ポーランド発! ガテン系エイリアン総進撃!!
ポーランドのインディーゲーム開発会社EXOR Studiosが手掛ける、タワーディフェンスとシューティングが融合した新基軸のゲーム『X-Morph:Defense(エックス モーフ:ディフェンス)』。そんな意欲的な作品がばっちりローカライズも施され、マーベラスより、プレイステーション4用ソフトとして、2017年8月30日より配信される。EXOR Studiosといえば、同社が開発したPC用ゾンビ轢殺カーアクション『Zombie Driver(ゾンビドライバー)』が日本でも発売されており、その名を知っている人もいることだろう。手掛けた作品はまだ少ないものの、そのどれもが根底に“ポストアポカリプス”的な風が吹き荒れる、独特な作風が持ち味になっている。つまり、“その筋”の人にはたまらない作品を生み出している会社ということだ。開発スタッフが、ただのロジャー・コーマン好きなだけなのかもしれないが……。
『X-Morph:Defense』の物語設定は、シンプルでありながら、なかなかユニークだ。プレイヤー側に立つのは、宇宙からはるばる地球へとやってきたエイリアン“X-Morph”たち。彼らの目的は、エネルギー吸収基盤を構築して地球全体を囲む測地ネットワークを作る……要するに、採集機“ハーベスターコア”を使って地球を同化吸収することだ。ということで“X-Morph”は、はるか上空から世界各地に“ハーベスターコア”を突き立てて、ガチョンガチョンと計画を遂行していく。当然、地球人も黙っちゃいられないということで、攻撃部隊を投入して攻撃に打って出てくるのだが、そこで出番となるのが、戦闘機“X-Morphファイター”。プレイヤーはこの戦闘機を操ってステージ上空を駆けめぐり、押し寄せる地求人どもの兵器を迎撃していくのだ。
ファイターが攻め、防衛塔が守る! 攻防一体のゲームシステム
本作は、基本的にはステージクリアー型のタワーディフェンスゲームだ。戦闘の準備をするインターバルフェイズと敵が進軍してくる攻撃波が交互に訪れ、最後までコアを守りきればステージクリアーとなる。通常のタワーディフェンスであれば戦況に合わせてステージのどこにどのような自軍ユニットを設置していくかが戦略上、大きなウェイトを占めるが、本作の場合はファイターが攻撃に参加できるため、話は少し変わってくる。
ファイターはステージ内を自由に飛び回り、自軍ユニットである防衛塔を設置したり、敵に攻撃を仕掛けたりできる。防衛塔は接近してくる敵を自動で攻撃してくれるのだが、本作では装甲車や戦車といった敵兵器が数十機で列をなしてコアへと進軍してくるため、ファイターを操って積極的に攻撃しまくならなければ手が回らない。というわけで、防衛塔が撃ち漏らした敵やカバーできない敵に向かって、ファイターがガンガン攻撃を加えていくこととなる。地球の兵器とは比べものにならない軽快さで空を駆け、プラズマ弾や爆弾を景気よくばら撒いて、爆炎とともに敵兵器を灰燼へと変えていく様はかなり爽快だ。ただ、敵もファイターに向かって攻撃を仕掛けてくるので油断は禁物。ファイターが被弾し続けて耐久値がゼロなると、爆発四散してしまう。一定時間後にコアから復活可能だが、ロスを防いで戦い続けるには敵の攻撃を的確に回避せねばならない。つまり、ギュンギュン避けて、ビシバシ当てるシューティングゲームの醍醐味が味わえるということだ。
もちろん自軍ユニットである防衛塔も、ステージクリアーのためにはおろそかにできない要素だ。そして、接近してくる敵への攻撃以外にも重要な役目を持っている。それが敵の進行ルートのコントロールである。隣接する複数の防衛塔のあいだにはレーザーフェンスを展開して、敵の侵攻を防ぐことができる。これを利用して敵の進行ルートを変え、敵がコアに到達するまでの時間稼ぎをしたり、分散する敵をある程度まとめたりできるわけだ。先述のように無数の敵が現れる本作では、ルート管理を怠るとあっと言う間にコアが敵に取り囲まれて破壊されてしまう。したがって、インターバルフェイズではきちんと敵の進行ルートを考えて防衛塔を建設していくことが肝要となるのだ。
なお、ステージに防衛塔を設置する際、ファイターは“ゴーストモード”と呼ばれる半透明の形態になる必要がある。ゴーストモードは攻撃こそできないが通常よりも動きが速く、敵の攻撃を受けつけないという特性を持つ。敵の攻撃波中に素早く移動したいとき、敵の弾幕の中を安全に突き進みたいときなどは、このモードを利用するという手もある。
ステージをクリアーすると、“テクノロジー”や“アップグレード”が手に入る。これらを使うことでファイター、防衛塔、コアをカスタマイズでき、ファイターは新たな攻撃手段の増加、防衛塔ならステージ中にバージョンアップできる塔のバリエーションが増えるといった具合に、戦力を強化することが可能だ。手に入るテクノロジーやアップグレードの数は多くはないが、着脱方式のようになっていて対象を簡単に選び直せるので、ステージごとにカスタマイズを変えることもできる。
ちなみに、ファイターはワンボタンで攻撃手段を切り替えることが可能で、それと同時に自機も変形を行う。攻撃手段は標準装備のプラズマ、地上の敵に有効な爆弾、対空攻撃の要のミサイル、大型の地上兵器への切り札となるレーザーの4種類があり、これらの武装を敵に合わせて切り替えながら戦っていくのだ。
実際にステージに挑んでみると、最初のうちは出現する敵の数も少なく戦力もほどほどで、問題なく対処できる。しかし、攻撃波を凌いでいくうちに敵の侵攻ルートが増加し、ステージの四方八方から無数の敵がアリの群れのように進軍してきて、ファイターの操作も忙しくなってくる。こちらも蓄えた資源で防衛塔を増築して対応にあたるが、絶妙に手が回らない感じがもどかしい。しかも、敵の中に非常にタフなドデカい戦車も混じり出したりと、ひと筋縄ではいかない。防衛塔の猛攻を潜り抜けてコアへと近づく敵兵器を仕留めるべく、ステージ中を東奔西走するハメになるが、この忙しさはなかなか心地がいい。
ステージよっては、すべての攻撃波を凌ぎ切ると、最後にボスが出現することがある。南アフリカの場合は“タランチュラMarkV”が地球人側の兵器とは思えない邪悪ないでたちで登場し、ミサイルや弾丸をまき散らしながらコアへとズンドコ迫ってくる。この“タランチュラMarkV”との攻防は、制限時間つきシューティングゲームのボス戦といった趣で、“タランチュラMarkV”がコアに到達するまでにカタをつけられるかという戦いはかなり緊張感がある。
“タランチュラMarkV”は多脚型マシンのご多分に漏れず、脚部ごとに耐久値があり、攻撃を仕掛けて耐久値をゼロにするとしばらく進行を停止する。だが、脚部を破壊すると一時的に動きが止まる代わりに極太レーザーを発射するようになるなど、行動パターンが豊富で、手応えは十分だ。
このように、『X-Morph:Defense』はタワーディフェンスの戦略性ととシューティングのテクニカルな操作性を一挙に楽しめる、おいいしいとこ取りの作品だ。難易度を3段階から選べたり、オフラインでの協力プレイができたりと、間口は広く設けられているので、少しでも興味がある方はぜひプレイして地球人を血祭りに上げてほしい。
ちなみに、本作の最終ステージの舞台には日本が設定されている。エイリアンにとって重要な地域かどうかは不明だけど、トライポッドを倒した大阪人が棲息するヤバい国だからラスボス扱いもしかたないね。