ノートPCを買おうと思い、家電量販店に行った。
DeToNatorがエディオン豊田本店にやってきた
わざとらしい書き出しをしてしまった。2017年11月5日、エムエスアイコンピュータージャパン(以下、MSI)がゲーミングノートPCのPRイベントを開催したのだ。
おもな内容は、『Overwatch』と『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)のデモプレイ&体験プレイ。人気タイトルを通して、PCゲームやゲーミングノートPCへの興味を強めてもらいたい、というのがイベントの趣旨である。
イベントにはプロゲーミングチーム・DeToNator所属のストリーマー(配信者)であるStylishNoob氏、SHAKA氏、SPYGEA氏、YamatoN氏が出演した。『PUBG』の大会などでおなじみのチーム編成だ。
4人ともさまざまなFPSで名を残した実力者でありながら、トークや立ち居振る舞いも含めてファンから愛されている。個人配信のクオリティーが高いのは当然として、4人が集まるとさらにおもしろい。
ちなみに、「すごい人だ。有名人が来てるのかな。」とキャプションをつけた写真は開始30分前の様子である。人気の高さがうかがえる。
メンバーの掛け合いはイベント開始前から絶好調だった。準備中の時間を利用して、SPYGEA氏とYamatoN氏が『PUBG』をデモプレイ。勝ちを狙いつつ、ふざける。
4人の中では寡黙なタイプのSPYGEA氏がいきなり大暴れ。YamatoN氏の車と自分の車が交錯しても気にせずガンガン進めていく。真顔で、淡々と。
こういう掛け合いを生で見られるのはおもしろい。適度に笑いが起こって場の空気が温まった。いい雰囲気でイベントが幕を開け、『Overwatch』2on2チャレンジがスタート。
来場者がDeToNatorと2対2のハンデマッチで対戦。参加賞のほか、勝つとさらにいい景品がもらえるという企画である。
本イベントの出演した4人は元『Overwatch』の競技選手である。現役を退いてしばらく経つとはいえ、基本的にはうまい。ときおり魅せプレイも飛び出し、会場を沸かせた。
『Overwatch』経験者のみならず、初心者の挑戦も目立った。DeToNatorと戦えること自体がうれしいのだ(別のイベントには頭を撃ち抜かれて狂喜するファンもいた)。ゲームがコミュニケーションの道具として機能している。
『PUBG』でドン勝エンドを狙う
ファン交流イベントは、応援する側とされる側の距離が縮まる場である。
『PUBG』コーナーではもっとDeToNatorに近づけた。StylishNoob氏、SHAKA氏、SPYGEA氏、参加者1名でSQUAD(4人ひと組のチーム)を組んだのだ。YamatoN氏は仲間外れになったわけではなく、おしゃべりを担当。
個人的におもしろかった点のダイジェスト
・不意の狙撃でダウンしたSPYGEA選手を初プレイの参加者が助け、歓声があがる。
・Kar98k(スナイパーライフル)を拾ったStylishNoob氏を見て、YamatoN氏は「スナイパーと言えばStylishNoobみたいなところありますから」。来場者は苦笑い。
StylishNoob氏はスナイパーライフルが苦手。ちなみに、SHAKA氏とSPYGEA氏は別タイトルで名をはせた世界トップクラスのスナイパーである。
・YamatoN氏「ドン勝エンドを迎えることができるのでしょうか!?」
ハッピーエンド、バッドエンドに続く第3のエンディング、ドン勝エンド。しばらく『ときめきメモリアル2』の実況プレイをしていたため、恋愛ゲーム脳になっている。
・ある回ではプレイの感想もチームワークがよかった。
参加者「DeToNatorに守られてると思うと安心感がすごいと思いました」
StylishNoob氏「何もしなかったけど、僕も安心感がすごかった」
SPYGEA氏「3回ダウンしましたけど、安心できました」
SHAKA氏「最後に車を見つけたときは安心できました」
『PUBG』は戦闘時のランダム性が高く、見どころが生まれやすいゲームだ。とはいえ、それだけでは説明がつかないほど、人気ストリーマーはトラブルを呼び込む力が強い。マンガの主人公並みである。DeToNatorも例外ではない。
ファンの前でプレイするわけだから、かっこつけたいのが人のサガ。それなのに、ふとしたタイミングで勝ちよりもおもしろさを優先。おかしな状況に陥っても、ぎりぎりのところでピンチを脱出できる技術がある。プレイヤー兼演出家だ。
DeToNatorは見事に集客力の高さを証明した
イベントは大盛況のままに幕を下ろした。グッズなどがもらえるじゃんけん大会の後は、およそ2時間にわたってサイン会&撮影会を実施。長いこと行列が途切れず、彼らの愛され具合を再確認した。
DeToNatorは日本で有数の人気を誇るゲーミングチームだ。とはいえ、これまでのイベント例を見るだけだと、“交通の便がよかったから何百人も集まった”とも考えられる。
たとえば、10月に開催されたイベントの会場はJR大阪駅直結の好立地。「買いものついでに寄ってみるか」くらいの気持ちでふらりと行ける。
今回、DeToNator代表の江尻勝氏は郊外型店舗での開催にこだわった。自分たちにどれくらいの集客力があるのか、試金石になるからである。
名古屋市で開催する案もあったが、あえてJR名古屋駅から電車で1時間、最寄駅から徒歩20分ほどのエディオン豊田本店を選択した。愛知県外や豊田市外から“わざわざ、このために”訪れたファンも多かった模様。
近所の人は別として、これで“DeToNatorは人を呼べるチームである”と証明できたわけだ。店舗スタッフは「有名な芸人さんが来たりするとお客さんも集まりますが、ここまで多いのは珍しいですね」と舌を巻いていた。
熱量の高いファンは会場に足を運ぶ。観客が増えれば盛り上がり、主催者やパートナー企業のビジネスチャンスが拡大。収益を上げられれば、DeToNatorへの支援も強固になるだろう。そうなればまたイベントを開催できるため、ファンも喜ぶ。正の循環だ。
さすがに理想論が過ぎるかもしれないが、プロスポーツとしては正しい形だと思う。“わざわざ足を運んででも応援したくなるチーム作り”は、eスポーツを盛り上げるカギのひとつだ。これはスポーツ全般に言えることでもある。
DeToNatorは年単位で時間をかけて“応援したくなるチーム”の下地を作ってきた。いまはストリーマーたちがそれを体現。ゲームで魅せるのは当然として、配信を通して人間性が垣間見えるため、会ってみたくなる。
4人ひと組のチームとして印象付けているのも効果的だと思う。彼らが仲よくしてるのは微笑ましいのだ。女子からしたら母性本能がくすぐられるのだろう。少なくとも好印象は与えられる。
なお、露骨な仲よしアピールは野暮である。そこは想像で補わせてほしい。
本イベントの開催を記念して、エディオン豊田本店では2017年11月12日までキャンペーンを実施中。MSIのゲーミングノートPC対象モデルが最大2万5000円引きになる。こういう直接的なメリットもあるので、どんどん店舗イベントを開催してほしいものだ。
江尻氏とMSI担当者によると、今後も地方の店舗イベントを積極的に開催したいらしい。地方のファンコミュニティーが活性化されれば、ゲーム業界全体にとってもプラスにつながる。
個人的には、このような形でeスポーツを盛り上げる流れが来てほしい。ファンの笑顔を見ると気分がいいので。
つぎにDeToNatorが訪れるのはあなたの街かもしれない。