『オクトパストラベラー』の高橋真志プロデューサーと宮内継介ディレクターに直撃インタビュー!

 2018年7月13日にスクウェア・エニックスから発売を迎える、Nintendo Switch用ソフト『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)』。スクウェア・エニックスの完全新作RPGで、8人の主人公が選べる自由度、主人公それぞれが持つフィールドコマンド、独特の戦略性が味わえるコマンドバトル、ドット絵に3DCGの効果を加えた“HD-2D”など、王道のRPGのスタイルを踏襲しながらも、最新技術やノウハウを惜しみなく投入したタイトルになっている。本作は、E3直前に配信された“Nintendo Direct: E3 2018”の映像の中で、製品版にデータが引き継げる3時間プレイ可能な体験版“Prologue Demo”の配信を発表。今回、この体験版配信の意図を含め、本作についてインタビューを行った。

写真右から高橋真志氏、宮内継介氏。

高橋真志氏(たかはし まさし)

スクウェア・エニックス所属。本作のプロデューサー。(文中は高橋)(※高橋氏の“高”は、本来は“はしごだか”です)

宮内継介氏(みやうち けいすけ)

アクワイア所属。本作のディレクター。(文中は宮内)

――今回、Nintendo Switch専用ソフトでマルチプラットフォームにしなかった理由からお聞きできますか?

高橋 『ブレイブリー』シリーズで任天堂さんとのいい関係があったことが大きいですね。また、世界で展開するにあたって、このゲームのスタイルにはNintendo Switchがいちばん適しているだろうということで選ばせていただきました。

――HD-2Dを採用した理由は?

高橋 1985年生まれの僕と、1984年生まれの宮内さんを始め、開発チームの中にも同世代の人が多いんですが、僕らはスーパーファミコンの黄金期で育った世代で、僕らがいちばん好きだったゲームを、自分たちの手で作りたいという情熱で作り上げたというのが大きいと思います。

――こういった王道のRPGを作ることになったのは、開発のアクワイアとしては、最初からオーダーがあったのか、それともベースからいっしょに考えたのか、どちらなのでしょうか?

宮内 いっしょに考えていった、と言えると思います。3Dを活用したドット絵のRPGを作るというのは最初から決まっていて、王道というコンセプトなどもいただいていました。それで、グラフィックを詰めていくのと同じ段階で、長い期間をかけてミーティングをしてゲームシステムも突き詰めていったんです。それこそ、毎週3回ミーティングしていたときもありましたし、多いときは12時間近く話していたときもありました(苦笑)。

高橋 一度作ったけれども、全部捨ててしまったといったアイデアもありましたね。

――スクウェア・エニックスで8人の主人公と言うと、『ロマンシング サ・ガ』(以下、『ロマサガ』)を思い出しますが、意識したところはあるのでしょうか?

高橋 ゲームの内容については意識したということはないのですが、8人の主人公が選べるというところはたしかに着想を得ています。『オクトパストラベラー』というゲームは、完全に新しいゲームとして発表するものですので、まず、どういうゲームなのかをゲームファンにわかりやすく伝えられる何かがないといけないと考えまして。いろいろなシステムなどを考えている中で、「主人公が選べるというゲームは最近ないし、そういうゲームをやりたいよね」とか、「主人公が選べるとおもしろいんじゃないか」といった話が出て、それに合わせた最適なシステムを考えた中で、いちばんうまくハマって、これならおもしろくなりそうと確信を持てたのが、今回のシステムでした。

――宮内さんは『ロマサガ』は意識しましたか?

宮内 この話が出たときに『ロマサガ』があったわけじゃなく、あとから「そういえば、これは『ロマサガ』に似ているんじゃない?」という話が出たくらい、意識はしていませんでした。というのは、現在の形に帰結するまでに、けっこういろいろなアイデアがあって、その道筋をたどって現在のシステムに到達したので。

高橋 そういえばそうでした。最初から主人公が選べるという前提で、12人(の主人公)という話があって、それが9人になったりしたんですね。それでバランス的に8人に落ち着いたんですが、「8人になると『ロマサガ』に近くなっちゃうな」という話をしていたくらいでしたね。

宮内 ですので、自分たち(アクワイア)が意識したということもないですし、浅野さん、高橋さんが意識したということもないんじゃないかな。ただ、形になってからは、似ているという話はよく聞くようになりましたね。

高橋 『ロマサガ』は大好きですし、リスペクトしているので、それに並ぼうとか迎合しようとするという意識はなくて、新しいゲームを作ろうという意識でした。

――2017年9月に配信した先行体験版で、8人の主人公の中からオルベリクとプリムロゼというふたりが選ばれた理由は?

高橋 いちばん大きいのが、このゲームの特徴であるフィールドコマンドを楽しんでほしいというのが大きかったです。8人の中でわかりやすく、おもしろさを感じてもらえるのがこのふたりだなと思ったんです。まず、誰にでもバトルができるキャラクターと、連れ回せるというところが静止画では伝わらない、遊んでみないとわからないという部分だったので、体験版に入れたかったというのが大きい理由ですね。さらに言うと、8人のキャラクターの出身地が固まっていたので、隣り合ったエリアであれば仲間にするところまで触っていただける、というのもありました。

――前回の体験版を遊んだ人に、今回の体験版で注目してほしいところは?

宮内 やはりグラフィックが自慢なので、今回の体験版で見られるようになった、川や雪などのいろいろな地方を見てほしいですね。それから、パーティーメンバー4人でのバトルも初めて体験できるようになっているので、このRPGで目指した戦略性が体験してもらえるかなと思います。

――(前回の体験版よりも先までプレイをしていますが)けっこう難易度が高いように感じます。難度調整はどのように意識をしましたか?

宮内 難しくしたいというより、簡単にはしたくないということを考えていました。

高橋 Aボタンを押すだけで進むようなゲームにはしたくなかったんです。バランス調整はすごく難しくて、8人の主人公の中から誰を選んだかによってスタート地点が変わるので、どのように調整するのか悩みました。

宮内 人によって難易度の感じかたが違うのが難しくて、テストプレイの際に高橋さんと、浅野さんと、自分とで、それぞれ難しいと言うポイントも違ったんです。難しいと感じている時点でのプレイ時間がどれくらいなのかわからないですが、攻略法にたどり着けていないから難しいと感じているのかもしれないし、単純に難しいところに行き当たっているのかもしれませんが、その難しさの感じかたはプレイする人によって変わってくるのかなと。ただ、しっかり世界に入り込んでプレイして、フィールドコマンドを使えば使うほど有利になります。漫然と進んだ結果難しく感じるようなら、それは狙い通りですね。

高橋 そうですね。昨今のRPGと比べて難しいのはそのあたりだと思います。ちゃんと推奨レベルに到達して、アイテムや装備を買い揃えて、フィールドコマンドで準備をすれば、ぜんぜん難しくはありません。その手間を惜しんでも先に進めますが、そのぶん難度が上がって歯応えも増していきます。

――8人の主人公の中から誰を選ぶかによって難易度は変わりますか?

宮内 あまり変わらないように気をつけました。と言っても、同じような強さの敵が出現するわけではなくて、スタート地点に近いところでは、敵の弱点などで主人公が活躍できるようにしているんです。

高橋 すべてのキャラクターでストーリーを楽しんでほしいので、“強いから選ばれる”、“弱いから選ばれない”ということがないようにしています。すべてのキャラクターが4人での旅でもひとり旅でも活躍できるような調整をしています。

――バランス調整はどのような考えで行われたのでしょうか?

宮内 作品の舞台を大きく分けると地方が8つあるのですが、その中でさらにブロックで区切って難度を決めています。その後、そうして区切った地域を実際に回ってみて、ブロックごとの難度のバランスを取っています。あとは、ボス戦などで理不尽なものがあったら、そういった部分も調整しました。ですから、大きな調整と細かい調整の二段構えでバランスを整えています。

高橋 先ほどもお話したように、テストプレイをしっかりとしています。デバッグ期間の前にできるだけ多くの人にテストプレイとして3周くらいクリアーしてもらって、どのあたりを理不尽に感じたか、使わなかったアビリティーはどれか、といったフィードバックや、要望を細かく聞いて、その意見の中から反映するものを取捨選択をしながら、内容をブラッシュアップしていきました。

――8人が全員集合した後は、統合シナリオになるのでしょうか、個別のシナリオになるのでしょうか?

高橋 それはやってみてのお楽しみですね(笑)。

――今回主人公が8人いますが、それぞれジョブが決まった経緯はあるのでしょうか?

高橋 ゲームとしてまとまりがなければいけないので、全体のバランスを考えながら決めました。まず8人をアタッカー、ヒーラー、サポーターみたいに分類して、さらに魔法系、物理系といった具合に細かく分けて、バランスを取ったんです。地に足がついた世界観を目指したので、そこからアタッカー系ならどういうジョブが必要か、中世ファンタジーにはどんな職業がありそうかを考えてキャラクターに割り当てました。

――確かに、魔法使いらしい魔法使いなどはいないですね。

高橋 そうなんですよ。学者が研究したある呪文を詠唱するといった感じなので、魔法使いがいるというわけではないんです。

――体験版のフィードバックなどで国内と海外の反応に違いはありましたか?

高橋 いたっていないところは日本からも海外からもご指摘がありました。JRPGが好きな人の勘どころが日本と海外でズレてしまって僕たちの感覚で作っていたものが海外ではウケない、ということになってしまうとたいへんだなと思っていたのですが、逆にビックリするくらい反応は同じでしたね。あの体験版でフィードバックを受けられたということによって、自信をもってリリースまでたどり着けたなと思います。

――今回のE3で海外メディアから取材を受けていると思いますが、珍しい質問はありましたか?

高橋 旅がテーマなので、オーストラリアの方から「オーストラリアに来たことはありますか?」と質問されたり、「どんな旅が好きですか?」みたいな質問がありました(笑)。僕らの目がぜんぜん届いていないような地域のメディアの方も、体験版をしっかり遊んでくださってゲームの内容を理解されていて、答えやすいような質問を用意してもらったので、E3に来てよかったなと思いました。

宣伝スタッフ おもしろいのが、海外のメディアの方からも皆さん(国内メディア)と似ている質問をされたので、気になる部分は万国共通なんだなと思って聞いていました。

高橋 「8人にした理由は?」や「どういうところからHD-2Dのドット絵が生まれた?」とか、そういう質問が多かったですね。

――フィードバックが世界共通だったのといっしょで、質問も同じようなものだったと。

高橋 すごくうれしく思いました。

宮内 フィードバックに関する質問も、軒並みいただいたものと似ていましたね。

――そもそも“旅”をテーマにした理由は?

高橋 『ブレイブリー』シリーズとも『ドラゴンクエスト』とも『ファイナルファンタジー』とも違う、新しいゲームを作ろうと思ったときに、プレイヤーがストーリーラインにしばられずに、ロールプレイできるものしようというのが最大のコンセプトでした。それを実現するためにはどう表現すればいいのか考えた結果が“旅”でした。風景や、出会った人など、すべてを含めて“旅”ということにしたんです。

宮内 “王道のRPG”、“ドットのグラフィック”ということは決まっていたのですが、“旅”というテーマは最初から決まっていたわけではなくて、企画を考えている途中に主人公が8人に決まり、そこから、このゲームは“旅”というテーマでまとめるといいのかなと思ったのがきっかけですね。“旅”というキーワードが決まってからは、町の人の配置や、旅をしていると感じられるように風景を切り換えていくといったアイデアもまとまりました。

――確かに風景がきれいなので、旅行をしている感覚がありますね。

宮内 旅は行き先の景色を楽しめるということが重要なので、地味な旅にはしたくなったんです。そこで、違う地域に行ったらガラッと景色が変わるようにこだわりました。

――フィールドコマンドでNPCに干渉できることでNPCにも個性が出ているように感じたのですが、これは意識されていたのでしょうか?

宮内 はい、意識したところですね。フィールドコマンドを入れることは最初のころから決まっていました。その理由は、プレイヤーが決まった場所に行って、決まった人と話してイベントをクリアーしていくのは旅ではなくて、決められた冒険をしているという感じが強いからです。そうではなくて、旅先で出会う村人や、町人がゲームの世界に息づいているように思えたときに旅というのは感じられるので、プレイヤーが自分から世界に対してアプローチする方向に工夫できないかと考えました。それは現実も同じで、E3で現地の方や、通訳さんと仲良くなったりするとすごくうれしくなりました。そういったことを大事にしたかったんです。

――ちなみに、現状での8人の主人公の人気は?

高橋 じつは、差がぜんぜんないんですよ。ユーザーさんにアンケートを取ったことはないんですけど、開発チームやその近いまわりの人に聞くと、偏りなくきれいに分かれていて。それは8人のキャラクターを作ることが決まった当初から目標としていたところで、こちらでこの人が主人公でほかはサブと決めてしまうのではなくて「このキャラクターが好きだから主人公に選ぼう」という感じにしたかったんですよね。できるだけ、キャラクターそれぞれに個性があって、なおかつ能力差もなく、バトルでもフィールドでも活躍できるようということを考えていたので、いまのところはそれがうまく実現できたのかなと思います。でも、リリース後に人気が偏るのもそれはそれで楽しみですね。

――おふたりのイチオシのキャラクターは?

宮内 アーフェンですね。彼は裏表がない性格で、決断するときにも間がないので、イベントを作っているときも楽しかったですね。

高橋 剣士のオルベリクが好きですね。長い期間ゲームを作ってきた中で、最初にできたキャラクターで、物語も最初に完成したので思い入れもあります。キャラクター自体は当初から作ってあって、設定が変わりながらいまの形に落ち着いたんですけど、そういったいろいろな過去のオルベリクが自分の頭の中にいるので、思い出深いキャラクターでもありますね。

――タイトルの“OCTOPATH”という言葉に込められた意味をお教えください。

高橋 タコ(octopus)ではなく、octo(8つの)とpath(道)で、8つの道というのを表しています。ローカライズチームにも手伝っていただきながらいろいろなアイデアを出したのですが、8人の主人公というのがいちばんの特徴ですから、8人が歩く道、つまり8つの物語というのをタイトルで再現しようと考えました。あと、全世界同時に発売することは決めていたので英語じゃないといけない、さらに日本人にも覚えやすいものでなければいけなかったので、日本でも馴染みのある“オクトパス”という耳に残りやすい音の造語にしたんです。

――その苦労のかいあってすごく覚えやすいです。でも、海外のユーザーから「綴りが間違っている」と指摘されたりしませんか?

高橋 海外のユーザーさんのTwitterでの発言などもチェックしているのですが、「そういう意味なんだ」と理解してくださっているのをよく目にします。

――“OCTOPATH”にはキャラクターの名前の頭文字が関わっていると思うのですが、それは公表してもいいものなのでしょうか?

高橋 隠すことでもないですし、それは意識して考えましたね。

――発表時はタイトルに“project”と付いていましたが、その“project”が外れた理由は?

高橋 発表時はまだ作っている途中で、日本も海外も反響がわからなかったので、とりあえず仮のタイトルは“project OCTOPATH TRAVELER”として、本当のタイトルはゲームができあがってから考えてようと思っていたのですが、思った以上にこの名前で覚えていただいたので、変える必要もないだろうと判断しそのままのタイトルにすることにしました。

――略称はあるんですか?

宮内 アクワイアでは『オクトパス』と呼んでいることが多いですね。

高橋 スクウェア・エニックスでもそう呼んでいますね。でも、それを推奨しているわけではなくて、“オクトラ”と呼んでくださっている人も多いので、好きなように呼んでほしいです。

――同じスクウェア・エニックスの『いけにえと雪のセツナ』、『ロストスフィア』などのゲームとテイストが似ているように感じるのですが、その2作から刺激や影響を受けたことはありましたか?

高橋 もちろんどちらもプレイしましたし、スクウェア・エニックスからリリースされているタイトルではありますが、別のチームが作っているまったく違うゲームですので、内容がかぶらいないようにということは考えました。ただ、やっぱりJRPGファンがどういうものを求めているのかというところで、考えることは近いのかなと思います。

――お互いに刺激を受けながら制作していたというよりは、現代のJRPGを考えるなかでおのずと同じようなポイントにたどり着いたわけですね。

高橋 それもあると思います。僕らが作りたいゲームはどういうものなのかという部分にフォーカスしていますので、刺激を受け合っていますが、僕らが作りたいものを意識して作ったという感じですね。

――バトルジョブの組み合わせで衣装が変わるというのは、衣装を変える要素が先にあってバトルジョブが生まれたのか、バトルジョブが先で衣装を変えることになったのか、どちらだったのでしょうか?

宮内 後者のほうですね。バトルに付随する要素としてジョブのアイデアが出てきて、「ジョブが変わるんだったら見た目も変わらないとダメだよね」と。ジョブによって見た目を変えないというのは開発の都合でしかないので。ドット担当の森本さん(森本志津佳氏)にもともとのドットを描き起こしていただいて、アクワイアがそれをアニメーション化するのですが、幸いアニメーションを量産する仕組みはできていたので、あらかじめ膨大な量になることは想定して作っていたという感じでしたね。

――作業的にはたいへんでしたか?

宮内 そうですね。やはり作った後に調整しなくてはいけませんから。ドットなので、1コマごとに不具合があったり、見る人によって不具合のように見えるということもあって、そのあたりを詰めていくのが大変でした。

――今回の体験版はデータの引継ぎが可能で合計3時間遊べるということで、さらにデータを消せばもう一度3時間遊べることもあり、序盤しか遊べないとはいえ、ほぼ製品版と同等の内容を提供するということで、思い切った施策のように感じたのですが、どうしてこのような発想に?

高橋 まずいちばん大きかったのは8人のキャラクターが主人公ということですね。8人の中から誰かの体験版ということもできたんですが、これまで長く付き合ってもらったファンの方にはお気に入りのキャラクターがいると思うので、「あのキャラクターを遊びたかったのにいないんだ」と、ガッカリされてしまうのは嫌だったので、全員出すことが早期の段階で決まりました。データの引継ぎに関しては、とくに海外のユーザーさんから「体験版を出すならデータを引き継げるようにしてほしい」というご要望があったので、それを反映するとおのずといまの形になったという感じですね。

――引き継ぎの内容は?

高橋 全部ですね。セーブデータ丸ごとです。キャラクターのレベルも、アイテムも、ストーリーも、HPが減っている状態もそのままです。アイテムだけや、レベルだけが引き継げるというものも考えたのですが、このゲームはいろいろ複雑で、アビリティーも好きな順序で習得できたりするので、ゲームの内容の中から一部だけ引き継ぐと、続きから遊べなくなってしまうんですよね。ですので、できるのであれば全部そのまま製品版に引き継げるようにしようと、やや思い切ってこの形になりました。

――先行して製品版を出しているようなイメージなんですね。

高橋 その通りです。ユーザーさんから「体験版では見られないイベントがあったりしたら嫌だな」という意見もあったりしたんですけど、体験版は製品版とまったく同じものですのでご安心ください。

――ちなみに、HD-2Dってどのように作られているんですか?

宮内 基本的なところはドットのゲームよりも、3Dのゲームのグラフィック制作の手法に近くて、3Dモデルがあってテクスチャーを貼っているのですが、テクスチャーの解像度が高すぎるとフォトリアルになってしまうし、逆に粗すぎるとドットを押し付けている感じになって偽物くさくなるんですね。そのちょうどいいバランスを見極めていくところは、リードアーティストの感覚に任せました。いっそ振り切ってしまうところもあって、水などはドットのものを作ってみたんですが、ドットを押し付けすぎた感じになってしまったので、あえてリアルにしました。いろいろなパーツごとに作っていってHD-2D感を出していっていますね。あとは細かいところですが、はためくアニメーションなども、わざと入れて2Dである感じを強めたり、後ろで動いている動物たちにもドットのころのコマ落ち感などを出したりと、リアルになりすぎないように意識しました。

高橋 2D過ぎてもダメだし、3D過ぎてもダメというバランスですね。

――フォトリアルとドット絵の融合ということですね。

高橋 アーフェンの旅立ちの舞台となる川のエリアを作っているときにアクワイアさんがこの手法を提案してくれて、それを見て「これはいける!」と確信しました。その発想が試金石になった感覚はありますね。

――お気に入りのマップはどこですか?

宮内 川が好きなんですよ。高橋さんがおっしゃっていたところですが、いろいろな表現が入っていて、色もたくさん付いているんですね。つぎが崖のマップというところもあり、赤い岩肌があったり、木があって、橋もあって、地面もあって、水もあってというところが好きです。それから、川のマップは音楽も好きで、テストプレイで毎回泣きそうになっています(笑)。すごく情感溢れる曲なんですよ。

高橋 わかります。8地域全部違う曲がかかるので、ぜひ体験版で聴いてください。

宮内 故郷の感じというか、いかにも“ふるさと感”があるんですよ。

高橋 すごく悩みますが、僕は洞窟の中ですかね。アクワイアさんとタッグを組んでこのゲームを作ろうと決めたきっかけになったのが、最初に作ってもらった洞窟のマップです。洞窟では主人公がランタンを持って移動するのですが、ランタンの光源が壁に反射するんですよ。そのドット絵で光が反射しているという表現を見たときに、これは新しいドット絵の姿だなと思いました。

――間もなく発売を迎えるわけですが、発売後の展開で何か考えておられるものはありますか?

高橋 発売後ではないんですが、発売前から新規のタイトルには珍しくコラボカフェを実施します。

――各キャラクターのメニューが出たりするんですか?

高橋 そうなんですよ。コラボカフェは長い期間開催しますし、新規タイトルでやっていただけるなんて光栄なことだなと思っています。だいたいは発売後に「人気なのでやりましょうか」というパターンが多いのですが、珍しく発売前に「やりましょう」と言われたので。

――やりこみの要素や全体のボリュームについて教えてください。

高橋 メインストーリーを8キャラクターぶん進めるとだいたい5~60時間かかります。サブストーリーや行かなくてもいいダンジョンなどを含めると80~100時間くらいですね。

――ボリュームは作っているうちに大きくなったのか、最初からそのくらいのボリュームを想定されていたのか、どちらでしょうか?

高橋 『ブレイブリー』シリーズのプレイ時間が5~60時間くらいだったので、それに遜色のないものを作ろうということを考えていて、アクワイアさんにご相談していました。ただやっぱり、作っていくうちに要素は増えていますね。

宮内 本当はもうちょっと短い予定だったんですけどね(笑)。

高橋 やりたいことを詰め込んだらいまのボリュームになって。

宮内 たとえばイベントのクオリティーを上げるために細かい演技を入れるだけでも、イベントが何百個もあるので、どんどんボリュームが大きくなって1章あたりの時間も増えて。当初の想定よりも長くなってしまったかなと。

――では最後に、本作のファンにメッセージをお願いします。

宮内 ようやく体験版が配信され、いままでお見せできなかった地方の景色や、基本となるシステムもほぼすべて楽しめるようになっていますので、ぜひ体験していただきたいですね。そのまま旅を続けて行きたい方は製品版を遊んでいただければと思います。

高橋 シナリオも音楽もグラフィックもゲームシステムも全部、それぞれのプロフェッショナルが全力を尽くして作ってくれましたし、私も一生懸命取り組んだので、後悔するところはないと思っています。このゲームの評価もユーザーさんに委ねられると言いますか、あとは皆さんがどのように遊んでいただけるかというのを楽しみにしています。

 すでにマスターアップを迎え、高橋氏、宮内氏からはとても自信のある、手応えを持っているように感じられた。配信中の体験版“Prologue Demo”の評判もとてもよく、その手応えにも納得する人も多いだろう。なお、週刊ファミ通2018年7月5日号(2018年6月21日発売)では、『オクトパストラベラー』を10ページのボリュームで特集。シナリオチーム、アートチーム、サウンドチームへのインタビューを行っている。こちらもぜひチェックしてほしい。