開発者が選ぶ栄誉ある賞!
“CEDEC AWARDS”は、コンピュータエンターテインメント開発の進歩へ顕著な功績のあった技術にフォーカスし、技術面から開発者の功績を称え表彰することで、開発技術の普及・啓蒙と産業の発展を目指すというもの。今回の“CEDEC AWARDS 2018”では、(1)エンジニアリング部門(2) ビジュアル・アーツ部門(3)ゲームデザイン部門(4)サウンド部門(5)特別賞(ゲーム開発の発展への貢献全般)
(6)著述賞(ゲーム開発の発展に貢献した著者、出版社)の、6部門での賞が決定、表彰された。
賞が決定する流れは以下のとおり。まずCEDEC 2017で、参加者によるセッションアンケートを実施し、高評価の講演者によりノミネーション委員会が組織される。委員会では部門ごとに優秀賞を決定。最後に参加者投票が行われ、選出された優秀賞から最優秀賞が決定する。なお(5)特別賞と(6)著述賞のみ、CEDEC運営委員会の討議により決定されることになっている。
最初に発表、表彰が行われたのは、著述賞と特別賞だ。著述賞は『ゲーム情報学概論 -ゲームを切り拓く人工知能-』(発行:コロナ社)が、特別賞は鈴木裕氏がそれぞれ受賞。
『ゲーム情報学概論 -ゲームを切り拓く人工知能-』は、ゲームとAIの関係を紐解く解説書で、伊藤毅志氏(電気通信大学・情報理工学研究科/人工知能先端研究センター・助教)、保木邦仁氏(電気通信大学・情報理工学研究科・准教授)、三宅陽一郎氏(株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー)の、3人の共著によるもの。鈴木裕氏は、『ハングオン』、『アフターバーナー』、『バーチャファイター』など、革新的なアイデアで大ヒット作を数多く生み出してきた、ゲームファンにはおなじみのクリエイター。『シェンムー3』の完成にも期待が高まっている。ステージには3人の著者と、鈴木裕氏が登場。受賞の喜びを語った。
著述賞
『ゲーム情報学概論 -ゲームを切り拓く人工知能-』(発行:コロナ社)
「教科書のようなお堅い内容ですが、共著の方に恵まれて、このような晴れがましい賞をいただけて光栄に思っています」(伊藤氏)。
「この本は3部構成で、自分は2部のアルゴリズムについて担当しました。著述賞、たいへんうれしく思っています。3回連続で言ってみます。ちょじゅつしょう、ちょじゅつしょう、ちょじゅつしょう……、言えました!」(保木氏)。
「かねてからゲームAIの、アカデミックから産業までを1冊に凝縮した本を書きたいと思っていて、今回実現することができました。ゲーム開発者の机に並ぶ1冊として想定して書きましたし、社内教育などにもご活用いただければと思います」(三宅氏)。
特別賞
鈴木裕氏
「私のゲーム作りの理想は、技術とセンスが高次元で融合したものだと、いつも考えています。技術色の強いCEDECさんからこういった賞をいただいたことは、非常にうれしく思っています」(鈴木氏)。
続いては、(1)エンジニアリング部門、(2) ビジュアル・アーツ部門、(3)ゲームデザイン部門、(4)サウンド部門の発表、表彰へと移った。各部門とも、まず優秀賞の5作品・技術の内容をスクリーンで紹介したのちに表彰が行われ、最後に最優秀賞が発表されるという流れで式は進行。以下は部門ごとに、優秀賞5コンテンツの表彰シーンと、最優秀賞コンテンツのチーム代表者の受賞コメントを、まとめて紹介する。なおチームによっては、都合により式に出席できなかったケースもあった。
エンジニアリング部門
優秀賞
- Jenkinsプロジェクト
- 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発チーム(任天堂株式会社)
- INSIDE開発チーム(PLAYDEAD)
- 「Decima」エンジン 開発チーム(Guerrilla Games)
- Houdini開発チーム(SideFX)
最優秀賞:『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発チーム
「本作は、ゲーム内容についてもそうなのですが、ゲームの作りかたについても多くの挑戦をしてきたタイトルでした。昨年のCEDECでも、本作についていくつかのお話をさせていただき、それも我々にとっては大きな挑戦でした。そうした挑戦の積み重ねが評価されたのかなと、開発陣一同、うれしく思っております。チームを代表してお礼を申し上げます」
ビジュアル・アーツ部門
優秀賞
- 「キズナアイ」サポートチーム(upd8/森倉円:キャラクターデザイン、Tda:モデリング監修、トミタケ:3D モデル)
- 『Hellblade: Senua’s Sacrifice』 開発チーム(Ninja Theory Ltd)
- 『ニーア オートマタ』 UIデザインチーム(プロデュース:株式会社スクウェア・エニックス、開発:プラチナゲームズ株式会社)
- 『Cuphead』開発チーム(Studio MDHR)
- 『DRAGONBALL FighterZ』開発チーム(発売元:株式会社バンダイナムコエンターテインメント、開発:アークシステムワーク株式会社)
最優秀賞:『ニーア オートマタ』 UIデザインチーム
「受賞できたことはたいへんうれしく思っています。つね日ごろから、自分が作った作品でゲーム業界の発展に寄与したいと思っていたところなので、感極まる思いです。本作を超えるようなUIのゲームが、世にあふれてほしいと思っています」
ゲームデザイン部門
優秀賞
- 株式会社ハシラス VR開発チーム(株式会社ハシラス)
- 『囚われのパルマ』開発チーム(株式会社カプコン)
- 『AR performers』開発チーム(株式会社ユークス)
- 『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』開発チーム(株式会社スクウェア・エニックス)
- 『スプラトゥーン2』開発チーム(任天堂株式会社)
最優秀賞:『スプラトゥーン2』開発チーム
「発売から1年も経つのですが、いまでも多くのお客様に遊んでいただいているようでありがたいです。お客様の声を糧にスタッフは努力を続けてきました。この賞はその努力に対していただいたものと受け止めております。アップデートも1年限りじゃなく、12月まで延長することにしましたが、これからもますます楽しんでいただけるように尽力したいと思います」
サウンド部門
優秀賞
- 『モンスターハンター:ワールド』サウンド開発チーム(株式会社カプコン)
- 『がるメタる!』開発チーム(企画・プロデュース: DMM GAMES / 開発・ディレクション: ナウプロダクション)(合同会社DMM GAMES、株式会社ナウプロダクション)
- 『スーパーマリオ オデッセイ』開発チーム(任天堂株式会社)
- audiokinetic, Robert Brock氏(audiokinetic, Conservatory of Recording Arts and Sciences)
- 『ペルソナ5』サウンドチーム(株式会社アトラス)
最優秀賞:『ペルソナ5』サウンドチーム
「CEDECという格式ある技術的なカンファレンスで、“おしゃれサウンド”という形容で賞をいただき、たいへん恐縮しております。次回作ではゲーム業界に、技術的にも発展・貢献したと思えるようなものを作り、胸を張って授賞式に出席できるよう、日々精進してまいります」