松山洋氏らが『.hack//G.U. Last Recode』の映像制作過程を明かす! オリジナルアニメプロジェクトも発表された“あにつく”講演リポート

2017年9月10日に開催された“あにつく 2017”にて、サイバーコネクトツーが『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』を題材に、映像制作の技術や制作過程を公開するセッションを行った。本記事では、その模様をリポートする。

映像会社の作る映像と、ゲーム会社の作る映像の違いとは?

 2017年9月10日に秋葉原のUDX GALLERYにて開催された、アニメ制作技術に関する総合イベント“あにつく 2017”。本記事では、その中で行われたセッション“ゲーム会社だからできる!ゲーム会社なのにできる! 他にはない “サイバーコネクトツー流” 映像制作の醍醐味”をリポートする。

 本セッションには、サイバーコネクトツー(以下、CC2)の代表取締役・松山洋氏と、アートディレクター・二塚万佳氏が登壇。2017年11月1日に発売される『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』を題材とし、“CC2流”の映像制作についての解説が行われたほか、セッションのラストには新たなアニメプロジェクトも発表された。

▲左から、松山洋氏、二塚万佳氏

▲セッションには多くの人が詰めかけ、業界関係者は3割ほどで、業界を志す学生の方が多かったようだ。

 セッションのスタートは『.hack』シリーズの紹介から始まり、今年がシリーズのメモリアルイヤーであるために『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』のプロジェクトがスタートしたことや、本作のおもな特徴の解説が行われた。

 そして話題は、本作の制作フローへと移る。制作スケジュールは基本的にどのゲームも変わらず、最初は少人数で関わり、段階を経て開発スタッフや工程が増えていき、最後のデバッグ作業あたりから工程も収束していく、というのが基本。その中で、プログラムやアート、ムービーといった制作を協力会社が担当し、CC2がそのすべてをディレクションしていく、という体制で本作が形作られている。具体的な制作過程としては、まずは脚本からスタートし、そこからゲームの仕様などを決めるゲームデザイン部分へと移り、アートデザインと交互にやり取りし、さまざまな要素が決まっていき、そこからさらにゲームに組み込んでいったり、サウンドを付けていったり……というのが、本作のおもな制作フローだ。

 続いては、今回のセッションのメインである、本作のアニメーションの制作過程について。本作のアニメーションは、アニメーション自体を制作する部分をアニメ制作会社オレンジが担当し、そのほかをすべてCC2が担当している。制作では脚本、デザイン、イベントフローを経て、動画の設計図となる絵コンテを作り、松山氏がそれをチェック。そこで松山氏が、つぎに進むのかどうかのGOサインを決めるという。

 松山氏は基本的に、動画の流れを注視しているそうで、「脚本から最初に絵コンテになり、初めて絵が付くわけですよね。脚本に「綺麗な景色だ」というセリフがあったとしても、それが絵になっていれば必要ないわけです」と、脚本を削る作業がメインだと語る。そこから絵コンテを動画化し、セリフなどを入れて動画の尺の具合をチェック。ちなみに制作現場では、自身たちで仮の声を入れたりすることもあるのだとか。そして松山氏からオーケーの出たものを、オレンジがエフェクトなどの少ない仮のアニメーションを制作。そこにエフェクトや調整などを何度もやり取りして加えていき、ワンシーンが完成する。

 ここまでの作業は、普通のアニメーション制作とさほど変わりはない。じつはその中に、CC2ならではの、アニメーション制作の技術がたっぷりと盛り込まれている。ポイントは5つあり、最初のポイントは脚本。CC2では“脚本デバッグ”という工程があるそうで、これは社内のスタッフで脚本を総チェックし、設定や物語の粗などをすべてチェックする作業とのこと。物語の整合性などはもちろん、社員たちが立場なども気にせずに、気になったことをとにかく好き勝手にエクセル上に記載していくのだとか。これにより脚本の完成度を客観視できるようになり、プレイヤーたちが遊びやすいものに仕上がるそうだ。ちなみにCC2では、ゲームの脚本や小説のほか、松山氏の著書だとしてもすべて同じようにチェックしているそうだ。

 続いては、イベントフローと呼ばれる、ゲームならではの工程。イベントフローとは、脚本の中から描かれるシーンを、ゲーム内の会話にするのか、ムービーとして表現するのかなど、それらの振り分けを決めることを指す。映画などとは違い、何十時間も楽しむものなので、すべてをムービーにするとコストや時間の労力が大きくかかるため、重要なシーンのみを切り出していくのが基本。ちなみに、フルHDが当たり前なこの時代に、全カットシーンをムービーにすれば、ディスク1枚に収まり切らなくなってしまうほどだとか。なお、リアルタイムでイベントシーンを表現することを“人形劇”と呼ぶそうで、松山氏は「ローポリゴンのキャラクターたちががんばって演技するから、人形劇って言っていたんですけどね」と言いつつ、時代はムービーシーンではなく、リアルタイムでプリレンダムービーレベルのシーンを描くのが、ゲーム作りの主流となっていることも語っていた。

 そして絵コンテの工程では、監督や演出家が制作していくのが基本なのだが、CC2では“シネマティックアニメーター”と呼ばれる役職のスタッフ陣が、それぞれのシーンに演出や仕上げを加えていくのが多いというのが特徴。シネマティックアニメーターたちがシーンをバラバラに担当し、自分のアイディアを盛り込んでいき、それを松山氏が統括するというスタイルだ。編集作業もすべて、このシネマティックアニメーターが担当しているそうで、松山氏は「ゲームは全体が長いですから。シーン制作スタッフたち全員が、ゲームの1から10までを把握するのは難しいですよ」と、CC2流の理由も明かしていた。ちなみに、奥義やスキルの演出なども、それぞれひとりのシネマティックアニメーターが、1から全行程を担当しているそうだ。

 また、サウンドもすべてCC2社製。1度完成した映像に、吹き替え、字幕などを付けるのが一般的な映像の世界とは違い、ゲームは多言語で同時展開するため、CC2では専用のビューアーを使い、全カットシーンをほかの言語でチェックしているという。セッションの中では実際に、日本語ボイスと英語ボイスを瞬時に切り替える映像も流された。これらを踏まえると、CC2ではスタッフたちが脚本から作品に関わっているほか、アニメーションスタッフは演出から仕上げまで、すべてを行えるということ。二塚氏も「編集作業も楽しいんですよね。あとから自分で弄ることができるのもいいです」と、CC2で映像を作る喜びを語っていた。

CC2が、オリジナルアニメーションを制作!

 これにて、今回のセッションは終了……と思いきや、なんとここで、CC2の新プロジェクト“A5”が発表された。このプロジェクトは、CC2が完全オリジナルアニメーションを制作するという企画。過去には映画『ドットハック セカイの向こうに』なども制作していたが、松山氏は「『.hack』ではありません。完全オリジナルです」と明言。詳細などは、そう遠くない時期に発表するとのことだ。

 最後に松山氏は「CC2は、おもしろいと思ったら何でもやります。つまらないことは断ります。アニメ作りたいってウチのスタッフが言うし、僕も作りたいなと思って、アニメ作り始めました(笑)」とコメントし、本セッションは終了となった。

松山氏、二塚氏へミニインタビュー

 本記事の終わりに、今回のセッションについてや、新プロジェクト“A5”について、セッション終了後に松山氏(文中は 松山)、二塚氏(文中は 二塚)に訊いたミニインタビューをお届けしよう。

――まずは、今回の“あにつく 2017”に参加された経緯などを教えてください。

松山 もともと“あにつく”のセッションに弊社のスタッフが受講する側で参加していたり、あとは若手アニメーターたちの動画コンテストである“アニメータードラフト会議”というイベントがありまして、その審査にも弊社が参加していたりしたんですよ。そこから、こういったセッションもやってみないかと誘っていただいたんです。

――実際、セッションを行ってみていかがでしたか?

松山 勉強をするために来られた方ばかりなので、とにかく反応がよくてよかったですね。驚いてもらったり、あとは僕の言葉で笑ってもらったり(笑)。

――セッションの最後には、突然アニメプロジェクト“A5”が発表されて、正直こちらも驚きました。

松山 でしょ! たぶん、当社のスタッフも「え、松山、言ってる!?」って驚いてると思いますよ(笑)。開発の中身の紹介をするだけでは終わらない、サイバーコネクトツーでございます!

――さすがです(笑)。現状では、完全オリジナルアニメーションということですが、どんなアニメになるのでしょうか?

松山 そこはまだ、残念ながらお伝えできません。ただアニメですから、つぎはもう映像をみなさんに見ていただくのがすべてだと思います。僕たちはゲームクリエイターじゃないですか。ただ映像を作るだけではない、何かを狙っています。いまは数十人くらいのスタッフたちが、みんなで集まって分析と勉強をしながら、自分たちがどのように勝算を持ってアニメーションを作っていくのか、どうすればひとりでも多くの人たちに見てもらえるのか? ということも含めて、ゲームクリエイターならではのアイディアが注入されつつあります。ただ“おもしろい映像を作る”のとは、ワケが違いますね。

――まさに、ゲームを作る最初の段階をしている最中ということですね。

二塚 毎週やっています。自分たちが調べてきたことをプレゼンして、「じゃあこれを実現するにはどうすればいいの?」ですとか、みんなで議論しているところですね。

松山 これって、ゲーム作りでは当たり前のことなんです。ただ、アニメーションの世界では、それはプロデューサーが動かすことで、現場のスタッフ陣は作ることがメインで、作品の中核に触れることはあまりなんですよね。そこを当社では、アニメーションスタッフたち全員が新しい提案をして、世の中を変えようという気持ちで取り組んでいます。

――なるほど。発表の際には、スタッフたちがアニメを作りたいということでプロジェクトが始まったとのことですが。

松山 作りたいと言うので、じゃあやってみましょうと。それで社内で募集をかけたら、かなりの人材が集結しましたね。

――その中には、もともと映像を作っていたシネマティックアニメーターの方以外のスタッフもいるのですか?

松山 そうですね。意外なところから声が挙がったり、もともとアニメ作りを狙っていたというスタッフもいました。やっぱりやりたいことは、やらせてあげないとね!

――ありがとうございます。では最後に、『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』の発売を楽しみにしているファンの皆さんと、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

松山 発売まで2ヶ月を切っていますが、これからも新情報はどんどん展開されていきますので、ぜひ発売までの期間、続報を楽しみにしながら待っていてください。発売後も、『.hack』15周年記念はまだまだ続きますから、皆さんに喜んでいただける新情報がきっとあると思いますよ。それと、これは言っておきたいのですが、『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』初回生産限定版“PREMIUM EDITION”は、完全受注生産です。予約すれば必ず手に入りますが、9月で受付は締め切られますから、ギリギリまで予約しなくていいかな……と思っている人は、いますぐ予約したほうがいいですよ!