これが賞金総額20億円のゲーム『Dota 2』か! ごちそう争奪大会“Dotaまらカップ2018”を元プロと観戦

大会の賞金総額が独り歩きし、実態が話題になりにくいゲーム『Dota 2』。その魅力を肌で感じたかったので、オフライン大会の模様を元プロに解説してもらった。そしたら、ごちそうを食べられたし、世界デビューもしてしまった。

こんにちは。眠そうなミス・ユースケです。1ヵ月以上前の2018年7月28日に開催されたイベントリポートを書く。

 ひとつ、esports界隈の都市伝説を教えよう。

 “賞金総額20億円オーバーの大会”という話は有名なのに、そのゲームの実態を話題にする人は少ない。どうして!? こわい!

 ゲームの名は、『Dota 2』。

 この日、僕は『Dota 2』のオフラインイベントにやってきていた。“Dotaまらカップ2018 in Tokyo”という大会の決勝戦だ。ラピュタは本当にあったんだ、みたいな話である。

 会場内には選手用のPCや座席に加えて、ごちそうが並んだ。

 ゲーム大会を観に行ったら、出てきたのはうまいご飯。きつねに化かされた旅人のようだ。昔話だったら翌朝に泥だんごを食べているのは確実である。

 都市伝説からの昔話。展開のスピード感に慣れるまで時間がかかると思うので、ひとつずつ要素を整理していこう。

調理場の様子。写真を撮っていたら口にばんばん肉と桃を放り込まれた。

 本大会の主催者は牡蠣漁師・小笠原さんが代表を務める企画チーム“ENLIFE”。おもな賞品は、協賛社から提供される牡蠣や肉、桃だ。

 イベントは3000円の有料チケット制。協賛社は思った。「そんなに払ってくれるんだからもてなさなければ食品生産者の名が廃る」と。

 そして振る舞われた大量のごちそう。ホスピタリティーがインフレを起こしている。

※小笠原さんにお話を聞かせてもらったときの記事
ゲームでうまい牡蠣が食える! 異色の大会主催者が考える地方産業と子どもたちの未来

そこらパーティーよりご飯が豪華。みんないい笑顔で食ってた。

川平慈英さん並みに力強い「いいんです」

 さて。試合を楽しく観戦したいが、かくいう僕も『Dota 2』のことには詳しくない。そこで『Dota 2』好きの知人に教えてもらうことにした。

この人。

 プロゲーミングチーム・DeToNatorに所属するdohteloff(ドテロフ)くんだ。

 『Dota 2』が好きというか、元プロである。いまは海外大会を日本語で実況するなど、いちファン・いちプレイヤーとして普及活動を行っている。

 うまいご飯を食べ、元プロにマンツーマンで解説してもらいながら、会場の熱気に身をゆだねる。贅を尽くした観戦スタイル。あとは薄着の美女がでかい葉っぱであおいでくれたら完璧だ。

こんな感じで観戦してました(写真提供:@YossyFPS)。

 詳しいことは置いといて、めちゃくちゃ簡単に見どころを教えてほしいんだけど。

 ユースケさんはどれくらい『Dota 2』のことを知ってるんですか?

 賞金総額20億越え。それなのに、みんなに無視される。不憫

 それ以外で。

 
 僕が知っていることというと、

・開発はゲーム配信サービス“Steam”で有名な米Valve社。
・ジャンルは5対5で戦うMOBA。
・プレイヤーは100種類以上いるキャラからひとりを選択。
・マップ内のオブジェクトを壊して進軍し、敵の本拠地を制圧すると勝ち

 こんな感じだ。

 あとはまぁ、敵側のクリープ(兵士みたいなキャラ)を倒してお金を稼いでアイテムを買うとか。基本ルールは一般的な“MOBA”って感じですね。

【一般的なMOBAのゲーム展開】
序盤:敵やクリープを倒してレベルを上げ、お金を稼ぎ、アイテムを買って自分を強化
中盤:敵プレイヤーとの戦闘が増えてくる
終盤:どちらかの拠点付近での集団戦が激化

大会は主催者・小笠原さんの『Dota 2』ラップからスタート。

試合開始前に両チームががっちり握手。

 観戦の仕方を教えてほしくて。スポーツでもゲームでも、“すごいことが起きている”のはわかる。だったら、すごさの理由を知りたいじゃない。

 たしかに、詳しい人ほどおもしろいと思いますけど、あんまり難しいこと考えなくていいと思いますよ、最初は。

 何となく、でいいの?

 

 いいんです。

 
 川平慈英さん以外でこんなに力強く断言する人は初めて見た。ずっと集中して観る必要はなく、盛り上がる瞬間を見逃さなければ十分とのこと。

 『Dota 2』って、1試合の長さが30~40分だとして、10秒とか1分くらいの短い戦いが連続して起きるんです。適当なところで区切って観るのがいいですよ。

 試合に緩急があるわけか。野球だったら回が変わるときに気を抜くもんなー。“急”のときは集中して見るとして、“緩”のときは?

 ビールでも飲んだらいいんじゃないですかね。

 そんなんでいいの? まとめサイトの見出しだったら【朗報】ってつくぞ。

 サッカーだって、パス回しのときは「ふーん」くらいじゃないですか。で、ゴール前だと「おおおおお!」ってなる。
 その「おおおおお!」は、両チームが接近したり、スキルを撃ちあってるとき。
 よくわからなくても実況・解説が教えてくれるから大丈夫です。あの人たちが盛り上がったら「お、いまか」みたいな。

 難しいことを考えなくてもいい。よくわからなくてもいい。ビールを飲んでいい(家とかで見ているときは)。精神的なハードルがグッと下がった。

 『Dota 2』はesports観戦の教科書みたいなタイトルなのかもしれない。

ブランド好き女子が実装されてるの?

 決勝戦は2本先取のBest of 3形式。オンライントーナメントを勝ち進んだScarusとchaosの2チームがぶつかりあった。

 最初の見どころはキャラ選択だ。得意不得意はもちろん、キャラ同士の相性もある。

 今回の大会ルールでは、相手に使わせたくないキャラを弾いてから自分が使うキャラを選びます。“ピック&バン”ってやつですね。
 相手の得意なキャラを禁止して、自分たちの戦略を組み立てる。戦いは試合に入る前から始まってるわけです。

 キャラ選びで注目することはある?

 敵を倒してお金を稼ぐのが重要なんですけど、お金が必要なキャラとそんなに必要じゃないキャラがいるんです。

 ブランド好き女子が実装されてるの?

 そういうことじゃない。お金が必要なキャラは後半に強くなるんですけど、対策されやすい傾向があるんですね。

 はいはいはいはい。お金を稼ぎにくいように動かれたら弱いと。

 パッチでバランスは変わるものですけど、対策されても大丈夫とか、万能の何でも屋を取るのが、いまの基本的なスタイルですね。

 

みんなでピック&バンについて話し合うchaos。

 左下に羽のついたキャラいますよね。Dark Willow。対策されにくいキャラなんですよ。お金がそんなに必要なくて。

 高嶺の花もいいけど、やっぱり身近なタンポポということだね。

 何言ってるんですか。いきなりピーキーなキャラを取るのが流行った時期もありました。

 就活みたいな話になってきたな。個性の時代と言われたかと思えば、協調性が大事みたいな。

 

dohteloff「コスプレイヤーさんいましたけど、Crystal Maidenも強いですね」。

 話を聞いていると、会場中が大きく湧いた。

 あれはInvokerですね。9個のスキルを使うキャラで、すごく難しいんです。
 Scarusのume選手が非常に得意としているので歓声が上がったんだと思います。

 みんな期待してたってことか。

 難しいぶん、魅力があるんですよ。僕が現役でやってるころ、質問されることも多かったですもん。「Invokerってどう使えばいいですか?」って。

 憧れだよね。難しいキャラ使って活躍したいじゃん。そういうのを大会で観られるのがいいなあ。

 

テクニカルなキャラは強いが対策もされやすい。逆に、無難なキャラは対策されにくい。無難だから悪いということはない。

 試合が始まったらどういう風に観ればいい?

 序盤はキャラ同士の殴り合いが見どころですね。相手と自分たちのキャラを見て、誰に誰をぶつけたら有利か考えるんですよ。
 敵の拠点に通じるルートは“レーン”と言って、上、真ん中、下と3本あります。自分のレーンが押されたら、仲間に助けに来てもらわないと押し込まれちゃう。

 最初は自分のキャラを育てるところから始まります。敵のクリープにとどめを刺すと50ゴールドもらえるんですね。
 これが“ラストヒット”。お金を貯めて、アイテムを買うわけです。

 さっきお金が必要なキャラがいるって言いましたよね。その人にラストヒットを取らせるように動いて、逆に敵にはラストヒットを取らせない。
 そのためにスキルを使う感じです。敵のHPを削るためじゃなくて。

 相手の邪魔をするのが大切なのね。

 

話を訊いていたら大歓声が巻き起こった。

 いまScarus側にFisrt Bloodが出ましたね。最初に敵を倒すことなんですけど。

 敵のキャラを倒してもお金が入るんだよね。一気に有利になったわけだ。

 そうなんですけど、もっと大事なことがあります。