2018年8月4~5日の2日間、岐阜県岐阜市にて開催された、ゲームを中心とするエンターテインメントイベント“ぜんため”こと第2回“全国エンタメまつり”。本記事では、同イベント内で行われた、インディーゲーム&VRブースの模様をお届けしよう。
メイン会場となる柳ケ瀬商店街から少し離れた岐阜商工会会議所では、2階にあるホールがまるごとインディーゲームとVRのブースに。会場は数多くの来場者で溢れていた。
今回は、前回の開催時を上回る55のメーカーが参加。応募社数はこれよりも多かったそうで、昨年よりも会場は広くなったものの、残念ながら出展抽選に外れてしまったメーカーもあったのだそうだ。
東京などのイベントでもおなじみのインディーメーカーも参加しているほか、海外インディーメーカーの姿もちらほら。
また、VRブースに出展されているタイトルも非常に多彩。VTuberブームということもあり、それに付随した体感型VRタイトルも多かったのが印象に残る。
『おてんば少女と学校の迷宮』(プラム)
ここからは、出展ブースをピックアップしてご紹介。
まずは、岐阜在住の中学生である、プラム氏が制作した『おてんば少女と学校の迷宮』。このタイトルは、スクウェア・エニックスの『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』に影響され、Unityエンジンを使い、ひとりで制作したというアクションゲーム。中学生がひとりで制作したことも驚きだが、制作期間はなんと1ヵ月半(学校に通いながら!)とのことで、これまた驚愕。
「タイトルのキャラクター絵は、絵の得意な友達に描いてもらった」(プラム氏)のだそうだが、モデリングからプログラムまで、ほとんどすべてが自身の手による制作なのだという。
ゲームはまだまだ製作途中とのことだが、小さな敵をガンガン斬りながら射撃していく感じや、ボスが撃ち放つ弾幕(いわゆる“いくら”)など、たしかに『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』のエッセンスを感じる作品。プラム氏は小学生3年生で『RPGツクール』シリーズにハマり、自身のゲームを作っていく中で物足りなさを感じるようになり、「もっと自由にゲームが作りたい」と、小学4年生のころから独学でプログラミングを勉強し始めたのだそうだ。
ちなみに、プラム氏は中学校3年生。「いやあ、本当はこの夏休みにしっかり受験勉強してなくちゃいけないんですけどね(笑)」とはにかむ。
高校に進学後もゲームを制作しつつ、将来はレベルファイブかプラチナゲームズでゲームを作りたいという夢を描いているそうだ(レベルファイブは小学生のころに『ファンタジーライフ』をやり込んだからだとか)。
岐阜の地から、世界を震撼させるスーパークリエイターが生まれる日も近いのかもしれない。
『キック&ブランコ』(3Balancos)
会場の入り口付近に設置され、来場者の目を引いていたタイトルが、京都のスケルトンクルースタジオによる、3Balancosの『キック&ブランコ』。
このタイトルは実際にブランコに乗って、足にセンサーを装着して遊ぶVRのシューティングゲーム。フラフラと浮遊したような感覚を味わいながら、足をバタバタと動かして弾を飛ばすゲームなのだ。
もともとは制作リーダーが某会社に勤めていた際に(ちなみにATARIのTシャツを着ているがATARIではない)、20年ほど前に提出したゲームの企画。
しかし当時はVR技術やモーションセンサーが発展途上であり、実現できなかった。しかし最近の技術の発達と、安価に手に入る環境が生まれたことで、実現したゲームなのだとか。
プレイ自体にブランコが必要なため、いまのところ発売予定などはないとのこと。
“獺祭 酒蔵見学VR”(旭酒造)
お酒好きを唸らせるほどおいしい日本酒“獺祭”を製造する山口の酒造メーカー、旭酒造。そんなお酒のメーカーが、まさかの酒蔵見学VRを制作。
このVRソフトはその名の通り、酒蔵の環境や制作過程を見学する。従来の製法や伝統などには一切縛られず、システマチックに制作される“獺祭”ができるまでの過程が8Kのリアリティー溢れる映像で描かれている。
このVRを制作した理由としては、もっと日本酒の製造過程を知ってほしいという思いを込めているそうだ。また、海外からも注目度の高い“獺祭”は、どのような酒造りをしているのか、海外からも問い合わせが相次いでいるとのこと。
しかし日本酒の作りかたは、レシピや言葉では説明しにくい部分が多々あるそうで、だったら実際に見てもらおうじゃないかと、制作を決めたそうだ(音声は日本語と英語で選択可能)。なお、VRを体験する成人の方には、“獺祭”が1杯振る舞われた。視覚と聴覚だけでなく、味覚でもよりリアリティーが感じられる?
前年も大きな賑わいをみせたコーナーだが、さらに規模が大きくなり、東京などで開かれるインディー系のイベントに匹敵するほどの賑わいになっていたことには素直に驚いた。
また、会場に訪れていた人たちは「これはどうして作ったの?」、「どうしてこのアイデアが生まれたの?」と興味を持ちながらプレイしていたことが印象に残る。新技術と制作者の熱意が来場者に確実に伝わっているようで、なんだか胸が熱くなった。
岐阜のように、東京や大阪などと比べてゲーム系のイベントが行われる機会が多くない都市でこのようなイベントが実施されることは、ゲーム業界にきっとポジティブな影響を及ぼすに違いない。
ちなみに、基本“ぜんため”は野外イベントだが、本会場は会議所内。ひんやりと空調が効いている。最高気温予報39℃のとろけそうな暑さに包まれる中で、いっときの涼を感じに来た人も多かった(記者も超涼みました。超感謝!)。