『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』は苦心惨憺の末いかにして完成したか? 発売記念のエムツースタッフへのロングインタビューをお届け 

2018年11月29日に発売された『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』を記念して、エムツーのクリエイター陣にインタビューを敢行!

 往年の名作を完全復刻+αで現代に蘇らせるプロジェクト“エムツー ショット トリガーズ”。約1年ぶりの第4弾として、2018年11月29日に発売となったのが2003年にケイブがアーケード用にリリースした『ケツイ~絆地獄たち~』のPS4版『ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~』だ。

 多くのシューティングゲームファンから“弾幕シューティングの最高峰”と評される人気タイトルを、エムツーはいかに再現し、そして解析・改造していったのか。その極意を、開発スタッフへのインタビューにてたっぷりと聞き出してきた。

 また、11月18日に開催された同社初のイベント“エムツーショットトリガーズ弩感謝祭”(以下、弩感謝祭)にて発表された『エスプレイド』、そして新作『アレスタ』の動向も聞いてきたので、そちらにも注目いただきたい。

インタビュー出席者

堀井直樹氏

(ほりいなおき)
文中は堀井
エムツー代表。本プロジェクトのプロデューサーだが、最近エムツーそのもののマスコット化が著しい。

久保田和樹氏

(くぼたかずき)
文中は久保田
本作のディレクター。作業の中心は移植再現度アップやM2ガジェットの策定だが、そのほか雑務に至るまでマルチに活躍。

福井将之氏

(ふくいまさゆき)
文中は福井
本作のプログラマー。オリジナルを解析し、改造にて新モードを生み出すという企画的な役割も受け持っている。

発表の一週間前に制作が決定する緊急事態

――ファミ通ドットコムとしてしっかり本作のお話を聞くのは初めてになるので、時系列を追ってお話を伺いたいと思います。まずは、移植が決まった経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

久保田第4弾をケイブさんの作品でやろうという話は元からあって、当時の担当の方からいくつかオススメいただいたタイトルのひとつが『ケツイ ~絆地獄たち~』(以下、『ケツイ』)だったんです。

堀井ケイブさんとはお互いに「こんなのどうでしょう?」とラインアップの候補を上げて、縦だの横だの言っているうちに、両方の思惑が合致して『ケツイ』になりました。

久保田それが決まったのが2017年4月29日に開催された“ケイブ祭り 2017”の一週間前だったんですよ(笑)。イベントで移植発表をしたのですが、ケイブさんからしたら「コイツらに『ケツイ』の移植をさせたらおもしろそうだぞ」と思っていただけたのかもしれません。ただ、プレッシャーは大きかったですね。

堀井発表した直後の反応がまた真っ二つで、「『ケツイ』きたー!」という喜び声と、すでに移植されているのに「なぜいま?」と不思議がる声もありました。ただ後者の声は、弩感謝祭までの流れで払拭できたと思っています。

2003年にアーケード版がリリースされた『ケツイ ~絆地獄たち』。通常ショットとボム、ロックショットを使い分けながら敵を倒していく縦スクロールシューティングゲーム。美しささえ感じるほど濃密な弾幕による高難度と、敵に近づいて倒すことなどでより多くのスコアが稼げるのが特徴。

――開発に着手したのはいつころでした?

久保田まだ『魔法大作戦』の発表もしていなかったころなので、2017年の春ころです。

堀井ですので、『ケツイ』が第3弾になると思っていた人もいたと思います。我々としては発売日未定としていたのですが、ケイブ祭り 2017の会場で、ケイブさんが祭りの会場で「(2017)年内! 年内!」ってコールをし始めて。あとから聞いたらお願いしますという意味だったそうなんですけど、ユーザーさんには発売日だと受け取られて、人知れず胃を痛くしていました。

久保田魔法大作戦』の開発が終わった2017年11月ころから、これまで福井がひとりでやっていた解析に、新たなプログラマーに加わってもらったんですよ。

福井太陽製作所の飯塚連也さんという解析のスペシャリストです。

堀井飯塚さんとはインターネットが一般的になる前のBBS(パソコン通信を使っての掲示板)時代からの付き合いで、業界筋だと名の知れた方です。X68030用の『ロードブラスター』を移植した方、と言えばどんな存在かはわかってもらえるかもしれません。

久保田ですので、まずは福井と飯塚さんがゲームの解析に先行して取り掛かりました。そのあいだ僕は、『弾銃フィーバロン』のXbox One版対応をしていて、合流できたのは2018年の4月くらいですね。

――今回は新しいアーキテクチャですよね。

福井怒首領蜂 大往生』に使われているのと同じ基板ですね。ハードウェアの解析はじつはこのプロジェクト以前から済んでいて……。

堀井話は『弾銃フィーバロン』まで遡るんです。最初にケイブさんと移植の話を持ちかけたのって、まだプレイステーション3やプレイステーション Vitaが現世代機のころで、2010年のケイブ祭りで「こんなのが動いていますよ」とチラ見せしたのを覚えている方もいるかもしれません。つまり、その時点でエムツー製の『弾銃フィーバロン』や『ケツイ』なんかが動いていたんですよ。ウチがまだパブリッシャーとして動き始める前のことで。

――エムツー恒例の勝手移植ですね(笑)。それが「ハードウェアの解析が済んでいた」という話につながるのでしょうが、となるとMAGESから『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』がリリースされることは知らなかったんですか。

堀井ですね。当時は「出るんだ! 先を越された!」って感じでした。ということで、現在『怒首領蜂 大往生』も、仮想基板上では動作していますが、それをどう披露するかは、また別の話ですけど。

――プログラム解析はどのように進めていったのでしょうか?

堀井先程話に出たように、今回はプログラマーを増やしました。2017年内は無理としても、2018年の春くらいにはリリースできないとと思って、実装と解析の担当者を分けようと。飯塚さんは解析の達人なのでそちらに回ってもらって、そこから福井が加わりました。

――んん? となると、春という目論見だったのが冬までずれ込んだというのは……。

福井ふたり体制になったことで、私が「これまで以上にスゴイものが作れるぞ!」と思ってしまったんですね。

――思ってしまいましたか(笑)。

福井ケツイ』はケイブさんの弾幕シューティングの中でもトップクラスに練り込まれた作品だと個人的に思っています。それだけにSUPER EASYモードを練り込んで作るには飯塚さんに全投入してもらうしかないと思ったんですね。

堀井「スゴイものができますよ!」ということは聞いていたんだけど、それがどのくらいかかるのか、野心の大きさまでを聞かなかった。ちょっと失敗したな~。

――ふだんは「いいぞ、もっとやれ!」姿勢な堀井さんが、まさかの抑え込もうとする側に(笑)。では、福井さんはそれ以外のモードを?

福井ですね。完全に新規のモードの企画を考えていきました。それが絆育成モードと、ARCADE CHALLENGEモードです。

――ゲームモードについては後ほどお伺いするとして、今回はサブタイトルがついていますね。

久保田当初はオリジナルと同じままだったんですけど、堀井から「そのままじゃなく、ウチらの独自なものを入れろ」という司令があったんです。

堀井パブリッシャーを初めて数年が経ちますが、ウチの会社はまだまだ放っておくと売るためのことを考えないんですよ。『バトルガレッガ』のときは『~Rev.2016』という独自サブタイトルをつけたからつぎからは考えてくれるかと思っていたけど、『弾銃フィーバロン』も『魔法大作戦』もオリジナルそのままだし。作るのに集中していると、そうなるのもわかるんですけどね。

久保田祭りの発表のときに『ケツイ(仮)』だったのって、堀井からの司令があってのことですね。“Deathtiny”というネーミングに関しては『ケツイ』のストーリーは最後に主人公たちも死んでしまう運命にあるので、死の“Death”と、運命の“Destiny”をかけあわせての“Deathtiny”にしたんです。言葉の掛け合わせで「ケイブっぽさ」が出てるんじゃないかなぁと思います。

堀井弾銃フィーバロン』には『~エクストラフィーバー』とかサブタイトルをつけたかったけど、差し込むタイミングがなかった!

久保田パッケージ版の発売を決めたところで、ロングスパンでスケジュールを切ったんです。それをしたのが当初の目標だった春でしたけど(苦笑)。

久保田そのときは販売形態もまだ決めていないころでした。広報担当の駒林貴行の強い推しもあって、ディスク版を作るという前提で夏をマスター目標に設定しました。それが4月で、そこから本格的に作業を進めていました。

堀井バトルガレッガ Rev.2016』は限定版にダウンロードコードを記載したカードを封入していましたけど、やっぱりディスクに残したかったという思いはあったんです。個人的には「もう、お皿って面倒なだけじゃない?」という気持ちが大きかったんですけど、いざディスクの入ったパッケージが手元に納品されるとテンションが上がりますよ。

久保田じつは初めてのディスク版ということで躓いたこともあったのですが、それもまたパブリッシャーとしての経験値になりましたし、(DL版よりも)マスターアップ後に期間があったのでちゃんと自分の会社で弩感謝祭のような盛り上がりを作れたのでよかったなと。

堀井直樹氏