1000点の展示物とともに、新海作品に迫る

音声ガイドは瀧役の神木隆之介に決定 新海誠氏のデビューから15年の軌跡を辿る“新海誠展”記者発表会リポート_06

 アニメーション映画『君の名は。』を手がけた新海誠監督の軌跡を紹介する“新海誠展―「ほしのこえ」から「君の名は。」まで―”が、11月11日より国立新美術館にて開催される。本稿では、新海誠氏をゲストに迎え行われた、記者発表会をリポートする。

 本展は、デビューから15年を迎えた新海誠氏の歴史を、貴重な制作資料である絵コンテ、設定、作画、美術、映像をはじめ、世界観を体験できる造形物などを通じて紹介するというもの。個人制作の『ほしのこえ』から、初の長編作品となった『雲のむこう、約束の場所』、『秒速5センチメートル』、『星を追う子ども』、『言の葉の庭』、そして、2016年に公開し記録的な大ヒットとなった『君の名は。』までを完全網羅するという。
 なお本展は、6月3日の静岡・大岡信ことば館からスタートしており、新海氏の故郷である長野県・小海町高原美術館を経て、東京・国立新美術館へと巡回される。また、現役アニメーション映画監督の名を冠した展覧会が開かれるのは、国立の美術館において初となるそうだ。

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青木保氏

 記者会見では初めに、国立新美術館長の青木保氏が登壇。本展について、世界中で開催を望む声が上がっているとし、「日本を代表するマンガ、アニメ、ゲームといった文化を、どのようにして今後世界に広めていくかを模索したい」と述べる。「この展覧会をきっかけに、さまざまな日本のカルチャーを広めていきたい」と展望を語った。

 各地で巡回展開が予定されている“新海誠展”だが、国立新美術館では特別展示で展開される。新海氏の作品でくり返し登場するモチーフやテーマ(キーワード)に焦点を当て、各作品の共通性や違いを解説することで、作品の世界観を掘り下げていくことを目的としたコーナーが設けられる。さらに、デジタルワークスによる映像制作過程の解説も行われるそうだ。そして、デジタル技術を制作に取り入れてきた新海氏の15年の歴史を振り返る中で、「パソコンの進化やインターネットの普及といった時代背景は、新海氏の作品を語るうえで切り離せない」(監修・真住貴子氏)とのことで、デジタル技術の時代背景とともに新海氏の歩みを振り返るコーナーも開設される。「新海誠氏の15年の歩みを追ってもらい、これから日本のアニメーションがどう発展していくかを考える機会を与える」(真住貴子氏)という狙いもあるそうだ。
 そして、国立新美術館“新海誠展”の最大の見どころは、『君の名は。』で主人公“立花瀧”の声を務めた俳優の神木隆之介が、音声ガイドとして作品の魅力を語りかけてくれることだろう。真住氏は、「まるでいっしょに展示を巡っているかのような気分に浸れる」とアピールしていた。

 なお、主人公“瀧”とアルバイト先の先輩である“奥寺ミキ”がデートで食事をしたカフェ“サロン・ド・テロンド”(国立新美術館内併設)では、映画と同じ席で同じ食事を楽しめるタイアップ企画が行われる。こちらは、一日7組限定で45分完全入れ替え制とのこと。カフェ予約券と、観覧券がセットになったチケットも発売される。

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新海誠氏

 記者会見最後には、新海誠氏が登壇。“新海誠展”に対して新海氏は、「とても光栄であるとともに、すこし居心地が悪い気もします。アニメーションは100人~200人が携わるものなので、展示物の多くはスタッフと僕の共同制作によるものです。そういった作品を、“新海誠展”という名で行われるのは、申し訳なさというか、居心地の悪い感じもします(苦笑)」と語る。また、国立の美術館でアニメーションを取り扱うことに、「時代の移り変わりを感じる」と見解を述べた。

 新海氏は、「『君の名は。』はとても大きな作品だった。なにか自分自身も変えられてしまうような出来事だったが、『ほしのこえ』でも同じ境遇を感じた。いま思うと、『ほしのこえ』は僕が作らなくても、ああいったデジタル技術を取り入れたアニメーション作品を誰かが作っていたように思えます」と、興味深い発言をする。当時は、アニメーション業界において技術面での転換期を迎えており、デジタル作品も増えてきたからだろう。
 「僕じゃなくても、誰かがデジタル技術を用いたアニメーションを作っていたかもしれない。『君の名は。』についても、僕じゃなく、誰かがああいった手触りの映画を作っていたように思う」とのこと。「2016年夏に『君の名は。』が公開され、1年たったいま『君の名は。』を振り返ると、“作りたい”という思いがあり、そこにタイミングよく優秀なスタッフが集まったことで、“『君の名は。』を作らされた”ようにも思う。たまたまあの場所に自分がいただけだと。この展示を通して、どうしてあのとき、あの作品を作ったんだろう? という問いへの答えが自分自身でも発見できるかもしれない」と述べ、本展へ期待を寄せた。

 デジタル技術によるアニメーション制作にいち早く取り組み、新たな映像表現を確率した新海氏の作品の魅力を余すことなく表現する本展。ファンの方は、ぜひ国立新美術館に足を運んでほしい。

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最後に新海氏は、「神木隆之介君が、どんなふうに僕の作品を解説してくれるのか楽しみです!」とコメントし、会見を締めくくった。