世界で220万本以上の販売実績を誇る伝説の名作『フラッシュバック』が、25年の時を経てNintendo Switchで復活。25年前のオリジナル版にハマっていたローリング内沢が、当時の思い出とともに、本作の魅力を語る。

 唐突だが、旅番組が好きだ。

 『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系列)のような、街の隠れた穴場や観光スポットを歩いて回る小さな旅から、『世界の車窓から』(テレビ朝日系列)といった世界各国を巡る大きな旅まで、その大小は問わない。

 ちなみに最近は、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京系列)に激ハマりしている。

 番組の出演者や映像を通して、旅の途中で起こるさまざまな出来事を疑似体験し、家にいながらその場へ行ったような気にさせてくれるのが好きなのだ。

 とはいえ、実際に旅をしようとは思わない。出不精だからこその“楽しみ(趣味?)”のひとつだ。

 旅に対する憧れはむかしからある。旅番組ではなくても“何か”を通して、異なる世界や文化を感じるのが心地よく、それこそハタチ前後のころはさまざまな“海外ゲーム”を遊びながら、その国の雰囲気を味わっていたものである。

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 『フラッシュバック』(オリジナル版)は、Amiga(パソコン)用のアクションアドベンチャーゲームとして1992年にリリースされた。

 当時、ボクは22歳。『ファミ通』に誌名変更される前の、『ファミコン通信』の編集者として働いていたころだ。

 そのときは、ファミコン通信編集部と同じビルに、兄弟誌(PCゲーム誌)『ログイン』の編集部もあった。『ログイン』の名物編集者の忍者増田氏や、田川ラメ夫氏と交流が深かったこともあり、ちょくちょくログイン編集部に足を運んでは、最新のPCゲームを遊ばせてもらっていた。

 そこで初めてAmigaの『フラッシュバック』を目にし、その滑らかなアニメーション演出と、強烈なSFの世界観に、見事ノックアウトされたのを憶えている。

 なお当時は、ちょうどスーパーファミコン(1990年)が発売されたばかり。家庭用ゲーム機の性能が飛躍的に向上し、『ポピュラス』(1990年/イマジニア)をはじめ、『シムシティー』(1991年/任天堂)や『ドラッケン』(1991年/コトブキシステム)、『レミングス』(1991年/サンソフト)、『ダンジョンマスター』(1991年/ビクター音楽産業)など、話題の海外PCゲームがつぎつぎとスーパーファミコンに移植されていた時代である。

 もちろん『フラッシュバック』も例に漏れず、1993年にサンソフトからスーパーファミコン版がリリースされた。ちなみに、ボクが本作をじっくりとやりこんだのは、このスーパーファミコン版である。

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 『フラッシュバック』の開発元は、フランスのゲームメーカー、デルフィン・ソフトウェアだ。

 最近のゲームファンには、なじみのないメーカーかもしれないが、『フラッシュバック』の前身にあたる『アウターワールド』(1991年)や、3Dアクションアドベンチャーゲームの『フェイド・トゥ・ブラック』(1995年)、バイクレースゲームの『モトレーサー』(1997年)シリーズなどを手掛けている(どれも日本で移植版がリリースされている)。

 残念ながら会社としては2004年に閉鎖・解散してしまったそうだが、フランスのゲームメーカーらしく“アート(芸術)”を感じるゲームが多かったようにも思う。

 もちろん『フラッシュバック』もそのひとつだ。

 本作のキャラクターのドット絵ひとつとっても、日本人にはなかなかマネできない、フランス人ならではのセンスが凝縮されているように感じる。同じヨーロッパでも、イギリスのゲームとはまた違った独特の色彩や雰囲気、テンポ感を受けるのだ。

 数々の“洋ゲー”を通して、各国の文化を味わってきたボクが言うんだから間違いない(笑)! 

 それこそ、『ポピュラス』や『レミングス』のテーマや演出のシニカルさにはイギリスっぽさを感じるし、『シムシティ』や『ダンジョンマスター』の大きな規模感や自由奔放なゲーム性はアメリカそのものだし、そして『ドラッケン』や『フラッシュバック』のビジュアルや色づかいはとてもオシャレでフランスらしいのだ。

 ところ変われば美の基準も変ってくるし、ましてや見ている色や物事の感じかたも各国それぞれだ。それらの違いが、各作品に色濃く出ているような気がするし、そのような特徴や雰囲気の違いを感じながら海外ゲームを遊ぶのが好きなのだ。

 そう、なぜならば、その国に行ったような気になれるから(文化の一片を感じられるから)。

 とくに、『フラッシュバック』は、ゲーム中のところどこに挿入されるシネマティックなアニメーション演出が最高にかっこよく、ゆっくりと滑らかに重厚な感じで動くムービーが、独特の味を醸し出している(たぶん当時のPC性能に合わせた結果なのだと思うけど)。

 さらに昨今のゲームと比べると、決して直感的な操作性ではないのだけど(失礼!)、そんなクセのある操作と、リアルなキャラクターの動きがハマると非常に心地よく感じる。

 そして、BGMは、要所要所で流れるくらいで基本は効果音のみ。そんな最低限のサウンド演出も渋くアダルトな雰囲気を受ける。

 これらをすべてひっくるめて、オシャレでアート的なのだ。

 なお、SFをモチーフにした本作の世界観は、映画『ブレードランナー』(1982年)や、『バトルランナー』(1987年)、『トータル・リコール』(1990年)といったアメリカのSF映画を彷彿とさせるものの、やはりグラフィックの色味や効果音、アニメーションのカメラワークなどは、個人的にフランスの映画監督、リュック・ベッソン制作の『フィフス・エレメント』(1997年)らしさを感じたりもする(映像美的に)。

 (余談だが、『フラッシュバック』の主人公が、残酷なテレビショー“デスタワー”に挑戦するストーリー展開は、映画『バトルランナー』っぽいのだけど(笑))。

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 前身である『アウターワールド』もそうなのだが、なんかこう『フラッシュバック』という作品には、商品のイメージイラスト(目薬の広告っぽい、目もとがアップになったイラスト)も含めて、作品の細部に至るまで全体的に芸術的なフランス特有のセンスをプンプンと感じるのだ。それが当時、モテたい盛りの22歳の若者の琴線にがっつりと触れたのである。

 そして、およそオリジナル版から25年が経ったいま、48歳になったオジサンがあらためて3goo(サングー)からリリースされたNintendo Switch版をプレイしても、「やっぱりかっこいいな!」と思うし、2Dポリゴンで描かれたアニメーション演出をオカズにご飯3杯をペロリと平らげてしまったほど、いまでも色褪せない魅力を持っている。

 また、本作にフランスの風を感じたのは、オシャレな雰囲気だけではない。ゲーム序盤で、主人公が市庁舎で労働許可証をもらうために、担当窓口をたらい回しにされる演出があるのだが、これが皮肉をたっぷりと込めた“フランス流のジョーク”そのもの。

 『フラッシュバック』の舞台である西暦2142年は、非常に未来的でかっこいいのだけど、市庁舎の窓口対応だけはほんとイケてないし、そんなある意味、政治風刺(?)ともいえる小ネタを盛り込んでいる部分にも、フランスならではの“粋(美意識)”を感じるのである。

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 ちなみに、『フラッシュバック』の物語は、記憶喪失に陥った主人公コンラッドとなり、さまざまな出来事に巻き込まれながら、地球を脅かすエイリアンの陰謀を暴いていくのが目的。

 「ロードムービーを制作するように作り上げた」という、『フラッシュバック』の生みの親であるポール・キュイセ氏の言葉どおり(下記リンク先のインタビューのとおり)、少しずつ謎が解け、物事や状況が組み立てられていくそのストーリーラインは、コンラッドを通して実際に宇宙を旅をしているようでもある。

 まさに“旅番組”好きにはたまらない構成だ。いま思うと、そのような部分が、「“何か”を通して異なる世界や文化やを感じる」のが好きな、22歳のボクにハマったのかもしれないな、と思う。

 ちなみに“フラッシュバック”とは、「過去の記憶が、突然鮮明に思い出されたり、かつ過去に体験した感覚が突如として再現される」こと。

 これからNintendo Switch版でプレイしようと思っている人は、その言葉の意味を踏まえつつ、ゲームクリアーを目指してほしい。ネタバレになるから詳しくは書かないけれど、独特の結末(エンディング)も、フランスっぽいな(フランス映画っぽいな)と感じる部分のひとつとなっている。

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 そして、最後に取って付けたような言葉にはなるが、Nintendo Switch版『フラッシュバック』の、“巻き戻し機能”は「ほんとよく実装してくれた!」と思える機能のひとつだ。

 これでもうステージの途中で力尽きても、セーブポイントまで戻らなくてもいいし、同じミスをしても、その場からやり直せる。22歳の若さ溢れるころならともかく、反射神経も衰えた48歳のオジサンには、本当に“渡りに船”な機能なのである。

 当時と異なり、広大なインターネットの世界を検索すれば攻略情報(攻略動画も)もたくさんアップされているし、謎解きに迷って八方塞がりになり、イライラが募ってコントローラーを投げつけてしまう、なんてこともないはず。

 ファッションだけではなく、ゲームも'90年代リバイバルな作品が多くリリースされている昨今、当時遊びまくった人はもちろんだが、初めて『フラッシュバック』を知ったという人も、Nintendo Switch版で、フランスの風を感じてみてはいかがだろうか? ボクが「ゲームってかっこいいな」と思える作品のひとつでもある。

ローリング内沢

1970年、東京生まれ。ライター・編集者。『ファミコン通信』(現『週刊ファミ通』)の編集者を経て、2000年よりフリーランスとして活動。得意分野はゲーム、クラブミュージック、グラフィックデザインなど。趣味が高じて、クラブDJとしても暗躍中。『週刊ファミ通』では1992年よりクロスレビュアーを担当。