『UNDERTALE』サカモト教授×MUSICエンジンコンサート! 音楽で巡る地下世界の旅【闘会議2018】_08

 2018年2月10日~11日、千葉・幕張メッセにて開催された、ゲームファンとゲーム大会の祭典“闘会議2018”。2日目となる2月11日、ゲーム音楽ステージのトリを飾ったのは、サカモト教授とMUSICエンジンによる『UNDERTALE』スペシャルコラボコンサート。本稿では、音に乗せてくり広げられた“地下世界”の旅を追いかけていく。

闘会議2018音楽ステージ(DAY2)ニコ生タイムシフト視聴ページ

※コンサートの構成上、若干のネタバレを含みます。可能であれば、ゲームプレイ後にお読みいただくことを強く推奨します。

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サカモト教授 
ニコニコ動画など、動画サイトを中心に多大な人気を獲得してきたゲーム音楽ミュージシャン。(画像クリックで公式twitterへ)
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MUSICエンジン
“レトロゲームから最近のゲームまで、大好きなゲームの音楽をつきつめていく”がコンセプトの演奏団体。2017年9月には第3三回公演として『UNDERTALE』コンサートを見事成功させている。(画像クリックで公式twitterへ)

 開場前から満員の観客が押し寄せたコンサートはOnce Upon a Time(むかしむかし…)で幕を上げた。やさしく響く弦楽器の音色に、しっとり切ないサカモト教授のピアノが重なり、観客は本作の世界観に“落とされる”。

 演奏はいせき』、『緊迫のとき』、『ENEMY APPROACHING!を経て、最初に訪れるクライマックス心の痛みへ向かう。そう、本公演はプレイヤーの歩むであろう物語をセットリストで再現しているのだ。音楽で“あの旅”を追体験できる。そう理解した観客の顔には、多大な期待と、若干の恐怖が浮かんだように見えた。

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 さて、遺跡を抜けたニンゲンを待っているのは、“世界一人気のある骨”と呼んで差支えないあの兄弟。彼らのテーマサンズニャハハ!には、彼らの人柄を表すような、ユニークでユーモラスな楽器の音色が顔を覗かせていた。

 ふたりと別れた後は、雪景色』、『スノーフルのまち、そして筆者のフェイバリットキャラクター“バーガーパンツ”のテーマでもあるいらっしゃいませへ。寒々しく寂しげなピアノソロに、鉄琴やピチカートの楽しげな音が“賑やかな街”の気配を与え、最後には温かい室内へ場面が移り変わっていく。同じメロディが(一部)使われている3曲だけに、曲から受ける印象は楽器や技法でここまで変わるのかと驚くばかり。

 続くBonetrousleもまた、セルフアレンジが印象的なテーマ。『ニャハハ!』とは打って変わった、軽快なパーカッションのビートが骨まで響く。

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 さて、雪国を抜けたプレイヤーが向かうのはウォーターフェルの洞窟。作中でも印象的に使われる“水滴”の音は鉄琴で表現されていて、アンダインとの邂逅の場面では、管楽器の演奏が洞窟に吹く風のように残響した。

 一瞬の静寂と、それを貫く正義の槍。しゃんしゃんと一定のリズムでかすかに聞こえるタンバリンは、戦闘の効果音を表現するためのものだ。指が絡まりそうになりながら十字キーを押した記憶がよみがえる。

 ここでクイズ。さあ、次の曲は?

 もちろん正解はあのエンターテイナーのテーマメタル・クラッシャー。続いてフルートの音色でショーの舞台がスパイダーダンスへと移り変わると、蜘蛛糸のようにキュートな弦の音色が何層にも絡まっていき、ぷつりと途切れた。

 そしてステージは、サカモト教授のピアノソロに導かれてコアへと突入する。そこで待ち受けるのは華麗なる死闘。ここでもういちどニコ生タイムシフト視聴ページのリンクを貼っておく。視聴者数を増やすならこのタイミングという気がしたので。

闘会議2018音楽ステージ(DAY2)

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 そろそろ後半戦だ。Bergentruckung』(※)、『アズゴアと重厚な曲が続き、会場のケツイがひとつになったころ、あの笑い声が響く! 最高の悪夢の始まりだ。民俗楽器風の打楽器を用いたり、わざと不協和音を出したり、何かをこすり合わせて効果音を再現したりと、悪戯心のオンパレード。まるで、あのキャラクターが指揮棒を振っているよう

※『Bergentruckung』の“u”はウムラウトの“u”

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 さて、ここからはシークレットゲストのきこりがギターで参戦。屈指の名曲夢と希望SAVE the World』が情緒たっぷりに奏でられた。結びのアレンジもまさに大団円という感じですばらしい。

 その後すぐに彼のテーマが始まり、ほっとひと息。観客のほうへ視線をやると、涙を抑えられなくなっているファンもちらほら。目が合いそうになったので慌てて逸らした。もらい泣きしてしまいそうだったので。

 ここでファンサービス的に本物のヒーローの戦いが挟まったあと、だれもが旅の終わりを予感する楽曲『UNDERTALE』へ。フルートのソロが始まると、ひらひらと天井から舞い落ちてくるものが!

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 花びらが降っている。すごい。完璧なフィナーレ。いやあ、めでたしめでたし。いいコンサートだった!

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 ……そんなわけがないですね。

 先ほどの『本物のヒーローの戦い』は、もちろんファンサービスなんかじゃない。ここで会場が暗闇に包まれ、本当の終曲メガロヴァニアがスタート。サカモト教授の刺すようなシンセサイザー、きこりの引き裂くようなギター、そして激しいオケの演奏が折り重なったド迫力のサウンドが会場へ押し寄せたのだった。

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 本公演のプログラムは以上となる。

 先にも述べたように、本作では、同じメロディーがさまざまな楽曲に共通して現れる技法が用いられている。キャラクターや土地のテーマを示唆的に用いることで、物語に深みや想像の余地を与えている……らしい。「らしい」というのは、筆者の貧相な耳では、そうした音の演出をゲームプレイだけで充分に楽しむことは叶わなかったからだ。

 しかし、こうして幾種類もの音が折り重なるオーケストラアレンジならば、そのぶん曲を理解するための手がかりが多い。おかげで、原作者のToby Fox氏が曲に込めたイタズラを、いくらか感じ取ることができたように思う。つまり『UNDERTALE』の物語へさらに深く没入できたということだ。感謝の意を表さずにはいられない。

 さて、MUSICエンジンは、来る2018年5月19日に再度の『UNDERTALE』公演を控えている。2月11日現在、チケットはこちらから購入可能だ。

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