Midbossの『2064: Read Only Memories』を紹介。日本語入りのプレイステーション4版と、PC版の日本語アップデートが本日より配信開始された、サイバーパンクテイストのアドベンチャーゲーム。

 本日Playismから日本語プレイステーション4版が配信された『2064: Read Only Memories』(以下、『2064: ROM』)を紹介しよう。

 本作は、『スナッチャー』などを思い起こさせる、少しレトロなスタイルのテキストアドベンチャーゲーム。価格はPS4版がタイトルにちなんだ2064円で、PlayismやSteam等で配信されている日本語PC版が1980円(Playismではセールで1683円)。

科学技術によって多様化が進んだ2064年の未来社会

 SFジャンルで個人的に大事だと思っているのが、「人間とは何なのか」という問いだ。そりゃもちろん、そういうことがあんまり関係ないSF作品もあるんだけども、SFは現実とは異なる状況を作り出すことで、現在とは異なる角度からその存在の意義を浮かびあがらせることができる。

科学技術による改造を人類の進化と捉えるか、神の意志に背くものと捉えるかは、『デウスエクス』シリーズなどでも扱われた海外のサイバーパンクモノの定番。

 また、いかに架空の世界の架空の問題を通じて現実に通じる話を描くかは、フィクションの腕の見せ所でもある。そしてサンフランシスコのインディースタジオMidbossは、その点について十分に自覚的だ。

 『2064: ROM』では、2064年の未来都市“ネオ・サンフランシスコ”を舞台に、サイボーグ、遺伝子改造をしたハイブリッド、そしてROMと呼ばれるロボットたちが混在する、ネオン色の未来像が提示される。これは見た目よりもハードボイルドなサイバーパンク物語なのだ。

“サピエントマシーン”チューリングの完成とともに起きた謎の襲撃事件

 物語は、フリーライターをしている主人公のもとに、友人ヘイデンによって開発されたという“チューリング”を名乗るROMがやってくる所から始まる。

 世界を牛耳る大企業パララックスの中でも腕利きのエリートエンジニアとして知られていたヘイデンは、個人プロジェクトとして世界初の真の自律思考型ROMであるチューリングの開発に成功。しかしヘイデンの自宅が何者かによる襲撃を受けたため、脱出したチューリングが助けを求めてきたのだ。

 襲撃後に姿を消したヘイデンは果たして無事なのか? そして襲撃者は何者で、一体なぜ襲撃してきたのか? プレイヤーはチューリングとともに情報収集に奔走することになる。

この青い球状の頭部の子がチューリング。人と機械の境目をさらに曖昧にする存在だ。賢い分、人間の常識やマナーにまでは長けていないので、やや空気を読まない発言になってしまうことも。

 ゲームの作り的には、グラフィック同様に昔のテキストアドベンチャーゲームスタイル。地図で行き先を指定して到着したら、画面中の気になるものに対してアイテムを使ってみたり、会話を試みたりして話を進めていく。

 謎解きはかなり素直な作りで、目的の場所はマップにアイコンで表示されるし、カギとなるものを手に入れるために大きく戻らされるといったこともない。基本的には話の流れに沿って進めていけば問題ないはず。

ちなみにサンフランシスコはMidbossの地元なので、ネオ・サンフランシスコの各地の位置関係や作中で語られる治安などは実際のサンフランシスコに結構近い。同じくサンフランシスコを舞台にした『ウォッチドッグス2』をやっていると「あー、この辺はやっぱこうなのね」とわかったりするかも。

 そうして出会っていくネオ・サンフランシスコの住人たちは、いずれも非常に個性的だ。誰もに愛らしい部分とめんどくさい部分があり、それぞれの事情があって、プレイヤーとの関係性の変化により意外な一面を見せてくれるようになったりする。

 口語表現が多く、南部訛りという設定のキャラがいたりして英語版はそれなりに慣れが必要だったが、日本語版では言語的なハードルがなくなったことで、すんなりと入っていけるようになったと思う。特にチューリングの時々ウザくも超キュートな雰囲気には、思わず力になってあげたくなることだろう。

暴れん坊“スターファッカー”(中2病にもほどがある通称)も、実は意外といい奴だったりするのだ。
個人的な推しは日本のヲタネタが得意で魔法少女マニアのラモーナちゃん。

 作中で、あるキャラが同性愛者であることがさらっと明かされたり、説明することなく髭面の人物が「彼女」と呼ばれたりするのに面食らう人もいるかもしれないが(というかLGBTQのキャラは多い)、これはいくら同性同士で手を繋いでデートしてようが異性装をしていようが誰もあまり気にしない現実のサンフランシスコの延長だ。

 キャラの性別や性的指向はそのキャラの職業や改造具合なんかと同じプロフィール情報のひとつでしかなくて、ストーリー上で何かそれを理由に主張されることはない。もちろん、アメリカでもサンフランシスコはかなり特殊で、依然として根強く差別がある地域の方が多いし、本作もそういった状況とまったく関係がないわけではないのだが、表向きには単に未来のサンフランシスコのサイバーパンク物語として楽しめるのがポイントだ。

 『2064: ROM』はあくまで、さまざまな性のありようを持った生身の人間とサイボーグとハイブリッドと、そして知性を持ったロボットが暮らす、多様な個性によって彩られたネオン色の未来社会を描くことで、お互いの選択を個性として尊重して共存していく未来像をシンプルに伝えるのに徹している。もちろん、そこにいろいろな裏読みをすることはできるが、それはプレイヤー次第だ。

とにかく、それぞれ納得行く選択の余地があることが大事なのである。というわけでチューリングがプレイヤーを三人称で呼ぶ際の選択肢も複数用意されていたりする。
裏読みしていくと、ハイブリッドは性転換者を暗示しているし、技術進化への反対派は明らかに(同性婚などに反対する)アメリカのキリスト教右派をイメージしていたりする。それでも善悪で二分せず、反対派のオッサンにすら後にフォローが用意されていたりする。

 しかし、それでもこの話に軋轢や陰謀そのものは存在する。溜まりに溜まった爆発のエネルギーすらも利用してしまう終盤の展開は思わずニヤリとさせられるものだ。チューリングの出現によりネオ・サンフランシスコと世界はどのように変化していくのか? エンディング後のエピローグまでしかとご覧いただきたい。