2008年8月7日、『テイルズ オブ』シリーズのマザーシップタイトル第10弾として、Xbox 360用ソフト『テイルズ オブ ヴェスペリア』(以下、『TOV』)が発売された。それから10年――2018年9月16日、千葉県・舞浜アンフィシアターにて、“テイルズ オブ ヴェスペリア 10th Anniversary Party”が開催。メインキャラクターのキャスト全員が集い、ファンとともに記念すべき節目の年を祝った。

・出演者
鳥海浩輔(ユーリ・ローウェル役)
中原麻衣(エステル役)
宮野真守(フレン・シーフォ役)
石井真(ラピード役)
渡辺久美子(カロル・カペル役)
森永理科(リタ役)
竹本英史(レイヴン役)
久川綾(ジュディス役)
斎藤千和(パティ・フルール役)

 『テイルズ オブ』シリーズと言えば、毎年初夏に行われている“テイルズ オブ フェスティバル”を始め、さまざまなイベントを開催しているが、タイトル単独での大型イベントは今回が初となる。これは、『TOV』がそれだけ多くのファンから支持を得ている証だと言えるだろう。

『テイルズ オブ ヴェスペリア』10周年イベントに、メインキャストが集結! ユーリとフレンの衝突や、シュヴァーンとの決闘などを生演技で振り返る_02
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『ヴェスペリア』メインキャラクターがイベントで全員揃うのも初めてのこと。中には『テイルズ オブ』イベント初参加というキャストも。

 そのことは、イベント冒頭で行われた朗読劇からも感じ取ることができた(なお、本記事でお届けするのは昼公演のリポート)。この朗読劇は、『TOV』のオープニングからエンディングまでの物語を、キャラクターが語るというもの。事前に行われたファン投票によって選ばれた名シーンが盛り込まれていた。

 昼公演でピックアップされたシーンは、主人公のユーリというキャラクターをよく示しているものが多かったように思う。たとえば、キュモール暗殺後のユーリとフレンの語らい。名ゼリフ「選ぶんじゃねえ。もう選んだんだよ」で知られているシーンだ。すでに自分の道を選択しているユーリは、『テイルズ オブ』シリーズの主人公の中ではまれな、ある程度成熟しているキャラクターだということが表されている。しかも、光と影で言えば、影に属するタイプというのも珍しい。

 続いてピックアップされた、バクティオン神殿でのシュヴァーンとの決闘と決着シーンもそうだ。打ちひしがれるカロルやリタを叱咤するユーリは、ジュディスに“損な役回り”と言われるような、大人の役目を果たしている。

 この“大人”というのは、斜に構えているとか、厭世的という意味ではなく、“たとえ称賛されなくとも、自分の正義にのっとって他者のために行動できる人”という意味だ。こういった役割は、本来ならサブキャラクターとか、パーティーの年長メンバーが担いそうなものだが、ユーリは主人公にしてこの立場を背負い、その一方で、主人公らしいドラマ(ヒピオニア大陸の下町トリオ出撃などは、こちらに分類される気がする)も見せてくれる。

 この独特な立ち位置が、ユーリを魅力的なキャラクターにしていて、そして『TOV』の物語を印象的なものにしているのだと、改めて感じさせられる朗読劇だった。

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キャスト陣は、いいシーンがてんこ盛りの朗読劇を「噛めない……」という緊張の中で演じたため、口の中がパッサパサになったとか。なお、観客側もシリアスなシーンを手に汗を握りつつ見守ったが、舞浜アンフィシアターのステージの仕掛けを利用し、鳥海さんや宮野さんが地下から「ニュッ」と登場したときは、つい笑ってしまった。すみません。

 ちなみに、ファンと同様に、キャスト陣もお気に入りシーンを事前に選んだそうで、中原さんと竹本さんのふたりが、シュヴァーンとの戦いをピックアップ。竹本さんは、10数年ぶりにこのシーンを演じて、「俺、いいなあ」としみじみ思った……と、朗読劇のトークコーナーで語った。中原さんは、『テイルズ オブ』ではおなじみの「死んだと思ったら、また登場する」というシチュエーションが好きなので、このシーンを選んだとのこと。

 また、トークコーナーではファンからの質問にキャスト&樋口義人氏(『TOV』制作プロデューサー)が答える場面もあった。質問と回答の一部を紹介しよう。

質問:すべての魔導器(ブラスティア)が精霊になったとき、レイヴンの魔導器も精霊になったのだと思ったのですが、なぜ彼は大丈夫だったのでしょうか。

 樋口氏からは「実際、(詳細は)決まっていない」という衝撃の答えがありつつ、そのあと補足として、“レイヴンは自分の生命力で生きていけるようになっている”、“コアには聖核由来のものと人工的なものがあり、エンディングで精霊になったのは聖核由来のもの”との説明がなされた。

質問:キャストの皆さんが言いづらい言葉ナンバーワンは何ですか?

 カロルの名前が言いづらい……とは度々ネタになっているが、ほかに言いづらい言葉はあるか? という質問に、渡辺さんは「カウフマンさん」、森永さんは「術式や治癒術が言いにくい」と回答。ちなみに石井さんは、「ワン」と「クーン」を比べると、「ワン」のほうが言いにくいらしい。

質問:フレンの私室にあるハートのシール付きの手紙は、誰から誰へのもの?

 樋口氏によると、じつはこの手紙、フレンの色恋に関するスキットのトリガーになる予定だったらしい。そのスキットは残念ながらお蔵入りになってしまったそうだ。「フレンは中の人と同じく人気があるので、誰かというのはわかりませんが……」(樋口氏)という説明があったので、フレンがもらったものであるのは間違いない?

 トークの後は、2019年1月11日に発売が決定した『TOV REMASTER』の紹介を経て、バラエティスキットのコーナーへ。昼公演では“行け行け! カロル駅長奮闘記”と題し、道の駅“マイハマ”を盛り上げようとするブレイブヴェスペリアのドタバタ劇が展開された。

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 リタの魔導書を読んだ影響で、人形の姿になってしまったカロル。しかし、一日駅長に選ばれたカロルは、その仕事を投げ出すわけにはいかない。「ならば、人形劇をやろう!」というエステルの鶴の一声で、ブレイブヴェスペリアメンバーが劇に挑むことになったが、当然、劇がふつうに進行するわけはなかった……。大魔王パティに挑む勇者カロル、なぜか捕らわれの姫になったユーリ、ついうっかり姫を助けようとしてしまう魔王の部下フレンなどが個性的な演技を見せつつ、最後はカロルとユーリが力を合わせ、瞬く明星の光(来場者のペンライト)で魔王を倒し、劇は一応のハッピーエンドへ。道の駅は見事な盛り上がりを迎えたのだった。

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 ブレイブヴェスペリアメンバーの仲睦まじい様子は、その後に上映されたショートアニメ“真夏の海のヴェスペリア”でも健在だった。これは、バンダイナムコエンターテインメントの公式Webサイト“アソビストア”にて、プレミアム会員向けに配信されている『ているず おぶ HR(ホームルーム)』のスペシャル回という扱い。夏の島での合宿を楽しむメンバーの様子がコミカルに描かれた。
・ているず おぶ HR(ホームルーム)特設ページ
https://asobistore.jp/content/title/Talesof/HR/

 その後、舞台“テイルズ オブ ザ ステージ”の新作が『TOV』を原作とする“凛々の明星(仮)”に決定したこと、『ネコ・トモ』(2018年11月1日発売予定)とのコラボレーションが決定したことなどが告知され、イベントはフィナーレへ。改めてメインキャストが集合し、ファンに最後のメッセージを送った。

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 先述の通り、メインキャスト全員がイベントで共演するのは今回が初で、『TOV』誕生からは10年が経っているが、キャスト陣の雰囲気は、そんなことは感じさせないアットホームなもの。それは、ドラマCDやスピンオフ作品で演じる機会がたびたびあったからでもあるし、『TOV』収録時、ゲームにしては珍しく、一堂に会して収録していたからでもあるのだろう。宮野さんは「ファミリー感がある」と幸せそうに語っていた。

 そんなファミリーの座長である鳥海さんからは、「10年経ったけれど、終わりではない」と力強いコメント。『TOV』は、リマスター版や舞台化など、これからも新たな展開がある。10周年の盛り上がりは、まだまだ続きそうだ。

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