2018年9月16日、東京ビッグサイトにて『ポケモンカードゲーム(以下、ポケカ)』の大型公式大会“ポケモンカードゲーム チャンピオンズリーグ2019 東京~ルギアがやってくる!~”が行われた。
本大会にはジュニア、シニア、マスターと年齢ごとにカテゴライズされた選手が約1500人以上も参加したほか、有名イラストレーターのサイン会や会場限定商品の販売、さらにミニゲームやフリー対戦などのサイドイベントが催され、会場には幅広い層のポケカファンが集まった。
本稿では、マスターリーグ決勝戦のリポートと優勝者インタビューをメインにお届け。さらに、サイドイベントの様子や会場の雰囲気などを写真とともにお伝えする。
マスターリーグ決勝戦はギラティナ&カラマネロVSズガドーンGX&アーゴヨン
マスターリーグは約1280名が予選に参加。予選はスイスドロー形式(※)で最大9試合行われ、上位16名が決勝トーナメントに進出した。この条件で決勝トーナメントに進出するには9試合中8勝1敗以上の成績が必要となる。
※スイスドロー形式……すべての参加者が一定数の試合を行い、最終的に得点の高い者が勝者となる形式。勝ち抜き制のトーナメントのように脱落者がすぐに出ることもなく、総当たりほど時間がかからないところが利点。また、得点の近い者どうしでマッチングするため、実力の近い者どうしでの対戦になりやすい。
厳しい戦いを潜り抜けた猛者どうしで行われる決勝トーナメントではシングルエリミネーション方式(1本先取の勝ち抜き戦)で勝負。1度負ければ即敗退の緊張感の中、最高のパフォーマンスを出し続けられた選手だけが頂点に立てるのだ。
そして決勝戦の舞台にコマを進めたのは、ポケモンワールドチャンピオンシップス(ポケモンWCS)に過去何度も出場し、先日行われたポケモンWCS2018では11位に入賞したヒラノ マサタカ選手と、こちらも過去に複数回ポケモンWCSに出場されているミヤモト ミサキ選手だ。ミヤモト選手はポケモンジャパンチャンピオンシップス2017のチャンピオンでもある。
ヒラノ選手はギラティナをメインとした超タイプのデッキ、ミヤモト選手はズガドーンGXをアーゴヨンでサポートするウルトラビースト主体のデッキだ。
試合は、先攻を取ったヒラノ選手が開始早々に怒涛の展開を見せる。ミステリートレジャー(※)を2枚使い、マーイーカを2枚手札に加えてベンチに出した。
※ミステリートレジャー……自分の手札を1枚トラッシュし、自分の山札にある超またはドラゴンタイプのポケモンを1枚、相手に見せてから手札に加える。そして山札を切る。
手札をトラッシュしなければ使えないカードは、一見デメリットがあるようにも感じるが、使用するデッキによってはトラッシュすることがメリットになることもある。ヒラノ選手はミステリートレジャーを使用する際にギラティナをトラッシュしている。ギラティナは特性“やぶれたとびら”によって、トラッシュからベンチに出すことが可能で、その際に相手のベンチポケモン2匹に、それぞれダメカン(※)を1個のせるという効果を持っているため、積極的にトラッシュしたいポケモンだ。
※ダメカン……ダメージカウンターの略。ダメージを受けたポケモンにのせるもの。ダメカン1個で10ダメージとして計算する。
さらにバトル場のマーイーカに超エネルギーをつけ、リーリエ(※)を使用。ミステリートレジャーを連発したことによって残り手札が1枚になっていたため、山札を一気に7枚引いた。
※リーリエ……自分の手札が6枚になるように山札を引く。最初の自分の番に使ったなら、8枚になるように引く。
こうして場、手札にトラッシュまで盤石となったヒラノ選手は、その後も終始順調に試合を展開。トラッシュからギラティナをベンチに出し、3匹のマーイーカを続々とカラマネロ(※)に進化させ、特性“サイコリチャージ”によってギラティナを育てていく。
※カラマネロ……自分の番に1回使える特性“サイコリチャージ”によって自分のトラッシュにある超エネルギーを1枚、ベンチのポケモンにつけられる。
対するミヤモト選手は、ヒラノ選手のギラティナに対して、あえてズガドーンGXではなくアーゴヨンで戦うプランを選択。GXポケモンは倒されるとサイドを2枚取られてしまうデメリットがある。そのぶんGXではないポケモンよりもステータスが高いのだが、先攻で理想的な動きをしたヒラノ選手のギラティナと戦うには分が悪いと判断したようだ。
しかし、アーゴヨンはギラティナに一撃で倒されてしまうのに対して、ギラティナはアーゴヨンのワザを1回は耐えられる。この差が試合展開にもそのまま影響し、つねにヒラノ選手がサイドを多く取っている状況に。終盤、ミヤモト選手は満を持してズガドーンGXを場に出すも展開は覆せず、そのまま押し切ったヒラノ選手が勝利した。
ヒラノ選手が序盤の有利を維持し続けた結果となったが、勝負の決め手となったのは、中盤に発動した“のろいのおふだ(※)”だったと言えるだろう。
※のろいのおふだ……このカードをつけている超ポケモンが相手のワザのダメージを受けてきぜつしたとき、ダメカン4個を相手のポケモンに好きなようにのせる。
ヒラノ選手はこの“のろいのおふだ”をつけたギラティナがきぜつしたとき、ミヤモト選手のバトル場のポケモンではなく、ベンチにいたカプ・テテフGXにダメカンをのせた。カプ・テテフGXの最大HPは170なのでギラティナのワザ“シャドーインパクト(130ダメージ)”では倒せないが、“のろいのおふだ”でダメカンをのせることで倒せるようになる。
この調整を中盤に行っていたおかげで、最後にグズマ(※)でカプ・テテフGXをバトル場に引き出し、ギラティナの“シャドーインパクト”で倒すことができたのだ。
※グズマ……相手のベンチポケモンを1匹選び、バトルポケモンと入れ替える。その後、自分のバトルポケモンをベンチポケモンと入れ替える。
何度倒されてもトラッシュから特性によって蘇り、ベンチに並んだカラマネロによってエネルギーを供給され、すぐにバトル場に戻っていく。デッキのコンセプト通りの動きをこの大舞台で100%出し切った実力は見事と言うほかない。ヒラノ マサタカ選手、優勝おめでとうございます!
「負けてしまったチームのみんなを楽にしてあげたい」
見事優勝したヒラノ マサタカ選手がインタビューに答えてくれたので、その様子をお届けする。
――優勝おめでとうございます! いまの心境を教えてください。
ヒラノ マサタカ選手(以下、ヒラノ選手) もちろんうれしいのですが、ホッとしたという面もあります。
――何かプレッシャーがあったのでしょうか?
ヒラノ選手 いっしょに練習をしてきたチームのみんなが負けてしまったので、自分が優勝することでみんなの気持ちを楽にしてあげたいなと思っていました。
――仲間を想っての優勝、すばらしいですね……。ずばり決勝の勝因は何だったと思いますか?
ヒラノ選手 先攻の最初の番から理想的な動きができたことが大きかったと思います。
――そもそも予選を突破するだけでもかなりの狭き門だったと思います。予選突破の秘訣などはあるのでしょうか。
ヒラノ選手 予選では1回だけ負けてしまったのですが、負けたときにうまく気持ちを切り替えることが重要だと思います。2敗してしまうと決勝トーナメントには上がれないので、「残りはぜんぶ勝つ、絶対勝つ!」という強い気持ちを持って臨みました。
――ヒラノ選手は追い込まれると強くなるタイプなのですね。メンタルの強さも必要ということでしょうか。ちなみに、大会中にもっとも活躍したカードは何でしたか?
ヒラノ選手 “ひかるアルセウス(※)”です。
――その理由をお聞かせください。
ヒラノ選手 予選も含めて“かいてんひこう(※)”というワザを使うカプ・コケコを場に出されることが多々ありました。“ひかるアルセウス”がバトル場にいれば、自分のベンチを守りながら、相手のベンチにダメージを与えられるのでかなり頼もしい存在です。この“ひかるアルセウス”がいなければ勝てなかった対戦も多いと思います。
※ひかるアルセウス……特性“しんわのまもり”によって、このポケモンがバトル場にいる限り、自分のベンチポケモン全員は相手のワザのダメージを受けない。さらに、ワザ“アルティメットアロー”によって相手のポケモン全員に、それぞれ30ダメージを与えられる。
※かいてんひこう……カプ・コケコのワザ。相手のポケモン全員に、それぞれ20ダメージを与える。
――カプ・コケコを使う人が多いだろうと読んでいたわけですね。ところで、使うデッキを決められたのはいつ頃なのですか?
ヒラノ選手 完全に決めたのは昨日です。じつは、決勝戦で相手の方が使われていたズガドーンGXのデッキとどちらを使うか悩んでいました。チームのみんなが使っているのを見ていて、実際に使ったデッキの方がより安定感があると思ったのでこちらにしました。
――ズガドーンGXのデッキは予選でも上位に残られた方が多く使用されていたそうです。やはり強い人たちは同じことを考えるのですね……。決勝戦以外で印象的だった対戦はありましたか?
ヒラノ選手 予選の最終戦です。自分がサイドを1枚も取れないうちに、相手にサイドを3枚も取られてしまってピンチだったのですが、うまく逆転して勝てました。
――その逆転のカギは何だったのでしょうか?
ヒラノ選手 イワークです。相手がゾロアークGXメインのデッキだったので、うまくゾロアークGXをバトル場に誘ってイワークで倒すようにしていました。イワークには“ゼクロム争奪戦”でもお世話になりましたが、今回もお世話になりました(笑)。
――早くもポケモンWCS2019の出場権を獲得されました。意気込みをお願いします。
ヒラノ選手 先日行われたポケモンWCS2018にも出場していまして、そこでは11位でした。次は、それよりも上の順位を目指したいと思います。
――さらなるご活躍を期待しております! 改めまして、本日は優勝おめでとうございました!
じつは記者も大会に参加していました!
“第1回ゼクロムHR争奪戦”に参加させていただいてから、ガチでポケカにハマっている記者はちゃっかり本大会にエントリーしていた。
ポケカどころかカードゲームの公式大会に参加するのは初めてで不安もあったのだが、対戦していただいた選手の方々は皆さん雰囲気のいい方ばかりで、終始楽しく真剣勝負ができた。
昨今の急速なポケカブームもあってか、「まだ始めたばかりなんです」という方もたくさん出場されていた。初心者には敷居が高いのかとも感じていたが、そんなことはなく、むしろ会場は笑顔に溢れていたと思う。