邪悪な魔法使いに呪いをかけられて石にされてしまった勇敢な騎士が、闇の支配者に立ち向かう横スクロールアクションゲーム『Castle of Heart(キャッスル オブ ハート)』が、2018年11月29日にNintendo Switch向けにレイニーフロッグよりリリースされた。概要を聞いただけでファンタジーファンならワクワクさせずにはおかない同作だが(HPが一定の数値を下回ると、腕が崩壊するという設定も妙にしびれる)、開発を担当する7Levelsの共同創業者にして『Castle of Heart』のプロデューサーであるKrzysztof Król(クジシュトフ・クルル)氏に、同作開発の経緯などを、メールインタビューという形で実施させていただいた。なお、ゲーム概要は以下のリンク先を参照されたし。

『Castle of Heart』のプロデューサーに聞く。石となった騎士が愛と勇気の力を信じて闇の支配に立ち向かうダークファンタジーはいかにして生まれたか?_01
『Castle of Heart』のプロデューサーに聞く。石となった騎士が愛と勇気の力を信じて闇の支配に立ち向かうダークファンタジーはいかにして生まれたか?_07

クジシュトフ・クルル氏

7Levels 共同創業者・『Castle of Heart』プロデューサー
(文中はクジシュトフ)

――まずは、日本のゲームファンに7Levelsさんのことを簡単に教えてください。どのような社風のスタジオで、どのような方針なのですか?

クジシュトフ7Levelsは、2014年に設立したポーランドのクラクフが拠点のインディーズゲームのデベロッパーです。基本的にゲーム愛好家の集団ですが、中にはゲーム業界に精通している専門家もおります。初めから任天堂のコンソールファンを念頭に置いてゲームを作りたいと思っており、2016年まではポーランドや国際的なデベロッパーたち双方と共同し、非常に興味深いいくつかのプロジェクトに参加してきました。私たちのチームは、約10年間この業界に参加している経験豊富な者たちで成り立っています。 私たちはモバイルゲーム、コンソールゲーム、PCゲームにも取り組んできましたが、任天堂のゲームを作ることが、最初からの私たちの目標でした。

――本作を開発するに至った経緯をお教えください。

クジシュトフまず、主人公が呪われて石像と化し、愛の力によって動くことができるようになる騎士を創るというアイデアがありました。 その後、ポーランドの伝説と1990年代の古典的な横スクロールゲームに触発されて、その周縁の物語全体を構築しました。 しかし、ゲーマーが一目見ただけでは気付かないものの、それでもなおゲームプレイをももっと楽しんで貰えるような仕方で、まったく新しいメカニックと高品質のグラフィックを加味しました。

――愛と勇気があれば、どんな魔法にも打ち勝つことができることを証明するため」というところに強烈なメッセージ性を感じますが、本作のテーマを教えてください。

クジシュトフ私たちは、魔法使いやその暴虐な行為に代表される最大の悪でさえ、魔法による愛と勇気の結合によって打ち負かすことができることを証明したいと思っています。このふたつの要素が私たちのヒーローを導くのです。それらのおかげで、私たちは数多くの邪悪な魔法使いの信者たちを倒して城に戻り、愛する人を取り戻すことができるのです。
 ゲームのプロットが語るのは、ただひとつの例外を除いて、のんびりした生活を送る小さな村の住人たちについてです。毎年、邪悪な支配者 である魔法使いが彼らのもとにやって来ては、王国の利益となる税金を何度も何度も要求します。
 そんな状況の中、われらが勇敢な騎士が村の防衛に立ち上がります。しかし、それに怒った敵は騎士を石像に変え、彼の最愛の人を誘拐します。少女は涙を流し、そして、まさにその最後の瞬間、彼女の涙の数滴が騎士に届きます。騎士は石の形をしたまま、 石像として生命を吹き返します。そんな彼は復讐を果たし、魔法使いを倒し、最愛の人を救うことを決意します。

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――主人公の体が“石”で、時間とともにエネルギーが減り、一定のレベルに達すると右腕を失うという設定はユニークですが、どのようなきっかけでこのような設定を思いついたのですか?

クジシュトフおもなメカニックは、じつのところ、何かによって触発されたものではありません。それは私たちの独自のアイデアでした。 前に述べたように、粉々になる騎士というアイデアは、開発プロセスの最初の段階で生みだされました。 私たちは、このまったくオリジナルなメカニックが、私たちにごくなじみやすいキャラクターを生み出すばかりでなく、『Castle of Heart』に、くり返しプレイして喜んでもらえるような、さらにダイナミックなタイトルを付けることさえ可能にするだろうという結論に至りました。 こういったオリジナルなメカニックのアイデアは、制作プロセス中、かなり頻繁に行ったブレーンストーミングの結果によってもたらされたものです。

――ちなみにですが、失うのは右腕だけですか? 失われた腕が復活することはあるのですか?

クジシュトフ私たちはそんなに残酷ではありませんよ(^o^)。ゲームプレイ中に失う腕は、一本だけです。それは第2の補助的武器を振るうためにあてがわれた腕ですね。しかし、私たちはエネルギーを回復した(敵を殺し、パワーアップした)後に、失った手を取り戻せるようにしました。

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――アクションにおいて、とくに注力したポイントをお教えください。

クジシュトフ『Castle of Heart』は明らかにアクションゲームです。 私たちは古典的なアーケードの横スクロールのアクションゲームに触発されたダイナミックな作品を意識して制作しました。 それにも関わらず、あなたがそれに相応しい戦略を選択しないとすれば、それ以上のものを作ることはできないでしょう。 石の騎士は正しい武器の種類や巧みなパワーアップの使いかたを利用して進化し、ますます強くなることができます。
 つまり、もっとも重要な点は相手との戦いです(それぞれに対して経験値を獲得できるため、避けては無駄になります)、また追加の武器を使って特定の対戦相手に対して正しい戦略で挑むことです( 初期の武器はまったく弱いものです)。

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――4つの異なる環境について、「ダークファンタジーやポーランドに実在する神話スポットをモデルにした」とのことですが、具体的にどのような環境をモデルにしたのですか? また、環境を構築するにあたって注力したポイントは?

クジシュトフゲームの環境は、漠然とですが、わが国の中世の、とある地方の建築物と風景がもとになっています。また、敵の一部はスラブ神話がベースとなっています。たとえば、ボスたちのひとりは“Żmij”という、頭が3つあるスラブ神話に登場する竜です。
 プレイヤーには4つのまったく異なる場所を訪ねる機会があります。村、暗い森、山、そして最後のステージである邪悪な魔法使いの城。それらはすべて中世のポーランドに見いだされる場所に対応しています。しかし、私たちはそれらに少しばかり魔法と謎を付け加えました。

――物語自体のモチーフとなったものはありますか?

クジシュトフシナリオは私たちが独自に練りだしたものです。私たちが外部からヒントを得たのは、環境を構築したり、キャラクターをこしらえたりするときだけでした。それにも関わらず、そこにあるのは、魔法をかけられ石になってしまった騎士についてのポーランドの古い伝説です。しかし、エンディングはその伝説とはまったく異なります。加えて、『Castle of Heart』には、第2の、もうひとつの違ったエンディングがあります。そのエンディングの到達方法はプレイヤーがみずからで発見してください。

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――対応プラットフォームにNintendo Switchを選んだ理由をお教えください。

クジシュトフ私たちは任天堂が作り出してきたハードの大ファンです。しかし、ポーランドでは任天堂ハードはじつはあまり人気がありませんでした。ですが、私たちは、ひたすらNintendo Switchに注目することで、数あるこの特殊なゲーマーたちのグループ(私たちも含まれます)を喜ばせようとしました。そのおかげで、私たちはマルチプラットフォームタイトルより優位に立つことができました。いまは任天堂のファンのためだけにゲームを作ることが、私たちの戦略でもあります。 数ヵ月が経ち、『Castle of Heart』で得た経験を使って、私たちはNintendo Switch限定の次回作を制作しており、予定では来年には発売されることになっています。

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――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

クジシュトフまず、スタジオとして、私たちは日本のNintendo Switchファンにようやく作品を届けることができて、非常に幸せに思っています!『Castle of Heart』を楽しんでプレイしていただけることを心から願っています。また、私たちは皆様が私たちの作品を信頼してくれることを願っております。なぜなら、それは、今後もこのようなすぐれたゲームを皆様にお届けしたいと思っているからです。

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7Levelsの皆さん。