CESA会長がeスポーツ業界統一の新団体設立について言及

 2017年9月21日(木)から9月24日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2017(21日・22日はビジネスデイ)。初日には、『日本におけるe-Sportsの可能性』と題した基調講演が行われた。日本ではまだまだ認知度の低いeスポーツについて、海外での事例を踏まえ、その可能性と課題について有識者が話し合う内容だ。

 講演に先立ち、東京ゲームショウの主催団体である一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)岡村秀樹会長が挨拶。岡村氏はCESAに設けられたeスポーツ委員会の会長も兼ねており、9月19日に発表されたeスポーツ団体の統合・新設に向けた取り組みについて、概要を説明した。これは、eスポーツに関わる5団体(CESA、一般社団法人日本オンラインゲーム教会(JOGA)、一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)、一般社団法人e-sports促進機構、一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF))が、年内に業界統一の新団体設立を目指すというもの。国内でのeスポーツの普及、eスポーツ産業の振興などを目標に、JOC(日本オリンピック委員会)への加盟も視野に入れているという。岡村氏は、ゲーム業界団体(CESA、JOGA)の協力を得て3つのeスポーツ振興団体が統合を図るこの試みについて「世界的に見てもはじめての取り組みではないか」と述べた。

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岡村秀樹氏(CESA会長)

“市場規模は約7億ドル” マーケットアナリストが語るe-Sportsの現状

 諸外国に比べて遅れが指摘されている日本のeスポーツに明るい兆しが感じられたところで、岡村氏に代わって登壇したのが、基調講演のパネリスト4名とモデレータの山田剛良氏(日経テクノロジーオンライン副編集長)。まずは、各パネリストによる自己紹介とショートプレゼンテーションが開始された。

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左から山田剛良氏(日経テクノロジーオンライン副編集長)、Pieter van den Heuvel氏(NEWZOO マーケットアナリスト)、Nate Nanzer氏(ブリザード・エンターテインメント『オーバーウォッチ』大会 コミッショナー)、Sunny Dhillon氏(Signia Ventures ファウンディング・パートナー)、大友真吾氏(CyberZ 執行役員)

 トップバッターは、オランダの企業であり、ゲームに特化した市場調査会社NEWZOOのマーケットアナリスト、Pieter van den Heuvel氏だ。van den Heuvel氏は、eスポーツの市場規模が約7億ドルに達していると分析し、「幼年期は終わった」と説明。今後2020年までを“ADOLESCENCE(青年期)”と見立てて、市場がますます拡大すると予測した。

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 また、2018年にeスポーツにおいて注目すべき動向について、「メディアによるeスポーツ関連企業のM&A案件がいろいろあるのではないか」「プレイヤーだけでなく視聴者も対象としての収益化をパブリッシャーも検討していくだろう」「これまではPCのタイトルが優位だったが、家庭用ゲーム機にもチャンスがある」という3点を挙げ、スライドを見せた。

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『オーバーウォッチ』はメジャースポーツのようなプロリーグを準備

 次に登壇したのは、ブリザード・エンターテインメントで『オーバーウォッチ』大会のコミッショナーを務めるNate Nanzer氏。ブリザードは『スタークラフト』や『ディアブロ』、『ハースストーン』などをリリースしてきたゲームメーカーで、とくに『オーバーウォッチ』は最も成功したタイトルとなり、85以上のGAME OF THE YEARを受賞したという。『オーバーウォッチ』では、世界同時発売にはじめて日本も組み入れられ、手ごたえを感じたNanzer氏は「日本にも事務所を開設したい」と語った。

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 Nanzer氏は、2006年に韓国で開催された『スタークラフト』大会の決勝戦のもようをスライドで紹介しつつ、「eスポーツにはすでに20年の歴史があり、我々も積極的に取り組んできた」とコメント。そして現在、3000万人ものプレイヤーを抱える『オーバーウォッチ』の競技大会について解説した。誰もが参加できるゲーム内での試合から、アマチュア戦、地域リーグ、ワールドカップなどがあり、その頂点はメジャーなプロスポーツを彷彿させる“オーバーウォッチリーグ”となる。現在、世界11都市にプロチームを置いて、開催準備が進められているとのこと。

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 また、今夏開催されたワールドカップでは「グループステージ予選で、今まで知られていなかったプレイヤーが有名選手を食っていくようすが話題となった」と、日本代表のAKTM選手を絶賛。日本におけるeスポーツの可能性を感じたとした。

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