WargamingはPC用オンライン艦隊バトル『World of Warships』(以下、『WoWs』)のプレス向けメディアツアーを、9月13日から行った。場所はロシア・サンクトペテルブルクにある開発スタジオ。
その模様や新実装となる潜水艦のプレイフィールなどは前回の記事を読んでいただくとして、今回は、前半を開発者インタビュー、後半はソヴィエトアーケードゲーム博物館と防護巡洋艦アヴローラ見学の2段構成でお届けしたいと思う。
前回の記事はこちら。
フィリップ・モロッドコベッツ
『World of Warships』ライブプロデューサー。文中ではフィリップ。
ダニール・ヴォールコブ
『World of Warships』クリエイティブディレクター。文中ではダニール。
最初にお話を伺ったのは、スタジオツアーでメディアを引率してくれたフィリップ・モロッドコベッツ氏。氏はライブプロデューサーという役職で紹介されたが、コミュニティマネージャーとして多様な活動をしているとのこと。果たしてどんなお話が聞けるだろうか。
――コミュニティマネージャーという役職はなかなか聞き慣れないのですが、どういった仕事をされているのでしょうか?
フィリップコミュニティマネージャーにはふたつのタイプがあります。ひとつは地域のパブリッシングチームに所属していて、フォーラムやSNSを通じてプレイヤーとコミュニケーションを取り、フィードバックするものがあれば開発につないだり。また、イベントがあればコミュニティに伝えるのも大切ですね。
もうひとつが、私の所属するグローバルプレイヤーインターアクションというチーム。開発チームと密接ということもあり、重要な情報のやりとりが多いです。大きなアップデートがあれば詳細を整理して一次ソースを作り、それを各国のコミュニティに渡したりと、コミュニティの本社機能といった感じでしょうか。
――『WoWs』コミュニティならではの特徴はありますか?
フィリップ3つのポイントがあります。ひとつ目は戦争・戦略ゲームということで35歳以上の大人が多いですね。
ふたつ目は、海戦ゲームですから(ファンの中には)歴史に詳しい人が多く、そういった方々にとっては史実に忠実であることが重要で、ファンタジーな要素を入れるのは好まれていません。
3つ目はゲームバランスに敏感なコミュニティでしょうか。コアなプレイヤーはゲームの理解度が深ければスキル差が出るといったものを好みますが、スキル差が激しいと楽しめないというカジュアルなプレイヤーも多く存在しています。この両極端なプレイヤーに合うゲームにしなければならないのが難しいところです。
――詳細が発表された空母のリデザインと潜水艦の実装は、コミュニティからの要望があったからなのでしょうか?
フィリップ潜水艦は開発初期から話題に上がり、史実でも存在感は大きかったですよね。ですので、今回の発表は驚いてもらえるのではないかと思っています。
潜水艦はステルス要素があり、まさに海の暗殺者といったポジションです。この艦種が追加されることにより、ゲームにもっと深みが出るだろうと期待しています。
フィリップ空母に関しては1、2年ほど前からテコ入れの必要性を感じていました。これまでもバランス調整などをしてきましたが、うまく行かなかったので、今回の大規模なリデザインとなりました。
いままでの空母とは全然違う船になってしまい、それに対して賛否はありました。ですが、想定としては気に入ってくれる人が多く、空母を使う人も増えるはずだという想定です。
実際に、内部テストではいい感触が得られていますので、今後のコミュニティのテストにも期待できそうです。
――これまでの空母が気に入っていた人はどうすればいいのでしょうか?
フィリップ最終的に新しい空母のほうが人気が出るというのであれば、合わない人が出てくるのは仕方がありません。こちらも新しい魅力を伝えていきますが、それでも駄目だった場合は違う船への転向などのサポートはしていきたいと思います。
これまで空母が戦況をコントロールしており、その事態に全体の96~97パーセントの人が不満を持っていました。それに、空母を使用するプレイヤーの数が少なければ対空に長けた艦船が台無しになってしまいますしね。
――実際に空母を試遊したら楽しく、以前よりも攻撃を当てるのが簡単に思えました。そうなるとダメージの調整も必要だと思いますが。
フィリップ前の空母よりダメージは低く調整されていますが、今回の試遊台はコンセプトの正しさを実証するもので、細かい調整は今後さらに行う予定です。
New Aircraft Carriers | World of Warships
――今回試遊できたバージョンは明らかに対空砲のエフェクトの数が現行バージョンよりも多く、プレイしていて恐怖を覚えました。
フィリップええ、現行バージョンよりもトレーサーを増やしたりしています。ですが、まだパフォーマンステストを通過していないので、最終的にこのままになるかは不明ですし、現在も調整中です。
――ありがとうございました。
続いてのインタビューは、『WoWs』の総責任者とも言える開発部門長のダニール・ヴォールコブ氏。言ってしまえばすべてを管理している本丸のような方だ。
――開発部門長とのことですが、どういったことをなされているのでしょうか?
ダニールクリエイティブディレクターとして、ゲームをどの方向に持っていくかという高いレベルでのビジョンを示す役割を担っています。
――空母のリデザインでは艦載機の直接操作型になっていますが、ほかにもアイデアはあったのでしょうか?
ダニールはい(笑)。いくつかのアイデアがありました。RTS(リアルタイムストラテジー)とアクションを融合させるという最初のコンセプトはよかったのですが、うまくいきませんでした。
――空母を操作しているのか、艦載機を操作しているのか、プレイヤーの立ち位置がブレてしまっているようにも見えてしまいます。
ダニールそれは開発チーム内でも活発に議論していますね。テストプレイヤーからも“もっと船を操作したい”という意見も見られますし、今後はフィードバックなどを参考にしてバランスの調整をします。
――私は空母挫折組なのですが、リデザイン版は非常に楽しくプレイできました。ただ、これまで複数の飛行中隊を操作できたのに対し、リデザイン版では1飛行中隊のみ。複数の飛行中隊での挟撃ができなくなり、大きな転換を迎えると思います。なぜひとつの飛行中隊のみの操作という考えになったのでしょうか?
ダニール空母のシステムには根本的に難がありましたね。最初はRTSの要素とアクションの要素が共存して最高なものができると思っていました。ですが、蓋を開けてみれば空母を操作するプレイヤーのスキルだけで勝敗が左右される状態になっています。
――ということは、1飛行中隊に絞ることで、いい意味で想定していなかったスキル差の開きを抑えるということでしょうか?
ダニールはい。現行のバージョンでは一度に偵察・攻撃・迎撃といったことができ、広範囲のカバーも可能なため、戦力として過剰です。ですが、今回のテストバージョンでは物理的に1ヵ所にしか居られないので、制空圏にも大きな穴ができるように限定し、どちらかといえば航空機は駆逐艦のような動きになるようにしています。
――空母のリデザインについては先行してTwitchなどで発表をしていましたよね。コミュニティ側はどういった反応を示しましたか?
ダニール「最高じゃん!」、「何しやがる! ゲームを潰す気か!?」「俺ぁどうでもいいわ」の3タイプで同じ割合の反応が来ていますね(笑)。ちなみにこの反応はどんなアップデートでも毎度起こっていることです。
――潜水艦はバランスが非常に難しそうですが……。
ダニール潜水艦のバランス調整は来年少しずつ詰めていくつもりですし、私たちは潜水艦を究極のステルス暗殺者というツマラナイ形にはしたくないということは言っておきます。
潜水艦に狙われていると艦船が察知したときの怖さ、潜水艦側は攻撃が少しでも適切なタイミングを逃したら撃沈されるリスク……そういったスリルなどを感じられる両サイドが同じように恐怖を感じるというのがポイントになるでしょうね。
どれも簡単にはできないことなので、たいへんな作業になるでしょうね……。
――となると、現在は両チームが向かい合ってスタートする感じですが、それだと正面から潜水艦がくるので“どこから来るかワカラナイ”という潜水艦のメリットが死んでしまいますよね。
ダニールプロトタイプでは敵チームの後方からスタートするといったテストも行っています。ですが、これはひとつのアイデアであり、ほかのアイデアも実験しながら決める予定です。
――ともかく対潜装備を実装していかないと厳しいですよね
ダニール潜水艦を投入するのであれば、それに合わせて全体のバランスを変化させなければなりません。
たとえば、歴史的に潜水艦を見つけるのが得意だったイギリスの駆逐艦にソナーをつけたりだとか、対潜装備の爆雷を積めるようにすることで調整できればと思います。
――コンソール版『World of Warships:Legends』は、現在PS4版とXbox One版がアナウンスされていますが、Nintendo Switchはどうでしょうか?
ダニールSwitchにはとても強い興味がありますが、まずはPS4とXbox One版の開発に注力しなければなりません。その後にあるいは……かもしれませんね。
――コンソール版はマップが少し狭くなり、参加人数も少なくなります。そうなると、プレイヤーの責任が重くなりカジュアル層が敬遠する可能性はありませんか?
ダニール9対9に減ったとしても、その点は大丈夫だと考えています。コンソール版は画面上に情報が詰まっているPC版とは異なり、テレビでプレイすることを前提に理解しやすいようコンパクトにデザインをしています。
――多人数参加型のゲームモードなどは今後あり得るのでしょうか?
ダニール我々はこれまで多くのゲームモードのテストを行っており、専門の部署もあります。ですが、サイズがかなり異なる艦船が登場する『WoWs』にはなかなかマッチしません。ですので、参加人数を単純に増やすというのは難しいですね。
――日本ではアニメやゲームとのコラボが行われたことで注目度が高いのですが、今後もコラボ企画は続けていくのでしょうか?
ダニールはい。絶対にやります。絶対に。こういったコラボは日本チームがコンテンツを探してきて主導していますね。ちなみにアニメやゲームとのコラボ企画は、日本だけでなく全世界に向けてリリースしており、アメリカやヨーロッパはもちろんロシアでも新規ユーザーを獲得し、既存プレイヤーの満足度が高く成功を収めています。
――ありがとうございました。
ソ連時代のアーケードゲーム機を収蔵する貴重な博物館
各国から招待を受けたメディア各社は、Wargamingの新しいサンクトペテルブルクスタジオを見学した後、ソビエト連邦時代に作り出されたアーケードゲーム機が多数展示されている“ソビエトアーケードゲーム博物館”を訪れた。
ここからは写真とキャプションをメインでお届けしたい。
ロシアのクラシックアーケードゲーム
といった感じで、かな~りレトロなエレメカアーケードゲームをガッツリ遊ばせていただいた。何というか、駄菓子屋にあるエレメカを連想してしまい、ノスタルジックな気持ちが沸き起こってしまう博物館だった。
もしチャンスがあるならおっさんゲーマーほど遊びに行っていただきたい場所なので、ぜひ気軽に飛行機で出かけてほしい。
日露戦争を生き残った防護巡洋艦アヴローラを見学!
1900年5月に進水し、日露戦争を耐え抜き、いまもなお記念館として現存する防護巡洋艦アヴローラ。『WoWs』にはもちろん、『アズールレーン』とのコラボも果たしており、その名前を知っている指揮官は少なくないだろう。
今回のメディアツアーでは幸運にもアヴローラを見学することができたので、その模様を写真とキャプションメインでお届けしたい。
といった感じで、時間にして約20分ほどでしたがアヴローラの甲板を歩き回り写真を撮影してきた。改修工事などは何度か行われているらしいが、それでも立派な佇まいに惚れ惚れ。
こちらも『WoWs』のファンなら三笠公園からハシゴするつもりで訪れてはいかがだろうか?
『WoWs』はまだまだ発展途上のタイトルであり、今後も『World of Tanks』同様に長い長いアップデートが続いていく。近々では潜水艦のお試しとしてハロウィンイベントの潜水艦と航空母艦のリデザインが控えている。
とくに空母に関しては大きな影響が生じる再定義となるはずなので、その点はいちユーザーとしてどうなっていくかを見守っていきたいと思う。そして、これまで「ありえない」と言い続けていた潜水艦の登場は大きな衝撃を受けた。本実装はまだまだ先だが、今から今後の『WoWs』に期待で胸が膨らんでしまう。うーん、アクションステーションズ!