スパイク・チュンソフトより10月26日発売予定のプレイステーション4用オープンワールド恐竜サバイバルアクション『ARK: Survival Evolved(アーク:サバイバル エボルブド)』(以下、『ARK』)。
恐竜を始めとした野生生物が存在するオープンワールドの島を舞台に、自給自足で生き延びることが本作の目的。最大100人のプレイヤーがひとつの島で同時にサバイバル生活を送る、大規模なオンラインマルチプレイも本作の大きな魅力のひとつとなっている。
そんな本作の見どころや今後の予定について、開発を手がけるStudio Wildcardのダグ・ケネディ氏と、セドリック・バークス氏に話を伺った。
左:セドリック・バークス氏(Studio Wildcard コミュニティー・マネージャー)
――まずは、どういった考えでこのようなゲームを作ろうと思われたのですか?
ダグ 当時は、自分が理想とする恐竜ゲームがなかったので作ろうと思いました。また、わたし自身、恐竜が好きというのも大きな理由です。オープンワールドにしたのは、恐竜は大きく、数が非常に多いのでそれを違和感なく再現できるからです。
――なるほど。『ARK: Survival Evolved』(以下、『ARK』)は、ダグ氏の理想を形にした作品なんですね。PCで2015年6月からアーリーアクセスという形で配信されていますが、今回リリースされる、プレイステーション4(以下、PS4)版の展開はいつころから考えていたのでしょうか?
ダグ PC版の開発当初から構想がありました。Xbox Oneで先にプレビュー版をリリースしたのは、ソニー(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)のポリシーの問題があったからです。ソニーには、プレビュー版やアーリーアクセスに値するものがなく、リリースが遅れました。ですが、Xbox Oneのプレビュー版が非常に好調で評価も高かったため、ソニー側がそれを踏まえ、譲歩してくれたのでPS4のデジタル版(海外)を先にリリースできました。
――海外で先にリリースされたのはそういった理由があったからなんですね。本作は、PCでも高いスペックを要求されるゲームですが、PS4への移植で、苦労された点はありますか?
セドリック おもにフレームレートとグラフィックの問題です。とはいえ、PS4は、PCと違ってスペックが決まっており、かつ当初からPS4への移植を予定していたので、スムーズに移植できました。
ダグ PCとコンソールの開発の違いは、PCのほうが開発スピードが早いことです。PCは踏まなければならない正式なステップが少ないのに対して、コンソールは、制作→作品提出→確認→販売許可→配信設定という感じで、細かく段階を踏まなければなりません。
――アップデートを重ね、さまざまな要素が追加されていますが、ユーザーからの要望・アイデアで実装した仕様などがありましたら教えてください。
セドリック ユーザーコミュニティからの多くのリクエストをいただいて作ったのが、ユニコーンです。いろんな恐竜がいますが、ユニコーンを実装しようとは、考えもしませんでした。これに関しては、ユーザーの人数を増やす云々ではなく、コミュニティが欲しい物を形にしたかったので加えました。
――たしかに、ユニコーンが実装されたときは驚きました。コミュニティの反応はいかがでしたか?
セドリック コミュニティの中で話題になることも多く、ポジティブなフィードバックも増えました。ユニコーンの実装は、ユーザーにいい影響を与えられたと思います。さらにユニコーンの特筆すべき点は、サーバーに1匹しかいないことです。その特別感がユーザーをユニコーン狩りに駆り立てる要因になっていると思いますね。
ダグ ほかにも、ユーザーからものすごい反響をいただいた、クラフティングシステム“TEKティア”というものもあります。こちらは開発チームが考えたシステムなのですが、パワードスーツや水中基地といったものを加えました。それを実装した途端、離れていたユーザーが一気に戻ってきて、アクティブユーザー数が跳ね上がったんです。おそらく、もっとも期待に応えることができたアップデートではないでしょうか。
――TEKティアの実装で、遊びの幅が一気に広がりましたよね。今後もTEKティアのような追加コンテンツをリリースしていくんでしょうか?
ダグ もちろんです。やりたいことはたくさんあります。でも私はビジネスサイドの人間だから、あまり口出しできないんですよ(笑)。
セドリック このゲームはつねに、変化を続けているゲームです。コミュニティからフィードバックをいただいて細かな修正を行い、その声に応え続けるようにしています。最近のアップデートでは、“Ragnarok”という無料のマップをダウンロードコンテンツ(以下、DLC)として実装しました。このDLCは、“Sponsored Mod Program”と呼ばれるクリエイター支援プログラムを使って、契約クリエイターが制作しているものなので、非常にハイレベルな内容に仕上がっています。コミュニティからも、ものすごくいいフィードバックを得られています。
――Sponsored Mod Program とは具体的にどういうものなのでしょうか?
セドリック 「別の業界で働いているけど、いつかゲーム業界に入りたい」というクリエイターに向けて、Studio Wildcardが資金を投じてMOD制作を行ってもらうプログラムです。自分たちにとっても新しいコンテンツを作れる、ユーザーも新しい要素を遊べる、そしてゲーム業界を目指す情熱的な人たちを支援する、そういったメリットがあります。
――まさにwin-winなプログラムですね。ところで、未来的な武器や、恐竜以外の生き物がつぎつぎと追加されていますが、開発チームにとって本作の世界観は、何でもありなのでしょうか? または、ある程度の制約を設けているのでしょうか?
セドリック 世界観に関しては、思いついたものをすべて詰め込みました。アーリーアクセス中に、コミュニティからさまざまな意見を聞き、不満の多かった要素を徐々に削ぎ落としながら、ユーザーの求める作品に仕上げました。コミュニティからは、結果的に取り下げることになった機能やコンテンツもあったものの、「とにもかくにも、まず制作してくれた、その熱意に感謝する」といったようなポジティブなフィードバックも得られました。
ダグ 世界観の制約に関しては、何もありません。何でもありと考えています。ゲームの中にはすべてのツールがあるし、どのような楽しみかたもできる。唯一、あるとしたら想像力が枷になるかもしれません。ユーザーの頭の中にあるものすべてがゲームの中で体験できます。
――なんでもありなのですね。とはいえ、ユーザーの意見を参考にしながら修正していく、と。そこがアーリーアクセスの強みなのでしょうか?
セドリック 映画や音楽アルバムは、作り始めると途中でファンに意見を聞くわけにはいきません。それとおなじように、かつてアーリーアクセスがなかったときは、完成版をリリースしてユーザーに拒否されたら、それでもうデベロッパー生命は終わりでした。でもいまは、アーリーアクセスというシステムがあることで、コミュニティの声を聞いて、軌道修正しながら素晴らしいゲームを作ることができます。アーリーアクセスは、本作が恩恵を受けたシステムのひとつですね。
――いまの『ARK』があるのは、アーリーアクセスとユーザーコミュニティのおかげなんですね。コミュニティからのフィードバックでうれしかったことはありますか?
ダグ 『ARK』の大ファンである自閉症の少年がオフィスにやって来てくれたことです。彼は、自閉症の症状が出てちょっとパニックになったときは、『ARK』を遊ぶと落ち着くというんです。『ARK』はその子にも家族にも、すごく大きな存在になっているようです。そんな彼が、学校が長期休みに入ったときに、親といっしょに12時間もかけてStudio Wildcardのオフィスに遊びにやって来たんです。じつは、オフィスの場所は公開していませんし、看板も掲げていないのですが……手を尽くして調べたみたいで、それにすごく感動しました。その少年との会話の中で、『ARK』が彼にとってどれだけ大きな影響を与えているのかを、直に知ることができたのは本当にうれしかったです。また、コミュニティのファンが私の自宅の電話番号を調べ出して、電話で直接感想を教えてくれることもありました(笑)。ビックリしましたが、それでもありがたいですね。
――多くのファンに支えられているんですね。日本からおもしろいアイデアが届いた場合は、今後のアップデートで反映されることはありますか?
セドリック もちろんです。意見に目を通していますので、いいアイデアはぜひ今後の開発に活かしたいですね。
――PS4版の販売タイミングで、新規ユーザーが増えると思うのですが、新たに公式サーバーを増やす予定はあるのですか?
ダグ 日本にサーバーを設置する予定はあります。しかし、詳細についてはまだ議論中ですので、しばらく時間をください。
セドリック 毎日どれくらいの人が遊んでいるかを、コミュニティ・マネージャーや開発関係者が細かくチェックし、必要なサーバーと不要なサーバーを見極めています。これまでも、ハードコア(戦闘不能時に所持アイテムを全ドロップする高難度モード)のサーバーは人気がなく、整理対象になりました。そういうことをくり返してサーバーの最適化を図っています。
――素行の悪いユーザーをみんなで牢屋に閉じ込めて更正するまで労働させた、という海外のユーザーのエピソードが日本でも知られていますが、こういったユーザー間のやりとりについては、どう思われますか?
セドリック 開発時に手錠というアイテムを作ったときは、使われかたを危惧したこともありました。しかし、おっしゃられたエピソードでは、最終的に双方のユーザーが友達になって解決しましたのでよかったです。
ダグ アーリーアクセス初期に起こった出来事だったので、その話はすごく覚えています。私はこれを聞いて非常に感動しました。本作は、社会とおなじような縮図で、いい人もいれば悪い人もいます。悪い人がほかのユーザーの生活を邪魔したり、作り上げた物を壊す可能性もあり得ます。このエピソードでは、ユーザーたちが、“自分たちで自分たちの大切なものを守る”、いわば警察のような役割を果たしたことが感動的でもあり、新鮮でもありました。
――ちなみに、こういった出来事は、仕様を作る段階で想定はされていましたか?
ダグ こういったことまでは想定していませんでした。でも牢屋に入れられたユーザーが、心を入れかえたのは非常にうれしいことです。
――個人的に気になっていたのが、オフライン状態でもゲーム内の時間がそのまま流れるという仕様です。これはどういう経緯で実装したのでしょうか?
セドリック つねに本作のことを考えてほしいからです。ログオフしている間に、時が止まるのであれば何も心配ありません。しかし時がそのまま進めば、「ほかのユーザーに攻撃されるのではないのか?」、「ペットの恐竜は飢えていないか」、「拠点を壊されてないか」など、ゲームのことが気になります。そういう風に考えてもらうために、あえてこういった仕様にしました。
――私も気になってしょうがないんです(笑)。
セドリック ログオフ時でも時間が流れる機能は、中毒性を生みます。この要素も本作が成功した理由のひとつだと思います。私も本作の大ファンでずっとゲームをプレイしていますが、ログオフしているときは、ゲームのことが頭の中から離れなくて、ちょこちょこログインして様子を見に行ってます(笑)。
ダグ この機能を導入したもうひとつの理由は、本作がサバイバルゲームだからです。現実の人生がポーズ(一時停止)しないのと同じように、つねにサバイバル環境に身を置く、という部分を演出したかったんです。
――たしかに、本作にはリアルなサバイバルと同じ緊張感がありますね。現行版では、プレイヤー間でどのような遊びかたが話題になっているのでしょうか?
セドリック 100人単位のユーザーが集まるトライブ(ユーザーどうしで組むチーム機能)が、ほかのトライブを倒してそのサーバーのα(ナンバー1)となり、どんどんほかのサーバーを侵略する、というプレイスタイルが話題になっています。大きなトライブがいくつかあり、サーバーの頂点を目指してしのぎを削っています。
――各サーバーを移動しながら侵略していく、なんだかすごいですね。
セドリック さっきダグが言ったとおり、このゲームは現実社会にとても似ています。食物や資源を集めて自分の言い値で買ってもらうなど、社会のひとつの縮図を体験できます。最近では、各サーバーの小さなトライブが集結して連合軍のようなものを作り、侵略にやってくるトライブに対抗する、という動きもあります。そのときどきの流行や楽しみかたが変化していくのも、『ARK』のおもしろいところだと思います。もちろん『ARK』には、トライブどうしの戦いだけではなく、さまざまな遊びかたが用意されているので、自分のプレイスタイルに合った楽しみを模索してほしいです。
――そんな、さまざまな遊びかたを楽しめる本作ですが、開発者としては、PvP(対人戦)、PvE(対コンピュータ戦)、シングルプレイ、どれがオススメですか?
セドリック シングルプレイで、恐竜のテイム(捕獲)の方法を覚えてほしいです。テイムは、恐竜だけではなく、資源の確保にも大きく関わってくるので、まずはシングルプレイでゲームのさまざまな基礎知識を把握しましょう。ゲームに慣れてきたら、PvEサーバーに移動してほかのユーザーと交流しながら、建築や恐竜のテイム、洞窟探索、ボス討伐などを楽しんでください。もっと刺激がほしくなったら、PvPサーバーへ行くといいですね。ここでは、ほかのユーザーへの攻撃が許されているので、よりスリリングなサバイバルを楽しめます。また、PvPサーバーでは生物の交配が頻繁に行われています。なぜかというと、野生の恐竜は、レベル上限が設定されていて、成長に限界があります。しかし、交配を行って赤ちゃんから育成すると、レベル上限のキャップが外れ、より強い恐竜をゲットすることができます。
――各モードを順番に遊んでいくのがオススメなんですね。
セドリック いきなりPvPサーバーで遊ぶと、スポーンして何も分からないうちに、ほかのユーザーに倒されてしまってゲームを楽しめません。ですので、実力をつけてからPvPサーバーに行くのがオススメです。もちろん、気分によってモードを変えて遊ぶのもありだと思います。スローライフを楽しむならPvEサーバー、ほかのユーザーと戦いたいならPvPサーバー、とったように住み分けができているので、どこで遊ぶかはユーザー次第です。
――ぜひ、おふたりが好きな遊びかたや、お気に入りの生き物を教えてください。
ダグ 私は空を飛ぶのが好きです。このゲームで空を飛ぶ夢を叶えられました。お気に入りの恐竜は、プテラノドンですね。
セドリック ティラノザウルスが気に入っています。恐竜の代表格であり、ずっと好きでした。自分が遊んでいてとくに楽しいと思うのは、恐竜のテイムですね。たくさんの恐竜を従えて歩けるところがすごく好きです。
――今後はどのようなコンテンツが実装されるのでしょうか? また、PC版だけではなく、コンソール版にも同時に実装されるのでしょうか?
セドリック マップやDLCなどの追加要素は、引き続き開発を行っていきます。また、PC版とコンソール版のクロスプラットフォームを予定しています。
ダグ クロスプラットフォームということで、できるだけ同タイミングでリリースしたいです。ですが、先ほど申し上げたとおり、PCとコンソールではステップが異なるので、まったく同じタイミングでのリリースは難しいと思います。
――最後に、このゲームに興味を持っている日本のユーザーにひと言お願いします。
ダグ “楽しんで”と言いたいです。このゲームは、恐竜という要素も盛り込んだサバイバルという新しいジャンルで、世界中の多くのユーザーに遊んでいただいています。コミュニティからの評判も上々ですし、日本の方にも楽しんでもらえるという自信があります。ほぼ何でもできるゲームですので、好きなように楽しんでほしいです。
セドリック 私は、みなさんの家族や友人に謝りたいです。なぜなら、このゲームは中毒性があってやめられない、やめてもすぐにまたプレイしに戻ってしまいます。プレイする人は、とりあえず家族と友人にさよならを言ってください(笑)。