まずは、Windows 10、Xbox One、Androidユーザーにベータ版を提供

 さて、前置きもなしに話を始めてしまうが、『Minecraft』関連で電話取材の提案があった。聞けば、『Minecraft』とMixerとの連携に関してだという。Mixerというと、日本での展開はまさにこれからだと思われるが、マイクロソフトが提供するストリーミング動画配信サービス。もともとは“Beam”として展開されていたものを、マイクロソフトが2016年に買収。2017年にMixerと改名して以降は、Windows 10やXbox Oneとの連携をさらに積極的に押し進めている。

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マイクロソフト Mixerチーム リードエンジニア マット・サラメンディ氏。

 Mixerをさらに世界的に推進しようとすると、『Minecraft』との連携というのは非常に相性がよさげだが、いったいどのようなコラボを考えているのだろうか? 今回電話取材に応じてくれたのは、マイクロソフト グローバル・コミュニケーション・マインクラフト オーベリー・ノリス氏と、マイクロソフト Mixerチーム リードエンジニア マット・サラメンディ氏だ。このマット・サラメンディ氏はBeam創業者にして、いまはマイクロソフトのMixerチームを取り仕切る立場にあるようだ。御年19歳(!)というから驚きだ。まあ、世界は広いなあ……と思っていると、おもむろにマットのプレゼンが始まった。

 「今日は、『Minecraft』との連携を発表できることになり、とてもワクワクしています。パートナーのジェームスとはこのゲームを通して知り合いました。Beam(当時)は、ブロードキャスターたちをつなげることを目的にスタートアップしましたが、すべて『Minecraft』が発端となっているのです。すべてのBeamフィーチャーは、『Minecraft』を中心として作られたんです」(マット・サラメンディ氏)。

 MixerのもととなったBeamが『Minecraft』に端を発したというのであれば、同作との連携は必然の流れというべきであったのかもしれない。続けてマットは、Mixerの特徴を説明してくれた。Mixerのことをあまりご存じでない方のためにご紹介しておこう。

 「Mixerはインタラクティブライブストリーミングプラットフォームです。自分でビデオゲームのライブブロードキャスティングができて、オーディエンス(ビューアー)に見てもらいます。まずMixerのよいところは、レイテンシー(遅延)がほとんどないことです。ストリーマーが何かをすると、1秒以下の時間差で見ることができます。Mixerはプラットフォームでコミュニティーを構築しようとしているので、これはとても重要なポイントです。実際にゲームに入ってチャットしたり、インタラクトできるので、ビューアーとストレスのない関係を作ることができるんです。また、Mixerの大きな特徴はゲームプレイそのものに参加できることです。ストリーマーが好きなゲームをプレイしていたら、配信に介入して敵を出現させたり、アーマーを提供したり……ということが、すべてリアルタイムで行えるんです」(マット・サラメンディ氏)。''

 そのうえでマットは今回の連携に関して、「詳細は後日発表しますが、今回の連携により『Minecraft』をプレイする人はゲームの中にビルトインされたインタラクティブツールを使うことができるようになります。Mixerを使ってストリーミングしていれば、ビューアーはエネミーを作って、武器を選び、リアルタイムでゲームに参加できるのです」と説明してくれた。

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マイクロソフト グローバル・コミュニケーション・マインクラフト オーベリー・ノリス氏

 具体的な連携内容の説明を引き継いだのは、オーベリー・ノリス氏。10月23日(現地時間)より、Windows 10、Xbox One、Androidで『Minecraft』のベータ版がリリースされると前置きしたオーベリー・ノリス氏は、ベータ版にMixerを使った新しい『Minecraft』のふたつのフィーチャーが導入されると教えてくれた。具体的には以下の通りだ。

 「まずは、Mixerのフィーチャーが『Minecraft』のゲームに組み込まれます。これによりブロードキャスターは、ストリームに“ボタン”を設定することが可能になります。ビューアーは、これを操作して異なる効果を生み出せるわけです。たとえば、ボタンを押してゾンビを召喚したり、ストリーマーにアイテムを供給したり、昼を夜に変える……といった具合です。
 ふたつ目は『Minecraft』のモバイル版にもMixerのブロードキャスト機能を統合したことです。iOSでもAndroidでも、特別な機器を必要とせずに、『Minecraft』のアプリから離れることなく、容易にブロードキャストが可能になります」(オーベリー・ノリス氏)。''

 オーベリー・ノリス氏いわく、「私たちは、Mixerチームといっしょにこうした機能を実装できることにワクワクしています。Mixerはマイクロソフトの一部となり、同じ会社になったので、ゲームコードにアクセスできるようになりました。このフィーチャーは『Minecraft』のために作られたもので、同じ会社なのでとても作業がやりやすかったです」というから、Mixerは、『Minecraft』の“公式ストリーミングサービス”という位置づけに近いのかもしれない。いずれにせよ、世界累計販売数が1億を超えていると言われる『Minecraft』に正式にビルドインされることで、Mixerの需要はさらに広がりそうだ。

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Mixer Xbox One版のインターフェース。

Mixerは人と人とのつながりを大切にする

 以下、オーベリー・ノリス氏とマット・サラメンディ氏に、時間の許す限り疑問をぶつけてみた。

――『Minecraft』では、ビューアーは、どれくらいストリーマーのプレイに関われるのですか?

オーベリー 『Minecraft』の中でコマンドファンクションを使って行うものは、Mixerにプログラムできます。どう設定するかはストリーマー次第です。過度に使われることがないように、リミットやクールダウンも設定できます。

――多くのユーザーが一度に大量にゾンビを発生させたり……ということも回避できる?

オーベリー クールダウンが設けられると、ビューアーはゾンビを出現させるまでに一定時間待たなければいけません。また、ストリーミングを見て、スパークス(Mixer内のポイント)を貯めないと参加できないように設定することも可能です。

――『Minecraft』にMixerを導入することで、どのような効果がもたらされると思いますか?

マット Mixerのよいところはカスタマイズできることです。その点『Minecraft』コミュニティーの皆さんが創造性を活かせてくださるでしょう。インタラクティブ性の素晴らしいところは、豊かなやりとりができること。ブロードキャスターの周囲に、より密接なコミュニティーができるのです。ビューアーは、誰かがビデオゲームをプレイしているところを見ているだけでなく、ゲームプレイの一部となっているように感じられます。実際に参加しているわけです。

――『Minecraft』のモバイル版にもMixerの機能が実装されるとのことですが、具体的に教えてください。

マット アプリまたはウェブ上でMixerのストリーミングを見ていると、右下にXboxコントローラーのようなアイコンが表示されるので、これをクリックするだけです。『Minecraft』はクロスプラットフォームなので、Mac(ブラウザ)でも見ることができますよ。ネイティブな機能については、いま言えることはありませんが、できるだけ多くのプラットフォームで可能にしたいと考えています

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Mixerモバイル版。

――せっかくの機会なのでうかがいたいのですが、Beamは『Minecraft』ありきとのことですが、マットさんは『Minecraft』のどこに魅力を感じるのですか?

マット 『Minecraft』は、私たちがここからスタートした、とても大事なゲームです。ブロックでカクカクしていますが、オープンワールドであり、一度その中に入ると、とても生き生きしているのです。洞穴で鉱物を掘ったり、資源を集めたり、いろいろなものを構築していくうちに、ゲームが生きているように感じられてきます。マルチプレイヤーであることも素晴らしい点ですね。

――Mixerと『Minecraft』のコラボは、今後どのような方向に進んでいくのですか?

マット いまお話しているフィーチャーを改善していくことはもちろんのこと、さまざまな取り組みを考えています。コミュニティーからフィードバックをいただいて、皆さんがやりたいと思っていることは検討していきますよ。

――ほかのゲームについても、同種の連携を行う可能性はある?

マット もちろんです。多くのパブリッシャーから、インタラクティブ性を持った新しいゲームが発売されつつあります。また、サードパーティーのクリエーターによる、既存のゲームでの取り組みもあります。私たちのプラットフォームはオープンなので、誰でも参加できるのです

――さまざまな特徴を備えているMixerですが、いちばんの強みを教えてください。

マット Mixerには、“とにかく簡単に映像配信ができること”、“配信時のタイムラグがほとんどない”、“インタラクティブ性”といった特徴がありますが、そういった特徴を備えていることで、コミュニティーを構築するうえでしっかりとした基礎を提供できていると思っています。言うなれば、Mixerを使っている方たちが、Mixerを特別なものにしているのです。ストリーミングに参加して友だち感覚で話せるというのは、とても魅力的な体験です。テクノロジーというよりは、人と人とのつながりですね

――日本におけるMixerの知名度は、これから上がっていく段階だと思いますが、日本のデベロッパーやパブリッシャーとコラボするなど、日本向けの戦略などは予定していますか?

マット 現在お話できる具体的なものはありませんが、ご提案があればいろいろとうかがいたいと思っています。いずれにせよ、Mixerでは、コミュニティーを中心とした展開が第一になります。もちろん、日本のストリーマーやビューアーさんからの意見をいただきたいです。フィードバックを受けるメールボックスはつねに開いていますよ。

――Mixerの日本からのアクセス状況はいかがですか?

マット 日本からも多くのストリーマーにアクセスしていただいています。言語についても検討しており、たくさんのフィードバックをいただいています。

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PC版Mixerのインターフェース。

 「Mixerのミッションは人と人とをコネクトすることです。ストリーマーとビューアーをMix(ミックス)しているわけです」と語るマット・サラメンディ氏。マットのコメントを聞いていると、Mixerがいかにストリーマーやビューアーとのコミュニティーを重視しているかがわかる。『Minecraft』が非常に大きなコミュニティーを持っているという点を見ても、同作とMixerとの相性が非常にいいものであることがわかる。そしてゲームユーザーとして期待したいのは、ほかゲームとのさらなる連携。サードバーティータイトルはもちろんだが、何よりもファーストパーティータイトルとのコラボは高い確率で実現しそうだ。その場合、どのように豊かなコミュニティーが形成されていくのか……大いに気になるところだ。日本人としては、まずはUI(ユーザーインターフェース)の日本語版への対応を期待したいところではある。