ゲームに対する新たなアプローチ

 2017年11月1日~5日まで(現地時間)、フランス・パリにてゲームイベントParis Games Week 2017が開催。10月31日に、同イベントに合わせる形で、ソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパ(SIEE)によるメディア向けのBCDセッションが行われた。今回記者が参加したのは『Erica』のプレゼン。前日行われた“PlayStation Media Showcase 2017”で新規発表された、PlayLink対応のライブアクションドラマだ。

『Erica』はスマホで操作することで臨場感がいやがうえにも高まるPlayLink対応のライブアクションドラマ【PGW2017】_02

 プレゼンターとして取材陣の前に立ったのは、開発元であるフレーバーワークスのクリエイティブ・ディレクター ジャック・アトリッジ氏。アトリッジ氏は、スタジオの方針を「敷居が低く、特別な経験を作ることにフォーカスしている」と前置きしつつ、「私はゲーム好きとして生きてきましたが、家族や友人の中にはまったくゲームをやったことのない人がいて、その人たちと好きなゲームを共有できないのが残念でした。そこで気づいたのは、ビデオゲームをやり始めるハードルがかなり高いということです。ゲームは何年もプレイしてやりかたを理解しなければなりません。ボタンがたくさんあって使いかたを覚えなくてはいけないですし、プレイするには多くのスキルが必要になるんです。私たちが愛する奥深いゲームと、誰でもプレイできるアクセスのよいゲームのバランスをとる必要があったんです」と説明。つまり、アトリッジ氏が感じていた、ゲームの敷居を下げるためのテクノロジーとして、スマホとプレステーション4がリンクする、PlayLinkは最適だったというわけだ。

『Erica』はスマホで操作することで臨場感がいやがうえにも高まるPlayLink対応のライブアクションドラマ【PGW2017】_04

 『Erica』は、全編実写映像で構成された“ライブアクション”。操作はスマホで行うことが可能で、主人公であるエリカの頬を流れる涙の雫をスマホのタッチスクリーンをスワイプすることで拭ったり、画面上で注目したいポイントをタッチすることでフォーカスしたりと、いわゆる直感的な操作が可能になっている。「本のホコリを払うという操作も自然にできます。実際の世界と同じことをしていれば、ゲームを進められるわけです」とアトリッジ氏。

 ゲームを進めていくと、適宜画面に選択肢が提示され、プレイヤーは決断を迫られることになる。たとえば、“言うことに従って手紙の封を開けるか開けないか”とか、“目の前にいる人物にナイフを突きつけるか突きつけないか(ちょっと物騒だが)”といった具合だ。プレゼンでは、参加者から多数決を取ってゲームを進めていたが、実際のゲームプレイでも、家族から意見を募って選択肢を決めるという楽しみかたもできそうだ。

 ちなみに、『Erica』はあくまでもゲームだ。そのためアトリッジ氏は、「15秒~20秒以内で、何らかのインタラクションが必要になるようなデザインにしました」とのことだ。そのへんの配慮はゲーム好きのアトリッジ氏らしいこだわりと言えるのかもしれない。

『Erica』はスマホで操作することで臨場感がいやがうえにも高まるPlayLink対応のライブアクションドラマ【PGW2017】_05

 前述の通り、本作の主人公はエリカ。彼女は子どものころひどい目にあって記憶をなくしていたのだが、少しずつ快復していた。それが家のそばで殺人事件があって、どうやらエリカの失われている記憶が事件解決のカギを握るらしいことに気付く。それで殺人犯に狙われることになり……という、ストーリーとなるようだ。本作はマルチエンディングで、プレイヤーの決断がいろいろな局面で影響を与えることになる。本作のプレイ時間は、「実際の映画と同じ」(アトリッジ氏)90分~2時間程度になるとのこと。友だちや家族で集まって、夕食後にわいわい楽しめる時間内で……との配慮によるものだ。

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 PlayLinkというと、個人的には映像を複数人で楽しんで、スマホでの投票の多数決により物語の展開が決まるというシステムがメインになるのかと思っていたのだが、本作でのPlayLinkへの対応はスマホでの操作にフォーカスされている。実際のところ本作はコントローラーでの操作も可能で、「だったらコントローラーでもいいのでは」と思われる方もいるかもしれない。それが、プレゼンを受けてみると、まさに本作にはスマホでの操作が必須なのだという気がしてくる。あくまで個人的な感触になってしまうのかもしれないのだが、90分~2時間で実写という、映画に親しいコンテンツにあって、コントローラーではなくて、スマホという日常で使っているデバイスを使って操作することが、ゲームプレイ自体の敷居を下げて、没入感を高める。まさに、映画を見るような感覚でゲームが楽しめるのではないかという気がした。そういう意味では、『Erica』というのは、PlayLinkのある種の可能性を具現化したタイトルだと言えそうだ。

 ちなみに、アトリッジ氏によると『Erica』は日本語ローカライズも進められているというから、楽しみに待ちたいところ。まあ、ちょっと触りたくなってしまうタイトルだ。

『Erica』はスマホで操作することで臨場感がいやがうえにも高まるPlayLink対応のライブアクションドラマ【PGW2017】_01
フレーバーワークスのクリエイティブ・ディレクター ジャック・アトリッジ氏。