レイニーフロッグから、2018年9月27日にNintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『Bridge Constructor Portal』が配信を開始した。同作は、世界的に高い評価を獲得している『Bridge Constructor』と、Valveのおなじみ『Portal』が夢のコラボを果たしたタイトルとなる。同じアクションパズルというジャンルでありながらも、一方は橋を建設していくゲームで、もう一方は穴(ポータル)を作ってワープしていくゲームと、それぞれ独自のゲーム性を持つタイトルだが……。言ってみれば、『ぷよぷよ』と『テトリス』が融合したようなものなのかしら……と思いつつ、東京ゲームショウ2018に合わせて来日した、発売元Headup Games コミュニティーマネージャー ジュリアン・レイナツ氏に話を聞いた。

 ちなみに、Headup Gamesのオフィスはドイツ・ケルンにあるらしい。gamescomに親しんでいる記者からすると、“灯台もと暗し”みたいな気分だが(どんな感覚だが……という感じだが)、妙に親近感が湧いてしまう。来年は遊びにいかせてほしいものだなあ……と思ってみたり。

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――まずは、Headup Gamesがどんなスタジオが日本のゲームファンにちょっとだけ教えてください。

ジュリアン会社の設立は2009年となります。そもそもは、小さなインディーゲームデベロッパーのサポートを目的とした、パブリッシュ事業を業務としていました。最初は『The Binding of Isaac』や『Super Meat Boy』などのパブリッシングを担当していたのですが、その後2012年~2013年あたりから、少しずつ開発も手掛けるようになったんです。当社の代表作の1本となった、『Bridge Constructor』は、その流れの中で生まれたタイトルで、開発元であるClockStoneとのコラボタイトルになります。
 なぜ、自社に開発部隊を作ったかというと、小さいデベロッパーだと、自社タイトルをコンソールに移植するにあたってのリソースがないんですね。そのサポートという意味合いもあります。いまは、内部で移植のほかに開発サポートなども担当しています。

――インディーゲームタイトルのパブリッシングがおもな業務だとすると、どのようなタイトルをセレクトするのかが気になるところです。

ジュリアン端的に言うと、ユニークで特徴があって、いままでに見たことがなかったようなゲーム性を持ったタイトルを探しています。言ってみればジャンルは問いません。まあ、いままでの傾向からいって、シミュレーションはやってないかな。

――9月27日配信の『Bridge Constructor Portal』のお話を伺うまえに、そもそもの『Bridge Constructor』の魅力から聞かせてください。

ジュリアン『Bridge Constructor』はずばり橋を作るゲームです。左右の岸でどうやってうまく橋をつなげるか……が主眼になりますね。事前の説明はあまりなくて、基本プレイヤーがすべて自分で考えてつなげていくことになります。試行錯誤しながら橋を作っていくんです。材料もいろいろとあって、どの材料を使って作るかというのも悩みどころになります。いい材料を使えば当然のこと、頑丈な橋ができますが、予算オーバーになってしまうというわけです。予算以内にどうやって作るか……というのがキモのひとつですね。『Bridge Constructor』がスタートしたのは2011年で、最初はPC向けでした。それが徐々にマルチプラットフォーム展開されていった感じです。これまでで、シリーズ累計販売本数はワールドワイドで8000万本になります。ただし、この数字はアプリの無料版を含みます。

――『Bridge Constructor』がユーザーに評価の高いポイントは?

ジュリアンYouTuberに取り上げられたことで、人気が一気に広がりましたね。橋をうまく作るところではなくて、橋がどんどん壊われてしまうところが、見ている人には楽しいようです。とくに、ピューディパイの実況は大人気を博しました。

――ちなみに、開発元のClockStoneはどこのスタジオなのですか?

ジュリアンオーストリアですね。『Bridge Constructor』のもともとの企画はClockStoneのほうで温めていて、たしか2010年のgamescomで彼らとミーティングをして、「いっしょに作りませんか」ということになったんです。

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日本は初めてというジュリアン氏。いままで日本には来たかったが、なかなか来る機会がなかったようで、今回日本を満喫していただけている模様。「日本のスタジオのタイトルにも興味があります」とのことだ。

――では、そろそろ本題に入りますが、なぜ、『Portal』とコラボすることになったのですか?

ジュリアン私たちは物理演算のゲームを愛しているんです。ことに、『Portal』は大好きでした。『Bridge Constructor』以降、『Bridge Constructor Medieval』(2013年)や『Bridge Constructor Stunts』(2015年)といった派生タイトルをリリースしてきて、さらにゲームプレイを充実させるにはどうすればいいのか……ということで発想したのが『Portal』とのコラボでした。タレットやキューブといったギミックもあり、「いままで見たことのないものができるのでは?」と思ったんです。それで、Valveさんにお声かけさせていただきました。

――Valveはどんな反応でしたか?

ジュリアン最初は「どうかな」と思っていたのではないかと推察するのですが、イメージ動画を作ってValveに送ったらピンと来てくれたようで、「おもしろい!」という反応をいただきました。そのあとはトントン拍子で進んでいきましたね。

――開発元のClockStoneは今回のコラボに対してどのような反応だったのですか?

ジュリアン『Portal』はものすごく大きなフランチャイズということもあり、手放しで喜んでくれましたね。いざプロジェクトが動き始めるや、どんどんイマジネーションが膨らんでいったようです。

――実際はどのような感じで開発が進んでいったのですか?

ジュリアンHeadup GamesとClockStoneとで膝を突き合わせて、『Bridge Constructor』に『Portal』のどのようなフィーチャーを盛り込むべきか話し合いました。もともとの『Bridge Constructor』はA地点からB地点へと移動していくというものでしたが、それにワープ要素が加わることで、ゲームプレイの幅が格段に広がりますからね。

――そう考えると、A地点からB地点へと橋をつなぐ『Bridge Constructor』とワープができる『Portal』とでは、ゲーム性に若干齟齬が生じるかもしれませんね。

ジュリアン確かにその通りで、最初は『Portal』の機能を入れることで、「どうなるかな」と少し心配ではありました。最初は“ポータル(ワープ機能)”を自由に移動できるプロトタイプを作ってみたのですが、あまりおもしろくなかった。それで、いまのような形で移動できないことで、ゲームプレイとしては極めて楽しいものとなりました。『Bridge Constructor』と『Portal』の世界観が絶妙な配合でブレンドできたように思います。

――Valveから何か要望などはありましたか?

ジュリアン『Portal』にあるユーモアは大切にしてほしいと言われました。そのへんのテイストは『Portal』を踏襲してほしいとは言われました。何にせよ、Valveは非常に協力的で、画像やデータなど素材はすべて私たちに提供してくれました。そのため、『Portal』にあった世界観を共有するのは非常に容易でした。

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――開発で苦労した点なんてあります?

ジュリアンいっぱい(笑)。『Bridge Constructor Portal』には『Portal』でおなじみのコンピューター“GLaDOS”が登場するのですが、当初はオリジナルの声優であるエレン・マクレインに声をお願いしていたんですね。ところがちょうど収録時に俳優組合がストライキに入ってしまいまして……。それで泣く泣く別の方に“GLaDOS”をお願いすることになりました。

――あら……。ストライキとは欧米らしいですね……。

ジュリアンでも、ゲームが完成間際になって、エレンにお願いできることになったんです。私たちも「“GLaDOS”はエレンじゃないと」という気持ちでいましたので、全部の音声を録音し直して、ギリギリで作業してなんとか間に合わせました。エレンの声は、『Bridge Constructor Portal』をキュッと引き締めてくれました。

――そこまでしてオリジナルの声にこだわったのですね……。

ジュリアンオリジナルのボイスでいくことは、私たちにとってとても重要なことでした。ちなみに、これは裏話なのですが、欧米で最初に『Bridge Constructor Portal』をリリースしたときは、いくつかのセリフのみ、間違えてエレンではない声のバージョンを配信してしまったんですよ。慌てて差し替えましたが。内緒の話です(笑)。

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――まあ、急な作業だとそういうミスもありがちですよね……(しみじみ)。苦労して作った『Bridge Constructor Portal』ですが、『Bridge Constructor』と『Portal』がコラボすることによって、どのような新たなゲームプレイがもたらされることになりましたか?

ジュリアン先ほどもお話しましたが、『Bridge Constructor』には予算の制限があります。一方で、『Portal』にはその制約はありません。その分、使えるアイテムはふたつになります。そんな両者が融合することで、複雑な橋を作ることもでき、絶妙なバランスになったと思います。本作は、従来作と比較するとパズル性が高くなったように思うのですが、いままで『Bridge Constructor』にあまり興味をお持ちでなかった方にも、楽しんでいただけているようです。あと、『Bridge Constructor』を知らない方にも楽しんでいただけるように、本作ではチュートリアルは丁寧な作りになっていますよ。

――チュートリアルにはエレンさんの声でナビゲートしてくれるんですよね?

ジュリアンそうです。ちなみに、補足しておきますが、エレンの声は全編に入っていますよ。

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――『Bridge Constructor Portal』は、『Bridge Constructor』に新たな彩りを添えるスピンオフ的なタイトルなのですか?

ジュリアンスピンオフというのとは少し違うかもしれません。今後の展開も少し考えているところです。ちなみにですが、、海外では『Bridge Constructor』よりも『Bridge Constructor Portal』のほうが動きがいいです(海外では2017年12月に『Bridge Constructor』のSteam版が配信。プレイステーション4版とNintendo Switch版は2018年3月配信)。

――あら。今後は『Bridge Constructor』のラインと『Bridge Constructor Portal』のラインが並行して走るようなイメージですか?

ジュリアンどうでしょう。いずれにせよ、『Bridge Constructor』に関しては、いろいろな展開を考えています。

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

ジュリアンまずは、このインタビューをお読みいただいてありがとうございます。できるだけ日本のファンもサポートさせていただきたいと思っています。『Bridge Constructor Portal』をよろしくお願いします!

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東京ゲームショウ2018に出展時の模様から。ドイツパビリオンにて展開していた。