2018年12月2日、新潟県・朱鷺メッセにて『ポケモンカード(以下、ポケカ)』の公式大会“ポケモンカードゲーム チャンピオンズリーグ2019 新潟”が開催された。チャンピオンズリーグとは、世界一のプレイヤーを決める大会“ポケモンワールドチャンピオンシップス”への出場権をかけた大会で、年に4回行われる。今回の新潟大会は、2018年9月16日に行われた東京大会に続いて今年度2回目の大会だ。
本大会では、ジュニア、シニア、マスターと年齢ごとにカテゴライズされた、スタンダードレギュレーション(※)と、カテゴライズなしのオープンリーグで開かれた、エクストラレギュレーション(※)のふたつの大会が同時に進行。選手はより自信のあるルールを選んでの参加が可能だった。
※スタンダードレギュレーション……『ポケモンカード サン&ムーン』シリーズのカードのみが使えるルール
※エクストラレギュレーション……上記に加えて、『ポケモンカードゲームXY』、『XY BREAK』シリーズ、『ポケモンカードゲームBW』シリーズが使用可能なルール。
以下、本記事では大会の中から、スタンダードレギュレーションのマスターリーグ決勝戦のリポートと、優勝者インタビューをメインにお届けする。
決勝戦は“ルガルガンGX&ゾロアークGX”VS“ウルトラネクロズマGX”! 勝つのはどっち!?
マスターリーグの予選には東京大会よりも多い約1400名の選手が参加。予選はスイスドロー形式(※)で最大10試合行われ、上位16名が決勝トーナメントに進出した。この条件で決勝トーナメントに進出するには、10試合中8勝以上の成績が必要となる。
※スイスドロー形式……すべての参加者が一定数の試合を行い、最終的に得点の高い者が勝者となる形式。勝ち抜き制のトーナメントのように脱落者がすぐに出ることもなく、総当たりほど時間がかからないところが利点。また、得点の近い者どうしでマッチングするため、実力の近い者どうしでの対戦になりやすい。
勝てば勝つほど対戦相手も強者ばかりになっていく中、最後まで勝ち残った猛者どうしで行われる決勝トーナメント。ここではシングルエリミネーション方式(1本先取の勝ち抜き戦)で勝負が行われる。1度負ければ即敗退の緊張感の中、最高のパフォーマンスを出し続けられた選手だけが頂点に立てるというわけだ。
そんな頂点の座にリーチをかけたのが、シマダ ダイチ選手(ルガルガンGX&ゾロアークGXのデッキ)とヤマグチ ヨシユキ選手(ウルトラネクロズマGXのデッキ)だ。
この試合で特筆すべき点は、ヤマグチ選手のギラティナを“わざと倒さなかった”シマダ選手の戦局眼だろう。序盤から中盤にかけて、ヤマグチ選手はギラティナをメインに攻撃をしかけたが、シマダ選手は決してギラティナを倒さないように徹底していた。
というのも、ギラティナは倒されても特性の“やぶれたとびら”によってベンチにで復活できる。しかも、その際に相手のベンチポケモン2匹に、それぞれダメカン(※)を1個のせられる。この1個がとても重要なのだ。
※ダメカン……ダメージカウンターの略。ダメージを受けたポケモンにのせるもの。ダメカン1個で10ダメージとして計算する。
ヤマグチ選手のデッキの主軸であるウルトラネクロズマGXの技“めつぼうのひかりGX”は、相手のポケモン全員にダメカンを6個ずつのせるため、ギラティナの特性と組み合わせると、HPが70のポケモンを2匹同時に倒せてしまう。
そして、シマダ選手のベンチにはHPが70のニューラとマーシャドーがいた。そのため、シマダ選手はたとえギラティナを倒せる状況でも決して倒さなかったのだ。目の前の状況だけでなく、先の先の展開まで見据えた判断力こそ、決勝戦の舞台に立つプレイヤーに必要なものなのかもしれない。
さて、勝利のための合理的な判断ではあったものの、難しい判断には相応の思考時間を要した。ルールで定められた25分の制限時間を途中で使い切ってしまい、試合はエクストラターン(※)に突入。なんと、それでも決着はつかず、サイドの残り枚数はお互い2枚どうし。この場合、先にサイドを1枚でも取った方が勝ちになるというサドンデス形式で試合を続行することとなる。
※エクストラターン……制限時間終了時、先攻のプレイヤーの番だった場合は、つぎの後攻のプレイヤーの番まで、後攻のプレイヤーの番だった場合は、その番が終了するまで試合を続行できる。エクストラターンで決着がつかなかった場合は、予選では両者負け扱いに、本戦ではお互いのサイドの残り枚数によって勝敗の付け方が異なる。
サドンデスに突入後は、すぐに決着がついた。先攻のシマダ選手がグズマを使用してヤマグチ選手のポケモンを倒し、サイドを1枚獲得。これにより、シマダ ダイチ選手の優勝となった。
「優勝はうれしいですが、悔しさもあります」
見事優勝したシマダ ダイチ選手がインタビューに答えてくれた。その様子をお届けする。
――優勝おめでとうございます! いまの率直な感想を教えてください。
シマダ選手 優勝できたことはうれしいのですが、じつは決勝戦はこちらが有利なマッチングだったんです。その相性を覆されるくらいヤマグチ選手がお上手で、かなり追い詰められてしまいました。なので、とても悔しい結果でもあります。
――勝利した瞬間の表情が、まるで負けてしまったかのような悔しさに溢れていたのが印象的でした。本来は有利なマッチングとのことですが、普段ウルトラネクロズマGXのデッキと対戦する際に気を付けていることはありますか?
シマダ選手 まずひとつは、終盤にHPが60以下のポケモンを並べないということです。それから、だいたいのデッキにはビーストリング(※)が入っているので、カラマネロ(※)から倒してもエネルギーをつけられてしまいます。なので、相手がビーストリングを使いたいだろう場面でジャッジマン(※)を使い、こちらはGXポケモンではないポケモンで攻撃する、ということを意識していました。
※ビーストリング……相手のサイドの残り枚数が4枚または3枚でなければ使えないという制限があるかわりに、“自分の山札にある基本エネルギーを2枚まで、自分の“ウルトラビースト”1匹につける“という強力な効果を持っている。
※カラマネロ……特性のサイコリチャージによって、自分の番に1回、自分のトラッシュにある超エネルギーを1枚、ベンチポケモンにつけられる。技を使うために必要なエネルギーが多いウルトラネクロズマGXと相性がよい。
※ジャッジマン……“おたがいのプレイヤーは、それぞれ手札をすべて山札にもどして切る。その後、それぞれ山札を4枚引く”という効果を持つ。おもに相手の行動を妨害する目的で使われることが多い。
――やはり“めつぼうのひかりGX”を警戒して、HPの管理をされていたのですね。ギラティナをわざと倒さないプレイイングはとても印象的でした。
シマダ選手 倒してしまうとエネルギーがトラッシュに行ってしまい、カラマネロの特性で再利用されてしまうので、それを防ぐためでもありました。
――ちなみに、今回ルガルガンGX&ゾロアークGXのデッキを選んだのはどうしてですか?
シマダ選手 今回の大会ではジラーチ&サンダーのデッキが大流行すると読んでいました。そして、強い人たちはジラーチ&サンダーに相性がいいデッキを使うだろう、とも。なので、“ジラーチ&サンダーに強いデッキに、さらに強いデッキ”であるルガルガンGX&ゾロアークGXを選びました。
――先の先まで読んでのデッキ選択が大当たりだったわけですね、さすがです。ところで、決勝戦の前後の観戦スペースにて“桃屋”という単語をしばしば耳にしたのですが、こちらとはどういう関係なのでしょうか?
シマダ選手 僕は四国に住んでいるのですが、すごく田舎なんです(笑)。子どものときは対戦相手を見つけるのもひと苦労でした。そんなときに、力を貸してくれたのが“おもちゃの桃屋”というショップです。ショップの方にお願いしたところ、店舗大会を開いてくれるようになりました。おかげで、対戦相手には困らなくなり、それ以来友人とともにずっと通っています。もし店舗大会を開いてくれていなかったら、これまでポケカを続けて来られなかったかもしれません。いまこの場にいられるのも、絶対に桃屋のおかげです!
――地元のショップの粋な計らいがきっかけでチャンピオンズリーグ優勝まで上り詰めるなんて、めちゃくちゃいい話ですね……。今後は、日韓交流戦やポケモンWCSなど、さらなる大舞台に挑戦することになります。意気込みをお願いします!
シマダ選手 また公式放送などで配信される大会での対戦を行う機会もあると思います。今日はプレッシャーから来る緊張でミスもしてしまいましたので、そうした場に慣れるための経験を積ませてもらえるいい機会だと思っています。ベストな試合ができるよう、しっかりと準備をして臨みます。
ピカチュウ&イーブイとタッグチームを組める!? 大会以外にもお楽しみ要素がたくさん!
ポケカのチャンピオンズリーグといえば、充実したサイドイベントの数々。新潟では、東京大会にはなかった『ポケモンガオーレ』コーナーのほか、2018年12月7日発売の拡張パック“タッグボルト”に登場するカードにちなんだフォトコーナーも設置されていた。
そして、「これのために新潟まで行った!」というファンも多いであろう、イラストレーターさんのサイン会。今回は、“タッグボルト”に登場する新たなカード“タッグチームGX”のイラストを多数手掛けている、有田満弘先生のサイン会が行われた。なお、サイン会会場のまわりには、有田先生も含めたイラストレーターさんたちの作品が展示されていた。
サイドイベント目的で来られた方は東京に比べるとさすがに少なかった印象だが、なんと大会に出場した選手は東京大会よりも多かったのだ。記者も選手として出場したのだが、前日の夜くらいから新潟駅近辺に「『ポケカ』プレイヤーだな!?」とひと目でわかるような集団が散見されていた。
そして、“『ポケカ』のために新潟にきた”という人たちは、新潟の美味しいごはんを堪能し、しっかりと旅行を楽しんでいるという話もいくつか耳にした。記者自身、ゲームの大会で遠征したのは初めてだったのだが、『ポケカ』と旅行、ふたつの楽しみを同時に堪能できて満足感も高かった。
今年度のチャンピオンズリーグはあと2回、2019年2月17日に千葉で、そして2019年4月14日には京都で開催される。「行ってみたいけど家から遠いなぁ」なんて思っている方も、ぜひ旅行感覚で足を延ばしてみてほしい。つぎは、千葉大会の会場でお会いしましょう!