健康を“はかる”ことで、人々の健康作りに貢献する健康総合企業のタニタは、『とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)』対応ツインスティックの開発プロジェクトとして、2018年6月8日にクラウドファンディングをスタート。4月24日にはセガサターン体組成計を発売、7月6日には『ポケモン』のイーブイとコラボした“ポケモン歩数計”を発売するなど、ここのところ積極的にゲーム事業への取り組みを行っている。
『バーチャロン』“ツインスティックVTX” クラウドファンディングプロジェクト
今回、タニタが開発するツインスティックについては、2月15日に発表されたプロジェクトで明かされたものだが、6月8日にクラウドファンディングプラットフォームのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)にて取り組まれることが発表された。公開されたイメージ画と情報はまだサンプルではあるが、タニタらしい質実剛健なデザインと4.5kg(予定)というズッシリとした質量を採用。さらに、従来の家庭用市販ツインスティックの可動域が4度だったところ、アーケード版と同等の8度まで再現するなど、そのスペックだけでも快適な『バーチャロン』プレイが想像できるものとなっている。
気になる支援プランはいくつか用意されているが、もっとも基本的なツインスティックVTXをひとつ入手できるプランが、55400円[税・送料込]。なお、今回のツインスティック・クラウドファンディングプロジェクトは、5000台相当となる2億7700万円相当の支援が集まった時点で目標達成となり製品の開発・製造に着手。支援期間は2018年7月30日23時59分までとなっており、期日までに目標額に満たなかった場合は、集められた支援金はすべて返金されるという、“オールオアナッシング方式”が採用されている。海外のクラウドファンディングでよくある、プロジェクトが失敗した場合に支援した金額が戻ってこないというリスクはないというわけだ。
なお、2018年7月5日には、上記“ツインスティック・プロジェクト”の始動を宣言したタニタの社長・谷田千里氏がファミ通編集部に来訪。セガゲームスとの取り組みや、現在のクラウドファンディングの詳細について語られる生放送が配信されるので、興味のある方はこちらもチェックしてもらいたい。
タニタの愉快な挑戦 またはタニタは如何にしてゲームを通じて異業種の分野に参入するようになったか
健康総合企業として名を馳せているタニタが、なぜ立て続けにゲーム事業に取り組むことになったのか。ツインスティックプロジェクト、セガサターン体組成計、それぞれの担当者に直接、話を伺った。
写真右:タニタ ブランド総合本部 新事業企画推進部 久保彬子氏(文中は久保)
−−さまざまな健康計測機器や食品関連とのコラボで有名なタニタですが、異業種とも言えるゲーム事業へ取り組むことになったきっかけは何だったのでしょうか?
久保 そもそものきっかけは、弊社社長の鶴の一声ですね。弊社の商品の課題は、普段あまり健康を気にされない方に目を向けてもらうことです。私たちはそれらについて日々考えているのですが、社長が大のゲーム好きということもあり、ゲーム好きの社員が集まってワイワイとやっているうちに、ゲームファンに弊社の商品に目を向けてもらったらどうだろうという話が出てきました。そこからさまざまな議論を重ねていった結果、今回のような形でゲーム事業を展開させていただいているというわけです。
中の人 セガサターン体組成計を発売した理由も、社長がセガさんのゲームのファンだったということがそもそもの発端なのですが、それ意外にも「毎日体重計に乗っている人って、どれだけいるんだろう」という、私たちが常日頃思っている課題が根底にありました。普段体重計に乗っていない人にはかるきっかけを提供できれば……という思いから生まれたのが、セガサターン体組成計なんです。
−−サターンの体組成計は限定ながらも通常販売でしたが、今回手掛けられるツインスティックはクラウドファンディング形式で取り組まれるということで、正直驚かされました。なぜ、クラウドファンディングでの挑戦になったのでしょうか。
久保 『バーチャロン』はファンも多く、ツインスティックもある一定の需要があると思いますが、それでも大変ニッチな商品です。そんなニッチな商品でも、「欲しい」というファンの声をカタチにするのが、メーカーである弊社の役目だと考えました。さらに、ここから先は皆さんといっしょにプロジェクトを進めるべく、今回はクラウドファンディングで支援を募ることにしました。設定した価格は決して安いものではありません。“一生使ってもらえるもの”というコンセプトのもとにゼロから金型を設計し、スティックの傾斜角や使用するパーツ類にもこだわり抜いた結果、この価格設定にさせてもらっています。
中の人 大手の企業でこのような商品の企画を立ち上げると、社内稟議を通して承認を得るまでにかなりのプロセスが必要になります。ですが、弊社のような規模感の企業であればユーザーの思いを拾い上げ、形にすることができるのではないかと考えました。もともと弊社がモノ作りをしている会社ということも、今回の企画の中では大きな強みになっていると思います。
−−久保さんは純粋な『バーチャロン』世代ではありませんよね。今回のプロジェクトの担当になられて、どのように『バーチャロン』に接してこられたのですか。
久保 前作の『電脳戦機バーチャロン マーズ』が登場したのが15年前ですから、私自身はこれまでツインスティックに触れたこともなかったですし、当然『バーチャロン』も遊んだことはありませんでした。でも、今回のプロジェクトに携わるようになってからはかなり遊びました。秋葉原のゲームセンターに行ってユーザーの方の声を直接お聞きしたり、アーケード版をプレイしたりもしました。そうしているうちに、通常のコントローラでは感じられないツインスティックの操作感に惹きこまれていき、皆さんが『バーチャロン』にはまられる魅力を知ったというわけです。
−−ちなみに、今回のツインスティックに体脂肪をはかるような付加機能は付いていないんですよね。
久保 本当はそうできればよかったと思っているのですが、強度を保ったままそのような機能を盛り込むとさらに価格が上がってしまうので、今回は純粋なコントローラとさせていただきました。ただ、海外ではプレイヤーの脈拍と連動したゲームもあるという話も聞いています。いまはまだ具体的なプランはありませんが、今後の目標として弊社の強みをこういった商品に生かす取り組みができればいいなと思っています。
−−ツインスティックはいままでタニタが手掛けてきた“はかる”商品とは違い、(いろいろな意味で)“挑む”商品だと思います。開発にあたり、これまで培ってきたノウハウが生きている点やこだわりのポイントなどがあれば教えてください。
久保 弊社が手掛ける商品は、お客様に長く使っていただくことをコンセプトのひとつとしており、商品化の際は徹底したテストを行っています。また、今回の商品は、初代アーケード版『バーチャロン』をはじめ、アミューズメントマシンのパーツ製作を数多く手掛けている三和電子さんにご協力をいただいています。ですので、安心して毎日お使いいただける商品になると自負しています。タニタの商品は10年、20年使っても壊れないと皆さんが言われているように、ツインスティックも手に入れてくれた方にきっとご満足いただけるはずです。
−−それでは、今度はセガサターン体組成計のお話をお聞きしたいと思います。つい先日、追加販売の発表があったので、ファンの方たちは一安心といったところですが、4月26日に販売を開始した後の反響はいかがでしたか。
中の人 販売開始後、すぐに完売となってしまったので「欲しいのに買えなかった」、「もっと作ってください」など、多くの声をいただきました。今回コラボさせていただいたセガさんでも買えない人が多くいらっしゃったという話を聞きましたからね。でも、多くの方に注目していただき、このような反響があったからこそ、今回の追加生産に繫げられたと思っています。
−−本商品を製作するにあたり、こだわったポイントはどこでしょうか。
中の人 商品パッケージにはこだわりました。ベースとなる商品の情報を含めつつ、パロディ的な要素も含んでいます。それから、意外と大変だった部分が本体の色の再現ですね。じつは、開発の初期段階では、セガサターンの実写画像を加工して使用するデザイン案もあったんです。簡単に言うと、サターンの写真がガラスパネルにはまっているようなイメージですね。でも、実写画像は選んだ写真によって色味が変わってしまうのと、時代的に大きなサイズで使えるデジタル画像データがほとんど存在していないので、最終的にイラストデザインで再現することになりました。ただ、ガラスにサターンの図柄をプリントする際、なかなか思った色になってくれないんです。サターンの本体色って濃いグレーなんですが、普通にグレー色をガラスにプリントしても、実際の色より薄く見えるんですよね。これまで弊社ではガラスにイラストを直接プリントするといった経験はほとんどなかったので、トライ&エラーをくり返してなんとか完成にこぎつけました。このように完成までの苦労は多かったですが、結果的に違和感のない雰囲気が再現できたのではと思っています。
−−サターン体組成計で培った技術は、新しく生産を発表されたドリームキャスト体組成計やメガドライブ体組成計にも生かされるというわけですね。
中の人 中間色であるグレー色の再現にはかなり苦労して、何度も検証を重ねてきましたからね。でも、ドリームキャストやメガドライブは白と黒なので、サターンほど再現は難しくないのかなとも思っています。このセガサターン体組成計ですが、本当は音が出るといったギミックも盛り込めたらよかったのですが、ベースとなっている体組成計がそういった仕様になっていなかったので今回は再現ができませんでした。じつは起動音が鳴る体組成計をベースにサターンの起動音を入れてみたりもしたのですが、音が入ることでサターンっぽさは増すものの見た目の再現性が高くなかったので、今回はデザイン面を優先してこの商品に落ち着きました。起動音を含め、ユーザーの方にいただいた意見は次回以降の課題にさせていただきます。
−−セガサターン体組成計に続いて、ポケモン歩数計・イーブイコラボも発表されました。こちらはどのような経緯で取り組むことになったのでしょうか。
中の人 じつは、弊社の社長は『ポケモンGO』も早くから遊んでいて、海外でしか捕まえられないポケモンも集めているほどはまっているんですよ。そこで、私たちも社長といっしょに『ポケモンGO』を始めることになったのです。遊び始めた理由は、もちろん興味本位でという部分も大きかったのですが、なぜ年配の方がこれほどはまっているんだろうというマーケティング的な側面もありました。そんな中、ポケモンさんが3月に実施していた企画“プロジェクトイーブイ”(※)の一環で、弊社にイーブイがやって来たことから、今回の商品化に繫がりました。
※…さまざまな活動を通じて、イーブイを応援する期間限定のプロジェクト。2018年3月14日〜3月31日の期間、“イーブイの会社見学”企画が行われていた。
プロジェクトイーブイ特設サイト http://www.pokemon.jp/special/project_eevee/
−−この歩数計ですが、“ポケモンGO Plus”のような連動機能は搭載されているのでしょうか。
中の人 今回の商品は純粋な歩数計です。連動機能については社長も強く言っていましたが、商品に通信機能を盛り込むとなると検証も含めて時間がかかってしまうんです。今回はできるだけ早く商品化を目指したいという思いもあって、シンプルな歩数計にしました。でも、複雑な設定をする必要がないので、購入して封を開けたらすぐに使うことができます。『ポケモンGO』って、歩いた距離はわかるけど、じつは歩数はカウントできないので、今回の“ポケモン歩数計”をいっしょに持ち歩いて、少しでも健康に気をつけてもらうきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。
−−2000年前後には、歩数機能を盛り込んだ携帯ゲーム機もありました。このような遊びの要素を盛り込んだ歩数計などを開発される考えなどはありませんか?
中の人 現在、スマホと連動して計測したデータを送信できるものはありますが、ログを取るだけと実用性メインの機能ですね。じつは、弊社でもかなり前に、“ポポロ”という名前の、育成型歩数計を販売していたことがあります。当時はたまごっちブームということもあり、かなり話題になった商品なのですが、その後はこういったエンタメ性のある商品には取り組んできませんでした。でも、今回ツインスティックやセガサターン体組成計、ポケモン歩数計などにも取り組ませてもらっているので、もしかしたらこの先、そういった楽しめる機能を持った商品などに取り組むかもしれません。
−−立て続けのゲーム関連商品の話題で、ゲームファンたちも最近のタニタの動向に注目していると思います。今後もゲームファンが喜びそうな企画などは考えられていますか?
久保 いまはまだ具体的にお話できることはありませんが、新しい健康づくりや健康のきっかけといったものは、これからもタニタとして目指していきます。楽しみながら健康を目指すというのは、今後の重要なキーワードだと思っているので、もっとおもしろくて楽しく健康を目指せる取り組みができたらいいですね。まずは今回の体組成計や歩数計、ツインスティックのプロジェクトを通じてタニタのことを知っていただき、健康を意識してもらうきっかけになってもらえれば嬉しいです。
中の人 今回のツインスティックのプロジェクトですが、もともとは就業後にゲーム好きの仲間が集まってゲームを楽しんでいたところから始まったという経緯があります。言わば、部活のようなものですね。ゲームを通じた活動は社員間のコミュニケーションにも有効で、非常におもしろい取り組みだと思っています。つい最近、三和電子さんのジョイスティックを購入させていただいたのですが、そのせいか最近は格闘ゲーム部のようなものも動き始めました。この活動を突き詰めていくと、また社長が何かやろうと言い出すかもしれませんね(笑)。
7月5日の生放送には、中の人と久保氏も出演
前述のタニタ社長出演のファミ通生放送には、今回のインタビューに登場した“タニタ公式Twitter 中の人”と、久保氏も登場予定とのこと。実際に商品企画に携わっているふたりから、どんな話が飛び出すのか。また、放送終了後にはファミ通チャンネル会員向けに、タニタ社長と視聴者との『電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)』対戦企画も予定。会員でバーチャロン好きな人は、ぜひとも視聴&参加しよう。
■番組概要■
媒体:ニコニコ生放送、YouTube Live
番組名:【ファミ通】タニタ社長と『とある魔術の電脳戦機』を遊ぼう
放送日時:2018年7月5日(木)19:00〜20:30(90分)
テーマ:ツインスティック VTX(Version TANITA eXtra)、『電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)』
出演:林克彦、谷田千里、タニタスタッフ、セガゲームススタッフ
放送ページ:
ニコ生はコチラ
YouTube Liveはコチラ
媒体:ニコニコ生放送(※ファミ通チャンネル会員向けオマケ配信)
番組名:【ファミ通】タニタ社長と『とある魔術の電脳戦機』を遊ぼう 二次会
放送日時:2018年7月5日(木)20:30〜21:30(60分)
テーマ:ツインスティック VTX(Version TANITA eXtra)、『電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)』
出演:林克彦、谷田千里、タニタスタッフ、セガゲームススタッフ
放送ページ:
ニコ生はコチラ