カプコンのスタイリッシュアクション最新作『デビル メイ クライ 5』の開発陣にインタビューを実施した。本作の開発秘話をお届け。

伊津野英昭氏(いつの ひであき)

『デビル メイ クライ 5』ディレクター

岡部眞輝氏(おかべ みちてる)

『デビル メイ クライ 5』シニアプロデューサー

マシュー・ウォーカー氏(ましゅーうぉーかー)

『デビル メイ クライ 5』プロデューサー (文中はマット)

 カプコンからプレイステーション4/Xbox One/PC用に2019年春発売予定のスタイリッシュアクション『デビル メイ クライ 5』(以下、『DMC5』)。その開発を手掛けるディレクター・伊津野英昭氏、シニアプロデューサー・岡部眞輝氏、そしてプロデューサー・マシュー・ウォーカー氏にお話をうかがった。10年ぶりとなるナンバリング最新作は、どのように開発がスタートし、どんな手法で作られていくのか。その全貌をお届けする。

こちらから「作らせて」とお願いしました(伊津野)

――まず最初に、『DMC5』の開発がスタートするにいたった経緯をお聞かせください。

伊津野僕が「『DMC5』を作りたい」と言ったのがきっかけです。それで『バイオハザード』と同じ部署(第一開発部)に移籍して、両タイトルを世界戦略としてリリースしていこうと。
岡部当時の第一開発部は『バイオハザード』シリーズ中心でしたが、グローバルタイトルのプロダクションという立ち位置を、より明確にしたいという思いがありました。
伊津野なので、こちらから「作らせてもらえるなら作らせてください」とお願いして実現したプロジェクトなんです。E3(※1)でも、PVを観た人が「これなに?」って目を止めてもらえるビジュアルを用意してくださいとスタッフにお願いしました。今回はフォトリアル、『DMC』ならではの60フレームのハイスピードバトルの操作感。これをいかに両立させるかが大きな目標になっています。

※1……世界最大規模のゲーム見本市“エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ”。E3 2018は6月12日~14日(現地時間)にアメリカ・ロサンゼルスで開催された。

――いまの時代はハードの性能がかなり高くなっていますよね。だからこそ苦労されることも多いのではないでしょうか?

マットたいへんですね。省略していい部分がないんですよ。全部見えちゃうので。モデリングひとつとっても、人をスキャンするだけでなく、服もスキャンしています。

――服もスキャンするのですか!?

伊津野今回は持てる技術をすべて使って実写に限りなく近づけるつもりで制作しています。というのも、RE ENGINE(※2)のおかげで可能性が見えてきたからです。しかし、実写化には手作りでは難しい部分もあります。そのため、ネロの服も実際に作ってスキャン
し、ゲームに取り込んでいるんです。

※2……カプコンが独自開発したゲームエンジン。『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『バイオ7』)で初めて使われ、現在はさらに改良されている。

岡部近年は社内のスタジオでスキャンを行っていますが、今回フェイシャルキャプチャーに関しては初の技術を採用しています。
伊津野顔や体をスキャンしても、服だけCGぽいとかあるんですよ。見た目はきれいなのにシワがなくて、ビニールやゴムみたいに見えるとか。そこで、『DMC5』では実写化に近いレベルまでがんばろうと思っています。

実際に作られたネロの服。これをスキャンしてゲームに取り込んでいる。シワや破けている袖など、ダメージ具合の再現度に注目!

マットちなみに、『DMC5』のスキャンは海外のスタジオで行っているんですよ。
伊津野もちろんカプコンの大阪スタジオも使っていますが、本作ではアクター(俳優)の方々をロンドンを中心に採用したこともあって、ヨーロッパのスタジオも使いました。海外スタジオならではの進んだテクノロジーもあり、顔の皺がないところに表情の変化によって皺が現れる「ブレンドシェイプ」と言った新しい技術の採用にもつながりました。

――ほかにも技術的な工夫をお聞かせください。

伊津野RE ENGINEを用いた第1作『バイオ7』のときには、エフェクトは写実的な方向性が選ばれ、表現できていたんですね。ただ、『DMC5』では剣を振ったら炎のエフェクトが出るなど、より現実離れした表現も必要になります。そういったところをブラッシュアップしていかないと『DMC』にならないんですよ。

――確かに『DMC』は、派手なアクションが特徴のひとつですね。動きが激しくて早いシーンもあるから、アクションを作るところで苦労されるのですか?

伊津野前作『DMC4』までは、レスポンスを重視するため、格闘ゲームの要領でモーションをキャンセルしたりしてつなげていました。しかし、『DMC5』ではプレイヤーの入力を即座に反映させつつも、画は飛ばさないようにしています。というのも、実写相当のクオリティーで同じことをするとおかしく見えちゃうんですよね。これを僕らは“アクションの不気味の谷”と呼んでいます。

――“アクションの不気味の谷”を越えるために、どのような工夫を?

伊津野たとえば振り返るときは一瞬じゃなく、ちゃんと体重移動をして動く。でもそれをそのままやるとレスポンスが悪くなるんですよ。『バイオ7』くらいのテンポのゲームなら問題ないですが、『DMC』は高速バトルが必須なため、レスポンスをキープしながらも、実写っぽく見せたときに破綻がないように。これがかなり苦労しました。違和感をなくすためにやっているので、その苦労はプレイでは体感できないと思います(笑)。

――なるほど。プレイヤーに何も違和感を感じさせないことが大事なのですね。

伊津野前世代のハードと同じことをやっていると、気持ちよくアクションはできても、絵がパカパカしているように見えてしまい、リアルさを感じられないんです。「そこまでこだわらないくてもいいんじゃない?」と言われることもありますが、これは今回かなりこだわっているところですね。

――ビジュアル的にもアクション的にも、すごいものになりそうですね。開発スタッフに関する話もおうかがいしたいのですが、さきほど伊津野さんがやりたいという話で立ち上がったとうかがいました。マットさん、岡部さんという布陣は、伊津野さんが采配されたのですか?

伊津野いえ、竹内(※3)がこの布陣がいいんじゃないかということで決まりました。

※3……竹内潤氏。カプコンにて『鬼武者』や『ロスト プラネット』、『バイオハザード』といった人気シリーズの数々を手掛ける。『バイオ7』では開発の総責任者として活躍した。

岡部グローバルタイトルを作っていこうということで、海外の知識のあるマットが適任かなと。僕らは『オペレーションラクーンシティ』のころからずっといっしょにやっているんですけど、今回『DMC5』を僕が担当させてもらえると竹内から聞いたときに、ぜひ全世界に向けてならこの布陣でやっていきたい、という話をさせてもらいました。
マット毎日ワクワクするんですよ。『オペレーションラクーンシティ』のころから岡部さんといっしょにやっていて、その後は『バイオハザード リベレーションズ2』を。そして今回も岡部さんといっしょに担当することになって。以前のインタビューでも言ったと思うんですが、カプコンに入りたいと思って日本のことを勉強したんです。僕はカプコンが最高のゲームを出すと思ってるので。
岡部そうだね、それ前にも言ってるね(笑)。
マットとくに伊津野さんのゲームが好きだったんですよ。

――『私立ジャスティス学園』のころでしょうか?

マットそうそう! 『CAPCOM VS. SNK』もありますし、伊津野さんの作品は本当に大作ばかりですよね。そしていま、僕がついに伊津野さんといっしょに仕事ができることになり、毎日がワクワクして楽しいです。
岡部僕もカプコンには、前作の『DMC4』を開発していたころに入っているんです。入社した当初は開発に関われず残念だった記憶があったので、今回「ついにできる!」という気持ちはマットと同じです。『バイオ』もそうですけど、カプコンに入る前はただのファンでしたからね。まさか、その両方に関われるなんて、マットともども夢のような思いをしています。

――おふたりとも念願かなって、という感じだったんですね。

伊津野持ち上げてもなにも出ないんですけどね(笑)。

――(笑)。でも、やりたい人たちが集まって作っている、という空気を感じますよ。

岡部そうですね。そこがいちばん大切なところじゃないかなと思います。

――話を戻しますが、約10年ぶりなので、熱心なシリーズファンにとっては期待がかなり高まっていると思います。プレッシャーは感じますか?

伊津野そうですね。『DMC』ファンはクオリティーにきびしい方が多いです。チーム内にもうるさい人がゾロゾロいるんですよ(苦笑)。「ここはちょっと妥協して作ろうかな」て考えが少し沸いたときに「そんなんでいいんですか?」とツッコまれたり。ファンの皆さんにはもちろん、チーム内でも妥協できないプレッシャーはあります。まぁ、それが楽しいのですが。

――開発チームにも『DMC』ファンが多いのですね。シリーズと言えば、ナンバリングではないですが『DmC デビル メイ クライ』(以下、『ディーエムシー』)(※4)も、伊津野さんが監修されていましたよね。

※4……『DmC Devil May Cry』。2013年に発売された。開発はニンジャセオリー(イギリスの開発スタジオ)。

伊津野『ディーエムシー』には、いいところがたくさんありました。『DMC5』はこれまでの全『DMC』のいいとこ取りという気持ちで作っていますので、「『ディーエムシー』が好きだ!」という方にも満足していただける作品になると信じています。