空を飛んでいるというフィードバックが新たな感覚になっている

 2017年8月22日~26日(現地時間)、ドイツ・ケルンメッセにて、ヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2017が開催。同イベントの会期中、『エースコンバット』ブランドプロデューサー、バンダイナムコエンターテインメント河野一聡氏に『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』について話をうかがった。

ユーザーといっしょに作っている感覚がある『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』河野氏に聞く【gamescom 2017】_01
▲『エースコンバット』ブランドプロデューサー、河野一聡氏(文中は河野)。

――gamescom2017に合わせての発表がありましたが……。

河野 奇岩地帯を飛び抜ける新しいフィーチャーとして、トレーラーとゲームプレイ映像を公開しました。

ーー反響はいかがですか?

河野 ユーザーさんの動向はTwitterなどでチェックしていますが、ありがたい反応が多いですね。今回、E3とgamescomの期間があまりにも近かったため、お伝えする情報、映像をどうしようかと思っていたのですが安心しました。じつは、E3とgamescomの映像は、コンセプトとしては2本でワンセットだったんです。『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』は、鏡や対比だったり、メッセージをふたつ投げてどちらに共感するのか、どう考えるのか、ということを観る方に問いかけているんですね。トレーラーで言えば、E3ではオーシア連邦側から見た戦争の見えかた。一方、gamescomトレーラーでは、エルジア王国側からの戦争の見えかたを描いています。どちらにも言い分があり、その両方の側面でプレイヤーにストーリーの一端を伝えられたら、というのがコンセプトです。どちらが悪いという話ではなくて、それぞれ理由があるということを投げかけたかったんですね。

――確かに、トレーラーからは深いドラマ性を感じました。

河野 こだわっているというか、脚本を担当していただいている片渕須直監督とはずっとそういう話をしていても、片渕監督からは「どちらが悪者」という話はまったく出てこないですね。それぞれに理由があり、単純に起こった争いではないということですね。

――トレーラーには、機体の異なる連隊が映っていましたが……。

河野 トレーラーはリアルタイムの映像が多いですので、そのときの構成で変わっているものですね。プレイヤーが任意に機体を選べますので。

――トレーラーは公開されるたびにクオリティーがアップしている印象を受けます。

河野 開発中だというのが伝わってしまい、逆に恥ずかしいですが(笑)。開発の後半はディティールが上がっていきますので。E3版と比べてもgamescomトレーラーはディティールがアップしています。奇岩地帯に雲がたまっていて、という風景をお見せしていますが、僕らからするとあれは少し前のバージョンなんです。実際、製品版はもっとよくなりますし、ほかにもまだ入っていない要素があります。開発段階でお見せしなければいけないということで、海外メディア向けのプレゼンテーションで公開した映像も、「このグラフィックでいいのかな」と思ってしまうカットがありました。

――作り手側からすると、そういう見えかたになるんですね。

河野 ふだん最新の映像を観ていますからね。ですので、映像を公開するときはいつも心配しています。「いまはもっと上のレベルになっているのに、公開する映像はこのバージョンでいいのか」と。

――それは開発側がずっと抱くジレンマですね。でも、『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』の発売を心待ちにしているファンは、ストレートな言い方をすると寛大な方が多いですよね。

河野 ロイヤルユーザーの方にとっては、10年ぶりのナンバリングということで、皆さん心が大きいですね。時間をかけてでもいいものにしてくれ、という寛大な気持ちで情報を受け取っていただいています。それはワールドワイドで共通していますね。
 これは本当にありがたいことだと思っています。「しっかり作らなきゃ」という思いを強くしている最中です。ただ、ロイヤルユーザーの方々が寛大な一方、「『エースコンバット』のナンバリング最新作が出ることをgamescomで初めて知った」という方もいらっしゃる。そういった声を聞くと、まだまだPRの努力不足だと感じますね。『エースコンバット』だからみんな知っているというのは捨てて、新しい製品としてアピールしなければいけないと感じました。フランチャイズとして、たとえば20年の歴史があれば、レジェンドリーと呼ばれるものとなります。そのナンバリングタイトルであるからには、チャレンジは必要ですが、安心感だったり、「これがやりたかった」という皆さんの思いを大事にしなければならない。“昔ながらのよさ”というと語弊があるかも知れませんが、いいものは時代を超えていいものなんですよね。『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』も、本質は『エースコンバット』であることを変えていません。

――改めて『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』の見どころを教えてください。

河野 プレイするフィールドをいまの技術でバージョアップしています。ですので、ゲームの“いいところ”はシリーズそのままで変えてないのですが、コアメカニックを使って遊ぶフィールドはいま風になっています。手慣れた操作で新しいゲームプレイを体験してほしいと思っています。こだわっているのは、雲の質感や温度まで感じるビジュアル表現。……今回、日本からドイツへ向かう飛行機がすごく揺れたんですね。ゲームでも同様で、雲の近くにいくと機体が気流で押し上げられたり、振動したりという、フィールドの手触り、空の状態が手元で感じられるというところを再現しています。それは直接的に攻略に結びつくわけではないのですが、空を飛んでいるというフィードバックが新たな感覚になっていますね。

――攻略には直接結びつかないものの、雲に入るメリットがあり、入ると気流で操作が難しくなるデメリットがあるということでしょうか?

河野 そのバランスは難しく、センシティブになりすぎるとプレイヤーがルールを理解できなくなってしまいます。危なそうな雲はゼロイチにわかりやすく見せるなど、工夫していますね。実際に空を飛んでいるように、風の手ごたえを感じられるように、積み重ねている状況です。ただ、やり過ぎてしまうとゲームがシミュレーターになってしまいますので、そこは押さえて感覚は楽しんでもらうと。感情、没入感に訴えかける部分は、これまでと比べて、一段ステージが上がっていると感じます。

――ユーザーの方から意外な意見はありましたか?

河野 コマ割単位で考察されている方もいらっしゃいますので(笑)。たとえばですが、E3バージョンのトレーラーでは、F14の射出ピンが差さったままでして。ユーザーの方から「それ指したままだと射出できないですよ」とご指摘を受けて。リアルに作っているので、抜き忘れていたという(笑)。ただ、こういった声はうれしく、ユーザーの皆さんといっしょにゲームを作っている感覚があります。

――いまの時代だからこそのエピソードですね。

河野 アンケートを取るわけでも、ユーザーの方の意見をそのままなんでも聞き入れるわけでもないのですが、そいういった声をいただけるのはありがたいですし、おもしろいですね。クリエイティブにもライブ感があると言いますか。

――前身翼の機体も話題になっていましたが……。

河野 前身翼については、いまは話せることがなく……。そういえば、心配されている声で、『エースコンバット』は有人機とのドッグファイトにロマンがあるのであって、無人機とのドッグファイトはつまらないという意見がありまして、「僕もそう思う」と。そのようなゲームにはなっていませんので安心してもらえればと思います。無人機の時代がくることを、ミハイという老パイロットを通してメッセージにしたいと考えていて。あと冒頭の幕間のシーンで老人が「こういう時代はいかん」と言うのですが、それがとても印象的。無人化する未来に対し、「無人化というものがどういうことか」というメッセージが深く入ってきます。

――有人機とのファイトは『エースコンバット』の伝統芸ですからね。

河野 あとは海外メディアの取材で「本作はドリームスタッフだ」と言わまして。確かに、片渕須直監督が脚本を務め、作曲は小林啓樹くんが担当しています。そのほか、『4』、『5』の糸見(糸見功輔氏)や菅野(菅野昌人氏)といったメンツを集めていますが、僕としてはこのメンバーでナンバリングを作るのは自然なこと。彼らの才能を集めて作らないと『7』にならないし、ナンバリングをつけられませんから。

――来月には東京ゲームショウが開催されますが……。

河野 SIEさんのご協力でソニーストアにてプレイステーションVRの体験版をやらせていただいていますが、日本ならではのことがやれれば、と考えている最中ですね。ファミ通さんの番組にも出演させていただく予定ですので、そちらもよろしくお願いいたします(笑)。