爽快な横スクロールバイクアクションはここまで進化した
3gooから2018年5月24日発売予定のNintendo Switch用ソフト『アーバントライアル プレイグラウンド』は、バイクをモチーフにした横スクロールアクションゲームだ。プレイヤーは、アクセルとブレーキを駆使してバイクを操作しながら障害物などが置かれたステージをクリアーしていくことになる。重要なのはバランス感覚で、いかにアクセルとブレーキを制御しながらステージを進めていくかがカギとなる。まあ、純然たるバイクゲームというよりは、まさに“バイクを題材にしたアクション”だ。
『アーバントライアル プレイグラウンド』は、『アーバントライアル』シリーズの3作目にあたる。気軽にかつ爽快に楽しめるということで、同シリーズは高い評価を獲得しており、シリーズの世界累計販売本数は100万本を超えている。最新作である『アーバントライアル プレイグラウンド』にかかる期待も、当然のこと大きいものがある。
『アーバントライアル』シリーズを開発するのは、ポーランドのゲームスタジオTate Multimedia。この度、バイス・プレジデントのポール・ルーコウィッツ氏が来日を果たし、インタビューをする機会を得た。以下に模様をお届けしよう。ちなみに、ポール・ルーコウィッツ氏は大の日本好きであり、プライベートでも度々日本を訪れているとのことだ。
ポール・ルーコウィッツ氏
Tate Multimedia
バイス・プレジデント
重視しているのはアートと斬新なゲームプレイメカニズム
――まずは日本のゲームファンに向けて、Tate Multimediaさんのことを教えてください。どのような会社なのですか?
ポール Tate Multimediaは20年前に設立されたゲーム会社です。デベロッパーでありパブリッシャーでもあります。PCおよびコンソールゲームを開発しています。会社には45人のスタッフがいまして、協力してくださっている方も合わせると、100人を超えますね。
――会社の方針を教えてください。
ポール 力を入れているのはふたつの領域です。まずはアート。私たちは絵画やアートなどに詳しいスタッフが多く、アーティステックな方面には力を入れています。もうひとつが斬新なゲームプレイのメカニズムを追い求めることです。それぞれのタイトルで、そのふたつは注力ポイントになっていますね。
――アートですか?
ポール 私は個人的に絵を描きますし、絵画のコレクションもしています。CEOは浮世絵の世界的なコレクターだったりします。アートディレクターは、フランスの有名な芸術大学出身だったりします。つまり、スタジオ全体にアートのバックグラウンドがあるんですね。
――となると、逆に芸術家肌の人がなぜゲーム開発を手掛けるのか少し不思議ですね。
ポール 表現方法のひとつのバリエーションとして、ゲームがあると考えています。
――ああ、なるほど。もうひとつの方針としての、斬新なゲームプレイメカニズムの追求に関しては?
ポール ポーランドには、『ダイイングライト』シリーズのテックランドや『ウィッチャー』シリーズのCD Projekt RED、『スナイパー ゴーストウォリアー』のCI Gamesなど、優秀な大手スタジオがたくさん存在するのですが、どことも違う個性を出そうと思ったら独自性が必要になります。私たちにとって独自性を発揮すべき領域が、斬新なゲームプレイメカニズムだったのです。そんな新しいゲームプレイメカニズムを追求して作ったのが、『アーバントライアル』シリーズでした。
――ちなみに、ポールさんは日本がお好きとのことですが、社名のTate Multimediaの“Tate”は、日本語の“タテ”から来ているのですか?
ポール 違います(笑)。“Turn around the elephant”から来ています。これはスタッフの意見を採用したのですが、まあ、“象が回る”くらいの意味ですね。
――どんな意味があるのですか?
ポール 実際のところ、意味はありません(笑)。
――なんとも……(笑)。つぎの質問に移ります! さきほどのお話をうかがうと、『アーバントライアル』シリーズは、斬新なゲームメカニズムの追求から誕生したようですね。
ポール そうですね。1作めの『アーバントライアル フリースタイル』開発当時、すでにアーケードスタイルのバイクゲームは存在していて、ゲーム的にはおもしろかったのですが、一方で深みがありませんでした。そこで私たちは、このジャンルとゲームプレイにハイクオリティーのグラフィックスと現代のソーシャル体験を入れることで、ゲームを新しいレベルに引き上げることを決めました。そのうえで、私たちはプレイヤーどうしが競争する要素を盛り込むために、多くの異なるリーダーボードを提供しました。これはプレイヤーの皆さんにもとても好評でしたね。
――1作目の『アーバントライアル フリースタイル』がリリースされたあとのユーサーさんのフィードバックで印象的なものをお教えください。とくにどの点が評価されたのでしょうか?
ポール とても好評でした。結果として、シリーズは累計100万本のセールスを記録しました。ちょっと想定していなかったのが、プレイステーション3版よりもプレイステーション Vita版のほうが好評なことでした。多くの方はプレイステーション Vitaでのプレイを好まれましたね。あとから分析してみるに、携帯ゲーム機と『アーバントライアル フリースタイル』のゲームスタイルがマッチしていたのだと思います。“パーフェクトマッチ”ですね。
――なぜ、携帯ゲーム機と『アーバントライアル』シリーズの相性はいいのでしょうか?
ポール アーケードタイプなので気軽にプレイできるところと、あとゲームが遊びやすいのかもしれません。このシリーズはバイクのバランスを取るのが重要になるのですが、携帯ゲーム機だと左右にコントローラーがあって、真ん中にモニターがあるので、バランスが取りやすい。
――ああ……。なんとなくわかるような気がします。Nintendo Switch向けの『アーバントライアル プレイグラウンド』でも、その辺のマッチングはよさそうですね。
ポール まさにそのとおりです!
つねに新しいアイデアを求めて
――『アーバントライアル プレイグラウンド』を開発するにあたって、とくに注力したポイントはなんですか。
ポール 『アーバントライアル』シリーズはワールドワイドで100万本以上のセールスを記録しました。『アーバントライアル フリースタイル2』が配信されたあとで、私たちはシリーズを継続したいと考えていましたが、一方で「新しい要素を盛り込みたい」と思ったのです。そこで、開発会社のTeyonとチームを作って、数ヵ月後に『アーバントライアル プレイグラウンド』のプロトタイプを完成させました。そのときに、私たちはこのソフトがNintendo Switchに完璧にフィットすると確信して、開発を初めることを決断したんです。私たちは、シリーズを改善する新しいアイデアをつねに探しています
――『アーバントライアル プレイグラウンド』にはどのようなアイデアが?
ポール まずは、プレイヤーがどこでもトリックを決められるようにしようと思いました。『アーバントライアル フリースタイル2』までは、決まった場所でしかトリックを决めることができなかったんですね。
――より自由度を高めたということですね。
ポール はい。もうひとつはアートの新しい方向性です。『アーバントライアル フリースタイル』は若干落ち着いた色合いだったのですが、『アーバントライアル プレイグラウンド』は舞台をカリフォルニアに設定することで、より明るいアートスタイルを希求しています。その明るさはNintendo Switchに極めてマッチしていると、個人的には思っています。
――なるほど。ちなみに、なぜ舞台をカルフォルニアにしたのですか?
ポール それは、私がかつてサンディエゴに住んでいたことが大きいかな。明るい日差しに、輝く海岸……。まあ、ゲームにはうってつけですね。
――たしかに。
ポール ゲームプレイにおける『アーバントライアル プレイグラウンド』の新しいフィーチャーは、前輪と後輪に別々にブレーキをかけられるようにしたことです。それにより、より自由にトリックを決められるようになりました。
――ああ、Tate Multimediaはアートとゲームプレイメカニズムの斬新さにこだわっているとのことですが、『アーバントライアル プレイグラウンド』にもそれは踏襲されているということですね。
ポール そうですね。そのほか、分割画面もNintendo Switchからの新要素ですね。分割画面にしたのは、競争要素を加えたかったためです。男性と女性のふたりのキャラクターから選択可能にしたのも、本作から追加したことですね。
――アート面ではどのようなこだわりが?
ポール “カリフォルニア風”ということで、キャラクターやバイク、ステージなど、あらゆる面でこだわっています。ステッカーやTシャツなど細部のディテールに至るまで作り上げることで、“カリフォルニアらしさ”を感じていただけるようにしています。私たちはカリフォルニア出身ではないので、“カリフォルニアらしく”というのは、じつのところけっこうたいへんでした。
――バイクのデザインにもこだわったとのことですが……。
ポール 『アーバントライアル プレイグラウンド』に登場するバイクはすべてオリジナルです。カリフォルニア風のアートスタイルにマッチするようなデザインにしています。カリフォルニアに住んでいる若者にマッチしそうなバイクですね。
――たしかによく見ると、独特なデザインですね。デザイナーさんたちが“カリフォルニアスタイル”をよく咀嚼したのですね。
ポール 実際のところ、かつてのポーランドのアートスタイルは少し保守的でしたが、ここ数年で急速に自由度が増しています。新しい世代のクリエイターが台頭することにより、よりクリエイティブなアートスタイルが増えているんですね。
――なるほど……。いまTate Multimediaさんでも、若い感性に溢れたクリエイターが入ってきているということですね?
ポール そうですね。そのため、Tate Multimediaでは、若いクリエイターに自由な発想でゲーム作りができるような環境を構築することを優先しています。そこが、ほかのポーランドの大手ゲームメーカーとの違いかもしれません。「自由なモノ作りができる」ということで、若手にとって魅力的な開発現場となることを目指しているんです。たとえば、先日発表させていただいた『Steel Rats』もひとりの若手クリエイターのアイデアから生まれているんですよ。
――Tate Multimediaでは、とにかく新しいモノを作りたいということに対する飽くことなき希求があるわけですね。
ポール 新しいアイデアはつねに欲しています。ポーランドの大手ゲームメーカーは、それぞれ有力なIP(知的財産)があり、その開発がメインとなるのですが、私たちには自由さがある。そのへんは、Tate Multimediaの強みかなと。まあ、ポーランドにはほかに4~5社の大手メーカーがいるので、人材確保はつねにたいへんですけどね。新しいゲームを作りたいがために、他社からTate Multimediaに移ってきた人材もいます。
――なるほど……興味深いですね。少し脇道にそれますが、せっかくの機会なのでうかがいますが、ポーランドのゲーム市場について教えてください。
ポール ポーランドでもっとも人気が高いのはPCとプレイステーション4です。私たちがコンソール向けにゲームを開発するのは、世界市場を視野に入れてのことですね。ポーランド国内だけではとても……。技術力は非常に高いですが。ロシアやハンガリー、チェコスロバキアなども同じような感じだと思います。
――ちなみに、『アーバントライアル』シリーズがもっとも売れている国って?
ポール 日本ですね。『アーバントライアル』シリーズは、日本市場だけで30万本以上のセールスを記録しているんですよ。
――ああ、『アーバントライアル』シリーズは、日本人の志向ともマッチしたんですね。
ポール ちなみに、“どこでも自由にトリックしたい”という意見は、日本のユーザーさんからの要望だったんですよ。ハイスコアがどんどん出せるので、競争要素が増して、ランキングボードが白熱すると思いますね。あ、最初のご質問の“Tate Multimediaならでの注力ポイント”で、大切なことを思い出しました。当社は、アーケードアクションタイプのゲームにこだわっているということです。私たちは、2005年にアクションゲーム『Kao Challengers』をPSP向けにリリースしたのですが、そこでの成功がいまにつながっているように思います。
――ちょっと気の早い話なのですが、『アーバントライアル』シリーズの今後の展開をお教えください。
ポール いまはダウンロードコンテンツにすべてを注力しています。『アーバントライアル フリースタイル』をリリースしたときも、ダウンロードコンテンツに対する要望がすごく多かったんですね。今回は、ユーザーの皆さんのリクエストに応えたいと思って、すばらしいダウンロードコンテンツをたくさん用意しています。新モードや新ステージ、新バイクなどを順次配信していく予定でいます。少なくとも1年以上はダウンロードコンテンツを供給するつもりです。いいアイデアもありますよ! ダウンロードコンテンツは、無料のものと有料のものを用意するつもりです。末永いサービスを考えていますので、楽しみにしていてください。
――最後に、日本のゲームファンの方に向けてのメッセージをお願いします。
ポール もしあなたが『アーバントライアル』シリーズが好きで、スコアとチャンレンジを習得したいと考えているのでしたら、『アーバントライアル プレイグラウンド』は、まさにあなたのためのゲームです。たくさんのステージ、たくさんのトリック、たくさんのコンボの数々。 このゲームは純粋な楽しみを提供し、私たちはあなたが私たちのようにゲームを楽しむことを願っています。 リーダーボードで会いましょう!
■撮影/永山亘