2017年11月17日、一般社団法人デジタルメディア協会(AMD)が、発表会“日本eスポーツの夜明け~AMDによるeスポーツ振興に向けた新たな取り組み~”を開催。AMDから、“闘会議2018”(2018年2月10日、11日に開催予定)に、1000万円の賞金を拠出することを発表した。

 以前より、日本のeスポーツの発展が遅れていることを憂慮していたAMD理事長 襟川恵子氏。その状況を変えるべく、AMD内にAeGI(AMD e-Games Institutes ゲーム競技化機構)を立ち上げたり、2017年9月に実施したAMDシンポジウムでeスポーツをテーマにしたりと、さまざまな試みを行ってきた。

 これまで報じられてきた通り、日本では景品表示法などによる制限があり、高額の賞金制大会を行うのが難しい状況にある。この問題を解決するため、襟川氏は関係省庁を回り、交渉を続けたという。そしてこの度、賞金を拠出する目途が立ったというわけだ。

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AMD理事長 襟川恵子氏。

 今後もAMDは、eスポーツ大会に賞金を提供していくという。若者に夢と希望と活力を与えるeスポーツを盛り上げ、新しい産業が創発するように、AMDとしてもスピード感を持って、社会に貢献していきたい……と襟川氏。AMDの働きかけが、さまざまな企業が大会を主催したり、海外ですでに大会を開催している企業が日本に進出したりするきっかけになってほしい、という期待も抱いているとも述べた。

 また、この発表会では、各業界の識者が登壇し、eスポーツについての見解を語った。以下で、その内容を紹介しよう。

 NPO法人日本シミュレーション&ゲーミング学会 会長の鐘ヶ江秀彦氏は、今後、AIやロボットが発展することで、雇用なき経済成長が起こり、労働時間が短縮されると説明。そして、それまでの産業・雇用に替わって、eスポーツが台頭するのだと予測した。

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NPO法人日本シミュレーション&ゲーミング学会 会長の鐘ヶ江秀彦氏。
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公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員長 CFO 企画財務局長 中村英正氏。

 続いて登壇したのは、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員長 CFO 企画財務局長 中村英正氏。同氏は、AMD主催によるデジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'16/第22回AMDアワードをきっかけに襟川氏らと知り合ったとのことで(同アワードでは、リオ2016年オリンピック閉会式 東京2020フラッグハンドオーバーセレモニーが、年間コンテンツ賞 優秀賞を受賞した)、今度はeスポーツという切り口でAMDとともに取り組めることがうれしいと述べた。

 国境や性別、宗教などの違いはあれど、アスリートが競い合い、最後にひとつになることがオリンピックの本質。まだ、子どもたちが、オリンピック・パラリンピックを通して何かを感じ取ることが大事だと語る中村英正氏は、このオリンピック・パラリンピックと、eスポーツは方向性が同じであるという考えを示す。そして、2020年に聖火リレーが始まるころに、さまざまな文化の大きなフェスティバルを実施する予定であると述べ、その中でeスポーツを取り上げたいと展望を語った。

 つぎに、AMD参与 AeGI副理事長 慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授 中村伊知哉氏と、AMD理事 AeGI理事 Gzブレイン 浜村弘一代表取締役社長が登壇。世界と日本のeスポーツの現状について説明した。ここで語られた内容は、先述のAMDシンポジウムと、講演“ゲーム産業の現状と展望<2017年秋季>にて詳しく説明されているので、ぜひリポートをお読みいただきたい。

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AMD参与 AeGI副理事長 慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授 中村伊知哉氏。
AMD理事 AeGI理事 Gzブレイン 浜村弘一代表取締役社長。
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AMD顧問弁護士 AeGI理事 森本紘章氏。

 最後に登壇したAMD顧問弁護士 AeGI理事 森本紘章氏は、改めて、日本のeスポーツ大会において、何が障壁になっているのかを説明した。

 賞金の存在が、ゲームなどの商品の購入の誘因となる場合、景品表示法が立ちはだかる。参加者からお金を集めて賞金にした場合は賭博罪が壁となる。また、風俗営業法の存在により、ゲームセンターは賞金を出すことはできない。

 AMDは、これらの問題にひとつひとつ対処しており、「いまの段階では、ほぼ解決ができている」と森本氏(なお、今回AMDが拠出する賞金は、IPにまつわる企業とは関係のないところから拠出されるものであるため、景品表示法とは関係がなく、プロアマ関係なく渡すことができるとのこと)。今回の取り組みを、法律に違反しない形でゲームを遊べて、観戦して楽しめる社会を作っていくための第一歩としたいと述べた。

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質疑応答にて、「世界中の目が集まる東京オリンピックで、日本でもeスポーツが発展しているということをアナウンスしたい」と意気込む襟川氏。同氏は、「eスポーツが遅れている日本の選手が、世界で勝てるのか?」としばしば聞かれるそうだが、これに対する答えは「eスポーツとして認められる新たなコンテンツを日本で生み出して、世界でヒットさせられれば、日本のプロプレイヤーが活躍できる」。日本のゲーム業界が、eスポーツに適した新たなタイトルを作ることが大事だと語った。
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