先日、ついに発表となった3D対戦格闘ゲーム『デッド オア アライブ 6』。本作は、3D対戦格闘ゲームの人気シリーズ『デッド オア アライブ』シリーズ(以下、『DOA』)の最新作。発売日は2019年初頭、対応ハードは、プレイステーション4、Xbox One、PCとなっている。本記事では、『DOA6』について気になることを、プロデューサー&ディレクターを務める、新堀洋平氏に詳しくうかがった。なお、本インタビューでは、『DOA6』の概要について聞いている。もうひとつの記事では、システムの詳細について聞いたので、そちらもぜひ読んでほしい。

新堀洋平氏(しんぼり ようへい)

『デッド オア アライブ 5』ではディレクターを務めた。本作ではプロデューサーとディレクターを兼任する。(文中は新堀)

esportsの盛り上がりを、『DOA』に

――まず、『DOA6』の開発が決まった経緯を教えてください。

新堀 前作の『DOA5』は、シリーズ累計でパッケージ版が100万本、基本無料版は1100万ダウンロードを突破し、じつは現在も遊んでいただいている方が全世界で増え続けています。コーエーテクモゲームス全体としては、まだまだ続けられるタイトルなのですが、開発チームとしてはそろそろ続編を出したいという気持ちが強く、少しずつ研究開発を進めてはいたんです。2017年の12月に、『DOA5 ラスト ラウンド』のダウンロードコンテンツのリリースとアップデートを終了することを宣言をしましたが、プロデューサーの早矢仕(早矢仕洋介氏)とも相談し、それとほぼ同時期に、『DOA6』の開発が本格化しました。

――『DOA5』では、早矢仕さんがプロデューサーで、新堀さんがディレクターを担当していました。『DOA6』では、新堀さんがプロデューサーとディレクターを兼任されるそうですね。

新堀 はい。私は昔から対戦格闘ゲームをプレイしてきたので、昨今のesports業界の発展が本当にうれしくて、だからこそ、そのうねりの中に『DOA』シリーズも加わりたかったんです。そこで、ゲームを作りながら、同時にプロモーションなども担当したいと早矢仕に相談した結果、プロデューサーとディレクターの両方を担当することになりました。『DOA6』には、これまで以上の情熱と愛情を注いでいくつもりです。

――そんな『DOA6』がどのようなゲームになるのか、さっそくうかがっていきたいと思います。まず、発売時期は2019年初頭の予定とお聞きしていますが……?

新堀 どれぐらいの“初頭”なのかはまだお答えできませんが、決まり次第お伝えできればと思います。

――決まったらすぐに教えてください! つぎに、今回の『DOA6』のテーマは?

新堀 本作のテーマは、“激闘エンターテインメント”です。前作は “格闘エンターテインメント”をうたい、闘いとエンターテインメント性を両立したド派手なバトルを描きましたが、本作では、さらに“激しさ”を追求したいと思っています。そのための手法のひとつが、“タブー”に挑戦することです。たとえば、これまでは闘いの演出として体や衣服を汚すことはあっても、女の子の顔だけは傷つかないようにしていました。ですが、かすみが描かれたメインビジュアルを観ていただければわかる通り、本作では女の子でも闘うことで傷つきます。また、『DOA』シリーズは代々“超必殺技ゲージ”的なものは導入しない、というお約束があったんです。けれど、そこもブチ破ってしまおうということで、今回は“ブレイクゲージ”を導入しました。

『DOA』が、セクシーからクールに。システム、キャラクター、あのエンジンは? 『デッド オア アライブ 6』インタビュー_09

――ゲーム性もビジュアルも、かなり変わってきそうですね。

新堀 そうですね。ビジュアル面に関しては、今回は肌の表現をよりリアルにしたいと思っていまして、たとえば汗や陰影、しわの表現は、前作よりもパワーアップしています。そしてやはり激しい闘いをくり広げれば、顔だって汚れますし、体に傷だって付きますよね。これまではそれをタブー視していましたが、今回は汚れも傷も、そして出血もするようにしました。

――ステージのパワーアップについてはいかがでしょう?

新堀 本作は、プレイステーション4やXbox One世代のスペックをもとに開発しています。『5』のときはプレイステーション3やXbox 360世代だったので、ゲームハードのスペックが上がったこともあり、もちろん背景などのグラフィックもパワーアップさせます。プレイステーション4 ProとXbox One X、そしてPCでは、4K解像度にも対応を予定していますので、よりキレイな画面でバトルが楽しめます。もしかしたらキャラクターの肌なども、よりキレイに見えるかもしれませんね。

――『DOA5』では、人間の肌の質感を表現するための“やわらかエンジン”が話題になっていまいたが、本作でも導入されるのでしょうか?

新堀 『DOA6』では、やわらかエンジンは使いません。その代わりに別の描画エンジンを使用していまして、ビジュアル全体が進化しています。今回、『DOA5』ではできなかった物理ライティングにようやく着手できまして、キャラクターや背景がよりリアルに描けるようになりました。また、キャラクターの顔の可動部も増やしていまして、これによって、より表情豊かになっています。泣いたり笑ったりといった喜怒哀楽の表現だけではなく、顔面を殴られた際のリアクションですとか、いろいろな“顔”を今後皆さんにお見せしたいですね。もちろん、リアルを追求した結果として、より自然な表現も出てくるとは思います。

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――かすみの衣装も、これまでの忍び装束ではなく、クールな忍者スーツになっていますね。

新堀 全体のビジュアルイメージとして、今回は“カッコよさ”に寄せて、キャラクターを描こうと考えています。やはり『DOA』シリーズは、「女の子がセクシーすぎて、プレイするのが恥ずかしい」という意見もあるんです。実際、昨年の“EVO 2017”(毎年ラスベガスで行われている、対戦格闘ゲームの世界大会)に行った際に、ファンの方々から「もう少しカッコイイゲームにしてほしい」という意見もいただきました。そういうこともあり、今回はプレイヤーの皆さんが『DOA』のプレイヤーであること誇れるように、カッコよさを重視しています。

――だからこそ、キャラクターたちの衣装も大きく変更されていると。

新堀 イメージの参考にしたのは、近年のアメコミ映画です。私は昔からアメコミが大好きでして……。昔のアメコミの女性ヒーローは、ボディラインが強調されたセクシーなものが多かったですが、現在ではシャープでクールなものに変わってきています。それを見て、『DOA』もキャラクターの描きかたに、バラエティーを持たせようと考えました。

――かわいらしさ、セクシーさの表現は、『DOA5』で完成した感もありました。これから新たなイメージの『DOA』が見られると思うと楽しみです。

新堀 かわいらしさの部分で支持していただいているという点ももちろんありがたいことですし、まったく女の子をかわいくしない、色気を出さない、ということはありません。ただし、あくまでも主眼は“カッコよさ”に置くと。そういう意味で、本作は『DOA』シリーズのターニングポイントになるのではないかと思っています。

気になるキャラクターは? ゲームモードは?

――現在は、かすみ、リュウ・ハヤブサ、ハヤテ、ザック、ジャン・リー、エレナの6人の参戦が発表されています。ほかには、どういったキャラクターが登場するのでしょうか?

新堀 私も対戦格闘ゲーマーですから、参戦キャラクターが気になるということはわかっていますが、プロデューサーとしては、まだ言えません(笑)。たくさんのキャラクターが登場しますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

――ワンチャン、教えてくれるかも……と思いましたが、残念です(笑)。『DOA5』シリーズでは、『バーチャファイター』シリーズ、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズ、『戦国無双』シリーズからコラボキャラクターが参戦していましたが、本作ではコラボキャラクターは参戦しますか?

新堀 本作は『DOA6』の世界観でしっかりスタートしたいと思っているので最初は参戦しません。そして気になる発売後については……まだ何も決まっていません。

――で、では初登場のキャラクターなどは……?

新堀 さすがに対戦格闘ゲームですから、初登場のキャラクターはもちろん用意しています。ただ、こちらも続報を……。

――わかりました! こちらも楽しみにしています。ちなみに『DOA』シリーズといえば、豊富なコスチュームも魅力ですよね。『DOA6』でも、衣装の変更や、ダウンロードコンテンツなどでの配信は考えていますか?

新堀 衣装の変更はもちろん可能です。パッケージに入れる衣装の段階で、なるべく多くの衣装を用意したいと考えてCGチームががんばっています。ただ、そこからの展開はまだまだ検討中ですので、決まり次第お伝えできればと思います。

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――『DOA5』では、壮大なストーリーやカットシーンなどが豊富に楽しめる、ストーリーモードも人気を博していました。本作にストーリーモードはありますか?

新堀 はい。『DOA6』では、『DOA5』以上のストーリーモードを用意しています。

――『DOA5』は、ひとりひとりに焦点を当てつつ、ストーリーラインが進んでいくようなスタイルでしたね。

新堀 『DOA5』は、キャラクターに焦点を当てていたため、ストーリーの柱がなく、ユーザーの皆さんから「ストーリーの全体がわからない」という意見をいただきました。ですから今回は、しっかりと本筋がわかるように描こうと思います。

――時間軸としては、どのあたりになるのですか?

新堀 『DOA5』の少し後ですね。物語の詳細なども、今後キャラクターの公開に合わせて少しずつお伝えしていきます。

――楽しみにしています。では、そのほかのゲームモードについてもうかがいたいのですが、トレーニングモードはありますか?

新堀 もちろん用意しています。トレーニングモードはこれまで通り、技のフレーム数(技を出すまでにかかる時間や、技のモーションが始まってから終わるまでの時間など)や、硬直差(技を当てたりガードさせたときに、自分と相手のどちらが、どのくらい早く動けるのかの差)など、すべてが把握できるスタイルで練習できます。ただ、そういったデータは上級者用のものですよね。対戦格闘ゲームの課題は、初心者がどれだけ練習や学習をしやすい環境を作れるのか、というのが現状の課題だと思っています。『DOA5』のチュートリアルは1から10まで、これでもかというほど教えてくれるモードにしましたが、初心者が1から10までいきなり叩き込まれても、覚えきるのは難しいですよね。ですので、楽しく遊びながらシステムを学び、だんだんと上達する過程を楽しめるようなゲームにしたいと思い、ゲームの設計を進めています。

――『DOA』といえば、リプレイ機能などを使って、写真撮影が楽しめるモードも人気がありますが、本作にもありますか?

新堀 そこはやはり『DOA』シリーズですから、用意しています。ちなみにグラビアムービーは、現状の予定にはありません。今回は、ぜひカッコいい写真を撮影していただければと!

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――続いて、ステージについてうかがいます。今回は新たなデンジャー(ステージギミックのこと)として、“マスデストラクション”や、“ランブルデンジャー”も登場するとのことですが……まずは、“マスデストラクション”について教えてください。

新堀 “マスデストラクション”は直訳で“大量破壊”です。相手をふつうに吹き飛ばして、ステージに置いてあるドラム缶や木箱に当てると、それらの障害物を破壊しつつ、少しだけダメージが増加するようになっています。しかし、“ブレイクブロー”のように、相手を大きく吹き飛ばす技を当てると、障害物を貫通して破壊しながら吹き飛ばし、大ダメージを与えられるようになっています。これが、“マスデストラクション”です。障害物は復活しませんから、このデンジャーを先に発動させておくと、自分は“マスデストラクション”を受けることがないわけです。

『DOA』が、セクシーからクールに。システム、キャラクター、あのエンジンは? 『デッド オア アライブ 6』インタビュー_05

――なるほど。では、“ランブルデンジャー”については?

新堀 “ランブルデンジャー”は、相手を吹き飛ばすと、観客たちがそれを受け止めて、押し返すというギミックです。押し返された相手は無防備なので、コンボを継続することができます。空中コンボ中であっても、群衆にぶつかると押し返されるので、これを利用して闘うことが重要になってくるでしょう。

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――デンジャーがこれまで以上に重要な要素になりそうです。『DOA2』以降に用意されていた“タッグバトル”の要素は、今回もありますか?

新堀 いえ、タッグバトルはありません。描きたいものを描くために、リソースを1対1の対戦に集約させた、というのがその理由です。それと、タッグバトルがほとんど遊ばれていないという事情もありまして……。私はもともと、タッグバトルが大好きで『DOA』シリーズを遊んでいたので、本当は導入したいのですが、断腸の思いで今回は断念しました。

――そのぶん、1対1の闘いに力を入れる、ということですね。ちなみに、体験版、またはベータテストなどは予定していますか?

新堀 体験できるという部分では、イベントでの試遊などは予定しています。まずは、E3(日本時間で2018年6月13日から、アメリカのロサンゼルスで始まるゲームショー)にメディア限定ではありますが出展予定です。完成度は10パーセントにも満たないくらいで、まだまだプロトタイプレベルですが、出展することが大事と考えました。この状態でも、ゲームのおもしろさを感じ取っていただけたらそれは大成功ですし、仮に反省点が見つかったとしても、反省や修正を行って、つぎに活かせばいい。まずは評価がほしかったんです。一方、体験版については、まだわかりません。先程もお話しをしたように、まだこれからのタイトルですので。

――対戦格闘ゲームはロケテストがあるのが常ですし、そういった機会があると、プレイヤーも喜ぶと思いますので、ぜひお願いします! ちなみに、『DOA5』はアーケード化も実現しましたが、本作はいかがですか?

新堀 こちらも検討中です。まだまだ本作の本格開発が決まったばかりですから、先のお話ですね。

――先日、“EVO 2018”のサイドトーナメントとして、『DOA5 ラスト ラウンド』の大会が行われることを発表されましたよね。これはやはり、『DOA6』につなげる施策のひとつだったのでしょうか?

新堀 最初にお伝えしたように、esportsの流れに『DOA』を乗せたい気持ちがありました。EVOに行ったのは、じつは昨年が初めてだったのですが、1000人を優に超える人たちが対戦格闘ゲームに熱中している光景を目の当たりにして、本当に感動したんです。そして、「この盛り上がりがあるのに、『DOA』が参加していないのはおかしいでしょ!」と思い、エントリーすることにしました。もちろんメイントーナメントとして取り上げてほしかったのですが(編注:サイドトーナメントは、メイントーナメントより規模が小さい)、僕たちには出すゲーム(最新ゲーム)がありません。であればと、まずは『DOA5 ラスト ラウンド』のプレイヤーたちに恩返しをしようということで、こちらでイベントを行うことになりました。

――ちなみに“EVO 2018”で、試遊台などは出展される予定はありますか?

新堀 『DOA』ファンの方々が多く来てくださると思っているので、ぜひ遊べる環境は用意したいなと考えていますが、内容は未定です。EVOは8月ですし、まだ時間はありますので(笑)。いろいろと決まりましたら、こちらも公開しますので、しばしお待ちください。

――わかりました。では最後に、本作を楽しみに待つファンにメッセージをお願いいたします。

新堀 『DOA5 ラスト ラウンド』をいまでも遊んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。そして、新作を待ってくれていた皆さん、たいへんお待たせしました! ついに『DOA6』を発表することができました。皆さんが楽しめるものを作っていきますので、ぜひ期待しながら続報をお待ちください。