2017年12月15日~17日の期間、セガ・インタラクティブが、新作音楽ゲーム『オンゲキ』のロケテストを東京・秋葉原セガ3号館にて開催している。本記事では、『オンゲキ』ロケテスト版のプレイインプレッションと、同作のプロデューサー新井健二氏、ディレクター小早川賢氏のインタビューをお届けする。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_01

独自の筐体&ゲームシステムにリアルカードを絡めた”よくばり設計”

 『オンゲキ』は、ここ数年でゲームセンターに完全に定着したセガの音ゲー、『maimai』、『CHUNITHM(チュウニズム)』を手掛けたチームによるアーケードゲーム。そのため、ある意味では“音ゲーシリーズ”の第3弾と解釈してもいいタイトルともいえるが、筐体、操作体系、ゲームシステムなどなど、ほぼ全てが上記の2作品とは大きく異なっている。

 まず筐体を見てひと目で分かる違いが、シューティングや格闘ゲームで使用するアーケードスティックに似たレバーが、中央についている点だろう。『オンゲキ』は、このレバーで画面に表示される3Dキャラを動かしつつ、ボタンを使ってノーツを押していくのが基本的な操作となっている。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_02
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_03
『オンゲキ』では筐体中央のレバー、その左右に3つずつ配されているボタンのどちらか、そして筐体のサイドについているボタン、これらを使ってゲームをプレイする。
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_04
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_05
落ちてくるノーツが判定ラインに触れた瞬間にボタンを押していくのは従来の音ゲーと同じ。キャラクターと重なっている必要はないが……。
曲の展開によっては判定ラインが狭まることがある(写真では右半分が判定ラインとして機能していない)。こういったシチュエーションでは、機能している判定ラインの上にキャラクターを移動させる必要がある。

 そして『オンゲキ』ならではのプレイ感覚を生み出すのにひと役買っているのが、ノーツ以外に降ってくる赤い“敵弾”と 黄色い“ベル”の存在。前者は触れることでライフが減少し回復し、後者は逆にライフが回復する。この弾を避けたり拾ったりするシューティングゲームライクなアクションがノーツの入力と合わさることで、これまでの音ゲーにはない独特のプレイ感覚を生んでいる。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_06
ライフが回復するベルは楽曲ともシンクロしている。小早川ディレクターいわく「ボタンを押すこと以外でも、リズムに乗れる要素を入れる」のが狙いとのこと。

 レバーでの操作に筐体サイドのボタンなど、音ゲーでは見慣れない要素が多いため、ここまでの紹介を見ると「このゲームの操作は難しそう……」と感じる人もいるかもしれないが、今回プレイさせてもらった感じだと、ゲームのルールを把握さえすれば、操作量的な難易度は、全身を使う『maimai』や、腕を動かしてカバーする範囲が広い『CHUNITHM』より低い印象。むしろレバーという”よりどころ”がある分、他ジャンルのアーケードゲームから新規参入する音ゲーとしては最適かも? と感じるぐらいだった。また、低めの難易度を選べば、ミスが多くてもスコアはともかく完走させてくれるのも、自分のような音ゲー弱者にとってはありがたかった。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_07
使用ボタンが少なめなおかげか、(難易度が低めだと)一度に確認すべきノーツが少なめ。そのため譜面を覚えていない状態でも、アドリブでなんとかなりそうな感じがしたのも好印象。

 また、『オンゲキ』はゲームをより快適に楽しむためのサポート、そしてキャラクターに愛着を持つ人のモチベーションを高める手段として、実カードを使ったギミックが用意されているのも特徴。筐体とは別に設置されているカードメイカーにクレジットを投入すれば、自分がプレイして手に入れたキャラクターをカード化できる。このキャラクターカードを筐体に認識させてプレイを重ねると、カードなしの状態のキャラクターよりもはるかに高いレベルまで育成することが可能になり、高いスコアが出やすくなるといったメリットが得られるとのことだ。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_08
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_09
オンデマンド印刷によりその場でキャラクターカードを作り出す“カードメイカー”。
カード化したキャラクターは、レベルの上限と一部ステータスが大幅にアップする。
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_10
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_11
楽曲完走後のスコアは、カードの効果があり/なしの両方が表示され、別々に集計されるので、自分の腕だけで戦いたい人も安心。
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_12
ロケテストでは、入手したキャラクターは100円でカード化可能。さらに100円を追加投入すると、ホロ加工を施した状態のカードにグレードアップすることができた。
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_13
写真左のカードはノーマルな状態、右側はホロ加工を施したもの。『オンゲキ』では、カードのレアリティに関わらず気に入ったキャラクターのカードはホロ加工できるようだ。

『オンゲキ』が提示する新しい音楽ゲームのカタチ。プロデューサー&ディレクターインタビュー

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_14
新井健二プロデューサー(写真右)、小早川賢ディレクター(写真左)

――まずは『オンゲキ』を制作することになった経緯から教えてください。

小早川『maimai』、『CHUNITHM』は、いままでの音楽ゲームにはなかった新しいデバイスを使った遊びや、当時の音楽ゲームが持っていた弱点、ボタンの多さが生む複雑さや難易度の高さといったものを解消したいと思って作り、ある程度うまくいった手ごたえを感じられました。でも私を含めて『maimai』、『CHUNITHM』を作ってきたスタッフは、従来のような音楽ゲームもすごい好きで。3作目を作るなら、『オンゲキ』で採用しているような“押し感”をすごく感じられるボタンを使った、操作に手ごたえを感じられるゲームを作ろうと思っていたのが、そもそもの始まりだったように思います。

――レバー操作や筐体横のボタンなど、独自性の高い筐体だと思いますが、いまの仕様に固まるまでには苦労しましたか?

小早川レバー操作だったり、筐体サイドのボタンは、これまで音楽ゲームが辿ってきた道のり、難しくなりすぎるという問題を回避するための工夫として生まれました。設計には相当苦労しましたね(笑)。中央のボタンも最初はひとつだったり、ふたつだったりした時期もありますし。それと、音楽ゲームは、一見すると落ちてきたノーツに反応して押すだけに見えるんですけど、プレイヤーがどういう風に手を動かすかを考えるのも重要で。

新井指運びですね。

小早川そこで、壁(筐体横)にボタンを置いて、そこを押したときに一瞬手を拘束することで「どう動いたらうまく押せるのか?」をユーザーさんに考えてもらう、そこにゲーム性を設けています。そこがわかれば、音楽ゲームに慣れていないユーザーさんであっても処理できる難易度になっています。

新井ボタンのストローク量の調整なんかも細かく調整したよね。レバーの形状も決まるまで揉めに揉めました(笑)。

小早川ふつうのレバーから始まって、一時は『バーチャロン』のようなスティックを使ったりもしましたけど、最終的にいまの形、『オンゲキ』独自のスティックに落ち着きましたね。どこの角度からでも触ってフィットするように丸い部分を作ったりしました。最終的にはいろいろな要素が噛み合った結果、音楽ゲームとしての満足度を担保しつつ、誰でも遊べる、かなりレベルの高いものに仕上ったと思います。

――オンデマンド印刷のカードをゲームに絡めようと思ったきっかけは?

小早川『CHUNITHM』を担当していた際、ユーザーさんのキャラクター、絵に対するモチベーションが非常に高いということが実感できたんですよ。他社さんのリズムゲームを見ても、それ(キャラクターへの注力)は時代の流れかなと。あとは『CHUNITHM』から生まれたユニット、“イロドリミドリ”を動かしているうちに、声優さんやキャラクターをもっと掘り下げていきたいと思っていました。それを今回『オンゲキ』で、よりアーケードらしい展開、ユーザーさんがよりキャラクターを愛せるしかけとして、実カードを採用しました。以前、『アヴァロンの鍵』や『恐竜キング』をやっていて、カードが出てくるとやっぱりうれしかったので、それを『オンゲキ』でもやりたいなと。

――デジタルカードと実カードには性能的にはどれぐらいの差がありますか?

小早川まずデジタルカードだけでも十分に遊べる設計にはしています。音楽ゲームのユーザーさんはゲームをプレイすることそのもののモチベーションが高い方が多いので、それを妨げるようなことがないよう、曲に適したデッキの構築なんかはオートで実行するようにしています。そのうえでカード化するメリットは、レベル上限を一気に解放できる点ですね。本当に育てたいと思ったキャラクターが見つかったら、実カード化してそこに熱量を注ぎ込むのがいいかなと思います。ユーザーさんのキャラクターを愛した気持ちがより強くゲームに反映される、そして物としてカードがもらえる、そこからたくさんキャラクターを育ててもらえる……という形に昇華できればなと考えています。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_15
ロケテストと同時に公開され、今後『オンゲキ』の顔になっていくであろう3人のメインキャラクターたち。現時点で複数のイメージボードが用意されているうえ、プロフィールや通っている学校の設定が固まっているところに、キャラクターへの注力がうかがえる。
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_16
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_17
独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_18

新井ユーザー間でカードの貸し借りもできるようになっていて、レンタルしたカードはフレンドカードとして少し育った状態で使えます。この辺は実カードを使ったゲームセンターならではの要素ということで、友達とワイワイ楽しんでやってほしいですね。

――キャラクターは今回公開された3人がメインで、レベルアップやカードのレアリティによって衣装やカードデザインが変わっていくという形ですか? それとも、もっと多くのキャラクターが出てくるのですか?

小早川今後はキャラクターを増やして展開していく予定です。『CHUNITHM』同様にコラボレーションも考えていまして、みなさんが望んでいる作品のキャラクターを、ゲームで操作する3Dモデルとして登場させていきたいと思っています。

新井いま、契約のほうをがんばっています!(笑)。

――コラボに関するお話ですが、ロケテストの時点で『ケツイ』の曲が入っているのは、レバーでの操作やダメージ弾をよけるといった要素に、シューティングゲームっぽい側面があるからでしょうか?

小早川弾を避ける、ベル(回復アイテム)を取るというのは、ボタンを押さずに音楽ゲームらしさを出すために生まれたものなんですけど、譜面製作者がこの要素を検討していくうちに、弾やベルが大量に落ちてくる、弾幕シューティングのような譜面を遊びで作るようになってきたんですよ(笑)。だったらそれを極めたものを作ってみよう、と『ケツイ』を入れさせてもらいました。譜面はシューティングゲームが好きなスタッフに作ってもらいました。彼から言わせたら「これは弾幕シューティングではない」らしいんですけど(笑)。

新井なかなかひどい、クリアーできない譜面になってます(笑)。でも弾は意外と避けれるようになってるんだよね。本能的にかわせるというか。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_19
小早川氏が『オンゲキ』のゲーム概要を説明する際、ラストに披露された『ケツイ』の譜面。他の曲とは一線を画するノーツと敵弾が降り注ぐため、開発者であっても安定して完走するのは難しいようだ。

――『オンゲキ』では、クレジットの消費が、他セガタイトルでも採用されているGP制に変わりました。

小早川『オンゲキ』はかなり多様な遊びかたができる設計になっていますので、100円1クレジットという形式だとなかなか捌ききれない形になっています。ですので今回はGP制を採用しています。『CHUNITHM』で導入した“3倍チケット”の評判がいいのもありますね。最近は(育成や各種要素のアンロックを)“時短”できる要素のニーズが非常に高くて。GPを消費することでアイテムを提供する、といった試みもできるのかなと思っています。

――ひとりプレイが基本として想定されていると思いますが、カップルでのふたり同時プレイなども想定されている?

小早川(ボタンをレバーの右側、左側両方に配しているのは)カップルで遊ぶというよりは、右利き、左利きの人がどちらでも快適に遊べるようにする側面の方が強いですね。ただ、学生さんのプレイヤーが多いジャンルで、グループでゲームセンターに来て遊びを共有できる楽しみは大事だと思っているので、『オンゲキ』にもローカルマッチは用意してあります。そして『maimai』や『CHUNITHM』同様、ローカルマッチで遊ぶことにより、得する要素は入れようと思っています。

――ひとりプレイですべてのボタン(筐体中央の6ボタン+両サイドの2ボタン)を使うような曲も存在する?

小早川基本的にはどちらか片方の側のボタンで遊べるように作っていますが、高難易度では中央の6ボタンを全部使って、階段のように押していくほうがプレイしやすい曲もあります。

新井決まるとかなり気持ちいいようになっていますね。

――今回も独自性のあるフォルムの筐体です。『maimai』は“洗濯機”、『CHUNITHM』は“冷蔵庫”の名で親しまれてきましたが、『オンゲキ』の筐体に愛称をつけるなら?

新井いい質問だ!(笑)

小早川私はいまのところ“ホッチキス”と呼んでいます。いつかは『オンゲキ』型のホッチキスを作りたいですね。

新井横から見るとわかりやすいですね。

独自のギミックが満載! セガが送る完全新作音ゲー、『オンゲキ』ロケテストインプレッション&インタビュー_20
新井プロデューサーオススメのアングル(?)から見た『オンゲキ』の筐体。

小早川3作目ということで、いまの形になるまでデザイナーも苦労していて、『CHUNITHM』のように(プレイ中に周りが気にならないよう)プレイヤーの視野を遮断しながら、特徴的なシルエットも維持できた筐体に仕上っていると思います。

新井ゲームセンターで見たとき、ちょっと目を引くデザインになっているので、よくできたんじゃないかなと。

小早川座ってゲームをするという点で差別化も図っていて、『maimai』、『CHUNITHM』、『オンゲキ』と3タイトルすべて共存して運営していきたいというのもコンセプトになっています。今回のロケテストは大きなプロモーションをかけたわけではなくて、キャラクターなんかも今日ここで始めてユーザーさんに見てもらう形なんですよ。にも関わらずかなり大きな反応をいただいているので、お客さんの期待と要望、厳しい目に応えられるタイトルにしていきたいと思っています。