Blizzard Entertainmentのアクションシューテイング『オーバーウォッチ』の国際プロリーグ、“オーバーウォッチ リーグ”(以下、OWL)。その開幕第1週を翌日に控え、会場となるロサンゼルス近郊のバーバンクにあるシェラトン・ユニバーサルホテルで各国のプレス関係者を対象にしたメディアデーが行われた。

『オーバーウォッチ』国際プロリーグ開幕を目前にTwitchでの配信などが発表。果たしてeスポーツチームは地域に根ざした存在になれるか?【OWL】_01
プレスカンファレンス冒頭で挨拶を行うコミッショナーのNate Nanzer氏。

 OWLは“オーバーウォッチ オープンディビジョン”と“オーバーウォッチ コンテンダーズ”の上位に位置する最高峰の大会で、世界12チーム(アメリカに9チーム、ソウル・上海・ロンドンに各1チーム)が参戦し、1月から7月にかけてリーグ戦とプレイオフを戦って年間勝者を目指す。

 将来的にはプロスポーツリーグのようにそれぞれがホームとなるアリーナを持つようだが、今回はバーバンクのBlizzard Arenaに全チームが集結して戦うことになる。

 メディアデーでは、まず最初にOWLコミッショナーのNate Nanzer氏が登壇し、リーグ開始にあたっての発表を行った。

 気になるところでは、大会配信に関してTwitchと2年間のパートナーシップ契約を締結したことが発表に。これで少なくともシーズン2まではTwitchでの大会視聴が可能となる(ただし言語は英語・フランス語・韓国語)。そのほか試合の模様はリーグ公式サイトや、すでに配信されているiOS/Android用の公式アプリ、および一部の試合についてはメジャーリーグゲーミング(MLG)のサイトなどでも視聴できるとのこと。

 またチームの支援手段として、各チームのカラーリングを基調とする全『オーバーウォッチ』ヒーローのスキン(12チーム×26ヒーローの312種類)が海外で販売開始された。スキンは“リーグトークン”と呼ばれるポイントで購入可能で、収益はチームに分配される……とのことなのだが、残念ながら日本からは法律上の問題によりトークンを購入できない旨がリーグ公式サイトに記載されている。

 これに合わせて、日本時間2月14日までに各プラットフォームでゲームにログインした人がスキンひとつを購入できるのに十分な100トークン(5ドル相当)を貰えるというキャンペーンもスタートしている。こちらは日本からも受け取れるようなので、よく吟味してスキンをゲットするといいんじゃないだろうか。

都市に根付いたプロチームを目指して

 メディアデーでは、各チームの運営陣と選手による記者会見も行われた。各チームが頭を悩ませていそうだったのは、結果はもちろんだが、いかにして地域に根付くかということ(実際QAセッションではそこに関する質問も多かった)。

 というのも、OWLではプロスポーツチームのように各チームがそれぞれのホームとなる都市を名乗っている。例えば優勝候補と目される韓国チームは“ソウル・ダイナスティ”、有名eスポーツチームCloud 9系のチームは“ロンドン・スピットファイア”、ロサンゼルスにある2チームのひとつは“ロサンゼルス・グラディエーターズ”といった塩梅だ。

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ロサンゼルス・グラディエーターズは6週間前にようやく発足したということもあって、所属選手がギリギリの7名。かき集めた感がなくもない。

 しかし、スピットファイアの選手は全員韓国系でイギリスの選手はおらず、グラディエーターズにはアメリカの自治連邦区であるプエルトリコの選手はひとりいるものの、後はフィンランド・韓国・ブラジル・カナダという多国籍構成。

 アイスホッケーやサッカーのトップリーグで自国以外の選手が多くを占めることはしばしばある光景で、それ自体は悪いことではない。だが都市を名乗る以上、「何をもってロンドンやロサンゼルスを代表するか」という問題はついてまわる。プロスポーツではスポーツ自体に支持基盤が成立していたり、チーム自体が地元で歴史を重ねているといった背景があるが、これから始まるリーグであるOWLは事情が異なり、イチから築いていかなければならない。

 恐らく、それが簡単なことではないのはリーグ側も百も承知で、それでもあえてプロスポーツのように地域の支持とグローバルなファン層が両立する“eスポーツ”を目指していきたいのだろう。実際、チームの運営サイドにはNBAやメジャーリーグなどプロスポーツチームの関係者なども多く参加しており、リーグへの期待度を伺わせる。各チームの取り組みとしては、基本的にSNSなどを活用しつつ、ホームとなる都市でのイベントも活発に行い、浸透を模索していく模様だ。

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サンフランシスコ・ショックのオーナーのAndy Miller氏(右端)はNBAチームサクラメント・キングスの共同オーナーでもある。

 一方、若い選手たちにしてみれば、異国で(時にそれぞれ国籍も文化も異なる仲間と共同生活しながら)長期にわたるリーグを戦っていくのがそれなりに大きな精神的負担になるのは想像に難くない。

 そんな中で盤石に見えるのが、先に挙げたソウル・ダイナスティ。国際大会であるオーバーウォッチ ワールドカップの優勝メンバーも多数在籍しており、当然のようにメンバー間の言語の壁はなく、現地リーグであるAPEXを複数回優勝しているLunatic-Hiのメンバーをベースにしたチームでチームワークもすでに確立されているというのは大きい。

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ソウル・ダイナスティはタイアップスポンサーとして、ネットワーク製品などで知られるNetgearとの提携を発表。新ユニフォームを披露した。

 それだけに、当然ながら他チームからはマーク対象として名前が挙がっている。果たしてプレッシャーを跳ね除けて2連勝のスタートダッシュを決めるのか、それとも意外なチームが躍り出るのか。初週は現地10日から13日にかけて合計12試合が行われる予定だ。