作秘話も【CEDEC+KYUSHU 2018】

2018年12月1日、福岡市・九州産業大学にて、CEDEC+KYUSHU 2018が開催された。その中で行われたセッション『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』に関するセッション、“世界観を演出するゲームオーディオ制作- NieR:Automata における事例 -”をリポート。

 2018年12月1日、福岡市・九州産業大学にて、CEDEC+KYUSHU 2018が行われた。本イベントは、日本最大のコンピューターエンターテインメント開発者向けのカンファレンスとしておなじみのCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)の九州版だ。

 その中で、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』に関するセッション、“世界観を演出するゲームオーディオ制作- NieR:Automata における事例 -”が行われた。

 このセッションは、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音響空間表現についての解説。“CEDEC 2018”で行われたセッションをやや噛み砕き、追加の要素を加えた内容となっている。登壇したのは、プラチナゲームズのオーディオプログラマー・木幡周治氏と、サウンドデザイナーの進藤美咲氏だ。

進藤美咲氏、木幡周治氏

 まず一般的にサウンド・効果音というものは、あらかじめ用意されているライブラリのものを使用したり、録音した音に各種調整を加えて、ゲームに使える素材に仕上げる必要がある。そして、その音をゲーム側で制御して、たとえば“どこから音が鳴っているのか”などを設定するのが一連の作業。サウンドデザイナーは音を作るところまで、オーディオプログラマーは完成した音をゲームに組み込むのが仕事だが、プラチナゲームズでは、サウンドミドルウェアのWwiseを使用していることもあり、サウンドデザイナーは、ゲームに音を組み込むまでも担当し、またオーディオプログラマーはWwiseで使用できるプラグインなどの設計も行う。この作業はどちらも密になって取り組む作業なのだとか。

 さて、一連の説明が終わると、木幡氏、進藤氏から会場に向けてクイズが出題された。クイズでは、Sさんの歩く音がKさんに向けて、どのように伝わるのか? というもの。

 正解は、全部。音は壁を超えて伝わるし、壁を曲がって伝わってもくる。壁にも反射するし、当然床にも反響するのだ。ただし、それらをすべてゲーム中で再現しようとするのは、不可能ではないがかなり難しい。そこで重要となるのが、音響空間表現なのだ。

 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』は、広大なフィールドを自由に走り回れるゲームでありつつも、ふとフィールドで足が止まり、廃墟や自然空間で、ついつい足を止めてしまうようなコンセプトで開発された。サウンドも当然、そのコンセプト通りに没入感を高める必要があった。ただし、フィールドがあまりにも広大なので、すべてを手作業でやるのはひと苦労。それを軽減するべく、音響設定の自動化を目指したのだ。ちなみに、従来のやりかたでは、音響効果も“ここからは音が響くエリア”というように、ひとつひとつエリアを指定していたそうだ。

 音響効果の自動化は、プラチナゲームズ製のプラグインを使用。鉄の床をコツコツとヒールで歩く2Bの足音、刀が鉄の床にぶつかり響く衝撃音……それらの音響に、ほぼすべて自動で音響効果がかかるようになっている。

 音源の方角は、プレイヤーキャラクターを中心にどこに何があるのかを見て、それで音が鳴る。この音源方角プラグインの優れているところは、ステレオ、サラウンドならばスピーカーだろうとヘッドフォンだろうと、モノラル以外ならば優れた音響効果を存分に楽しめるという点にあるという。

 そして音の反響も、専用のプラグインが使用されている。“レイキャスト”と呼ばれるこのシステムでは、ゲームの状況に応じて自動で音の反響を変化させるというもの。キャラクターを中心に360度、1秒間に480個(約0.015秒に8個)の線を飛ばし、そのデータから反響や環境音を自動算出しているのだ。なお、鉄、木というような素材の設定は背景スタッフたちが行っているとのこと。ちなみに、自動生成は機械が作る音なので、あまりにも綺麗な反響音ができてしまうため、あえて雑味を加えたりして調整しているそうだ。

 なお、これらのプラグインは立体ヘッドフォンなどを使用せず、スピーカーでも立体的な音が楽しめるように、そしてそれらをゲームの負荷にならないように、できるだけ軽いシステムで実現するために生まれたそうだ。1秒間に480個と聞くと、かなり重くなりそうなイメージがあるが、じつはそれほど多くないそうで、ほかのセクションに怒られない程度に、ゲームの負荷にならないようにできたそうだ。

 続いては、エフェクト効果で世界観を盛り上げるという、上記のエフェクトたちを活用した手法について。まず、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』には“ハッキング”という、コマンド入力で通常戦闘画面から、シューティングゲームに移行して攻撃するというシステムがある。その際に、BGMがピコピコとした8bit曲に流れるように移行するのだ。これは木幡氏が、以前から考えていたシステムなのだとか。ふたつの曲に、うまくエフェクトをかけることで流れるような曲のつなぎを実現している。

 また、クリアー後のオマケ要素として、キャラクターボイスが変わる“ボイスチェンジャー”という機能がある。これも先述のプラグインを利用したもので、アンドロイドらしいいろいろな声を出せるようになった。最初は雑談程度の話だったが、開発チームで話が大きく盛り上がってしまい、引くに引けず実現した機能なのだとか。

 さまざま仕掛けにより、サウンドからも『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の世界観が構築されていることが分かった本セッション。BGMはもちろん、効果音や反響音などに注目して再度プレイしてみると、また違った味わいが楽しめるだろう。