ファミ通の人気ライターが語る“ゲーム開発経験者がゲームメディアでも活躍できる理由”とは【CEDEC 2017】

パシフィコ横浜にて開催された、日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2017”。ここでは“ゲーム開発経験を活かすライター活動のすすめ”と題し、開催2日目に行われたセッションを紹介する。

●ファミ通でクロスレビューも担当するゲームライターが登壇

▲フリーランスライターの戸塚伎一氏(クイックス)。

 2017年8月30日~9月1日の3日間、パシフィコ横浜にて開催された、日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2017”。開催2日目の8月31日に行われたセッション“ゲーム開発経験を活かすライター活動のすすめ”には、ファミ通でも活躍中のフリーランスライター、戸塚伎一氏(クイックス)が登壇した。

 戸塚氏は、ファミコン通信(ファミ通)と姉妹誌の関係だったMSXマガジン編集部へ足を踏み入れたのち、1991年にフリーライターとしての活動を開始し、25年以上のキャリアを持つ。現在も多くのゲームメディアで活躍中であり、週刊ファミ通では“新作ゲームクロスレビュー”も担当。CEDEC2017でも、ファミ通.comの記者として、いくつかのセッションの取材にあたっている。

▲戸塚氏がこれまでに携わってきたゲームメディアの一部

 また、趣味でゲームを自作していることから、インディーゲーム開発者向けイベントでプレゼンを行ったり、プログラミングの親子向けワークショップを開催したりといった、開発者寄りの活動も行ってきた。そんな戸塚氏によるセッションは、ゲーム開発経験者に対し、新たな活動の場として“ゲーム系メディアライター”を提案するというものだ。

●好きじゃないとやっていられない!? ゲームライターの実態とは

 セッションの前半では、ゲーム系メディアライターという仕事について説明が行われた。ゲーム系メディアというのは、Web媒体であるファミ通.comや、紙媒体である週刊ファミ通のように、ゲームの情報を専門に扱う商業メディアのことだ。最初に戸塚氏は、ライターが実際にどんな作業をしているのかを解説。

 まずは、ゲームをプレイしたり、ゲームイベントや開発スタジオなどを取材したりするなどして、自分が作ろうとしている記事の材料を集める。つぎに、その材料に基づいて原稿を書くのだが、たいていは記事に使う写真の用意も行うことになる。そして、原稿と写真を揃え、ゲーム系メディアの編集部に渡すと、晴れてメディアに掲載される、という流れだ。記事は、編集部からの依頼を受けるだけでなく、ライター側から企画提案することも可能である。

 続いて、ゲーム系メディアライターの実情として、基本的にフリーランスという立場での契約になること、ギャラの目安としては1記事につき1~2万円くらい(Web媒体の場合)であることなどが明かされた。さらに、ゲーム系ライターになってよかったこととして、好きなゲームといつも関わっていられることなどを挙げ、「自分の大好きなゲームを作った方が、面識もなく、ふつうだったらお話しもできないような方でも、ライターだからということでいろいろな質問ができるのは、とてもすばらしいこと」としながらも、「好きじゃないとやっていられない」側面があることを示唆した。

●ゲーム開発経験者にはこんなアドバンテージがある

 オーディエンスに対し、「(ここまでを聞いて)ゲーム開発の仕事をしていたほうがぜんぜんいいのではないかと考える方も多いのでは」と呼びかけつつ、セッションの後半では、ライターを志すゲーム開発経験者に向け、戸塚氏からアドバイスやヒントが提供された。

 ゲーム開発経験者であれば、すでにゲームについての基礎知識が十分にあるだけでなく、自身の経験が記事を書くうえで独自の切り口になり得ること、また、ゲーム業界関係者とのつながりを持っていることなどが、ライター活動をする際にアドバンテージとなるという。また、文章力についてはそこまで重要ではなく、求められているのは専門分野に対する深い知識や、開発経験者ならではの視点、情報ルートなのだと語った。

 また、ライターに求められる資質は“情熱”と“好奇心”とのこと。前者は「このおもしろさを多くの人に伝えたい」などという気持ち、後者は「どうしてこんなゲームを作ろうと思ったのだろう?」などという興味を指す。これらの情報は、戸塚氏自身の経験を通した気づきはもちろん、複数のゲーム系メディアの編集者からヒアリングした情報も織り込まれているそうだ。

 ここで戸塚氏は、ゲーム開発会社の方から「いざ、自分の作りたいゲームは何かと聞かれると、なかなか出てこないスタッフも多い」と聞いたと語り、オーディエンスにゲーム業界を志した理由を振り返るよう働きかけた。たとえば、『ドラゴンクエスト』に感動してゲーム業界に入ったとして、その感動や衝撃をゲームというかたちで表現したいのか、それとも、好きなものを誰かに伝えたり共有したいのか。後者のほうが強いと感じた方には、ライターをすすめるとのことだった。

 最後にまとめとして、「ゲーム開発経験者はゲーム系メディアライターとしての“ウリ”をすでに持っている」という優位性、「情報発信していくことが、ゲーム業界全体の発展につながる」という仕事の意義などを挙げた戸塚氏。ライターとしてのキャリアだけでなく、自作ゲーム開発者としての独自の視点や、編集者や開発会社のパイプがあるからこそ得られた情報などが盛り込まれた、たいへんユニークなセッションだった。