Mode 7の『Frozen Synapse 2』は、2011年に発売されてコアな人気を博したタクティカルストラテジーゲームの続編。現在、PC英語版がSteamやGOG.comで配信中で、参考までに日本円での価格は3090円。

 タクティカルストラテジーゲームと言ってもいろいろあるが、本作はズバリその中でも特殊部隊の指揮を執るタイプ。世界観的にはサイバーパンクなので、要は『攻殻機動隊』の荒巻課長や草薙素子になるゲームだとご理解いただきたい。特殊部隊員に細かな指示を出して突入させたり、あるいは逆に敵の襲撃を迎撃するのがお仕事だ。

『Frozen Synapse 2』気分は攻殻機動隊の荒巻課長。頭脳戦が熱すぎる特殊部隊指揮ストラテジーがパワーアップして帰ってきた_02
『Frozen Synapse 2』気分は攻殻機動隊の荒巻課長。頭脳戦が熱すぎる特殊部隊指揮ストラテジーがパワーアップして帰ってきた_01
キャンペーンでは部隊名や指揮官名を設定できる。俺は誰がなんと言おうと荒巻大輔なんだ。

 シリーズに共通する特徴として、各メンバーをどう動かすか決めるプランフェーズとその実行フェーズに分かれたターンベースシステムを採用。そしてそこから生まれる深い読み合いこそがキモとなっている。

 というのも、プランフェーズの時点では相手がどう動いてくるかわからず、お互い相手の動きを想定しながらプランを組んでいくしかない。そして両軍がプランを提出すると実行フェーズになり、ふたつのプランを同時に実行した結果を見ることになる。

 ユニットに指令できる項目は細かく、移動ルートはもちろん、注視する方向、しゃがみと立ちの切り替え、指定した秒数の待機、あえての発砲禁止など、すぐには覚えきれないほど。自軍の隊員だけでなく、敵ユニットの想定する動きを指定して「こいつが仮にこっちに行った場合はどうする?」といったようなシミュレーションをしてみることもできる。

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 「ここにいるサブマシンガン兵がこの通路から出てくるだろうから、こっちのアサルトライフル兵で倒して……」なんて想像しながらプランを組んでいくわけだが、実行フェーズで結果を見てみたら、裏をかいた動きで見事にこちらの動きがスカされて、倒せていないばかりか逆に自分のユニットがやられていたりもする(ユニットはお互い一撃で死ぬ)。

 「ここで一回窓の方を見ていれば!」とか、「敵がしゃがむ可能性を忘れてた!」なんて悔やんでも遅い。次のプランフェーズがやってくる……(そして今度は考えすぎた所を裏の裏でシンプルに来られてやられたりする)。

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シングルプレイでは一個前のターンに戻すこともできる。マルチではもちろん無理なので、悔しさを噛み締めて次のターンに挑もう。

“シティ”キャンペーンでは自動生成された大都市のあらゆる場所が戦場になりうる

 キャンペーンモードは大きな進化を遂げた要素となっており、大きなワールドマップで勢力運営をしていく“シティ”キャンペーンモードに進化。自動生成された大都市のすべての建物が戦闘マップになりうるため、“オープンワールドタクティクス”と称されている。

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 ワールドマップの運営フェーズでは他勢力との外交交渉や、部隊編成ならびにどこに派遣するかといったやりくりも求められ、状況によっては本部を突如襲撃されたり、重要なアイテムである“レリック”を強奪すべく帰還中の攻撃部隊が襲撃されることも。

 キャンペーンのメインストーリーは“Sonata”と呼ばれるグループとの攻防を中心に展開していくが、オプションでSonataに関するストーリーミッションをカットして純粋に勢力争いを楽しむことも可能だ。

 キャンペーンのオプションにはそのほか、セーブデータを1個に限定してやり直しも禁じる“アイアンマンモード”、分隊内の人数を最大2名に制限する“2タクティクスモード”、部隊員の視界内の敵ユニットのみ表示する“ダークモード”、敵AIが実行フェーズ前にプレイヤーの提出したプランを確認できる“インセインモード”などのやりこみ用オプションが用意されている。

 ちなみに戦っているのは培養兵士という設定のため、ちょっとした油断で兵士が死亡しても時間経過で復活可能(それでも重要なイベント発生時に回復が間に合っておらずに困るといったことは起こりうる)。またオプションにはイージーモードも存在する。

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ハードコアな人向けのオプションも多数。

定番のマルチプレイにはサクッとお題を解くモードも登場

 お互いに相手の動きを想定しながらの駆け引きが熱い本作にとって、マルチプレイ対戦は欠かせない要素だ。直接リアルタイムにバチバチ進めていくだけでなく、ああでもないこうでもないとじっくり次の一手を練るような対戦も可能で、相手がプランを提出して実行フェーズに移行可能になったら通知してくれるサービスまである。

 そして新モードとして、サクッと遊べる“ワンターン”モードが登場。これは1ターン限定の“お題”に挑むというものなのだが、同じ相手の同じ一手に対してどれだけいい結果を出せたか他のプレイヤーと比較できるのが面白い。

 この仕組みは1ターン限定であることと(自分の手が相手の手に影響しないので条件が同じ)、サーバー側に同じシチュエーションでプレイした人たちのプランを蓄積することで可能となっており、天才なのか偶然なのか「なんでそこに撃つんだよ」という一発が見事にヒットして高得点を叩き出していることもあれば、逆にやたら凝ったプランが途中で崩れ去っていることもあって、見ていくだけでなかなか勉強になる。

万全の進化を遂げた正しい続編

 2になって進化した部分はそのほかにもあり、ユニットにも火炎放射器(一定範囲を焼ける)、ミニガン(同じく一定範囲を制圧できる)、ナイフ(接近戦に限定されるが高速)、スモークグレネード(スモークで射線を封じられる)といったトリッキーな連中が登場し、地形のバリエーションなども増えている。

 またリリース直後はクラッシュ問題などがあったようだが、順次パッチで改善されており、2018年9月28日のアップデートではMac/Linuxへの対応追加と、AI相手にシンプルな対戦を楽しめるスカーミッシュモードの追加が予定されている。

 強いて難点を挙げれば、ユーザーインターフェースが地味な割にトリッキーな部分があったり、一応のチュートリアルはあるもののディープな部分の解説が全然追いついておらず、試行錯誤しながら覚えるしかないこと、そして英語版しかないのでキャンペーンのガッツリ書かれたテキストを読むのがなかなか面倒くさいといったあたり。

 それでも、それを乗り越えてプレイするだけの深みは持っている続編になっていると思う。なかなか根気のいるゲームだが、ヒリヒリする戦術勝負に挑みたい人はぜひチェックしてみて欲しい。