2018年10月26日に、ロックスター・ゲームス(以下、R★)としては初めて国内で世界同時発売される最新タイトル、『レッド・デッド・リデンプション2』こと『RDR2』。ジョン・マーストンを主人公にした前作『レッド・デッド・リデンプション』がプレイステーション3とXbox 360用ソフトとして2010年に発売されてから8年。そして、本作のティザー映像が公開されてから約2年が経過し、まだかまだかと情報に飢えていたが、待ちわびた日々はもう終わりだ。我々は、R★最新作の完成度に、間もなく圧倒されることになる!
過日、スコットランドはエジンバラにある開発スタジオ“Rockstar North(ロックスター・ノース)”で行われた『RDR2』のハンズオフ・デモプレイは、長い歳月と日本からの時差ボケも吹き飛ぶ衝撃的な体験となった。約40分に及んだデモプレイと、日本のメディアでは唯一可能となったインタビューを皆さんにお届けすることで、いかにそれがすさまじい完成度であったか、お伝えしたい。誰もが待ちわびた最新作は、またもビデオゲームのデザインの根幹を塗り替えるのだ!
このデモプレイと合わせて行われた、ロックスター・ノースの共同代表(Co-head)であるロブ・ネルソン氏へのインタビューは1時間近くに渡って行われたが、内容が濃密であるため、文字量が10000字以上と非常に多い。そのため、前後編に分けての掲載となることをご了承いただきたい。
ガンファイトについて
ロブ・ネルソン氏と言えば、かつて壮絶な銃撃戦で強烈なインパクトを残した『マックス・ペイン3』のアート・ディレクターを務めていた人物。それだけに、ガンファイトに対するこだわりは、他の追従を許さないと言えるだろう。まずは、ゲームにおける最大のアクションとなるガンファイトについて話を聞かせていただいた。
――最初に、今回のデモの中でもたいへんインパクトが強かった、ガンファイトについてうかがいます。全体的に、前作とはかなりシステムが異なっていると感じました。おなじみの“デッドアイ”だけでなく、キルショットのカメラワークや、馬に乗りながらの早撃ちなどを拝見しましたが、前作はもちろんのこと、『グランド・セフト・オートV』(以下、『GTAV』)との大きな違いはなんでしょう?
ロブ より本物らしいガンファイトを楽しめるようになっています。プレイヤーが「この武器はこんな感じで使えるだろう」と想像する感覚と等しくなるよう、レスポンスをさらに強化したので、よりリアルに感じられると思います。プレイヤーの動きも、前作よりいいレスポンスでコントロールしやすくなっています。『GTAV』でもガンプレイはかなり進化させましたが、この経験を活かして、さらに改善を施しました。プレイヤーや武器の動作が変わったということです。
――なるほど。挙動がリアルであることはもちろんのこと、その迫力が倍増したように感じました。
ロブ フィールドを歩き回って探索しているときや、戦闘に入っていくとき、すべてのモーションだけでなく、カメラの動きも変わります。プレイヤーの動きが早くなり、さらに左右の動きも加わるので、エイミングせずとも動くだけでターゲットにフォーカスしやすくなります。そこでエイミングすれば、ロックインする流れですね。ヒップ・ファイアリング(早撃ち)も見ていただきましたが、戦闘では、より多くのオプションを用意しています。ターゲットをひとりひとり倒してもいいですし、早撃ちでも戦えます。さらに、肩から撃つか、腰から撃つか、対戦相手とどう戦うか? 戦闘の選択肢は増えました。また、開発陣にもプレイヤーにも好評だったデッドアイを本作でも採用しましたが、これも進化させています。皆さんには、使い慣れた感覚は残っていながら、さらに深く、現実に忠実で、よりクールに見えるものになっていると感じてほしいですね。
――『マックス・ペイン3』もガンファイトがすごく強烈で、ゲームシステムでもっとも大事にして仕上げていた印象を受けました。この経験も活かされているのですか?
ロブ おっしゃる通り、ガンファイトは『マックス・ペイン3』でもっとも重要な部分でした。今回はプレイヤーの動きをよくするだけでなく、コントロールもカメラワークも改善しました。私たちは、つねにすべてのゲームから得た経験を、つぎのゲームに活かしています。
――いままでのゲームの要素をすべて加えたうえに新しい要素を入れているのは、よくわかりました。これは、現行ハードでなければできなかったことですね。
ロブ そうですね。このようなレベルに達することはできなかったでしょう。
――やはり、R★のゲームの基本はガンファイトですよ。その最新進化が『RDR2』なんですね!
ロブ ガンファイトは重要です。見た目もプレイした感覚も本物らしくなるよう、いまも時間をかけて個々の武器に調整を施しています。シングル・アクション・リボルバーではハンマーをコックして撃たなくてはいけません。ダブル・アクションでは、リピーターをコックする必要があります。リロードも、武器のタイプによって異なります。武器が本物らしくなるように改善を積み重ねていますが、プレイで楽しんでもらえることは大前提です。
ゲーム・サウンドトラックについて
デモプレイでは、銃撃戦だけではなく、平時におけるフィールド散策も披露された。そこで目を見張ったのが、ゲーム・サウンドトラックである。もちろん『GTAV』とは時代が違うので、馬に乗りながらラジオを聴けるわけではない。それでも、『RDR2』の世界には音楽が溢れている。それが、R★の真骨頂でもあるのだ。その音楽について、ロブ氏の返答はじつに興味深かった。
――つぎに気になったのが、サウンドトラックです。フィールドのダイナミック・スコア(状況に合わせて変化する楽曲)に加えて、さまざまな環境音も聞こえました。さらに、ギターを弾いている人、口笛やハーモニカを吹いている人、蓄音機で音楽を聴いている人などがいて、音にも幅が広がっているようですが、これは意識的に増やしたのでしょうか?
ロブ 音楽は、作品ごとに進化させる努力をしています。とくに、ダイナミック・スコアですね。ゲームをプレイしていくと変化するスコアとは別に、特定のミッションで流れるスコアもあるのですが、これもミッションでプレイヤーが取った行動によって変化します。オープンワールドにおけるダイナミック・スコアは、プレイヤーがいる場所や行動、起きた事象、あるいはプレイヤーがあまり感心できないことをやったときなどに影響を受けて変化します。ただし、これは繊細なものであり、確かにプレイヤーの感覚を刺激しますが、大げさで押し付けがましくなってはいけません。その点には注意しています。また、ハーモニカを吹く人やバンジョー、フィドルを弾く人など、時代設定に合った音も数多く取り入れています。これによって、100年前の世界に生きていると感じてもらえるでしょう。
――音楽もゲームへの没入感を高めてくれますね。
ロブ 私たちが開発するすべての要素、とくに本作ではワールド、キャラクター、動物、人々の動きからサウンドに至るまで、プレイヤーがその場所にいるという感覚を味わってもらうことを目的としていますから。
―― 虫が飛んでいる音も聞こえましたね。強力な殺虫剤がなかった時代ですから、ブンブンと飛んでいる羽音が耳元で(笑)。
ロブ 確かに(笑)。虫の音だけでなく、鳥の鳴き声も場所によって変化します。テクニカル・オーディオ・ディレクターのアリが率いるサウンドチームは、ものすごいこだわりを持っています。その場にいる感覚を、とても大事にしているのです。こうした要素を層にして重ねていく作業は、非常に複雑になるのですが、がんばっています。
“キャンプ”について
『RDR2』において、もっとも革新的なシステムと言えるのが、“キャンプ”である。詳細はインタビューを参照してほしいが、このようなシステムを内包したゲームデザインを見たのは、少なくとも筆者は初めてだった。『GTAV』のキャラクター・スイッチにも匹敵する、新しい衝撃だ。ビデオゲームで何を“体験”させるのか? その1点を真摯に突き詰めた結果が、『RDR2』には詰め込まれている。
――今回の新しい要素に、“キャンプ”があります。先ほどのデモプレイでは、キャンプで食料が不足して不平不満が出たので、狩りに出かけていましたよね。狩りが有機的にゲームと関わっていると思ったのですが、なぜこのようにしたのですか?
ロブ 主人公が、ギャングとともに生きているからです。ミッションだけでなく、この世界にいるときは、つねにギャングたちがそこに存在し、主人公は彼らと関係を持っています。お互いに面倒を見なくてはいけない。無法者でありながら、ともに住む人たちと、ある意味で“家族”を構成している主人公は、どのような毎日を送っているのか。銀行や列車を強盗しているばかりではなく、生きていくために何かをしているはずです。それが狩りであり、狩りをゲームに取り入れることは、道理にかなっています。
――小さな社会を形成し、それを維持することも重要なファクターになるのですね。
ロブ 仲間のギャングのために、どれだけのことをしなくてはいけないかについては、まだ調整中です。プレイヤーがやりたくないことはやらなくて済むようにしたいので。やりたくないことは、ほかのメンバーにやってもらえます。実行すれば利益が得られることを、プレイヤー自身がどこまで行い、ほかのメンバーがどこまで行うか。そのバランスは調整しています。ただ、本作はプレイヤーが望んだようにプレイできることは確実です。
――いままでの作品では、どこかの場所で主人公が暮らし始めるとか、主人公が異邦人のような形で登場していろいろ行動するという設定が多かったと思います。今回のキャンプは、まったく違うコンセプトですよね。おそらくキャンプは移動すると思うのですが、かなりの人数の仲間を引き連れて移動しながら暮らすというコンセプトは、聞いたことがありません。このアイデアはどこから生まれたのですか?
ロブ いい質問ですね。これについては、サムやダン(ロックスター・ゲームスの中心を担うハウザー兄弟)と深く検討しました。前作の主人公は、ひとりのガンスリンガーで、更生しかかった無法者でした。そんな異邦人が異郷の地にやってきて、人々と出会うことでゲームは進みました。しかし、本作の主人公は、ギャングとともに暮らす、現役の無法者です。何足ものカウボーイブーツを履き慣れた人のイメージですね。彼の視点で、前作の主人公、ジョン・マーストンのストーリーを語りたいと思ったのです。ミッションをプレイしているときだけでなく、オフ・ミッションの状態でもギャングたちといっしょに暮らすとは、どういうことなのか。彼らがつねに周りにいるという状況はどんなものなのか。それを皆さんに知っていただきたいですね。
――仲間のパーソナリティーも気になります。
ロブ ゲームを進めていけば、いろいろなキャラクターが登場し、彼らの人間関係を知ることができます。その関係も、プレイヤーの行動や選択で変化していきます。プレイヤーが仲間に対してどのような影響を与えるのかは、検討を重ねている状況です。
――キャンプと言うコミュニティーを背負っている主人公という設定も、いままでとは違いますね。
ロブ その通りです。じつは『GTAV』でも、このアイデアを検討したんです。(『GTAV』の主人公のひとり)マイケルというキャラクターは、反抗的な娘、ゲーム好きの息子がいる家族を持っていました。ダンは、家族を持っているという主人公のコンセプトをさらに深めたかったようです。本作では、そのコンセプトをかなり先へ進めました。コミュニティーに属する人間がつねにまわりにいて、主人公は彼らと話をすることで理解を深めていきます。そのうちプレイヤーは、彼らが目の前にいないときでも仲間の存在を意識するという感覚を持ってもらえるでしょう。また、キャンプ以外で出会った人々とも、これまで以上に深いレベルでインタラクトできます。挨拶したり、身体が触れたり、ひと言交わすだけでなく、友好的な態度を取ったり、無礼に振る舞ったり、脅したりなど、相手に合わせた行動をプレイヤーが選んで対応できるように、より多くのオプションを用意しています。
――流れ者のチームで集団生活するという体験自体が、とても新しい。ファンタジー世界でギルドに入るのとは違って、自分がそれを統率するだけでなく、その集団ごと移動してゲームを進めるというアイデアは、これまでになかったものです。
ロブ 私たちにとっても新しい挑戦ですね。このアイデアには惹かれましたし、ワクワクもしました。ひとりで動き回り、ほかの人に会って生活して、またひとりに戻るという経験とは異なります。これはストーリーを語るうえでも、コミュニティーのメンバーとしてのロールプレイをするうえでも、おもしろい手法だと思います。
――いわゆるパーティーとは違うものであることを、どう説明しようか悩みます。
ロブ プレイヤーが彼らと出会うとき、そこにはすでにグループが存在しています。そこから、プレイヤーは主人公アーサー・モーガンの“旅”を共有していくことになります。前作で、ジョンは「銀行強盗をした」と話していました。そのときのストーリーを、ダッチの右腕であるアーサーの目を通して語りたかったのです。アーサーは、とても興味深いキャラクターです。ジョンやビル、ハビエなど、ほかのギャングのメンバーについても、アーサーの視点で描きたかった。前作で語ることができなかったストーリーを語り、ダッチも違うアングルで取り上げます。彼もまた、前作では興味を惹かれるキャラクターだったので、さらに掘り下げたいと思いました。彼らが変化していくストーリーであり、近代化、産業化が進む世界で、法執行官に追跡されるギャングがどう生きていくか。これが本作のストーリーです。追われながらも世界に摩擦を起こす彼らの旅を描いているということです。
つねに新しい体験とテクノロジーを融合させるR★のスタイルは、ゲームデザイン全体から細部に至るまでこだわりがある。ガンファイト、サウンドトラック、そして新システムのキャンプは、ビデオゲームの可能性をまた大きく拡大させたと言えるだろう。ここまでがインタビュー前半戦。後半は、皆さんが気になる、オープンワールドにおけるマップ構成や、主人公アーサーの姿について迫りたい。