アクティビジョンの人気FPSシリーズ最新作『コール オブ デューティ ブラックオプス4』(CoD BO4)。本作はプレステーション4/Xbox One/PC(※)で10月12日のグローバル発売が予定されている(※同社の『Destiny 2』同様に、Blizzard EntertainmentのPCゲームプラットフォームBattle.netでの専売)。
シングルプレイキャンペーンを撤廃する一方で、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(PUBG)や『Fortnite』などで人気のバトルロイヤル形式のモード“ブラックアウト”の搭載などを予定している本作について、アメリカのロサンゼルスで行われた発表会の会場で開発元Treyarchのスタジオデザインディレクターを務めるDavid Vanderhaar氏に話を聞いた。
David Vanderhaar(デヴィッド・バンダーハール)
『コール オブ デューティ ブラックオプス』シリーズの開発元Treyarchで、スタジオデザインディレクターを務める。
マルチプレイは「より戦術に深みを出したかった」
さてBO4のマルチプレイ対戦ですが、今回はBO3と違ってウォールラン(壁走り)もスラスタージャンプもありません。一方でスライディングとか水泳はあります。スペシャリストもいます。基本的にはBO4のマルチプレイ対戦はBO3っぽいと思いますが、コンセプトの点でどう違うんでしょうか?
Vanderhaar コンセプトの点では、ゲームの核となるメカニズムにかなり大きな違いがあるんだ。確かに実際のアクションの点ではいま挙げてくれたように、引き続きある要素があるかと思えばなくなった要素もあるけどね。さてどこから話そうか……。
プレゼンテーションで話したように、“Guns Up”(アクションによって銃撃が停止されず常に撃てるよう)にするという哲学は変わらない。右手の銃はいつでも準備ができていて、それを邪魔せずに左手でエキップメント(ここではBO4のスペシャリストの固有装備やグレネード類を指す)を使っていくような感じだ。銃そのものにもより個性を与えるために、オペレーターModをはじめとする特殊なアタッチメントを用意する。
体力についても違う。スタート時点での最大体力はこれまでより多いんだ。体力値に影響を与える方法もいろいろあって、メディック役であるスペシャリストのひとりCRASHはTAK-5という技で最大体力を増やせる。そして自動回復がなくなって自分で回復アクションを発動しなければならなくなったから、当然戦闘のペースが変わってくる。
状況把握はコアのメカニズムの中で大きく手を入れた部分だ。ミニマップはこれまでと動作が全然違うよね。基本的にチームメンバーの周囲のみが明るくなって敵の位置が表示されたりする(銃を撃っている敵やUAVやセンサーが見つけた敵は別)。“チーム各員が周囲の状況把握に努めて連携する”というのを目指している。
各プレイヤーの移動のフロー(流れ)についても、もっと考えていこうということになった。たとえばTORQUEなんかは直接的に進行スピード低下効果を持つ手段を持っているよね。FIREBREAKもエリア制圧系の能力を持っているからここに関わってくる。SERAPHがTACデプロイで復活ポイントを設置できるのもフローを変える能力だ。
この通り、あらゆるコアのシステム、基礎となる部分に手が入っているから、そこで使われるアクションに同じようなものがあったとしても、いろんなレイヤーで新しいプレイ体験をお届けできると考えている。
確かに、ミニマップに“Fog of War”(自軍ユニットの周囲の一定範囲に入った敵がミニマップに表示されるシステム)が入ったのは面白かったですね。僕が今日のデモの体験中にRECONを好んで使った理由でもあります。RECONの“センサーダート”を敵が待ち構えていたり通ったりしそうなあたりに撃ち込んでおけば、ミニマップでの情報戦で上回れますから。
Vanderhaar その通り。RECONだともうひとつの技である“ビジョンパルス”も同様だよね。敵の位置を透視して共有するから、チームとしての状況把握で優位に立てる。彼はまさに状況把握の専門家として設計している。さっきもいくつかスペシャリストの名を挙げたけども、スペシャリストはそれぞれゲームメカニズムのコアと紐付いた専門家として形作られているんだ。
スペシャリストと(装備やPerkをセットする)クラスを組み合わせていく上で、結構いろんなことができますね。クラスは独立して作ることができますから、武器、Perk、ギア、エキップメント、ワイルドカード……といろんな要素で方向性を作り込んでいくことができます。
Vanderhaar そうだね。クラスの中ではギアのカテゴリーが結構変わった部分だ。さっきも話したように銃はオペレーターMODとかがあるし。みんなが好きなPerkやワイルドカードも帰ってくる。ワイルドカードはPick10システム(※)の中で、普通はできないことを可能にする。(※武器やPerkなどの10の要素を組み合わせてクラスを作るシステム)
ゲームによっては回復役を選ぶと装備の方向性まで決まっていて、それを受け入れなければならなかったりします。でも本作ではクラスをうまく設計しておけば、本作では重武装のメディックとか高機動メディックもできるわけですよね。
Vanderhaar そうそう。BO4は(いろいろ変更点がありつつも)依然としてブラックオプスのゲームであって、銃や装備こそがまずはプレイヤーの意志をあらわすもので、スペシャリストはそこにスペシャルな性格を加えていくものだ。持ちたい銃を持てばいい。そういうものさ。
今回、自動回復がないのは思い切った決断だと思います。
Vanderhaar これは戦術をもっと深めたいと思ったからなんだ。体力値を増やして、回復を自分でやらなければいけなくなったことで、いろんな状況が生まれてくる。いつ回復するかの判断において、ちょっとカスってすぐに回復する人もいるし、数発食らってからにしようという人もいる。自動回復だとそこの違いは生まれないからね。
会場に流れている映像を見ていて気が付いたんですが、最大14人構成のうちの11人パーティーを組んでプレイしていました。でもゲームは5対5を意図して設計されているということでいいですよね?
Vanderhaar 基本的な設計意図は5対5で問題ない。友だちと遊ぶ時には変則のカスタムゲームもあるけどね。パーティーの10人より多い部分は、あくまで大会配信とか実況用のスペクテーター(観戦者モード)なんかのために幅を持たせているのが大きい。
今日は会場で8人のスペシャリストを使えましたが、個人的な好みは誰ですか?
Vanderhaar ゲームデザイナーにとっちゃどれも自分の子供のような存在なのに、一番を選べってのかい?(笑)でもそうだな……時によって違うんだけども、いまはCRASHだと思う。というのは、楽しいし、自分ももう45歳だから、もう反応速度も衰えてたりするわけだよね。だけどCRASHみたいなキャラクターは、最前線で撃ちまくらなくてもチームに貢献できる。これはスペシャリストを設計する時の意図でもあって、いろんな人にいろんなスタイル、いろんな貢献方法を用意したいんだ。
バトロワ系モード“ブラックアウト”
バトルロイヤル系モードのブラックアウトモードについて聞いても大丈夫ですか?(「触りしか話せないけど、それでよければ」)これまでのシリーズのシングルプレイキャンペーンやマルチプレイ対戦は、ある種のリアリズムを持っています。一方でそうじゃないのがゾンビモードで、こちらはファンキーな“フィクション”感を押し出したものです。ブラックアウトはどうなんでしょう?
Vanderhaar どちらでもある、と言えるかな。中間になると思う。銃撃やアクションのメカニズムとかビークルの感じとかはブラックオプスのリアリズム寄りだし、一方でフランク・ウッズとかのキャラクターアバターでプレイする時は、そのノリはファンキー寄りになる。とはいえ(ある種のリアリズムがあるといっても)あまり難しく考えてプレイするものではないんだけどさ。
“ブラックアウトだけ版”などは検討されているんでしょうか?
Vanderhaar それはないと思うね(笑)。幅広い人のためにいろんなモードを用意するというのが我々Treyarchの伝統だ。「競争的なマルチプレイ対戦があって、ゾンビモードが最初から3~4エピソードついてきて、ブラックアウトもあるぜー」っていうのが典型的なTreyarchなんだ。
ブラックアウトはソロでも遊べますか?
Vanderhaar ソロでもチームでも遊べる。実際、ソロで遊んでも楽しめるものになっていると思うよ。
PUBGは勝った時に「ドン勝(英語版ではChicken Dinner)」という有名なフレーズがありますよね。ブラックアウトはどうでしょう?
Vanderhaar (ニヤリと笑って)おっと、それはまだ秘密だ。(「ということは何かがある?」)多分ね。楽しいものがあるはずさ。
ゾンビモードはカスタムゲームをシェア可能
ゾンビモードで公開されたエピソードのひとつ“ナイン”はグラディエーターみたいな格好で肉弾戦を戦っていましたが、銃はあるんでしょうか?
Vanderhaar 今日はその質問をよく聞かれたよ(笑)。今日見た中には銃はなかったはずだ。うーん、でもコレはゾンビモードだから……それ(銃)はつきものかもしれないよねぇ? まだ明かされてないハナシもあるってわけさ。今後をお楽しみに!
ゾンビモードはBotとのプレイも可能になったほか、“ミューテーターズ”という名称でゾンビなどのパラメーターを変えたカスタムゲームも作れるそうですが、その内容をシェアすることはできるんでしょうか?
Vanderhaar 間接的なものになるけども、コードを発行してシェアできるので、面白いものができたらそれで共有してみて欲しい。プレイステーション4にはシェアボタンがあるけども、ゲーム上で別の形でシェア機能を持てるのは楽しいよね。(「LANパーティーとかでみんなでお題にチャレンジするのも面白そうですね」)そう、「これに挑戦してみろ!」っていうのがいろんな所に投稿されるようになると思うよ。
シングルプレイキャンペーンではなく「違う語り方をする」
モードのバリエーションの話がありましたが、シングルプレイキャンペーンは本当にないんでしょうか?
Vanderhaar 伝統的なシングルプレイキャンペーンということでは存在しないんだけど、そもそもBO3にしてもCo-op形式のキャンペーンだったでしょ? ストーリー要素という点ではスペシャリストのソロミッションもそうだし、ゾンビモードもああいう形のストーリーなわけだ。今回は伝統的なキャンペーンとはちょっと違ったストーリーの語り方をする、というのが正しいかな。
世界を補強するサイドテキスト的なものは何かありますか? 『オーバーウォッチ』なんかはショートムービーやコミックをキャラごとに作ったりしてますよね。
Vanderhaar 実はまだ見せてない素材がいろいろあるんだけど、それを今言っちゃうとサプライズにならないからね。世界の状況を示していくという点では、マルチプレイの始まりや終わりなどで、ちょっとずつスペシャリストやら世界について匂わせていくものもあるよ。
本作の時代設定なんですが、2025年(BO2の近未来パート)と2065年(BO3)の間でしょうか?
Vanderhaar 具体的に何年かは言ってないんだけども、精神的にはある種のBO3の前日譚ということになる。スペシャリストたちもSFすぎないリアリズム寄りの人間の歩兵だしね。
これも個人的な考えを聞いてみたいんですが、いろいろある中で、あなたにとってBO4の最高の部分とはなんでしょう?
Vanderhaar まず、我々はどのブラックオプスのファンも楽しめるものにできると信じている。このゲームは、長い時間かけてブラックオプスを通じて積み上げてきた蓄積の集大成だ。そうやって作られたマルチプレイ対戦があり、ゾンビモードがあり、そして新しい試みのブラックアウトがある。これが前提。
そこを踏まえて、これは本当に個人的なものだけども、最高の部分はそういった中から好きな要素をそれぞれが選んで遊べることだ。実際、自分自身だって気分によって遊びたいモードは変わるしね。いろんな人のためのいろんなモードがあること、これが自分たちの哲学であり、自分にとっての最高の部分なんだ。