“ALIENWARE Academy”が発表、esportsのプロゲーマー人材育成に対する想いをキーパーソンに聞く【E3 2018】

2018年6月12日~14日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて開催された世界最大規模のゲームイベントE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2018。同会場内にて、デルのゲーミングPCブランドALIENWARE(エイリアンウェア)のマーケティングディレクター、クリス・サトフェン氏にお話をうかがうことができた。

 2018年6月12日~14日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて開催された世界最大規模のゲームイベントE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2018。同会場内にて、デルのゲーミングPCブランドALIENWARE(エイリアンウェア)のマーケティングディレクター、クリス・サトフェン氏にお話をうかがうことができた。テーマはずばりesports。12年前からエイリアンウェアに所属するサトフェン氏は、プロダクトマネジメントの立場からesportsにも関わっているという。

 長くesportsに取り組んでいるというエイリアンウェアでは、esportsのリーグやプレイヤーを積極的にスポンサード。ハードウェアメーカーという性格から、製品の提供といった形でサポートし続けているという。「最適なハードウェアを提供して、プレイヤーがベストな結果を出せるようにしています」とクリス・サトフェン氏。

 ハードウェアメーカーとしてのエイリアンウェアの興味深い取り組みは、北米esportsリーグでTobiiのアイトラッキングテクノロジーを採用。試合中に選手たちの視線がどこに向いているかを分析して、試合を実況するアナウンサーやコメンテイターの分析に役立てるのだという。「ここはうまくいった」とか「ここでミスをした」といった、わかりやすい解説をすることで、esportsの配信を見ているビューアーに、よりわかりやすい放送を提供できるのだという。「esportsはまだまだ新しいジャンルなので、見ている人にはわからないことも多いかもしれません。選手がどのようなスキルを駆使したのかもわからない。そこでアイトラッキングのテクノロジーを使うことで、いかに優れたプレイをしたかを理解する手助けにしてもらうんですね」(サトフェン氏)とのこと。

 esportsにとって、かようにビューアーの獲得はひとつの大きな命題だ。それは、“視聴者数の獲得”という点においてもそうであるし、esportsに興味を持ってもらって、実際にパソコンを購入して楽しんでもらうという、アマチュアゲーマーの需要を掘り起こす意味合いもある。その一環として、いまエイリアンウェアでは、アマチュアゲーマーをサポートして、プロチームのトライアウトに参加できるようなサポートを積極的に行っているという。

 そして、アマチュアゲーマーの広がり→プロゲーマーの育成という点において、デルとエイリアンウェアは今回のE3 2018で興味深いアナウンスをした。オンライントレーニングポータルサイト “ALIENWARE Academy”の開設だ。無料で利用可能な“ALIENWARE Academy”は、アマチュアゲーマーがesportsのプロ選手のようにゲームをプレイするためのスキルと戦略を向上できるように、個別レッスンと進捗確認のためのフィードバックループを備えたプラットフォーム。プログラムを受けることで、どんどんスキルアップしていくことになる。

 “ALIENWARE Academy”は6月にクローズドベータが開始され、まだ具体的なプログラムは最初のほうしかできていないらしいが、「パソコンの設定のしかたといった基本的なところから始めて、プロ並みの立ち回りをレクチャーしていきます」とサトフェン氏。実際にレクチャーをするのは、プロesportsチームのTeam Liquidで、使用するタイトルは『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ』。今後タイトルに関しては、『オーバーウォッチ』や『League of Legends』、『フォートナイト』、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』などにも展開していきたいようだ。

 “ALIENWARE Academy”のサービスは、当面はエイリアンウェアのコミュニティーサイトである“ALIENWARE ARENA”の会員を対象としたものとなるが、ゆくゆくはメンバー以外のユーザーにも広げていきたいとのことだ。ちなみに、現時点では英語のみの対応となる。

 プロesports選手育成のためのオンラインアカデミーというのは、極めて興味深い取り組みだが、実際のところ、その目指すゴールはどこにあるのか? サトフェン氏に聞いてみると、おもにふたつあるという。ひとつは“コミュニティーの育成”、そしてふたつめが“esportsのさらなる活性化”だ。「“ALIENWARE Academy”はコミュニティーの育成に寄与することになるとみています。コミュニティーどうしの関わりあいも増えるのではないかと。もうひとつがesports業界の活性化です。優秀なesportsの選手を発掘することは私たちの使命ですし、優れた人材の登場がesports業界全体のさらなる発展につながるのではないかと期待しています」とサトフェン氏は語る。

“ALIENWARE Academy”で、どこまでプロになる道が開けるかは未知数だが、「確実にプロになる道が開かれるのではないかと思っています」とサトフェン氏は見ている。ひとつの事例として、中国で実施している“ALIENWARE ARENA”という名称のトーナメント(※コミュニティーサイトの“ALIENWARE ARENA”とは異なる、中国国内でのイベント名)で優勝した選手は、プロチームのトライアウトを受けられるようになっているという。「これからは、中国だけではなくて、ほかの市場でもそういった道を歩めるようにしたいと考えています。まだまだどうなるかわからないのですが、確実にプロ選手がでてくると思っています」とのことだ。

 魅力的な選手の増加は、言うまでもなくesportsの活性化に貢献する。人気選手の存在が、その競技の注目度を高めるのは、どのスポーツでも言わずもがなだ。「どんなスポーツでも人気選手の存在は不可欠です。おもしろいキャラクターの選手がでてくることで、よいストーリーが生まれ、ドラマができる。そうすることによって、ファンの皆さんも応援したくなります」とサトフェン氏。現状、スターの存在がesportsには少ないのではないかとサトフェン氏は判断している。豊富な人材の育成は、業界全体での取り組みになるという。

 さて、長くesportsに取り組んでいるということで、サトフェン氏にesportsそのものについて聞いてみた。サトフェン氏によると、「esportsの歴史はかなり長いです。国によって異なりますが、たとえば韓国では数10年前からesportsの大会が行われています。アメリカでは、成功と失敗を積み重ねて、近年ようやく流行るようになりました。Twitchなどのオンラインで配信を楽しめるプラットフォームが生まれたのも大きいです。esportsは徐々に成長しています」という。さらに言えば、選手そのものの待遇に関しても、徐々に改善されてきたとのことだが、アメリカでもまだまだプロスポーツ選手のように特殊なスキルがあることを認めてもらえていないという現状があるという。「立場を認めてもらうことができれば、従来のスポーツと同じような扱いがされますので、おのずと収益モデルなども固まってくるのではないかと思っています」とサトフェン氏。

 とにもかくにも、esportsへの取り組みはまだまだ始まったばかり。取材に同席してくれたALIENWEAR マーケティングディレクター、柳澤真吾氏によると、「日本でesportsが大きく注目されるようになったと思われるのは、昨年の東京ゲームショウ以降からです。弊社もブースを展開したのですが、一般メディアやテレビでも取り上げられました。以前に比べると、相当盛り上がってきていることを実感するのですが、まだまだこれからだと思っています」(柳澤氏)。

 エイリアンウェアの取り組みがどのような成果を挙げるのか、期待したい。