gumiよりついに配信が開始されたスマートフォン用アクションゲーム『ブレイドスマッシュ』。本作は開発をムゲンコンボ、エンジンズが担当している、カンタン操作で爽快なバトルが楽しめる対戦アクションゲーム。その配信に向けて、ファミ通.comでは開発陣とゲーム業界の著名人を交えた、連続対談企画を3回に分けてお届けする。

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 今回の対談では、本作のプロデューサーである安岐政範氏(以下、安岐)、開発を手掛けるムゲンコンボの手塚 武氏(以下、手塚)に加えて、絶大的な人気を誇る、NHN PlayArtのリアルタイム対戦スマートフォンゲーム『#コンパス 戦闘摂理解析システム』(以下、『#コンパス』)のプロデューサー林 智之氏(以下、)を迎えて、スマートフォン用アクションゲームに関するトークをお届けしよう。

『#コンパス』の林Pは、新たなアクションゲームをどう見るか? 『ブレイドスマッシュ』対談企画パート2_01
左から、手塚 武氏、安岐政範氏、林 智之氏

コンシューマーゲームとモバイルゲームの違いは?

――まずはお三方が、どのようにゲーム業界へ入られたのか教えてください。

 僕は17年ほどゲーム制作に携わっていまして、セガ、スクウェア・エニックスなどで、コンシューマーゲームを作ってました。なかでもアクションゲーム制作が得意です。いまのNHN PlayArtに入ってからスマホゲームを作るようになり、『#コンパス 』で2本目になります。

安岐 最初はゲームと関係のない会社で、システムエンジニアをしていました。ソーシャルゲームというものが出始めたころ、携帯電話向けのサービスに携わりたいと思い、gloopsという会社でエンジニアとしてモバイルゲームを3本ほど作りました。3本目のゲームがヒットしまして、そのおかげで分析や企画などにも関わるようになりました。そこからスマートフォンが普及したタイミングで、セガさんから僕にお声が掛かり、本格的なゲーム作りに関わり始めたんです。アーケードやコンシューマのスマホ移植版アプリなどに関わったのちに、現在のgumiに入りました。そしていま、『ブレイドスマッシュ』のプロデュースを担当しています。

手塚 1990年にカプコンに入社し、アーケードゲームの企画をしておりました。家庭用ゲーム機の性能が大幅にアップしたころからは、コンシューマーゲームの開発もするようになりました。でも僕は高価なゲーム機を持っていない人でも気軽に遊べるのがアーケードゲームのよさだと考えていましたので、同じような魅力があるモバイルゲームに関わるようになりました。カプコン時代はモバイルゲームの開発部長をしておりましたが、独立して会社を立ち上げました。

――コンシューマーゲームとモバイルゲームの開発環境、チームの空気などに違いはあるのでしょうか?

 僕の身の回りでいえば、NHN PlayArtは元セガのスタッフもいますし、ほとんど変わらないです。感覚としては、リリースするハードが変わっただけ、という感じです。お届けしたいプレイヤー層も同じです。

手塚 モバイルゲームとコンシューマーゲームの環境は結構違うように感じますね。アーケードゲームとは結構近いと思うんですが。100円を入れてちょっとやってみようとするのも、ダウンロードしてちょっと遊んでみるのも同じかなと。また、アーケードは海外で大部分を売らないといけないこともあり、企画段階から世界的に売れるゲームを目的としているので、グローバル志向というところもモバイルゲームと似てるんですよ。

安岐 僕は小学生くらいのころは家庭用ゲームよりも、アーケードでよくゲームをプレイしていました。手塚さんが言ったように、気になったゲームがあれば100円入れて遊んでいましたから、モバイルゲームと同じ感覚だと思います。コンシューマーゲームは、ジャンルにもよりますが、基本はどっしりと腰を据えて時間をかけて遊ぶものだと思います。やはり、ゲームに対するスタンスは変えないといけないかなと。

――これまでゲームを作ってきて、思い出に残るエピソードはありますか?

 新卒の面接で、私服のうえに金髪でも採用してもらえました(笑)。いまはダメでしょうね。昔はそういう業界で、体育会系といいますか、血と汗と涙でゲーム作りをしていたんですよ。もう、徹夜は当たり前。昔先輩が言っていたのですが「ゲームの神様は0時以降に降りてくる」って言うくらい、深夜作業は当然でした(笑)。

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手塚 あるあるですね(笑)。林さんは、もともとゲーム作りがしたかったのですか?

 そうですね。ファミコン世代ではありますが、親がセガハードを買ってきたのが始まりで、それがもう楽しくて楽しくて。おかげで、セガマニアになりました。そこから家にパソコンが置かれるようになり、雑誌を読みながら自分でゲームを作ったりして、大学に入っても作っていました。物心ついたらゲーム作りをしていたので、それがきっかけなんじゃないでしょうか。安岐さんはどうだったんですか?

安岐 最初はゲーム作りをしようとは考えていなくて、モバイルを使った顧客サービスの何かに関わりたいと思っていたんですよ。モバイルゲームを作ろうと思ったのは、ゲームのクオリティによって喜怒哀楽が変わる部分がきっかけで、人の感情を壊す仕事がしたいと考えました。そのひとつの方法が、ゲームなんだと考えたからです。

 黎明期にモバイルゲームを開発する会社からセガに行って、面を食らったこととかありませんでしたか?

安岐 当時モバイルゲームを作り始めた会社って、ベンチャー企業でとにかくイケイケなんですよ。よく言えば柔軟で、悪く言えばドンチャン騒ぎな感じで(苦笑)。一方で、セガは古き良き伝統を大切にする会社で、縦社会もしっかりあって、最初は面食らいましたね。また、セガもまだモバイルゲームにはあまり手を出していないころに入ったものですから、モバイルゲームに対する認識の違いが大きくありました。そこをしっかりと理由を説明し、納得してもらうのはたいへんでした。

手塚 昔からある会社だからこそ、それはあるでしょうね。でもゲーム業界って、本当に“ぬえ”みたいな存在で、ユーザーが求めているものに対してどんどん変化していくんですよ。アーケードが流行ったら、つぎはコンシューマーハードが出てきて、ユーザーがコアな人たちばかりになってしまったので、つぎはWiiやニンテンドーDS、スマートフォンなど、カジュアル層へ向けたゲームが出てくるわけで。なので歴史のあるゲーム会社って、実は時代に合わせてどんどん変わっていってるんですよね。

新たなIPを立ち上げる苦労

――『ブレイドスマッシュ』は完全新作ゲームですが、新しいIPを立ち上げる苦労はどこにあるのでしょうか?

 モバイルゲームは、コンシューマーでIPを立てるよりもハードルは低いです。なぜならば、コンシューマーゲームは開発し切ってから発売しますが、モバイルゲームは最小限の遊びが最初に用意されていて、そこからユーザーの皆さんといっしょに育てていくからです。とはいえ、IPを産む苦しみはもちろんあります。とくに新しいゲームは、スタッフ全員をいいゴールの方向に導かないと、いいゲームになりません。……あと、ちょっとでも悪い部分があると、全部ディレクターが悪いと言われるので、そこに耐えられるメンタルが必要ですね(苦笑)。

安岐 僕はソーシャルゲームの成り立ちから衰退を見てきました。携帯電話の中でできることで、よりおもしろくしようと、技術の枠もどんどん広がっていきましたが、スマートフォンゲームに移り変わって、技術的な部分ではある程度飽和状態になっています。コンシューマーゲームと同等のクオリティのものが求められるようになり、開発費も上がっています。モバイルゲームは参入しやすいのが特徴でしたが、いまはそれほど参入しやすくはないと思いますね。最近はリリースされるアプリゲームの本数も減っていますから。ただ、おかげでライバルが減ってきたのはメリットですが、ライバルがいないから売れるわけではないです。

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ーーアクションへのこだわりはありますか?

 僕は物体の慣性が好きで、それを大事にします。たとえば歩き出してから走り出すまでのあいだとか、走ってから止まるまでのあいだですとか。これは必ず取り入れるようにしていますね。ただし、必殺技のような架空のものは、慣性を無視して表現しています。

安岐 スマートフォン用のアクションゲームですと、タッチ操作の感覚を重視しています。タッチパネルって、基本はアクション操作がしにくいので、必ずスムーズにアクションができる操作を心掛けています。どうしたらより気持ちよく操作できるんだろうと、プレイヤーとしても開発者としても、いまでも考えていますよ。

手塚 日本ではRPGが花形ですが、アクションこそゲームの原点です。僕は、誰もが遊べるアクションゲームを作りたいと思っています。アーケードゲームでロケテストをしても、8割くらいの人はヘタなんですよ。でも、それでも遊びたい、うまくなりたいと思ってもらえる魅力が大事だと思います。とくに最近のアクションゲームは、難度が上がりすぎて、うまい人だけが楽しめるゲームになっていますし。僕はヘタな人でも楽しめるゲームにこだわっています。

『#コンパス』の開発秘話

――安岐さん、手塚さんにお聞きしたいのですが、『#コンパス』がリリースされたとき、どんな感想をお持ちでしたか?

安岐 スマートフォン用ゲームにも、やはり流行るジャンルってあるじゃないですか。プレイしてみると、ほかのゲームとまったく違う方向性で驚いて、ある意味ナナメ上をいくような斬新さを感じました(笑)。マーケティング的な部分でも、ほかのゲームでは見ないような、若いファン層が付いているのがスゴいですよ。いまバトルロイヤル系のゲームが流行っていますが、その原点のようにも感じています。

 とくに若いユーザーを狙って作ったわけではないのですが、若い感性にたまたま引っかかってくれたのかなと。

手塚 SNSが舞台だから、キャラクターがアバターじゃないですか。アバターだから、統一された世界観のキャラクターじゃなくてもいいのがすばらしいですよね。また、世界では流行っているMOBAを、どうやって日本で流行させるのか? という長年の疑問を、『#コンパス』が答えを出したと思っています。

『#コンパス』の林Pは、新たなアクションゲームをどう見るか? 『ブレイドスマッシュ』対談企画パート2_03

 やはり、もともとMOBAをどうしたらスマートフォン用にするのか、というのが企画のスタート位置だったりします。小さな兵士を画面にいっぱい出すと何がなんだか分からないので、エリアで表現しようですとか。拠点をひとつひとつ潰して勝利というルールにすると、アクションが得意な人しか勝てないゲームになってしまう。だから、拠点をいつでも奪い返せるようにしようと。もちろん、コアなPCゲームユーザーには物足りないゲームと思われるかもしれませんが、予想外の動きで逆転できる要素を入れて、MOBAの新しいスタイルを作ることができたと思ってます。

――『#コンパス』は非常にコラボも多いですよね。ユーザーからの反響はどうですか?

 基本的には自分の好きなものとコラボしていますね(笑)。僕の好みと、ユーザーのみなさんからの要望を取り入れて、コラボの判断をしています。『ストリートファイター』や『ギルティギア』など、『#コンパス』のユーザー年齢層的には高めのタイトルが多いですが、いまのところユーザーの皆さんには受け入れてもらえていますね。

――ちなみに運営をする中で、気を付けていることはありますか?

 僕は公式Twitterの運用をほぼ自分でやっています。そのおかげで、ユーザーのみなさんからの要望、クレームを直で聞くことができます。なので、Twitterの運用だけは、ほかのスタッフには絶対に渡さない作業です。ユーザーの皆さんからの意見を直に聞ける、たいへん貴重な場ができたなと。また、ユーザーの皆さんの趣味などを把握できるのもよかったポイントです。

『ブレイドスマッシュ』を遊んだ感想は?

――では、実際に『ブレイドスマッシュ』を触られて、林さんはどんな感想をお持ちでしょうか。

 今回4人対戦をやりましたが、熱くなりますね! 4人で拮抗した戦いをくり広げて、1対1の状態になったらガチ対戦が始まる感じが、対戦の楽しさを感じられました。また、自分が何かをしようとすると、すぐにキャラクターが反応してくれるので、スッと対戦に入れます。操作はかんたんですが、中身はガチガチのアクションです。僕は1対1より、多人数対戦のほうがおもしろく感じました。

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――これから『ブレイドスマッシュ』を運営していくおふたりへ、林さんからぜひアドバイスをお願いします。

 先ほども言いましたが、モバイルゲームはユーザーの皆さんと作り上げていく、未完成のゲームだと思います。ただし、ゲームの方向性をぶらしてはいけません。ユーザーの意見だけを反映しても、おもしろいゲームにはならないからです。かといって、自分を貫きすぎても懐の深いゲームは作れません。自分の絶対に守りたい部分、ユーザーの皆さんの求めている部分をバランスよく取り入れる。これを僕は公式Twitterでの活動を通して感じています。もちろんそれでもご意見をいただくことはありますが、コミニュケーションが大事ですよ。

安岐 とても参考になります。やはり、ユーザーの意見は知る必要がありますし、鵜呑みにしてはいけないと。そして、コミニュケーションの手段としてTwitterを活用するのは検討したいですね。林さんへ質問をしたいのですが、対戦のネットワーク周りで苦しかった部分はありますか?

 ネットワーク問題は常にあります。現状は改善を重ねていて、ゲームサーバーでの遅延はほとんど発生しておりません。ただし、各個人のスマホのネットワーク環境はどうしようもないので、電波の状況によっては、どうしてもラグが発生してしまいます。ゲーム側で先読みするなど、なるべくラグを感じさせないようにはしているのですが……。

手塚 あぁ、そこですよね。AIはどうしても“本物ではない”ので、ユーザーにどうそれを感じさせないか。リリース後もずっとチューニングを重ねなくてはいけませんよね。

 とくにトッププレイヤーの目は厳しいですから。

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――『ブレイドスマッシュ』は世界展開も考えているそうですが、世界でヒットする日本のモバイルゲームを作るには何が重要だと思いますか?

 まずは足元。世界を狙うには、日本でヒットさせなくてはいけません。そうしていけば、気が付けば海外ユーザーからも、遊びたいと言われます。ちなみに『#コンパス』は最近海外ユーザーからも遊びたいという人が多く、そこはぜひ対応したいです。ただ、無理はしません。日本向けに作るというわけではないですが、まずは身近なユーザーのみなさんに楽しんでいただけることを目標としていました。

安岐 考えかたとしては、林さんに近いですね。まず日本で楽しんでもらえないとスタートできないです。ひとつの国で成功すること自体が難しいですから。また、海外ですと通信環境の違いもあるので、より調整が必要になってくるのかなと。

手塚 僕は根本から変わりません。基本は常に世界展開を見据えてゲームを作っています。世界中の人が同じゲームを遊ぶところを散々見てきましたから“どんなゲームをおもしろいと思うか?”は世界中で変わらないのかなと思ってます。

――それでは最後に読者のみなさんへ、メッセージをお願いいたします。

 『#コンパス』は多くのゲームユーザーの皆さんに受け入れられましたが、まだまだ僕たちは運営が不慣れなところがあります。プレイヤーの皆さんが、完璧に満足できてないことは感じています。そこをしっかりと期待に応えられるようがんばっていきたいです。『#コンパス』はいろんな要素があるので、対戦だけでなく、キャラクターの二次創作や、コスプレ、MMD、音楽を聞いたり、カラオケで歌ったりと、ちょっとした時間を使って、『#コンパス』を楽しんでほしいです。そしてぜひ、『ブレイドスマッシュ』もいっしょに遊んでみてください。

安岐 『#コンパス』のように、ぜひヒットするゲームにしたいです。また、『ブレイドスマッシュ』はスマートフォンの中では、ほかにないゲームだと思っています。ユーザーの皆さんには、新しい楽しさがあるゲームだということを知ってほしいです。

手塚 いろいろなことができるのが、ゲームというエンターテインメントです。「こんなことするの!?」みたいなことを、全部やっていきたいですね。ぜひ今後は、コラボなどもしてみたいです。

『#コンパス』の林Pは、新たなアクションゲームをどう見るか? 『ブレイドスマッシュ』対談企画パート2_09

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