Twitch日本オフィス設立のあたっての戦略と今後の展望をキーパーソンに直撃 国内でのTwitchプライムの展開も明らかに【TGS2017】

会期初日の9月21日、Twitchの日本オフィス設立および東京ゲームショウ2017への出展を記念しての、Twitch 新シニア・ヴァイス・プレジデント マイケル・アラゴン氏とTwitch 日本オフィス代表 レイフォード・コックフィールドIII世への合同インタビューが行われた。

 2017年9月21日(木)から9月24日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2017(21日・22日はビジネスデイ)。会期初日の9月21日、Twitchの日本オフィス設立および東京ゲームショウ2017への出展を記念しての、Twitch 新シニア・ヴァイス・プレジデント マイケル・アラゴン氏とTwitch 日本オフィス代表 レイフォード・コックフィールドIII世への合同インタビューが行われた。2015年に本格的に日本市場に展開してから2年、満を持して日本オフィスを構えることになるTwitch。マイケル・アラゴン氏とレイフォード・コックフィールドIII世氏に、その意気込みと抱負などを語ってもらった。

マイケル・アラゴン氏(右)とレイフォード・コックフィールドIII世氏(左).

 まず、日本でオフィスを設立して「何を目指すのか?」との質問には、レイフォード・コックフィールドIII世氏が「(親会社である)Amazonの手法にのっとって、人を増やしたいと思っています」とのこと。2015年に日本市場に本格参入してから市場を学び人材を増やしてきたというTwitchだが、その流れをさらに加速するために人数を増やすのだという。来年までに、各分野のエキスパートで、ここぞという人材を10人程度採用する予定なのだとか。ちなみに、2015年以降、日本市場におけるTwitchの成長率は、「年単位で見て2倍視聴時間」という驚異の伸びを見せているらしい。大事な指標としてあるのが、“チャットインタラクション”とのことだ。

 日本市場を研究してきて気づいたことは、「日本のコンテンツは、他国と比べて多様性があること」だという。アメリカだとだいたい同じコンテンツに視聴者が集まるが、日本は幅広い。Twitchでは、近年アートやミュージックに力を入れているが、日本の視聴者はとくに高い伸びを見せているらしい。日本市場で展開するにあたっては、「コンテンツに多様性を持たせないといけない」とマイケル・アラゴン氏。

 続けてコックフィールドIII世氏も、「アジア全体で言えるのは、有名な人やインフルエンサーがいろいろな側面を持つ」と言及。たとえばウメハラは、プロゲーマーでありながら本を出したり、マンガのモデルになっている。「インフルエンサーにいろいろな展開がある」(コックフィールドIII世氏)というのだ。これがアメリカだと、“特定のゲームに強い”だけに特化して終わり。日本はインフルエンサーが多様な展開をしているので、それに対応しないといけないと、今後の戦略の一端を挙げる。

 ただし、「日本市場で何をすればいいかは、ユーザーの声を聞かないといけない」とコックフィールドIII世氏。“ユーザーが何を求めているかにフォーカスする”ことを何より(そして唯一の?)指標とするTwitchは、ここ日本市場でもその方針にブレはなく、むしろそのための日本オフィス設立であるとも言えるようだ。「優秀な日本人を採用して、フィードバックがきたら、“これを日本市場に向けてやらないといけない”ということを本社とコミュニケーションを取りながら検討していく」(コックフィールドIII世氏)。

 日本のコンテンツは多様化しているとのコメントから、「ゲーム部門の日本オフィスに置ける位置づけはどの程度か?」との質問も。これに関してマイケル・アラゴン氏は、「ゲームが中心であることが変わることはない」ときっぱり。言うまでもなくTwitchは、Justin.tvのゲーム配信サービスから独立してできた企業。創業のきっかけとなったゲームコンテンツは、当然のこと変わらずTwitchの中心であるというわけだ。「ゲーマーはゲームだけをやって生きているわけではなくて、映画も見るし、アニメやアートにも興味があります。ゲーマーがコミュニティーの中心になって、アニメなどに取り組んでいきたい。Twitchの中心がゲームであることが揺らぐことはありません」(アラゴン氏)。

 いよいよ日本市場に本格展開ということで、「いま動画配信サービスがたくさんあるが、競争が激しい中で、日本市場でサービスを根付かせるために重要なことは?」との質問も出た。これに対してアラゴン氏は、「Twitchはほかの強豪をどう意識しているかという質問を受けますが」と前置きした上で、「強豪を意識するのではなくて、私たちのユーザーが何を求めているかにフォーカスします。“ストリーマーズファースト”です。ストリーマーやユーザーさんとインタラクションして、何をすべきか考えています。“ほかではこれをやっているから”ではなくて、ユーザーさんからの意見を大事にしています」と持論を展開した。Twitchにとって“インタラクション”は重要で、Twitchのチャットでは名前が出るが、似ている人たちが集まることによって、コミュニティーの形勢に役立っているという。それに付随して、Twitchでは“Extensions”という新機能を発表している。これは、チャンネルの下にある自己紹介の部分に、インタラクションのためのさまざまな機能が追加できるというものだ。

 「Twitchは独特で、エコシステムを大事にしています」とコックフィールドIII世氏も口を揃える。「通常会社だったら営業を気にするが、Twitchは使っている人がどう気にするか、使っている人が持続可能なものとして、Twitchをどう快適に感じるか」を第一に考えるという。そのため、ときに利益の確保に遅れがでることもあるかもしれないが、いずれは果実は実る。“エコシステムが大事”だという。

 ちなみに、Twitchのコンテンツ視聴はすべて無料で、収益はサブスクライブ(チャンネル登録)と“ビッツ”と呼ばれるTwitch内の通貨の一部を受け取ることで得ている。有料化や“ビッツ”の判断はチャンネルのオーナーに委ねられており、Twitchに人が集まることで、ストリーマーが潤うことは、Twitchの直接の収益にもつながっている。ここでも、“エコシステムが大事”というわけだ。

 収益に関しては「Twitchがサブスクライブと“ビッツ”で収益を上げているとは思えないが、そのへんは(日本で成功している)SHOWROOM(ショールーム)のユーザーとTwitchユーザーがかぶってないからか?」とのちょっときびしめの質問も。これに関してコックフィールドIII世氏は、「そうは思いません」とひと言。「Twitchのマネタイズは完全にチャンネルのオーナーに委ねられていて、どう扱うかはオーナーに任されています。ユーザーさんの判断は不満に思っていません」という。

 合同インタビューでは、今後のコンテンツ展開に関する質問も寄せられた。ローカルコンテンツのグローバル展開に関しては、コックフィールドIII世氏は「通常、日本のコンテンツを海外で展開するには言語の壁がある」としつつも、「その流れはできつつある」とのこと。ウメハラによる“Daigo the BeasTV”では、屋内での撮影は同時通訳でこなしつつ、ゲームであったり、路上で何かをやったりすることに関しては、海外でもふつうに見られているという。そのほか、「音楽やクリエイティブな部分は言語を超える」とコックフィールドIII世氏。イベントなども言語の壁を超えやすいコンテンツで、東京ゲームショウの配信も、同時通訳で海外に配信されているのはその一例だ。ちなみに、Twitchスタンプでは、日本用のものを8つ用意しているのだが、海外でも大ヒットしたという。「Twitchでは文化をグローバルで共有しているので、同じマインドでいます。日本で受けるものは世界でもいける。ローカルを世界に……というのは戦略ですね」とのコックフィールドIII世氏の言葉には、「なるほど……」と思わせる。

 また、「eスポールを日本でどのように強化していきたいか?」との質問には、コックフィールドIII世氏が「eスポーツに関しては、日本でも法律が変わりそうな雰囲気があり、その方向性はTwitchも支持しています。そうなった場合は、世界に提供しているとの同じものを日本でも提供していきたいです。ポジティブにとらえています」とのことで、日本市場でのeスポーツの展開に、大いに可能性を感じているようだ。

 さらに、「クリエイターサポートの究極の形として、アニメに出資する可能性は?」との問いには、「アニメ制作は難しい構造なので」と、いますぐの展開は保留しつつも、“プレミアムコンテンツ”としての可能性は感じているようで、「プレミアムコンテンツは、新しいビューワーを持ってきてくれます。新しいビューワーがいまのコンテンツを見るようになってくれると、いまのストリーマーがサポートを受けられる。プレミアムコンテンツはやってきたいです。そういう意味では、究極的にはあり得ますと、将来の可能性は否定しなかった。

 さて、海外ではAmazonプライムと連携してのTwitchプライムのサービスが実施されている。これは、Amazonプライムの加入者を対象にさまざまな特典を追加コストなしで提供するというもの。このTwitchプライムの日本での展開に関してコックフィールドIII世氏は、「もうすぐ来ます!」と明言。日付は発表できないが、実現に向けて着々と進行中だという。「AmazonとTwitchの提携は、技術連携が海外と同じタイミングでできなかったので、時間がかかっています」(コックフィールドIII世氏)とのことだが、実現に向けてのメドは立ったようだ。そして、AmazonとTwitchとでは、今後もグローバルでさまざまな連携を考えているようだ。たとえば、Amazonでは、ゲームを開発するためのアマゾンゲームスタジオを2014年に設立しているが、同社が使用しているゲームエンジン“Amazon Lumberyard”がTwitchと連携済み。さらに、アマゾンウエブサービス(AWS)とも連携しており、Twitchのチャンネルオーナーは、Amazonでパーツなどを売ることができるようだ。Amazonという世界最大のECサイトとの連携は、Twitchの大いなる強みと言えるだろう。

 日本オフィスを設立して、本格始動するTwitch。その先行きは良好と言えそうだ。