コーエーテクモゲームス ガストブランドの最新作として、2019年1月31日に発売予定の『ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~』(対応プラットフォームはPS Vita、Nintendo Switch、PS4)。『アトリエ』シリーズ20周年記念作品でもある本作は、錬金術でアイテムを作り出す楽しさや、細やかに描かれる人々の日常など、『アトリエ』従来の魅力はそのままに、“街づくり”の要素をゲームの軸に置いた、新感覚のタイトル。歴代『アトリエ』シリーズキャラクターが一堂に会したりと、まさに20周年を祝うにふさわしい作品となっている。
また、『アトリエ』らしさが詰まった音楽の数々も、本作の見どころだ。2018年1月30日には、『ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~ オリジナルサウンドトラック』の発売も予定されている。
本記事では、『ネルケと伝説の錬金術士たち』にて作曲を手掛ける阿知波大輔氏と、アバンタイトルテーマ『Alchemia(アルケミア)』を歌う中恵光城さんにインタビュー。『Alchemia』の魅力を語ってもらったほか、シリーズファンが気になっているであろう、「過去作の楽曲も聴けるのか?」といった疑問にもしっかり答えてもらった。
過去作からの楽曲はすべてリメイク!
――『アトリエ』の音楽と言えば阿知波さんですが、『ネルケと伝説の錬金術士たち』にはどのように関わっていらっしゃいますか?
阿知波アバンタイトルテーマと、BGMの一部 を担当させていただきました。
――『アトリエ』シリーズは、タイトルによって楽曲のテイストを変えていますが、今回はどのようなテイストで作曲したのでしょうか。
阿知波『ネルケと伝説の錬金術士たち』は、シリーズのすべてが詰め込まれた作品になっているので、音楽のほうも詰め込みました。それと、歴代キャラクターが登場するので画面がにぎやかになり、ゲーム内容も濃いものになるので、いつもより濃いめの音楽を意識しています。
――あえて濃くしたんですね。
阿知波そうしないと、ゲーム全体と音楽のバランスが取れないかなと。『ネルケと伝説の錬金術士たち』に限らず、基本的に、ゲーム音楽は画面ありきで作っていくものだと思っています。楽曲とビジュアルのバランスを取り、お互いを引き立てることを毎回目指しています。
――ところで、先ほど“シリーズのすべてが詰め込まれているので、音楽も詰め込んだ”とおっしゃっていましたが、それはつまり、過去作の楽曲も詰め込まれているということでしょうか?
阿知波どうでしょうね(笑)。
――そこはまだ秘密ですか(笑)。
阿知波でも、ここで「ない!」って言っちゃうと、誤解を招いてしまいますね(笑)。なので言います。もちろん、あります!
――おお!
阿知波シリーズ20周年記念作品ですから、ユーザーの方々ももちろん、そういったところを期待されると思っていますので。ただ、過去作のBGMがそのまま入っているわけではありません。どのようにリバイバルされているのか、ぜひプレイしながら探してもらえるとうれしいです。このキャラクターが出るなら、この曲……と、選曲にも力を入れていますので、「わかっているな!」、「こうきたか!」といった感想もお聞かせいただければと思っています。
――今後の情報公開に期待しています。
阿知波それと、非常に気が早いかもしれませんが、発売後にプレイして、「なんであの楽曲がないんだ!」というご意見がありましたら、ぜひお寄せください。今後に活かしていけると思いますので。
――気が早いですね(笑)。それはつまり、DLCだったり、続編だったり……!?
阿知波そのあたりも含めて、ご意見をいただければ、つぎの展開が生まれてくるかもしれませんので、ぜひお願いします(笑)。
アバンタイトルテーマには歴代シリーズのキーワードが!?
――続いて、中恵さんが歌うアバンタイトルテーマについてお聞きします。まずは曲名ですが……。
中恵タイトルは『Alchemia(アルケミア)』です。
――直球ですね!
阿知波ド直球です。いままでのナンバリングの『アトリエ』シリーズでは、この言葉は直球すぎて逆に使いづらかったんですが、今回は集大成となる作品なので、「いま使わないと、また使いどころがなくなる!」と(笑)。こんなこともあろうかと、20年間温めてきた曲名です。
――ずっと阿知波さんの頭の中にあった曲名だったんですね。楽曲そのものも、ド直球という印象を受けます。
阿知波そうですね。『ネルケと伝説の錬金術士たち』はお祭り的な作品でもあるので、まずは軽快で楽しくなれるような曲にすることを第一におきました。それと、『アトリエ』シリーズでは歌も含めて、民族的なテイストであること、アコースティックな楽器を使うことに重点に置いています。ですので、シリーズ20周年の集大成である本作のテーマ曲として、そういった楽器を使ったド直球の音楽を、自分がイメージした編成で作ってみました。
――そんな『Alchemia』のボーカルを、『アトリエ』初参加となる中恵さんが担当していますが、初参加で20周年記念作品のテーマ曲を歌うことになって、どう思われましたか?
中恵霜月はるかさんを始め、いつもお世話になっている方々が 『アトリエ』シリーズで歌っているので、「自分もいつかその仲間に入れたらいいな」とはずっと思っていました。なので、シリーズの20年の集大成になるこの作品に呼んでいただけて、本当にうれしかったです。それと、デモを最初に聴かせてもらったときは、すごくワクワクして、「この曲、めっちゃ好き!」と思ったんですね。レコーディングでは、この曲を聴いてくださる皆さんが同じようにワクワクしたり、明るさや希望を感じたりしてくれたらな……と思いながら歌いました。
――ワクワク感が楽曲の魅力になっていると。
中恵あと、この曲にはシリーズの“歴史”が詰まっているんですよ。
――テーマ曲にも“歴史”が?
阿知波この曲は、作曲に加えて歌詞も私が担当しているのですが、お話をいただいたときから、歌詞の中に“過去作の要素”を入れていこうと考えていたんです。『アトリエ』シリーズは、“不思議”シリーズや“黄昏”シリーズのように、さらに細かいシリーズで分けられているので、その各シリーズの要素を歌詞の中に散りばめたいなと。
――各シリーズの要素を入れて、かつ歌詞として成立させるとなると、かなり難しそうですが……。
阿知波そうなんです。さかのぼって『グラムナート』や『ザールブルグ』までいくと、さすがに歌詞の中に入れ込むのが難しくなって、一度破綻しちゃったんです。フルコーラスの中で、ナンバリング19作品分を表現すれば、なんとかなるかな……と思いましたが、そうすると、ゲームのアバンタイトルムービー中(ワンコーラス)でキーワードをすべて聴かせることができなくなる。それはダメだろうと思って、ワンコーラスで工夫して、最終的になんとかできてしまいました(笑)。
――できたんですか!?
阿知波はい。アバンタイトルムービーで聴けるワンコーラスの歌詞の中に、19作品それぞれを想起させる言葉が全部入っていますし、それをほぼナンバリングの順番通りに入れることもできました。
――歌詞をじっくりと聴きたくなりますね。
阿知波一部、タイトルの発売順通りではない部分もあるのですが、そこも含めて、ぜひ「歌詞のこの部分は、この作品を指しているんじゃないか?」と探していただけたらと思います。わかった方はぜひ、Twitterとかに書き込んでいただければと。ちなみに、歌詞を考えながら「これはいける!」と思ったのは、『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』のキーワードを思いついたときです。
――ということは、どの言葉が『トトリのアトリエ』を指しているのかは、ちょっと考えないとわからない?
阿知波このワードが出るまでは「全部を歌詞に入れるのは無理だ」と思っていたので、閃いたときはとてもうれしかったです。また、メロディーについてですが、イントロの途中と、サビのメインのメロディーを支える部分に、『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』のオープニング曲『好きだった絵本』を“カウンター・メロディー”として挿入していたりもしています。
――それもまた、ファンが驚く仕掛けですね。
阿知波ただ、それはあくまで下支えのメロディーで、中恵さんに歌ってもらった主旋律自体は、新しく作ったものです。コーラスも中恵さんが歌っているので、こちらにも注目してみてください。