今年(2018年)に入り、セガとタニタのコラボ商品“セガサターン体組成計”の発売や、“ツインスティックプロジェクト”の始動など、続々と新たな企画が立ち上がり、驚いたセガファンの方々も多いのではないだろうか。それらの企画の発端となったのが、セガとタニタ、両社のTwitter上でのやり取りだ。

 数ある企業Twitterの中でも、セガとタニタの仲睦まじさは際立っている。以前より、ゆる~いやり取りで話題を集め、企業対抗バーチャロン大会などを開催するなど、活発に交流していた。両社をフォローしている人にとっては、そのやり取りはもはやおなじみのものだが、こう疑問に思ったことはないだろうか。「そういえば……いつから、セガとタニタって仲いいんだっけ?」

 というわけで、本記事では、セガとタニタの公式Twitterを担当している“中の人”に、直撃インタビュー。交流が始まったきっかけや、コラボ企画を実施するにいたったきっかけ、今後の野望(!?)など、さまざまなお話をうかがった。
※インタビュー文中では便宣上、セガの中の人を“セガ”、タニタの中の人を“タニタ”と記載しています

セガとタニタはいつから仲よし? バーチャロン朝練がセガサターン体組成計につながり、ツインスティック企画が動き出すまでを、Twitterの中の人たちに訊く_03
左:セガさん
右:タニタさん

セガとタニタ、出会いのきっかけを作ったのはプリクラ?

――本日は、セガさんとタニタさん、おふたりの馴れ初めなどをうかがいたいのですが……その前に、まずはおふたりがセガのゲームに親しむようになったのは、いつからだったかを教えてください。

セガ私はドリームキャストからですね。ドリームキャストを2台購入してから周辺機器の魅力にハマり、アーケードゲームもプレイするようになりました。とくにプレイしていたのは『ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド』です。一家に1台パソコンがあるような時代ではなかったので、タイピングを速くできる人が少なくて……当時人事部にいましたが、私はタイピングが速かったので、アーケード版の社内ロケテストに参加したところ、いつのまにか背後にギャラリーができていて(笑)。家庭用版のPR活動なども手伝うようになり、その影響で、ドリームキャストの周辺機器も集めるようになりました。“ドリームキャスト・キーボード”や、“つりコントローラ”、“マラカスコントローラ”などには、アーケードゲームとともにすごく思い入れがありますね。

――初めからPR担当ではなかったんですね! ちなみに、そもそもセガに入社しようと思ったのは、どういった理由からだったんですか?

セガ私は昔から世界中の人とつながるということに興味があり、ワープロの時代からインターネットにつないで楽しんでいました。ですので、ドリームキャストが通信の面で最先端を行っていて、“世界中の子どもたちが、インターネットでつながって、遊べるようになる”という話に惹かれて、「セガ、いいな!」と思ったんです。

――初期のインターネットに惹かれたセガさんが、人とつながるSNSの担当をしているというのは、運命的なものを感じます。では、タニタさんがセガのゲームに触れたのは、いつのことでしたか?

タニタ私はですね……子どものころの話ですが、あれが初めての人生の選択だったと思うんです。買うのはプレイステーションか、セガサターンかと。当時、一般的な家庭なら、基本的にゲームハードは1台で、なかなか新しいものは買えませんでしたよね。それで、うちにはスーパーファミコンがあって、ようやく2台目が買える! というときの選択だったので、迷いに迷いました。

――そうですよねえ。ハードは、ほいほいと買ってもらえるものではありませんでした。

タニタ決め手は、やっぱり『バーチャファイター2』ですね。あのころは格ゲーブームでしたし、もともと格ゲーをめっちゃやっていたので。いまでも覚えています、クリスマスに買いに行ったことを。格闘ゲーム1本だけでは正直不安だったので、シューティングゲームも買っておこうと思って、『極上パロディウスだ! DELUXE PACK』もいっしょに買いました(笑)。ですので、セガサターンには強い思い入れがありますね。

――そんなタニタさんは、なぜタニタに入社したのですか?

タニタじつは私は、もともと健康オタクでして。

セガえっ、そうなんですか?

タニタそうなんですよ、こう見えて。たとえばご飯を炊くときに、食物繊維が豊富に含まれた水をわざわざ買って、それで炊いていました(笑)。部活でもスポーツをやっていましたし、大学のころからすでに体組成計に乗って、自分のコンディションを管理していましたよ。

――タニタに入社されたのも納得の健康オタクっぷりですね(笑)。では、入社後に、企業の公式Twitterを担当するようになった経緯はどのようなものでしょうか? まずはタニタさんからお聞かせください。

タニタ私が始めたのは2011年1月ですね。当時は、NHKさんなどがTwitterを活用していて、それを見て、タニタもやればいいじゃないかと思いまして。無料でできますし。

――始めたころ、社内からの反応はいかがでした?

タニタ反応はまったくなかったですね(笑)。なんにもないです。「やります」と言ったら、「そうなの、やれば」くらいで(笑)。みんなTwitterのことをあまり知らなかったんだと思います。

――もともと、広報を担当されていたんですか?

タニタいえ、当時、社長室にいました。私しかいなかったんですけど(笑)。社長(谷田千里氏)には、若い人にタニタの体組成計をアピールしたいという思いがあって、「君、若いんだから、こっちに来なさいよ」と言われて呼ばれまして。当時はニコニコ動画がとても流行していたので、1年間、ニコニコ動画を作りました。

――社長室でニコニコ動画ですか!?

タニタそれが入社2年目でした。動画なんか作ったことなかったのに(笑)。その流れで、とりあえずTwitterもやってみようかと。その後、営業に異動したのですが、兼任となりながらもずーっとTwitterを続け、現在にいたります。

――交代することもなく、ずっと担当しているというのはすごいですね。

タニタ交代したい人もいないですし、交代しろとも言われませんでしたし(笑)。当時はみんな、あまり見ていなかったんですよ、自分の会社の企業アカウントを。漫画『シャープさんとタニタくん』が世に出たころに、ようやく社内で少しずつ知られたくらいです。「セガさんのゲームのことなんて、つぶやいていいのか」と言われることもありますよ、ずっと前から話題にしているのに(笑)。

――(笑)。一方のセガさんは、いつごろからTwitterを始められたのですか?

セガ2012年の12月からTwitterを始めたので、タニタさんよりは少し遅めでしたね。SNSを企業でやることがふつうになってきた時代で、各タイトルのアカウントも動き出したころだったので、だったらセガ全体のアカウントも作りましょうと。そこで、たまたま私のFacebookを見た役員に、「おもしろいから、ぜひキミに」ということで、担当に選ばれたんです。

――プライベートでのFacebook投稿を評価されての抜擢だったんですね!

セガそういう経緯で、担当になりました(笑)。

――両社ともに、ゆるめのツイートが特徴だと思うのですが、最初からそのような方針だったのでしょうか?

セガそうですね、だんだんと変わっていったかもしれません。最初のころは上司の確認を取っていたんですが、近年は信頼してもらっていて、確認の必要なく、かなり自由にツイートできるようになりました。そこから、他社さんの公式Twitterなどとやり取りをしたり、ハッシュタグに乗って何かネタをやったりセガ大喜利などをするようになってから、反響が大きくなりましたね。

タニタ私は最初から自由にはやっていましたが、おもしろいことをやろうとは考えていませんでした。お客様と、「こんにちは」とか「天気がいいですね」とか、コミュニケーションが取れればいいかなと。ただ、続けているうちに、「ふつうのことをやっていても、誰も見てくれないな」と思うようになりまして。少しずつ、自分の色や会社のおもしろさを出していこうと考えるようになりました。

記念すべきタニタさんの初ツイートと、初めて間もないころのツイート。

――そういった取り組みが、セガさん、タニタさんが出会うことにつながっていくのでしょうか。

タニタ最初はTwitter上でのやり取りだけでしたね。

セガたしか最初は、“プリクラ”の話題だったと思います。タニタさんが“5万リツイートされたら、ひとりでプリクラを撮りにいく”という企画をやっていたところ、プリクラといえば当社だろうということで、乗っかってみたんです。

タニタ5万リツイートなんていくわけない、と思っていたのですが……まさか本当に達成するとは。実際に撮りにいきました。

セガ連絡もなく、急につぶやかれたので、こちらも慌てて。「タニタさんの本社から近いのは池袋GiGOかな!?」と予想したり(笑)。

――Twitter上ではなく、実際にお会いしたのはいつごろでしょうか?

タニタ企業Twitter担当者の懇親会というのがありまして、そこで幹事をされていたのがセガさんだったんですよ。そこで初めてお会いしました。

セガ2014年に、私が“妄想エクストリーム出社”(妄想で凄まじい出社を行うという、大喜利の一種)というものを、Twitter上で企画し、いろいろな会社の皆さんにご参加いただいたんです。その打ち上げとして、懇親会を開催したんですよ。

タニタ本当にうれしかったですし、とても楽しかったですよ。企画も立ててくださって、幹事まで担当してくださって。

セガとタニタはいつから仲よし? バーチャロン朝練がセガサターン体組成計につながり、ツインスティック企画が動き出すまでを、Twitterの中の人たちに訊く_02

――お互いのTwitterに関して、好きなポイントはどこですか?

セガタニタさんは、伏線を張るのがうまいですね。何気ない言葉でも、後に大きなことにつながっていたりして、行動力と実行力がすばらしいです。Twitterをしっかりとビジネスにつなげられる会社というのは、なかなかないと思います。そして7年近く企業アカウントのトップを走り続けながらぶれない体幹! ノビノビとしていて、無理をしていないのがすごいです。さすが健康企業タニタさんです。

タニタベタ褒めですね(笑)。セガさんは、いろいろなセガ関連のアカウントを見ているということもあり、全体をまとめるのが上手ですよね。ハッシュタグで何かネタをやるにしても、それをまとめてくださって。それでいて、ネタもどんどん投下してくるので、オールラウンダーだと思いますよ。

ガチの『バーチャロン』対決、そしてまさかの“セガサターン体組成計”商品化

――セガさんとタニタさんと言えば、やはり『電脳戦機バーチャロン』(以下、『バーチャロン』)に関する取り組みが印象的ですが、なぜその取り組みが始まったのでしょうか?

タニタ社長の谷田は、もともと『バーチャロン』シリーズが大好きなんですよ。

セガ以前お話しさせていただいたときにも、谷田社長は「『ファンタシースター 千年紀の終りに』が大好き」ですとか、「セガ・マークIII、メガドライブ、セガサターンで遊んでいた」ということを熱心に語ってくださって。そのときから、谷田社長の愛は本物なんだなと感じていました。

タニタかなりシンプルなお話なんですよ。社長が『バーチャロン』が好きだから、社内に“『バーチャロン』部”ができたと(笑)。タニタにはミニ四駆部もありますし、いまはいろいろなゲーム部もあります。そういった遊びを通じたコミュニケーションに、社長は興味を持っているんですよ。

セガせっかく部活が立ち上がったのであれば、ぜひ対戦しましょうというお話になり、“新春『バーチャロン』大会”を実施したんですよ。最初は気軽に遊べればいいかな、と思っていたところ、タニタ側は谷田社長が出場されるとお聞きしまして……。であれば、こちらも手加減や忖度はなしでいかなければと、プロデューサーの亙重郎を始めとした、長年『バーチャロン』の制作に関わった歴戦のスタッフたちに参戦を要請しました。

・“新春『バーチャロン』大会”詳細ページ
http://vo-index.sega.jp/special/vstanita.html

――大会では、タニタさんも勝利を飾っていましたが、大会に向けて練習されたのでしょうか?

タニタみっちり練習しましたよ。朝練しました。

――『バーチャロン』の朝練!!

タニタ会社が始業する前に、朝早く会社へ行き、社長の谷田と朝練しました(笑)。本当ですよ、朝7時から8時まで。夜もやりました。あの練習がなければ、負けていたと思います。あそこで勝利できたことが、“セガサターン体組成計”の実現につながったんですよ。

――“セガサターン体組成計”は、もともと企画を出されていたんですよね?

タニタ1年前に企画は出していましたが、社内からは「大丈夫? これは売れるの?」という声が大きかったですね。でも、セガサターンファンには受け入れられるはず、とは思っていました。ただ、しっかりと温めていた企画ではあるので、セガさんといろいろな取り組みが実現したこのタイミングで、「商品化する」と言い切ろうと決断したんです。

――“セガサターン体組成計”のお話を聞いたとき、セガさんはどう思われましたか?

セガこれまでもTwitter上で、さまざまな企業さんとコラボを企画しましたが、タイムライン上だけでなく「何か商品を作りたい」という思いはずっと持っていました。ですので、絶対に実現したいと私も思っていましたし、「売れるだろう」とも思っていたのですが、前例がないものですから、なかなかたいへんでしたよね。

――キーホルダーやタオルといったグッズではなく、体組成計ですもんね。それは例がない……。

セガそれなら、セガファンの声を聞いて、実現への後押しにしようと思いました。そこで、2016年に開催された“セガフェス”に「出る?」とTwitterでタニタさんに聞いたら、「出ます」とおっしゃったので、タニタさんの出演が決まりまして。

――そのフットワークがさすがですよね(笑)。

セガ異業種の方が突然セガフェスで生放送初出演! ということで、社内外の調整が大変でした(笑)。その後、“セガフェス2018”で再度出演していただき、いよいよ商品化が決定しました。やはり、セガファンが集う場で、実物を展示しお客さまに手にとっていただけるように見せることができたのが、いちばんうれしかったですね。皆さんの反応や興奮もリアルで知ることができました。

セガとタニタはいつから仲よし? バーチャロン朝練がセガサターン体組成計につながり、ツインスティック企画が動き出すまでを、Twitterの中の人たちに訊く_01
セガフェスに颯爽と登場し、セガサターン体組成計のサンプルを披露したタニタさん。会場は拍手に包まれた。

――“セガサターン体組成計”を作るにあたり、苦労などはありましたか?

タニタデザインを何回も変更しました。もともとは、セガサターンの実物の写真をはめ込んでいたんですよ。しかしそれでは、どうも色がうまく出なかったんです。そこで、イラストっぽくすることで、リアリティーを上げることができました。また、イラストをガラスに印刷しているのですが、そのままセガサターンのグレー色で印刷しても、ガラスは透明ではないので、少し色の見えかたが変わるんです。その調整にも苦労しました。ガラスに印刷することはあまりないので、新しいノウハウが得られて、非常によかったなと思います。

――結果、初回生産台数の1122台は、すでに完売したそうですね。

タニタおかげさまで、すぐに完売となりました。

セガ私も手に入れられなかったんですよ……。早く追加生産してほしい……。

1122台のうちの1台は、週刊ファミ通の編集長が買いました。

※このインタビューの実施後、セガサターン体組成計の再販が決定! 2018年6月15日より予約受付がスタートした。タニタオンラインショップ、ヴィレッジヴァンガードオンラインストアで取り扱っている。詳細は下記の記事にて。

タニタふだん、体組成計が売り切れるなんてことはあまりないんですよ。工場の方々にお会いした際も「売り切れって本当!?」と驚かれるほどでした。

――勝因は、どこにあったと思いますか?

タニタやはり、ファンの方々に刺さるように、パッケージの箱までこだわって作った点が、大きな反響を得るきっかけになったのかな、と個人的には思っています。あと、買われた方の世代は、やはり30代~40代の、健康を気にしなければならないタイミングの方だと思います。体組成計に乗るという行為は、ちょっと気が引けるものなのですが、それでも「セガサターンが好きだから」と、これを機に乗り始めてくれるのは、うれしいですね。

――確かに、体組成計に足を乗せるのって、ちょっと勇気が要りますよね……。

タニタちょっとでも、そのハードルが下がれば、タニタとしてはそれだけでうれしいので。

――“セガフェス2018”のトークでは、セガサターン以外の体組成計も作りたいというお話でしたが……?

タニタセガサターン体組成計は、どれだけの実績が残せるのか、というテストも兼ねていました。今年は、メガドライブは30周年、ドリームキャストは20周年ですし。

セガ“セガフェス2018”の、メガドライブとドリームキャストの周年展示をじっくり見ていただきましたしね!

タニタ前向きに考えていきたいですね。

※このインタビューの実施後、メガドライブモデル&ドリームキャストモデル体組成計の商品化が正式決定! 続報が楽しみだ。