進化したバーテンダーADV『N1RV Ann-A』インタビュー&プレイレビュー 日本滞在経験が生んだ“偽りの楽園”【TGS2018】

東京ゲームショウ2018に出展されていた『N1RV Ann-A』のクリエイターインタビュー&プレイレビューをお届けする。

 ベネズエラの開発チームSukebangamesが贈るバーテンダーADV第2弾『N1RV Ann-A(ニルヴァーナ)』。プレイヤーは女性バーテンダーのサムとなり、バーに訪れる客たちとの会話を通じて、サイバーパンクなディストピアでの夜を体験する。

 本作には選択肢が存在せず、要所で提供したドリンクによって展開が変化する。客の注文を完璧に叶えたり、あるいは注文以上のホスピタリティを見せることで、次第に心を開いて本音で会話してくれるようになる。目の前の相手が心を許してくれる瞬間の嬉しさは、特徴バーテンダーADVならではの醍醐味だろう。

 さて、「犬の小便みたいな匂いがする」と揶揄されるほどのアンダーグラウンドに店を構えていた前作『VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)』とは打って変わって、本作の舞台は高級リゾート地“セント・アリシア島”。荒廃した世界情勢にもかかわらず“本物の酒”やフルーツが手に入るのも特徴だ。

 そうした舞台設定はゲームシステムにも反映されており、本作では酒やフルーツなど数十種類の食材を自由に組み合わせてカクテルを提供できる。5種類の材料、しかも人工の代用品しか手に入らなかった前作と比較すると、体験として格段におもしろくなっている(もちろん前作のディストピア感もそれはそれで味があったが)。

 2018年9月20日(木)から9月23日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2018では、本作のデモ版を試遊できた。

3日目にはなんと2時間待ちの列が! 日本にも多くのファンを抱える期待の新作だ。


 筆者も実際にプレイしたが、卑猥でシニカルな会話センスは前作から健在なようで、デモに登場する客の職業はエロ漫画家。お酒が入った彼女が漏らす「作品の内容=作者の主義主張と捉えてネットで叩いてくるやつ何なの?」という悩みは、SNS時代のクリエイターなら避けて通れない問題だろう。

 そんな客たちをもてなす主人公のサマンサ(サム)は、「死にたい」という言葉をバーでの“禁止ワード”に設定するような明るい性格。一児の母で、客へのスタンスにも優しく包み込むような母性を感じた。それに、カクテルをシェイクする際にアニメーションで“揺れる”。これが高級リゾートか……。

 デモはごく短い内容だったが、とくにシステムや演出の面での進化が著しい。マティーニやカシスオレンジなど実在のカクテルを提供できるようになったことで、お酒好きが楽しめるバー経営シミュレーターとしての価値が高まっているのもポイント。2020年の発売が楽しみだ。

 さて、そんな『N1RV Ann-A』についてSukebangamesの Fernando氏にインタビューを実施したところ、興味深いお話を伺えた。なんと、本作の舞台設定を考えるきっかけになったのは、昨年のTGSで日本に滞在した経験だというのだ。

生粋の日本オタクであるFernando氏。作中にも日本のアニメやゲームのパロディがふんだんに盛り込まれている。

日本滞在経験が生んだ“偽りの楽園”

−−本日はありがとうございます。まさか日本語で遊べるとは思わなかったので驚きました。

Fernando 『VA-11 Hall-A』のころとは違って、『N1RV Ann-A』は確実に反響があるとわかっていたし、TGSに出展するなら日本のファンの皆さんに最高の体験をしてもらいたかったからね。

−−私も実際にプレイしましたが、カクテルを作る際にアニメーションが入ったりと、演出がリッチになっているのが一目でわかりました。

Fernando 『VA-11 Hall-A』はPC-98をイメージしたゲームだったけど、『N1RV Ann-A』はプレイステーションやセガサターン時代の作品を参考にしているんだ。続編を作るなら、前作から進化してるんだってことをちゃんと伝えたかったから、レトロ感を失わない範囲で世代交代させてみた。ちなみにアニメーションやカットインは『サクラ大戦』や『ときめきメモリアル』をリスペクトしているよ(笑)

−−舞台となるバーがリゾート地の高級店になりましたが、描きたいテーマも前作とは異なるのでしょうか?

Fernando バーN1RV Ann-Aがあるリゾート島は一見パラダイスに見えるけど、財閥や組織に管理されているディストピアであることはグリッヂシティと変わらない。PVにもキーワードとして登場させたけど「偽りの楽園」なんだよね。

−−『VA-11 Hall-A』は情勢不安を抱えるベネズエラという国で生まれたゲームで、Sukebangamesのおふたり(現在は3人)だからこそ描けるリアルなディストピアは同作でしか味わえない体験でした。「偽りの楽園」というアイデアにも何かモチーフがあるのでしょうか……?

Fernando じつは『N1RV Ann-A』は昨年の来日経験がヒントになったんだ。初めて訪れた憧れの日本は、キレイで、治安もよくて、僕にとってはまさしくパラダイスだった。でも、ニュースに耳を傾けると、楽園に見える日本ですらいろんな問題や腐敗を抱えているんだってわかって。

−−日本にお越しいただいたことが、『N1RV Ann-A』誕生のきっかけになったんですね。

Fernando もちろんゲームに落とし込むうえでの利点も考えたよ。たとえばVA-11 Hall-Aの客は基本的に貧乏で、裏世界の人ばかりになってしまったんだけど、N1RV Ann-Aにはありとあらゆる人が訪れるからいろんなタイプのキャラを出せるんだ。とくに金持ちだね。サイバーパンクな世界の金持ちって、悪役として登場することは多いけど、日常が描かれることは少ないから、おもしろいことができるんじゃないかな。

−−人工物じゃない、実在のお酒や果物からカクテルを作れるというのもリゾート地ならではですよね。材料の選択肢が何倍にも増えていて、“バーテンダーアクション”としても格段におもしろくなっていました。

Fernando ありがとう。今回はプレイヤーの裁量でオリジナルカクテルも作れるよ。材料ごとに“甘い”とか“度数が強い”とか“フルーツ”みたいに要素が決まっていて、その組み合わせで完成したカクテルの性質が決まるイメージだね。ほかにも「チョコミルクが飲みたい」なんてお客さんがやってきたら、レシピに無くてもカカオと牛乳をミックスして提供できたりとか。

−−おお! お酒好きのプレイヤーはますます楽しめそうですね。

Fernando 『VA-11 Hall-A』のゲーム実況を見ていると、「このキャラにはこのお酒を飲んでもらいたいけど、レシピに無いからなあ……」みたいな不満を抱えているプレイヤーもいて、その反省から『N1RV Ann-A』もっと自由に遊べるようにしたかったんだ。

−−TGS2018デモの時点で、前作からの進化は大いに感じられましたが、これから実装予定のシステムなどありますか?

Fernando オリジナルカクテルを作れるわけだし、考えたレシピを保存していつでも再現できるようなシステムは用意したいね。あとは、これ言っちゃっていいのかな? えっと、プレイヤーが自由に『N1RV Ann-A』のイベントシーンを作成できるシミュレーターみたいなものを作りたいと思ってる。

−−自由にキャラクターを配置して、好きなセリフを言わせられるような。

Fernando そうそう。『VA-11 Hall-A』のとき、ファンのあいだでそういう遊びが流行っていたので、公式に実装できたらおもしろいかなって。

−−いろいろと捗りますね。最後に、本作への意気込みをお願いします。

Fernando 『VA-11 Hall-A』のときはわからないことだらけで、技術面からプロモーションまで、いろいろなことを勉強しながらの制作だった。でもいまは、そうして培ってきた知識や経験があるから、『N1RV Ann-A』では表現したいことを全部盛り込める。むしろ、ユーザーが何かを学べるような作品にできるようがんばるよ。

−−ありがとうございました。お酒を片手にリラックスしながら、2020年の完成をお待ちしています。

ジルのぬいぐるみ、超かわいい。