『GUNGRAVE』に込めた想いは?
『GUNGRAVE VR COMPLETE EDITION』(以下『COMPLETE EDITION』)は、2017年12月にリリースされたガンシューティング『GUNGRAVE VR』のバランスを調整したゲームモードと、完全新規のステージで構成されたゲームモード“GUNGRAVE VR U.N”が収録されている、プレイステーション VR向けのパッケージ用ソフトだ。2004年リリースのプレイステーション2用ソフト『GUNGRAVE O.D.』(レッド・エンタテイメント)以降、長らく続編が作られなかった『GUNGRAVE』シリーズの“再始動”ということで、注目しているファンも多いことだろう。
『GUNGRAVE VR』および『COMPLETE EDITION』の企画・開発を手掛けたのは、韓国の首都ソウルの江南(カンナム)区にオフィスを構えるゲーム開発会社・IGGYMOB。出資元の親会社が日本企業で、40人以上の常勤スタッフは韓国人、日本人、アメリカ人で構成されている同社は、PC、家庭用ゲーム機用ゲームの開発に長年携わってきた30~40代のベテランスタッフを中心とした実力派デベロッパーだ。
『GUNGRAVE VR』リリースから1年経たずに『COMPLETE EDITION』をリリースすることになった理由と同作の特徴、そして、かねてより開発が噂されているプレイステーション4用ソフト『GUNGRAVE GORE』(以下 『GORE』)について、現地に飛んで直撃した。
キム・チョンホ氏
(写真・左 文中はキム)
プロデューサー
『GUNGRAVE VR』および『COMPLETE EDITION』のプロデューサー。かつて『ラグナロクオンライン』の開発に携わっていたというベテランクリエイター。
カン・テキュン氏
(写真・中央 文中はカン)
アートディレクター
ステージ背景や敵キャラクターデザイン全般を監修。既存の『GUNGRAVE』の世界観を崩さない形で『GUNGRAVE VR』および『COMPLETE EDITION』のビジュアルを構築している。
ホー・トンチョ氏
(写真・右 文中はホー)
ディレクター
同社のVRゲーム開発は『COMPLETE EDITION』が初参加となる。本作のかたわら『GORE』のディレクターも務める多忙な人物。
『GUNGRAVE』を13年ぶりに蘇らせるためのプロジェクト
――まずは『GUNGRAVE VR』の開発経緯を教えてください。
キム 本作は、当初はスマートフォン用のアクションゲームとして開発を進めていたのですが、そのデモを見た方から「コンソールで発売しませんか?」という提案をたくさんいただきました。じつのところ、モバイル版として開発していたときも、キャラクターのプロフィールデータの収集をプレイモチベーションに設定したゲームにして、『ガングレイヴ』のファンが本当に喜んでくれるのだろうかと悩んでいました。そこでグレイヴのアクションの再現に集中したほうがいいのではと思いきって方向性を変え、『GORE』の開発を始めたんです。その過程で、当時やりとりをしていたパブリッシャーから「プレイステーション VR用ソフトにしたらどうか」との提案を受けて、「13年ぶりのシリーズ新作をVRゲームで展開するのもおもしろい」と思い、『GUNGRAVE O.D.』と『GORE』の橋渡しとなるタイトルとして、開発を同時進行することにしました。
――急に方針が変わったことで、現場は混乱しなかったのでしょうか?
キム モバイル向けに開発していたときもハイクオリティーなものを作りたいという気持ちがあったので、コンソールゲームに変わってさらに表現力上がったのは、むしろ歓迎でした。
――VRゲームとして開発する際にもっとも大事にしようと思ったところは?
ホー 通常のVRゲームの開発の場合、“VRならではの体験”や空間のリッチさなどを大事にすると思いますが、私たちは“いかにグレイヴがグレイヴらしくなるのか”を重要視しました。
――『GUNGRAVE VR』は日本では2017年12月、韓国では2018年2月にダウンロード専売ソフトとしてリリースされました。ユーザーさんの反響や、ご自身の感想を教えてください。
キム プレイしたユーザーさんから「ゲームプレイがアーケードゲーム的だ」ということと、「『ガングレイヴ』のアイデンティティがよく活かされている」という反応をいただき、そこはよくできたと思っています。ただし、プレイステーション VR向けのゲームを開発するのは初めてでしたので、何ヵ所かに悔いが残りました。また、難しいとの意見もたくさんいただいていたので、『GUNGRAVE VR COMPLETE EDITION』のリリースに合わせて既存バージョンのバランスを調整したパッチも実施する予定です。
カン 開発者としてまず、グレイヴがゲームの中で動いているのを見られたことが、すごく嬉しかったです。残念だと思ったのは、やはり初のVRゲームだったのでグラフィックの最適化ができなかったことでした。この部分については、今後のアップデートや『GUNGRAVE VR U.N』で、挽回していきたいと思っています。
キム 韓国のプレイステーション VRの市場規模はまだそれほど大きくはないのですが、リリース時はほかのビッグタイトルを抑えて10週間の トップの売り上げを記録しました。VRゲームは実際にプレイする機会がないとそのおもしろさがなかなか伝わりません。『GUNGRAVE VR』のグラフィックはプレイステーション VR用ソフトの中でも最高峰の品質と自負していますが、それを実感できるのはやはりプレイした時です。7月に東京と大阪のソフマップでの体験会を行い、現在は全国のゲオの店舗で体験イベントを行っています。気になる方はぜひ足を運んでみてください。
【イベント案内】
ゲオ全国76店舗にて『GUNGRAVE VR』体験会開催中!
体験された方には「ゲオ限定 内藤泰弘デザイン特製ジャケット」をもれなくプレゼント!
開催店舗はこちらをご確認ください!!… https://t.co/syvhm4bMRT
— PROJECT GUNGRAVE (@projectGrave)
2018-07-25 20:19:41
『COMPLETE EDITION』はここが違う!
――今回の『COMPLETE EDITION』の開発およびリリースを決定した理由を教えてください。
キム リリースすること自体は早い段階から決まっていて、『GUNGRAVE VR』をリリースしてから、本格的に開発をスタートしました。
――『COMPLETE EDITION』ならではの要素は『GUNGRAVE VR U.N』に集約されていると思いますが、とくにどの要素に力を入れましたか。
ホー まずは“フルブレイク”の強化です。撃って壊せるオブジェクトの数を既存版から大幅に増やしています。既存版では2、3個だったのを10以上に……体感的には5倍以上になっています。
――そこは『COMPLETE EDITION』の意義のひとつというか、シリーズのファンも望んでいた点だと思います。それを既存版で実現できなかったのは、やはり開発期間の問題だったのでしょうか?
カン というより、開発当初は、動作の最適化基準を低く設定していたので、同時破壊数の上限をあえて抑え目にしていました。VRゲーム開発のノウハウが蓄積されてからは動作が安定したので、増やすことができました。
――あとはやはり、横スクロールパートの存在も大きいですね。なぜこのモードを入れようと考えたのでしょうか。
ホー “フルブレイク”の強みを活かしながらゲームのテンポ感も上げる施策として、一般的なVRゲームにはないユニークな視点を採用してみようということになりました。走りながら敵の群れを倒していく“1対多数”のバトルは、これまでのTPS、FPSパートでは体験できなかった部分でもあるので、力を入れて調整しています。ただ、TPSパートも同じような爽快感を得られる作りにはしています。
――グラフィックのデザイン面で『COMPLETE EDITION』ならではという要素はどのへんになりますか?
カン 新しい敵キャラクターも多数登場しますが、既存版同様、『GUNGRAVE O.D.』から自然に繋がっている世界観を楽しんでもらいたいですね。
――『GUNGRAVE VR U.N』ならではのスト―リー展開は?
キム 既存版ではシードの流通組織との野外での戦闘の体験ができましたが、今回は室内に移動してシードを生産する工場内での戦闘を経験することができます。ストーリーを表現する要素は、オープニング、エンディングのアニメーションムービー以外にも、プレイ中に流れがわかる情報を用意しています。『COMPLETE EDITION』をプレイするファンの方は、どこかのシーンで懐かしい声とセリフを聴けると思います(笑)。
――ゲームの難度についてですが、既存版では敵の耐久力が高い上に、操作ミスが許されないタイトなシーンが連続するため、ややきびしいとの印象を受けました。そのあたり、本作ではどのように調整されているのでしょうか?
キム リリースのあと、SNSや日本での試遊会を行いながら、多くのユーザー様からのフィードバックをいただきました。そのフィードバックをもとにして納得していただける程度の難易度で調整を行いました。既存の難易度で「どうしてもクリアーできない」と話していたユーザー様にも難易度を調整した事前体験会では、「何回かプレイしてみるとクリアーできそう!」と話していただきました。
――日本人ゲーマーの腕前の水準は低い?
ホー 全然そんな感じはしないです!
キム アクションゲームコントロール分野で日本人ユーザーさんはすごく上手です。
――なるほど……ゲームバランスの調整は、より遊びやすい方向と、よりチャレンジのしがいがある方向の両面でなされているということですね?
ホー そうですね。とはいえ単にイージーにしたわけではなく、攻略の余地は残しています。
――最後に、『COMPLETE EDITION』に期待を寄せるファンに向けてコメントをお願いします。
キム 既存作よりも爽快感もおもしろさも上がっています。楽しみにしていてください!
ホー グレイヴにふたたび会わせてくれたユーザーさんに「プレイしてくれてありがとう」と伝えたいです。すべての部分で楽しさを4倍、5倍以上に引き上げていきたいと思っています。
カン 『GUNGRAVE VR』を発売してから、日本ユーザーさんの意見をたくさん聞いています。いいとことはよりよく、悪いところは改善してリリースしますので、よろしくお願いします!