『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』あのエピソードの真意は? 開発者たちが明かす、ストーリー制作秘話【ネタバレ注意】

2017年11月17日発売し、好調なセールスとなっている『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』。そんな注目作のストーリーについて、開発者に訊く。

 2017年11月17日の発売から好調なセールスが続いている『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』(以下、『ポケモン US・UM』)。『ポケモン サン・ムーン』とおなじアローラ地方を舞台に物語が展開する本作の見どころはどのあたりなのか? 伝説のポケモン・ネクロズマを巡る物語や、これまで『ポケットモンスター』シリーズに登場した悪の組織のボスたちが集結する“エピソードRR”に込められた想いのほか、じつは本作を楽しむ上での大きなポイントであるサブイベントについて、ディレクターの岩尾氏と、ストーリープランニングセクションディレクターの杉中氏に聞いた。
※本インタビュー記事は、週刊ファミ通2017年12月28日号(12月14日発売)掲載記事を加筆・再構成したものです。

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プロフィール

岩尾和昌氏(いわお かずまさ)

『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』 ディレクター (ゲームフリーク)

杉中克考氏(すぎなか かつのり)

『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』 ストーリープランニングセクションディレクター (ゲームフリーク)

『ポケモン US・UM』の開発で重視された“現地感”

――まずは、ゲームの大枠の部分で『ポケモン サン・ムーン』 、『ポケモン US・UM』共通のテーマがありましたら教えてください。

岩尾両作の舞台となるアローラ地方は、ハワイをモチーフにしています。温暖な気候で色鮮やかな土地を表現するべく、『ポケモン サン・ムーン』では、フィールドマップだけでなく、登場人物たちのセリフや立ち居振る舞いまでを意識しました。『ポケモン US・UM』では、新要素であるマンタインサーフやアローラフォトクラブを通じて、アローラ地方の魅力をさらに引き出すことを目指しています。

――アローラ地方については、これまでの『ポケットモンスター』シリーズに登場した冒険の舞台と比べても、細部まで描こうというこだわりが強いように感じられますが。

岩尾冒険の舞台をしっかりと描こうというスタンスはこれまでと変わらないですが、ニンテンドー3DSでの開発ノウハウが蓄積され、環境が成熟したこともあり、舞台を描く際の表現が深くなっていることはあるでしょうね。

杉中とくに『ポケモン US・UM』では、より“現地感”を出すことに注力しています。細かいことのように思われるかもしれませんが、じつはストーリーを描くうえでは登場人物の魅力の掘り下げや、新たな一面を見せることにもつながっているんです。

岩尾冒険の舞台を作り込むことは、『ポケットモンスター』シリーズにおいてとても大事なことだと考えています。『ポケモン』の世界にどっぷり浸かってもらうため、必要な舞台や設定を揃えていくというプロセスは、とても念入りに行っています。

――メインストーリーとはあまり関係がないように思える町の人たちのちょっとした会話もたくさんあるじゃないですか。そうしたものの積み重ねが、舞台のリアリティにつながり、プレイヤーの没入感にもつながっていくのでしょうね。

杉中ゲーム内の挨拶などにも、そうしたこだわりを取り入れました。「アローラ!」という挨拶は、ハワイに取材に行ったときに体験した、「アロハー!」から考案しています。自分は気恥ずかしくて、最初はなかなかできなかったのですけれども(笑)。でも、慣れてくるとノリノリで「アロハー!」と言えるようになって。この感覚をそのままゲームに落とし込みたいと考えまして、「アローラ!」という挨拶を入れ込むことを提案しました。

ーーあの挨拶は杉中さんの発案だったのですね(笑)。

杉中わかりやすいですし、覚えてもらいやすいだろうということで、同じくシナリオ担当の松宮(ゲームフリーク・松宮稔展氏)とふたりで話し合って決めました。

ーーちなみに、挨拶のときのポーズはどうやって決められたのですか。

杉中 ハワイという土地には、虹をイメージした意匠のものがあちこちにあるんです。それを活かしたかったのと、人と人とをつなぐイメージを持たせて“懸け橋”を描くポーズになりました。

ーー何となくハワイっぽい印象はありましたが、あのポーズにはさらに深い意味があったのですね! さて、改めて『ポケモン US・UM』を作るために定めたテーマについて教えてください。

杉中前回のインタビュー取材でも岩尾が話していましたが、『ポケモン US・UM』では、開発チームの各セクションが“核心”をテーマに据えていました。“現地感”を高めるということは、プレイヤーの皆さんにアローラの核心へ近づく物語をより深く楽しんでもらうための取っ掛かりのようなものだったのです。

ーー人物の掘り下げ、という観点で考えると、『ポケモン サン・ムーン』とは少し違う行動を取るキャラクターも出てきますよね。とくにハウには変化が感じられたのですが。

杉中本作でのハウの役どころについては、初めから構想がありました。“そこ”にたどり着くためには、ハウをどう活躍させ、どう成長させるべきかをかなり考えていて。ハウは冒険の初めはとにかく“楽しみたい”という気持ちが強い人物なのですが、ポケモンと触れ合うことによって、より高みに行きたいと望む欲求が生まれてくると。その結果が、本作での彼の\最終的な役割につながるというわけです。

岩尾ハウが本作においてあの立ち位置になったのには、メインストーリーの展開とはまた別の狙いがありました。プレイヤーの皆さんと同じタイミングで初めてポケモンをもらい、同じタイミングで旅に出て、ともに成長しつつ戦う彼は、プレイヤーの皆さんに自身の成長を感じていただくにはうってつけの存在でした。

ーーそのほかの主要な人物でいうと、ルザミーネ、グラジオ、リーリエの親子関係がわりと変わったことが印象的でした。

杉中前述のハウもそうなのですが、じつは登場人物たちの性格付けを変えているわけではないのです。では何が変わったのかというと、彼らを取り巻く状況です。ルザミーネの場合、ウルトラ調査隊との出会いによって行動理念が大きく変化します。『ポケモン サン・ムーン』のルザミーネは、ウルトラホールとの関わりの中で大きなトラブルを引き起こしますが、『ポケモン US・UM』では、ウルトラ調査隊から得られたウルトラホールの知識によって違う行動を取るようになる。アローラ地方に危機が迫っているという事態が間近にある限り、彼女はそちらへの対処を優先します。

岩尾ポケモン サン・ムーン』では起こるはずだったことが、本作ではウルトラ調査隊がいることによって変化して、違った展開になっていくというわけです。このルザミーネの描きかたは本作のキーワードとも言える“別の可能性の世界”を表す要素になっているのです。

ーーこれは『ポケモン サン・ムーン』から感じていたことですが、スカル団やそのボスであるグズマの描きかたが、これまでの『ポケットモンスター』シリーズに登場した、大きな野望や思想を持つ悪の組織やボスたちとは少し違う印象を受けました。

杉中ポケモン サン・ムーン』、『ポケモン US・UM』の場合ですと、メインストーリーで主人公と深く関わりを持つ組織として、エーテル財団とスカル団のふたつがあります。“世界を危機に陥れるかもしれない存在はどちらなのか?”ということを想像しながらゲームを遊んでいただくためにも、スカル団はこれまでのシリーズ作の悪の組織とは少し立ち位置を変えています。ちなみに、『ポケモン US・UM』では、ウルトラ調査隊と関わったルザミーネの行動が変化していますから、そこに関わりの深いグズマも間接的に影響を大きく受けて言動が変化しています。

ーーたしかに、『ポケモン US・UM』でのグズマは“男を上げる”といいますか、見せ場が増えていますよね。

杉中もともといい男だったんですけどね(笑)。今回は、また違ったグズマの一面が見せられたと思っています。

ーーちなみに、本作のストーリーはどういう作りかたをされているのでしょうか。ゲーム制作においてストーリーは中核の部分だと思いますが、先にすべてを完成させておくものですか。

杉中ポケモン US・UM』の場合は、大枠の部分はあらかじめ固めて、そこから新たに追加される細かい遊びをうまくつなげていくという流れでストーリーを決めていきました。そこは、同じ『ポケモン』でも、タイトルによってやりかたはそれぞれですが。