2018年5月12日・13日に京都勧業館 みやこめっせで開催されたインディーゲームの祭典“BitSummit Volume 6”。同イベントの2日目となる5月13日、メインステージにて“日本一ソフトウェアによるインディースピリッツと日本一企画祭の話”を実施。日本一ソフトウェアが昨年から展開している“日本一 Indie Spirits”と、毎年開催している自社コンペ“日本一企画祭”への取り組みが語られた。

 ステージには日本一ソフトウェアの営業担当、猿端健蔵氏と、『嘘つき姫と盲目王子』の菅沼 元プロデューサーが登壇。同じく同社で『夜廻』のディレクターを務める溝上 侑氏がモデレーターを担当し、セッションが開始された。

日本一ソフトウェアが“インディースピリッツ”と“日本一企画祭”で目指す“尖った作品作り”とは【BitSummit Volume 6】_02
写真左:溝上 侑氏、写真中央:猿端健蔵氏、写真右:菅沼 元氏

 まずは、同社が昨年1月より始動した“日本一 Indie Spirits”に関するテーマを元に進行。同企画は、海外の優れたゲームを、コンソールゲーム機に向けてローカライズして発売・配信するという取り組み。
 猿橋氏は、「インディーシーンに携わらせていただいて感じたことですが、日本におけるインディーゲームという存在が、市場的にも、ユーザーの皆さんの受け入れられ方も、この1年で大きくなっていると思っています。とくに弊社はコンソール機になじみの深いメーカーですので、想像以上に皆さんに支持をいただけているのはありがたいことです」と、企画始動から現在にいたる所感を説明。溝上氏より「開始して2年目に入っていますが、今年の目標はありますか?」との質問に対し、「1年間実施してきて、最初の1年はたくさんタイトルを出すことに注力していました。今年もその経験を踏まえて、よりよいタイトルを出していくのはもちろんですが、これまでのダウンロード形式だけとは異なり、パッケージでの発売も目指していきたいと思います」と、さらなるタイトルの拡充とパッケージ版の発売を目標にしていることを言及。

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 また、猿橋氏はインディー作品を選定する際に重要視しているポイントとして、ニッチさ(強力な武器)を持っていることだと主張。「我々もそうですが、開発人数や期間、予算が限られた中で、いかにおもしろいゲームを作っていくかということに注力する場合、何かターゲットに届く武器を磨くことが大事だと思っています。いまのゲーム市場はたくさんの選択肢があるので、その中からユーザーに選んでいただくためにも、尖った部分が必要です。攻撃力が低い武器では殻を突き破れませんが、強力な武器があれば殻を突破することができますからね。“日本一 Indie Spirits”では、そういった商品への携わり方をさせてもらいたいと思っています」と、インディーならではの視点でソフトの発掘や展開を考えていることが明かされた。

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 ここで話題が、今回のBitSummitの日本一ソフトウェアブースでも出展されている『嘘つき姫と盲目王子』に変わると、解説も菅沼氏にバトンタッチ。本作は、人食いの狼と、小国の王子との切ない恋愛を描いたアクション・アドベンチャーで、化け物である狼が人間の王子に恋をするという、ある種ニッチな方向性をテーマにした作品となっている。「元のテーマが絵本的なビジュアルでありながらも、大人にも受け入れられるダークさを秘めているのもポイントです」と菅沼氏。

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 こちらは、日本一ソフトウェアが年に一度開催している社内コンペ“日本一企画祭”によって選出されたタイトルで、その内容はもちろんのこと、制作人数や期間も、インディー作品に共通するところがあるものとなっている。「先ほど、ニッチな作品を目指していくという話がありましたが、この『嘘つき姫と盲目王子』はこの考えに合致するタイトルということで、今回のBitSummitに出展させていただきました」(菅沼氏)とのことで、実際に会場での評判も上々だったよう。“日本一企画祭”では、過去に『htoL#NiQ-ホタルノニッキ-』、『夜廻』、『大江戸BlackSmith』といったタイトルが誕生しており、次回作『CLOSED NIGHTMARE』も控えている。
 “日本一 Indie Spirits”と“日本一企画祭”で、ニッチ=尖ったタイトルを発信し続ける同社の動向に、これからも注目していきたいところだ。

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 なお、最後に猿橋氏、菅沼氏に両取り組みについてのインタビューを行ったので、以下で紹介していこう。

−−まずは“日本一 Indie Spirits”を実施してから現時点での手応えを教えてください。

猿橋「我々の取り組みもそうですが、インディーシーン全体がとくにこの1年で大きくなってきたなと感じています。タイトルについても、昨年はたくさん出すという目標のもとでやらせていただきましたが、ユーザーの皆さんの関心度合いが、我々が思っていた以上に高いことを実感しています」

−−インディーの分野に入られて、市場規模が大きくなってきていることを実感されているのですね。

猿橋「市場規模自体も大きくなってきていますし、それに伴いタイトル数も多くなってきていると思っています。まだこれから、どんどん大きくなっていくと思いますが、それに合わせて、我々が取り扱っていくインディー作品の色というものを見つけていかないと、この先市場が拡大したときに生き残っていけない、ビジネスとしてやっていけないなというのは感じています」

−−海外の良作を移植するというスタイルですが、どのように作品を選ばれているのでしょうか?

猿橋「これはまちまちですね。SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)や任天堂さんといったプラットフォーマーと話をしている中で知り合えたり、今回のようなBit Summitや東京ゲームショウで知り合いになることもあります。また、Steamのストアなんかを見ていて「これおもしろそう」って思ったものに、ダイレクトでアプローチするなど、さまざまなパターンがあります」

−−反対に、クリエイターサイドからの売り込みもありますか?

猿橋「それもありますね。“日本一 Indie Spirits”を打ち出させていただいて、Bit Summitにも出させてもらっているので、メールで連絡をいただいたり、お声がけいただくタイトルというのも増えています」

−−今回のステージでは、日本一企画際で登場したタイトル『嘘つき姫と盲目王子』が出展されています。インディー作品の発掘・リリースだけでなく、このような社員コンペ作品の市販化も続いていることで、社員のモチベーション向上にも繫がったりしていますか?

菅沼「ゲーム会社って、多くの人が自分のゲームを作りたいとか、こんなゲームがあったらおもしろいのになって思って入ってきている人が多いので、企画祭がすごくいい影響を及ぼしているのは間違いないですね。ゲームのことを考える時間が増えるというのは、純粋にゲームメーカーとしてとてもいいことだと思っています」

−−ちなみに『嘘つき姫と盲目王子』ってどのくらいの人数で作られているのですか?

菅沼「5〜6人くらいで、制作期間も企画を入れて1年くらいです」

−−本作は得も言われぬ独特のビジュアル作品に仕上がっていますよね。

菅沼「あの企画を提出したのが、弊社でWEBデザインを手掛けている女性なんですが、世界観をとくに重要視しています。ですので、絵はとても重要なポイントになっています」

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