『FFXIV』絶バハムート討滅戦の開発陣×ワールドファーストチームの夢の対談が実現!

『ファイナルファンタジーXIV』の超高難度コンテンツ“絶バハムート討滅戦”。その作り手と、世界でもっとも早くクリアーしたチームメンバーに話を聞く、スペシャルインタビュー企画。

 オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)で、かつてない高難度コンテンツとして実装された“絶シリーズ”第1弾、 “絶バハムート討滅戦”。このコンテンツには、『新生エオルゼア』での高難度レイド“大迷宮バハムート”の邂逅編、侵攻編、真成編で最終層に待ち構えるボスたちが大集結。未曾有の緊迫したバトルが展開し、総戦闘時間も20分弱と最長。2017年10月24日に実装されてすでに2ヵ月以上が経とうとしているが、クリアーしたチームは世界中でもまだわずかだ。そんなコンテンツを作り上げたバトルコンテンツデザイナーの須藤賢次氏、そして『FFXIV』のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にインタビューを実施。さらに、今回は趣向を変え、この絶バハムート討滅戦を世界最速の11日間でクリアーし、見事ワールドファーストを成し遂げた日本人チームにも同時に取材を依頼。当日都合のついた2名にもインタビューにご同席いただき、一部対談形式を取っている。究極のコンテンツの作り手と究極のプレイヤーが邂逅するあまりにも濃密すぎる2時間。その模様を余すところなくお届けしよう。

 なお、インタビューの内容は、本記事に先駆けて、週刊ファミ通2018年1月11・18日合併号(2017年12月27日発売)にも掲載されているが、紙幅に収まりきらなかった話題も盛りだくさんの内容となっている。誌面で見たという人も必読!

プロフィール

吉田直樹氏(よしだなおき)

『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー兼ディレクター。

須藤賢次氏(すどうけんじ)

『ファイナルファンタジーXIV』バトルコンテンツデザイナー。

てっくてっく氏

絶バハムート討滅戦でワールドファーストを獲得したチームのひとり。キャラクター名はNacio Duran。ジョブは白魔道士。

まさき氏

絶バハムート討滅戦でワールドファーストを獲得したチームのひとり。キャラクター名はChloro Cradle。ジョブは忍者。

絶バハムート討滅戦はいかにして誕生したのか?

――絶バハムート討滅戦は、いつごろから開発がスタートしたのでしょうか?

吉田機工城アレキサンダー零式:天動編(以下、天動編)の難度を調整しているときに、「この上位にもうひとつ超高難度コンテンツがあるといいんだけど……」と開発チームに話をしていました。“絶(ぜつ)”というシリーズタイトルも、僕がもともとこの名前でやりたいと言っていて。しかし、当時開発チームは『紅蓮のリベレーター』の開発が始まっており、手一杯仕事を抱えていました。それもあって様子を見ていたのですが、開発チームのほうから、「なんとかするので“絶”をやりましょう」と声を上げてくれたので、『紅蓮のリベレーター』開発後期から徐々に着手していった感じです。

―― “絶”開発のトップバッターは始めから須藤さんと決まっていたのですか?

吉田いえ、最初の会議の段階では、担当者は決まっていませんでした。須藤もなぜか無口で(笑)。最初はあまりやる気じゃなかったよね?

須藤大迷宮バハムート零式:侵攻編を作って、超高難度コンテンツの調整の難しさは痛いほど知っていました。ですので、「できるなら担当したくないなあ」と思っていて(苦笑)。「し〜らない」という感じで見ていましたね。

吉田コンテンツの中身は担当者が決定することになっているので、絶シリーズの第1弾を何にするかよりも、担当者が誰になるかが先なのです。最初の会議のときには、プレイヤーの心に強く残っているであろう、「タイタンがいいのかもね?」という話も出ていました。

須藤そうしたら、今年の4月ごろでしょうか。次元の狭間オメガ零式:デルタ編(以下、デルタ編)の調整をしているときに、当時のモンスター班のリーダーに肩を叩かれて、「もうそろそろ担当を決めないとね。もう、やれるのは君しかいないと思うんだけど……」という話をされまして(笑)。

――指名を受けたと(笑)。

須藤ええ。それで自分がやると決まって、吉田さんに「今回の絶は、アレキの起動編と律動編のどちらの難しさに寄せますか?」と聞いたんです。そうしたら、必要なDPS(火力)を高めに設定するよりも、ギミック盛り盛りのほうがいいと。その言葉を持ち帰りつつ、どれを題材にするかを考えていきました。タイタン、アルテマ、バハムートあたりに絞れてきたところで、たまたま思いついちゃったんですよね……。大迷宮バハムートのボス3体を出したらおもしろいんじゃないかなって(笑)。

吉田須藤から「“絶”はツインタニア、ネール、バハムートでいこうと思います」と言われたときは、いったい何を言っているんだろうと思いました(笑)。“絶○○討滅戦”なのに、どうして3体の名前が出るのかと。これからシリーズ化するというのに、いきなり盛りすぎると今後が苦しくなると言ったら、「吉田さん、違いますよ。最初だからこそ、“これが”というものを出さないといけないんです」とカッコイイ名言を返されましたね(笑)。

――本当につぎがたいへんになってしまいましたよね(笑)。さて、題材がバハムートと決まって、具体的にどんなコンテンツにしようと考えたのでしょうか?

須藤必ず実現したかったのは、ツインタニア、ネールさん、バハムートという、大迷宮バハムートの最終層のボスが3体出てくるところで、それぞれが持つ技を組み合わせた連携攻撃を作ろうというのが自分の中にありました。あとは、最近のコンテンツを作るときにも心掛けていることなのですが、ドラマチックな展開にしようと。たとえば、ツインタニアが飛び去った後にネールさんの出番になりますが、ふつうに登場するのではなく、最初に落ちてくるのはラグナロク(衛星ダラガブの破片)というように、ドラマチックな組み立てを考えて、そこから肉付けをしていきました。

――コンテンツを設計するうえで、大事にしているポリシー的なものはありますか?

須藤あるギミックが解けたとき、意図的に解答を作らなかったわずかな部分以外は、自分たちの解法が正解だったと必ずわかるように作ったつもりです。今回の絶バハムート討滅戦は、自分が担当するということが事前にプレイヤーの方に周知されていたので、“須藤が作るものには必ず何かしらの法則がある”というように思ってもらいたかったというのもあります。

――攻略配信などを見ていると、「須藤さんのコンテンツだし、ランダムってことはないよね」みたいな雰囲気はところどころでありましたね。てっくてっくさんは、“群竜の八重奏”のギミックはどのように感じましたか?

てっく群竜の八重奏のギミックは、外周のドラゴンの突進が、時計回りか反時計回りで順に来るんですが、サンプルが少ない時点では法則がわかりませんでした。ですので、僕たちはどんなパターンでも対応できる方法を考えました。僕たちのやりかたはかなり特殊で、言ってしまえば昔からやっているマラソン(※)なんですよ。途中で正しい解法がわかったのですが、最初のうちはもしかしたらマラソン前提で須藤さんも作っているのかもしれないと感じていました。

※敵の動きを見て対処するのではなく、どんなパターンが来てもギミックを回避できる移動ルートを確立し、行動を固定化する攻略法。

須藤マラソンは、称賛に値するすごくいい攻略法だと思っています。八重奏のギミックには当然正攻法がありますが、こちらが意図していなかった安全地帯が見つかったり、マラソンしたりだとか、プレイヤーが抜け道みたいなものを作ってくれるとよりいいよねという話を調整チームの人としていたんです。ですので、高難度コンテンツとはいえ、プレイヤーの方々が楽な攻略法を見つけてくれたのはうれしかったです。

――通常のレイドですと、タンクの火力や、ヒーラーの攻撃参加が毎回話題になりますが、今回の絶バハムート討滅戦に関しては、全員が攻撃することを想定されているのでしょうか?

須藤やれることはすべてやる、という想定で作っています。

吉田それは、アーマリーシステムであることも含めてすべて、と考えました。今回の絶バハムート討滅戦では、パーティ構成についてよく話題になりますが、“早期攻略をしたいなら”自分たちのパーティに合ったジョブを選ぶ、それも方針のひとつに含めました。超高難度のコンテンツを作ろうとしたとき、コンテンツによって“移動が多い”、“攻撃できる時間が短い”など、どうしてもコンテンツごとにジョブの有利不利は出てしまいます。逆に、それを感じさせずにかつ尖ったコンテンツにするためには、先にロール内のジョブどうしをすべて平均化する必要があります。しかし、それではジョブの操作個性やコンセプトが薄くなり、どのジョブを使っても同じという、誰も望まないであろう“凡庸なジョブがたくさんある”状態になってしまいます。“絶”を基準にジョブバランスを取るのではなく、それ以外の平均的なコンテンツで、遊び心地とコンセプトを守って調整する、というイメージです。“調整をあきらめている”と取られる方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではなく、あくまで調整のベースになるコンテンツとは考えておらず、そうしないと超高難度は作れない、ということです。ギリギリまで粘りはしますが、最後の最後、どちらを取るかと聞かれれば、コンテンツの難度とおもしろさを取る。“絶”はそういう方針としました。

――端的に言えば、今回は黒魔道士がだいぶフォーカスされましたよね。

吉田僕も調整に参加したときに、「ああ、今回の絶バハ、黒魔道士は苦戦するな……」と思いましたし、実際にもそうでした。黒魔道士は敵の攻撃パターンを把握すればするほど、火力が伸びていくジョブです。また、詠唱をつねに念頭に置く必要があり、今回のように移動が激しいバトルでは、早期攻略において使われづらくなります。ワールドファーストを狙わないのであれば、じっくり腰を据えて、お好みのジョブで攻略していただきたいです。しっかりとパターンが確立されて、パターンが手になじめば、どのジョブで挑戦してもクリアーできるようにはなっていると思います。確かに黒魔道士の移動ハンデは非常に大きく、操作難度がほかに比べて高いとは思っており、全体を見渡したうえで、パッチ4.2を目指して調整を行おうと考えています。このままで完璧だ、ということではありませんので、黒魔道士メインの方は、もう少しお待ちいただけると助かります。

――今朝方、黒魔道士入りのパーティでクリアーしたチームが出ましたし(※)、それが動かぬ証拠ですよね。

※取材日である2017年12月4日に、海外のレイドチーム“Elysium”が黒魔道士入りのパーティで初めて絶バハムート討滅戦をクリアー。

吉田今回、黒魔道士入りのクリアーパーティが出るまで時間がかかった要因は、一度クリアーしたら全員が武器を獲得できるようにしていたからということもあるかもしれません。週に武器がひとつしか取れず、何度も通う必要があったとしたら、自分たちのモチベーションを保つために、ほかがまだ達成できていないチャレンジブルな要素として、黒魔道士入りで挑戦していたところもあったのではないかなと思います。

――あれを8回クリアーするのは……(笑)。

須藤今回は本当に難しくするので、1回だけクリアーすればもういいと、初期の段階から決めていました。

吉田お手伝いとして参加しても報酬が減らないようにしていますし、武器を全種類揃えたいという人も、ジョブ数ぶんクリアーすれば確実に揃います。

――今回、国内外ともに攻略の様子を配信する方がすごく多かったですよね。開発チームの方々も視聴されたりするのでしょうか?

吉田基本的に、“極”クラス以上のバトルコンテンツを作っている人間は、コンテンツがリリースされた瞬間から配信を見ていますね。世界中の配信を見て、自分たちが作ったギミックに対するリアクションをチェックしています。

須藤初見時の反応は、コンテンツを作るときにすごく参考になりますからね。いわゆる攻略動画は、各自の動きが完成されていて、どこを難しいと感じたかわかりにくいんです。

――絶バハムート討滅戦の配信では、視聴者数が数千人単位のところもありましたよね。

須藤今回も最初から視聴させていただいていて、いままでの視聴者数と桁が違うなと感じていました。自分がいちばんおもしろいと思ったのは、日本のチームの“5150(フィフティーワンフィフティー)”の配信を見ていて、八重奏の解きかたがわからず、図を出してみんなで意見を出し合っていたところです。たまたま自分も家で見ていて、ニヤニヤが止まらなかったです(笑)。

――ネットでは、「須藤さんはきっと酒がうまいだろうな」という声もありましたよ。

須藤最高においしかったです(笑)。

吉田ふだん通りの雰囲気で攻略している様子が、部活で試合に向かって練習しているような感覚に似ていて、見ていて気持ちよかったところなのかなと。僕はちょうど海外出張中でしたが、ネットがつながったらすぐに配信をチェックしていました(笑)。配信してくださった方々には本当に感謝しています。

――それにしても、本当に“絶”の名にふさわしい難度ですが、緩和などの予定は?

吉田大きく緩和するつもりはありません。コンテンツとしては、パッチ4.2からIL(アイテムレベル)345シンクにする予定です。武器はもともとIL345ですし、IL340シンクではいまよりも難しくなってしまいます。IL345シンクなら、今後防具側をIL5ぶんだけプラスできるので、ちょうどいいかなと思っています。

――ということは、今後ILの更新があってもIL345シンクのままなのでしょうか?

吉田いまのところそのつもりです。

須藤そこは最初から議論していたところで、クリアーした人の意向を尊重したいというのがありました。今回、クリアーされた方の意見を見ていると、緩和は望まないという声が多かったと思っています。

吉田それを決めたのも、ワールドサードのクリアーパーティが出た後です。少なくとも、4.Xシリーズ中はIL345にしておく予定です。いま少しずつ前に進んでいる方も、多くは緩和を求めていないと考えていて、だからこそ挑戦してくださっているのだと思います。今後、誰も行かなくなってしまったら、それはそれでもったいないので、動向を見つつ調整ということになりますが、制限解除のような極端な攻略法でのクリアーは、いまのところ控えようと考えています。

――絶シリーズは、いわゆる奇数パッチごとに追加されていくイメージなのでしょうか?

吉田いまのところそうですが、プレイヤーの方のフィードバックを見ていると、「そんなにたくさんいらない」という声も多く拝見しました。でも、つぎの“絶”もう作り始めているので、少なくとも第2弾までは想定通りのパッチで追加されると思います。つぎの拡張パッケージまでは、もう十分かなという気もしています。

――絶の第2弾は、どなたが担当されるのでしょうか?

吉田須藤ではないのは確かです。

――では、須藤さんは後ろから「どれどれ」と見ている感じですね(笑)。

須藤まあ……そうですね(笑)。

吉田須藤は、他人のコンテンツになると途端にきびしいんですよ(笑)。

須藤「えええ? それってどうなの?」とか(笑)。ふだん言われる一方ですからね。