週刊ファミ通9月27日号(2018年9月13日発売)に掲載された“数々の証言とともにすべてを総括する『シュタインズ・ゲート』特集”。志倉千代丸氏を始め、開発陣へのインタビューとともに掲載されたのが、『シュタインズ・ゲート』シリーズで、牧瀬紅莉栖役を演じる声優、今井麻美さんのインタビューだ。ファミ通.comでは、今回誌面に掲載されたインタビューを余すところなくお届け。今井さんが『シュタインズ・ゲート』シリーズや、自身の演じる牧瀬紅莉栖に抱く想いを、語ってもらった。
今井麻美さん(いまいあさみ)
5月16日生まれ。『シュタインズ・ゲート』シリーズで牧瀬紅莉栖を演じているほか、歌手活動も行っており、テレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の後期エンディングテーマ『World-Line』などを担当している。愛称は、ミンゴス。(文中は今井)
――まずは、今井さんが紅莉栖と出会ったときのことを教えてください。
今井 最初の出会いは、ファミ通さんの記事でした。hukeさんのイラストを見て、「おもしろい絵柄のゲームだな~、こういうテイストは自分も好きだし、こんなゲームに出たいな~。あっ、この赤髪の子、すごくタイプ!」と思っていたんです。でも、紅莉栖はすでに記事で掲載されているわけですから、声優さんも決まっていると思っていました。そしたら数週間後、『シュタインズ・ゲート』の台本が私に届いて! まさかの出来事で、本当に驚きました。
――役が決まる前から、hukeさんの独特の画風が今井さんの心をつかんでいたんですね。
今井 いわゆる流行に乗った絵柄でもないし、独特で引き込まれる絵ですよね。とくに、目に引き込まれちゃいます。だから、キャラクターや物語よりも、まずは絵柄に惹かれた作品でした。そして台本を読んで、紅莉栖が天才科学者の女の子だということを知ったんです。
――なるほど。天才科学者の紅莉栖ですが、今井さんから見て、紅莉栖のいいところと、逆に悪いところはどんなところだと思いますか?
今井 紅莉栖はいい人であり、すごくやさしい子だというのが、いいところですね。逆に悪いところは、頭の回転がすごく速いので、みんなが多くを語らなくとも、いろいろ悟ってしまうところかな? そうすることで、彼女の幸せを追求できなかったりするので、ある意味不幸だと思うんです。それを彼女は自分の個性としているところが、やさしさなんだと思います。自分も少しそういう面があって、自分のことだとダメなところに映りますが、紅莉栖を見るといいところに感じるんです。それは少し、自分の人生の中で、救われている部分でもあります。
――ちょっとしたことから悟ってしまうところが、今井さんと紅莉栖の共通点であると。
今井 もちろん私は天才でもないですし、科学者でもありません。ですが、魂の部分がすごく似ていると思うんですよね。これは私だけじゃなくて、『シュタインズ・ゲート』の出演者全員が、演じているキャラクターの魂にすごく似ていると、私は感じているんですよ。
――見た目からはあまり想像できませんが、たとえばダルと関智一さんは似ていますか?
今井 もうそのまんまです! 関智一さんは表面的に付き合うと、とてもいい加減な人だと思います(笑)。でも、深層心理を知ると、すごくイイ人なんですよ。そこがもう、ダルといっしょなんです! 先輩に対して失礼かもしれませんが(笑)、“ギャップ萌え”がすごいんです。あと、レスキネンさんを演じている上田燿司さんもすごく似ていますよ。収録のとき、スケジュールの都合で、女性陣の中に上田さんだけが混じることが多かったんですね。女性の中でひとりだけ男性なのは、ふつうだったら居心地が悪いと思うのですが、上田さんは、みんなといっしょになって楽しみながら収録してくださったり。あと、たとえばテスト収録のときに、上田さんがオカリンやダルなど、男性の声をすべてやってくれることがあって、そのおかげで収録にすごく臨みやすくなったんです。本当にやさしい方で、周囲のことをしっかりと見ていて。もう、レスキネンさんそのものです。もちろん、物語後半のレスキネンさんではなく、本質的な魂の部分が、ですよ(笑)。
――後半のレスキネンと似ていたらヤバいですね(笑)。約9年間、紅莉栖を演じる中で、彼女へのイメージの変化はありましたか?
今井 最近は“アマデウス紅莉栖”を演じることが多かったので、そういう意味では変化はありますね。ただ、台本をいただいたときに、彼女の気持ちを掘り下げるという作業はほぼなくなりました。最初は膨大な量の台本を読み進めながら、「紅莉栖はいまどんな心境なんだろう?」ということを毎回考えながら演じていましたが、ゲーム、テレビアニメ、映画と経て、自分の中から“牧瀬紅莉栖”という人格が反射的に出てくるようになって。私自身が「こういう風に演じよう!」と決めたのに、それとは違う自然体の“牧瀬紅莉栖”が出てくることがあるんです。とくにアニメ版『シュタインズ・ゲート ゼロ』では、アマデウス紅莉栖と紅莉栖の切り換えが必要でしたが、“しっかりとした演じ分けをしよう”と心掛けるよりも、自然に演じたほうが、彼女たちになれました。不思議な感覚ではありましたが、演じていてすっごく楽しかったですね。もちろん一般的な作品の収録なら、こういう風に演じようと、自分の中でロジックを組み立てます。でも、『シュタインズ・ゲート』の場合は、自分が発言する前のセリフの人がどんなお芝居をするのかでも、自然と私の演技が変わるんです。「自分の中から、こんな言いかたが出せた!」という、新たな演技の幅を発見できたことが、非常に多かった思い出があります。
――その要因は、どこにあると思いますか?
今井 やっぱり、宮野真守君の演技だと思います。個人的な印象ですが、宮野君はオカリンを演じているときはとくに、自由に演技していると感じるんですね。感情の幅が、振り切っているイメージです。『シュタインズ・ゲート ゼロ』では、落ち込んでいるときはとことん落ち込んでいるし、バカなことをしているときはとことんバカになる。NGをもらわない限り、極限を目指している感じです。それが収録現場全体の空気を作っているからこそ、『シュタインズ・ゲート』のキャスト陣全員、生々しい演技ができているんだと思いますね。
今井麻美さんの2大驚愕事件
――『シュタインズ・ゲート』はユーザーを驚かせる仕掛けをいくつも用意していますが、今井さんがいちばん驚いた出来事は何ですか?
今井 『負荷領域のデジャヴ』ですね。というのも、テレビアニメの最終回を見ていたら、突然告知が始まって。「えーっ!? そういうの出演者はもう知っているものじゃないのー!?」と、ファンの方々といっしょに“劇場版”の存在を知ることになったので、本当に驚きました(笑)。
――紅莉栖決定時と言い、出演することを後で知らされるパターンが多いですね……!
今井 もしかしたら私は、もてあそばれているのかもしれません(笑)。あと、テレビアニメ『シュタインズ・ゲート』の再放送版の第23話に、新エピソードが追加されたことにも驚きましたね。放送が始まる数週間前にスケジュールだけ入っていたのですが、すでにゲーム版の『シュタインズ・ゲート ゼロ』の収録も終えていましたし、一段落したタイミングだったのに、なぜ『シュタインズ・ゲート』の収録があるのか謎だったんです。それを気にせずに過ごしていたら、まさかのβ世界線への分岐エピソードの収録で。「本当にやるんだ!?」と驚いたのを覚えています。
――再放送第23話のルート分岐は、ファンも非常に驚いた仕掛けだったと思います。
今井 見てほしいのに、ネタバレになっちゃうから誰にも言えませんでした。『シュタインズ・ゲート』が好きな知り合いの人には、「再放送も絶対見たほうがいいよ!」と言うのが精いっぱいで。そして、再放送は第23話で終了となり、本来あるはずの第24話の放送枠に、私と宮野君が特別番組として出るという(笑)。そういうサプライズが多いのも、キャスト陣の役者心に火が点く要因かもしれません。