土屋和弘(つちやかずひろ)

『ロックマン11 運命の歯車!!』プロデューサー 土屋和弘氏(文中は土屋) 『バイオハザード0 HDリマスター』や『アスラズ ラース』など、数々の作品を手掛けている。

『ロックマンX アニバーサリー コレクション』開発インタビュー 25年間を振り返りながら遊べる“資料性”のある移植作【E3 2018】_07

 2018年6月12日~14日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2018”。同イベントでカプコンは、『ロックマン11 運命の歯車!!』といっしょに、『ロックマンX アニバーサリー コレクション』(以下、『Xアニコレ』)のプレイアブルを出展した。『ロックマンX』シリーズは、1993年にスーパーファミコンで発売されて以降、多くのファンに愛され続けているタイトルで、『Xアニコレ』にはシリーズ8作が収録されている。各シリーズの移植だけではなく、Xチャレンジやグッズカタログといった、新要素が多数盛り込まれており、大きな注目を集めている。今回は、『Xアニコレ』のプロデューサーである、土屋和弘氏にインタビューを行い、本作の追加要素や新モードの開発秘話をうかがった

さまざまなプレイスタイルに合ったフィルター

――『X1』から『X6』は異なるグラフィックにできる、3種類のフィルターが新要素として追加されていますよね。この要素を追加した経緯とそれぞれの特徴をお聞かせください。

土屋 当時のグラフィックをただ引き伸ばすだけではおもしろくないので、ドットをアートとして楽しめるような要素も必要だと思ったんです。当時、私が開発者としてカプコンに入社した際、デザイナーから「ブラウン管は、カリッとしたドットが出ずに色が滲んでしまうので、滲むことを前提に絵を描いている」という話を聞いたんです。そのときは本当に驚きました。

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――いわゆる中間色というものですか。

土屋 そうですね。そういった当時の表現をできるだけ再現するモードも用意したいと思ったんです。そのほかに、現代の技術を使ってドットのギザギザを滑らかにするアプローチも行いました。現代の技術だからこそできる絵の提案が、3つのフィルターという要素につながりました。

――自分に合った遊びやすいフィルターを使うという楽しみもあれば、それぞれを比較して遊ぶこともできますよね。

土屋 まさにそうなんですよ。それぞれのプレイヤーの好みで、そして気分でフィルターを変えて遊んでもらうと、各フィルターの見えかたの違いに気づいてもらえると思います。

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やり込み要素満載のXチャレンジモード

――フィルターのほかにも本作の特徴といえば、Xチャレンジがありますよね。ステージクリアーまで特殊武器の変更不可や、次ステージに体力引継ぎなど、かなりシビアなルールになっていますが、そういったルールにした理由をお聞かせください。

土屋 最初にXチャレンジの企画構想を聞いたときは、「難しくなり過ぎて手が出せなくなるのでは?」と懸念しましたが、実際に遊んでみると警戒したほどではなく、いい歯ごたえのある難度だと思いました。それと同時に、これまでにない戦いを経験でき、ランキングモードによって他プレイヤーと腕を競い合える、というやり応えを形にできる、そういうポテンシャルを感じました。

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――移植だけではなく、新たなモードがあるのは嬉しいです。

土屋 『ロックマン クラシックス コレクション』のチャレンジとは違った切り口の提案ができたのも大きいと思います。2体のボスをどうやって突破していくかという攻略方法を確立しながら、新たなプレイスタイルを模索する、そういった遊びかたを楽しんでもらいたいです。

――倒しなれた相手でも、ふたり揃うと印象が変わりますよね。

土屋 そうなんですよ。1対1で対峙しているから通用する間やタイミングの取りかたがあると思います。しかし、そこにもうひとりのボスが加わると、その戦法が崩されてしまう。言葉で言うと簡単ですが、遊んでみるとそこが難しいんです。チャージショットでまとめてダメージを与えていくのか、有効な特殊武器で敵を怯ませてその隙に片方を集中攻撃するのか、そういった立ち回りを考えていくのもこのモードのおもしろいところだと思います。

――ボスの組み合わせを想像するとワクワクしちゃいます。

土屋 じつは、いちばん最初に出したプロモーションビデオでアイシー・ペンギーゴとフロスト・キバトドスの組み合わせをチラッと入れていたんです。そうしたら、それをみたファンの方々が「『X4』のフロスト・キバトドスステージに、氷漬けのペンギーゴが晒し者になってるよね」とコメントしていて、本編同士のつながりをすぐに見抜いていたので、さすがだなと思いました。中には「あのふたりは和解したのかな?」みたいなコメントもあり、予想以上の反応をいただけました。

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――各ステージのボスの組み合わせはどのようにして決めたのでしょうか?

土屋 アイシー・ペンギーゴとフロスト・キバトドスのように、本編のつながりから着想を得ているものもあれば、ゲーム的にもおもしろくなりそうものや、属性を組み合わせたカップリングも用意しました。攻略していく楽しみに加え、「このふたりはどういうつながりなんだろう」と、ボスの関係性を探すという楽しみかたもおもしろいと思います。

――早くほかの組み合わせも見たいです! 本モードでは特殊武器が全9つと限られた数しかありませんが、登場するボスの弱点は、各原作シリーズと同じなのでしょうか?

土屋 原作と同じですので、それを考慮しながら武器を選ぶといいかと。とは言え、もっていける武器は3つまでという制限があるので、弱点武器の取捨選択がキモになります。どの武器を優先して持っていけばいいのか、そこはトライ&エラーをくり返しながら、少しずつ攻略法を確立して欲しいです。

――各ボスの弱点を勉強し直しておきます(笑)。そういえば、エックスが特別なアーマーを標準装備していますよね。

土屋 敵が作品を超えてクロスオーバーする以上、対抗するエックスにも何らかの力が必要だと思いませんか?そのときに作品を超えた特殊武器を扱えるアーマーというアイデアが出てきて、もうこの辺りは開発にあたってくれているスタッフたちの愛ですよね。

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――ちなみに『X1』と『X8』といったグラフィックのテイストが異なる敵が同時に出てくることはあるのでしょうか?

土屋 『7』と『8』は、3Dの遊びを前提にした作りになっていて組み合わせるのが難しいので、『X1』から『X6』のボスのみが登場します。

――なるほど。そういえば、アイシー・ペンギーゴとフロスト・キバトドスは、互いに異なるハードの作品なのにグラフィックに違和感なかった気がします。

土屋 「スーパーファミコン版とプレイステーション版は解像度が違うので、並べるとものすごく違和感が生まれるんです。だから各ボスの組み合わせに合うように、すべてのパターンを書き出して違和感がないようにグラフィックを調整しました」と、スタッフが話していました。かなり苦労しながら手を加えてくれたので、ぜひ注目して欲しいです。

――Xチャレンジを早く遊んでみたいです! このモードって実況プレイと相性がよさそうですね。

土屋 もちろんそこも意識しています。現代のハードは、いずれも自分のプレイを世界に配信できる機能があるので、プレイを極めて、ノーダメージプレイやスピードプレイなどをどんどん投稿して欲しいです。自分が編み出した攻略法を世界中に伝えることもできますし、逆にほかのプレイヤーの攻略を参考にすることもできます。そういったプレイヤーどうしの掛け合いが生まれてくれると嬉しいです。

――では最後に、『ロックマンX アニバーサリー コレクション』の発売を心待ちにしている読者の方に向けて、メッセージをお願いします。

土屋 忠実な移植に加えて、Xチャレンジというやり込み要素を用意しました。さらに、これまでに発売された『ロックマンX』シリーズのグッズ情報が収録されたグッズカタログもあり、本作には25年間を振り返られる資料性があると思います。『ロックマンX』シリーズに思い入れがある方にとっては、最高の内容に仕上がっているので。ぜひ7月の発売まで楽しみに待っていてください。

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